ポリオがニュースになっているので、まずは復習から。
当ブログでも、生ワクチンから不活化ワクチンに切り替える前に、たくさんの関連記事を掲載しました。
現在は不活化ポリオワクチンに切り替わっていますが、当時は生ワクチンのためにワクチンによって発症してしまう子ども達がいたこと、2次感染で大人が発症していたことなどが問題になっていました。
不活化に切り替えるという「選択肢があるのに」という状況が問題でした。
メディアの扱いも大きくなり、政治も動きました。
そのおかげで生ワクチンは現在は不活化ワクチンにきりかわっていますが、その手前では不安を覚えた保護者が経口ポリオワクチンを見送り、接種率が下がって行き、「海外から持ち込まれたら地域に広がる潜在リスク」が懸念されました。
海外からもちこまれても、高い接種率を維持していれば、2次3次的な広がりを予防することができます。
(このとき接種を見送られた子ども達がその後接種をしているのかの確認レポートをまだ見たことがないのですが)
日本では、現在、乳幼児のワクチンは不活化になっています。
成人ではリスクのある地域に行く/曝露の可能性がある人がトラベルクリニックで接種をしています。
感染しても9割は無症状(しかし感染源にはなる)。
3-5日後に、のどの痛み・軽い発熱・嘔吐・吐き気・腹痛・便秘・下痢→数日で改善
1-2%程度は、非麻痺型の無菌性髄膜炎
1%未満が、弛緩性の麻痺(麻痺型)
弛緩性の麻痺(麻痺型)を起こした場合の致死率は、こども2-5%、大人では15-30%、球麻痺の見られる場合25-75%。
・・・と、こちらの「どんな病気?」のところに解説があります。横浜市衛生研究所
さらに、人生の後半でおこるポストポリオ症候群」「に苦しんでいる人が日本にも一定数います。
もうひとつ復習をしていおいたほうがよいのは、今回のWHOの発表の背景です。
WHOは国際社会や加盟国の保健に関する問題をケアしていますが、その危機管理の仕組みとして、2005年に改正(2007年6月15日発効)された国際保健規則(IHR あいえいちあーる International Health Regulations)を知っておくことが重要です。
"国際的な公衆衛生上の問題となる緊急事態に迅速に対処する"ことを目的としています。
昔は黄熱、コレラ、ペストを想定していましたが、SARSや新型インフルエンザなどの新興感染症、テロへの対応、今回のような昔流行した感染症が再び流行する(再興感染症)などにその対象を広げています。
これも特定の病気というよりは、PHEIC(ふぇいく:Public Health Emergency of International Concern(原因を問わず、国際的な公衆衛生上の脅威となりうる、あらゆる事象)という概念で説明されます。
(1)〜(4)について検討し、PHEICと判断されればその国が24時間以内WHOに報告をすることになっています。フォーカルポイント(その国の対応窓口)は、日本の場合は厚生労働省大臣官房厚生科学課です。
ここが24時間の連絡窓口。
PHEICかどうかの判断は
(1)公衆衛生上の影響の大きさ
(2)異常あるいは予期しないものかどうか
(3)国際的な拡大について有意なリスクがあるかどうか
(4)国際交通や貿易の制限に至る有意なリスクがあるかどうか
です。
ポリオは、天然痘の根絶成功を達成したWHOが次なる成功(可能性のある)事例として取り組んでいる案件であり、Polio Global Eradication Initiative等にその詳細もあります。
課題の指摘もありますが、難しいといわれたインドで2014年1月には「ポリオ無発生3年を祝う」というターニングポイントもありました。
あと数カ国・・・のところで内戦がおきている国のEPI(ワクチン接種プログラム)で働く人たちが殺害されたりと、悲劇のニュースも続いていました。
そのような国ではポリオ、麻疹、とワクチンで予防できる感染症で再び子ども達が死亡をしたり健康リスクにさらされています。
関係者を守るために兵士が必要。
Pakistan Military Asked to Protect Polio Workers
以上が現時点と背景についてのおさらいです。
5月5日のWHO media centerの記事
WHO statement on the meeting of the International Health Regulations Emergency Committee concerning the international spread of wild poliovirus
