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Channel: 感染症診療の原則
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販売されている食肉とMRSA

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感染症は病原菌と、感染する相手(宿主:動植物やヒト)と、感染ルートがあれば拡大してきます。
何か対策をしなければ自然拡大(ナチュラルコース)し、一定の範囲で被害が生じます。

対策の有効性、対策にかける量・時間・人的資源・継続性等の問題から、パキッと(ワクチンで)おさえこめるような感染症はほとんどなく、対策をしていても広がっていきます。

eradicationができないならeliminationを。 elinimationをできないならcontrolを。これが感染症対策の基本。(ですがー)


現在、薬が効かない病原体が問題になる背景に、ヒト以外のところで使われている抗菌薬の存在があります。
抗菌薬は毎日食べている肉や野菜・果物に対しても使われているわけです。
英語のジョークに、「かぜをひいたらチキンスープを飲め(抗菌薬入りだ)」という話があるくらいです。


最近は特に、医療機関の外で広がるMRSAが問題になっており、食べ物から、あるいは動植物を扱う仕事をしている人での感染が問題んいなっています。
MLT(multilocus sequence type)398 (ST398)は動物の間ですでに広がっており、世界の各地で販売されている食肉の11.9%から検出される、とのことです。

MRSAが少ないことで有名なオランダでは、食肉を扱う人でのスワブ検査でブドウ球菌はでたけれども、MRSAではなくMSSAだったよ、という報告。


どうやって広がるのでしょうね?私も広げているのでしょうね!
例えば、、、動植物からヒトへどのように感染拡大するのかについて。図1。




まあ、そんななか「抗菌薬フリー印の肉って何か意味ある?」というサイエンス系ブログ記事がありました。
MRSA in pork products: does the "antibiotic-free" label make a difference?

紹介されていた、販売されている肉でのMRSAコンタミ状況

カナダの肉牛でMRSA
The Prevalence of Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus Colonization in Feedlot Cattle.
Zoonoses Public Health. 2011 Jun 28
アイオワ州で売られている食肉でのMRSA
Prevalence of Staphylococcus aureus and methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) on retail meat in Iowa.
J Infect Public Health. 2011 Sep;4(4):169-74.
韓国の肉
Prevalence and characterization of methicillin-resistant Staphylococcus aureus in raw meat in Korea.
J Microbiol Biotechnol. 2010 Apr;20(4):775-8.

調べれば各国各地各店で出るのでしょう。


健康な人にすぐに問題をおこすわけではありませんが、このような菌が世の中に出回っているなかで、抵抗力が低下している人たちが影響受けることがあります。

そう考えると、メディアが誤解をベースに「病院のせい」をわせて多剤耐性菌「で」死亡した、とする記事話は本筋からずれていきます。(高齢化やもともとの病気、さらに治療の影響(抗がん剤や免疫抑制剤、ステロイド剤など)で抵抗力が低下している人たちが増えていること、耐性菌の背景について目を向けていく必要があります)。


「薬剤感受性試験と耐性菌−最新の動向―」(アボット感染感染症アワー 2011年2月)のなかでも指摘されています。

「ESBLは1983年にヨーロッパで発見され、現在もなお医療関連感染の原因として問題視されているのですが、市中から分離されることは極めてまれでありました。しかし、2005年頃から医療関連感染のみならず、市中における特に尿路感染症の原因細菌として多く分離されるようになりました。この理由として、家畜の消化管内で生息しているESBL産生菌が食肉に付着し、これを経口的に接種することにより知らないうちに多くの健常人の消化管に定着してしまったのではないかと考えられています。従いまして、これら耐性菌の制御は、医療関連感染の制御だけではなく、食品衛生や自然環境における制御を行政や国家レベルで考えなければならない時代に入ってきているように思われます。」

「家畜および食肉から分離されるESBL産生菌」(The Chemical Times 2010年)でも、臨床での抗菌薬使用料を凌駕している農畜水領域での抗菌薬に注目し、総合的な対策が必要、と指摘されています。

感染管理も一施設内だけに目を向ける訓練では不足な時代に。



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