もちろんこのようなアナウンスがある前に、かなり前から問題としては探知され、迅速対応も検討され、調査されていたわけです。このようなアナウンスはアナウンス後の事後対応も準備された上で発表したので、今突然問題にないことを、上記の背景情報とあわせて理解する必要があります。
ニュースにならないところで日々努力をされている方たちの存在や仕事を知る立場としては、今までの各地の部分的なメンテナンスの手ではどうにもならないところにきており、早めに手をうたないと想定以上に広がるかもしれない、犠牲者が出るかもしれないと理解をして、感染症にかかわるいち医療者としてできることをやらねばと思います。
身近に危機感を感じた時点ではtoo lateな問題ですので。
身近に感じるためにはどうすれば?ですが、「自分が診察するかもしれないパターン」として、ポリオフリーになった先進国で診断されたポリオ症例を紹介したいとおもいます。
Imported Case of Poliomyelitis, Melbourne, Australia, 2007
EID Volume 15, Number 1―January 2009
オランダのようにワクチン接種率の高い国でも、「ワクチンを接種しない人たち」のところで問題になることが。日本でもワクチン一切しませんというご家庭があります。
受診時には接種歴を確認することは大切。(知らない、覚えていない,という人もお多いですが・・・)
MMWR 1992年 Poliomyelitis -- Netherlands, 1992
米国 ミネソタ州
MMWR 2005年 Poliovirus Infections in Four Unvaccinated Children --- Minnesota, August--October 2005
WHO 2010年 タジキスタン
Polio in Tajikistan, first importation since Europe certified polio-free
2013年 Scientific American ニュースの地図を参考に
Polio Reemerges in Syria and Israel, Threatening Europe
アベノミクスで中東やアフリカと接点をもつ地域や企業、日本の人も増えていますので。遠い話でもありません。
当ブログでも、生ワクチンから不活化ワクチンに切り替える前に、たくさんの関連記事を掲載しました。
現在は不活化ポリオワクチンに切り替わっていますが、当時は生ワクチンのためにワクチンによって発症してしまう子ども達がいたこと、2次感染で大人が発症していたことなどが問題になっていました。
不活化に切り替えるという「選択肢があるのに」という状況が問題でした。
メディアの扱いも大きくなり、政治も動きました。
そのおかげで生ワクチンは現在は不活化ワクチンにきりかわっていますが、その手前では不安を覚えた保護者が経口ポリオワクチンを見送り、接種率が下がって行き、「海外から持ち込まれたら地域に広がる潜在リスク」が懸念されました。
海外からもちこまれても、高い接種率を維持していれば、2次3次的な広がりを予防することができます。
(このとき接種を見送られた子ども達がその後接種をしているのかの確認レポートをまだ見たことがないのですが)
日本では、現在、乳幼児のワクチンは不活化になっています。
成人ではリスクのある地域に行く/曝露の可能性がある人がトラベルクリニックで接種をしています。
感染しても9割は無症状(しかし感染源にはなる)。
3-5日後に、のどの痛み・軽い発熱・嘔吐・吐き気・腹痛・便秘・下痢→数日で改善
1-2%程度は、非麻痺型の無菌性髄膜炎
1%未満が、弛緩性の麻痺(麻痺型)
弛緩性の麻痺(麻痺型)を起こした場合の致死率は、こども2-5%、大人では15-30%、球麻痺の見られる場合25-75%。
・・・と、こちらの「どんな病気?」のところに解説があります。横浜市衛生研究所
さらに、人生の後半でおこるポストポリオ症候群」「に苦しんでいる人が日本にも一定数います。
もうひとつ復習をしていおいたほうがよいのは、今回のWHOの発表の背景です。
WHOは国際社会や加盟国の保健に関する問題をケアしていますが、その危機管理の仕組みとして、2005年に改正(2007年6月15日発効)された国際保健規則(IHR あいえいちあーる International Health Regulations)を知っておくことが重要です。
"国際的な公衆衛生上の問題となる緊急事態に迅速に対処する"ことを目的としています。
昔は黄熱、コレラ、ペストを想定していましたが、SARSや新型インフルエンザなどの新興感染症、テロへの対応、今回のような昔流行した感染症が再び流行する(再興感染症)などにその対象を広げています。
これも特定の病気というよりは、PHEIC(ふぇいく:Public Health Emergency of International Concern(原因を問わず、国際的な公衆衛生上の脅威となりうる、あらゆる事象)という概念で説明されます。
(1)〜(4)について検討し、PHEICと判断されればその国が24時間以内WHOに報告をすることになっています。フォーカルポイント(その国の対応窓口)は、日本の場合は厚生労働省大臣官房厚生科学課です。
ここが24時間の連絡窓口。
PHEICかどうかの判断は
(1)公衆衛生上の影響の大きさ
(2)異常あるいは予期しないものかどうか
(3)国際的な拡大について有意なリスクがあるかどうか
(4)国際交通や貿易の制限に至る有意なリスクがあるかどうか
です。
ポリオは、天然痘の根絶成功を達成したWHOが次なる成功(可能性のある)事例として取り組んでいる案件であり、Polio Global Eradication Initiative等にその詳細もあります。
課題の指摘もありますが、難しいといわれたインドで2014年1月には「ポリオ無発生3年を祝う」というターニングポイントもありました。
あと数カ国・・・のところで内戦がおきている国のEPI(ワクチン接種プログラム)で働く人たちが殺害されたりと、悲劇のニュースも続いていました。
そのような国ではポリオ、麻疹、とワクチンで予防できる感染症で再び子ども達が死亡をしたり健康リスクにさらされています。
関係者を守るために兵士が必要。
Pakistan Military Asked to Protect Polio Workers
以上が現時点と背景についてのおさらいです。
5月5日のWHO media centerの記事
WHO statement on the meeting of the International Health Regulations Emergency Committee concerning the international spread of wild poliovirus
もちろんこのようなアナウンスがある前に、かなり前から問題としては探知され、迅速対応も検討され、調査されていたわけです。このようなアナウンスはアナウンス後の事後対応も準備された上で発表したので、今突然問題にないことを、上記の背景情報とあわせて理解する必要があります。
ニュースにならないところで日々努力をされている方たちの存在や仕事を知る立場としては、今までの各地の部分的なメンテナンスの手ではどうにもならないところにきており、早めに手をうたないと想定以上に広がるかもしれない、犠牲者が出るかもしれないと理解をして、感染症にかかわるいち医療者としてできることをやらねばと思います。
身近に危機感を感じた時点ではtoo lateな問題ですので。
身近に感じるためにはどうすれば?ですが、「自分が診察するかもしれないパターン」として、ポリオフリーになった先進国で診断されたポリオ症例を紹介したいとおもいます。
Imported Case of Poliomyelitis, Melbourne, Australia, 2007
EID Volume 15, Number 1―January 2009
オランダのようにワクチン接種率の高い国でも、「ワクチンを接種しない人たち」のところで問題になることが。日本でもワクチン一切しませんというご家庭があります。
受診時には接種歴を確認することは大切。(知らない、覚えていない,という人もお多いですが・・・)
MMWR 1992年 Poliomyelitis -- Netherlands, 1992
米国 ミネソタ州
MMWR 2005年 Poliovirus Infections in Four Unvaccinated Children --- Minnesota, August--October 2005
WHO 2010年 タジキスタン
Polio in Tajikistan, first importation since Europe certified polio-free
2013年 Scientific American ニュースの地図を参考に
Polio Reemerges in Syria and Israel, Threatening Europe
アベノミクスで中東やアフリカと接点をもつ地域や企業、日本の人も増えていますので。遠い話でもありません。