相野田先生に監修をお手伝いいただき、さっそく感染したQ&Aです。
お忙しい中ご回答をいただきました荒岡先生 ありがとうございました。
2013年度第4回 真菌感染症のマネジメント
講師 感染症コンサルタント青木 眞
虎の門病院 臨床感染症科 荒岡 秀樹 先生
日時 2014年1月14日(火)18:30〜20:00
※本資料は講義中にお受けした質問に対する回答をまとめたものです。
あくまで講義の質問に対する私見であり、臨床現場で用いられる際の責任は負いかねます。
実際の臨床現場ではケースバイケースですので、各個人の責任で御活用下さい。
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Q1:高齢者では高頻度にカンジダが喀痰から培養で生えますが、誤嚥性肺炎では、口中の雑菌が肺に入って肺炎を起こすことから考えると、複数菌による感染であったり、多量のカンジダが肺に入ることによるカンジダ性肺炎もありそうに思います。カンジダが喀痰から生えていても起炎菌はカンジダではない、と言え場合の根拠は、どのような所見がみられる時でしょうか?
A1:微生物と感染症を起こしやすい・起こしにくい臓器の整理が必要です。通常Candida spp.が肺に感染症を起こすことは極めて難しく、一方消化管には常在している菌であるため特に抗菌薬投与中の患者さんの喀痰培養ではしばしば消化管に常在しているCandida spp.を検出してしまいます。恐らくCandidaが検出される頃には抗菌薬が効いて肺機能が改善していたりしますので、それも「Candidaが起炎菌ではない」と訴える根拠になるかも知れません。
Q2: Aspergillusの肺病変があり、その後その患者さんに脳膿瘍が見つかった場合、肺病変から血行性に脳に感染が起こったと考えるべきなのでしょうか?
A2: 脳膿瘍を形成している原因微生物がAspergillus spp.であった場合、考慮される侵入門戸としては、副鼻腔などから病変が直接頭蓋内に拡がってくる場合と、肺から血行性などに播種して脳膿瘍を形成する場合があります。もちろん、肺アスペルギルス症の患者さんの脳膿瘍の起因菌が別のものであることもあります。
Q3: 日本で使用されている「フォスフルコナゾール」はフルコナゾールと比較して溶液の量を減らせるメリットがあると思いますが、薬用量などの「使い方」はフルコナゾールと同様と理解してよろしいですか?注意点などあれば教えてください。
A3: 添付文書上は、フォスフルコナゾールでは初日と2日目の800mgローディングができるようになっている点などが異なっているかと思います。薬剤の詳細につきましては、直接製造・販売元にご確認ください。
Q4: 感染と定着の違いはなんですか?
A4:定着は保菌状態であり、感染症を起こしていない状態のことです。保菌は単なる菌の存在、感染は菌の侵襲に対して宿主からの白血球の遊走など何らかの相互作用が起きている状態と考えても良いです。
微生物は、保菌状態でいるだけのものや、本来と異なる場所に行くと感染症を発症する(大腸菌による腎盂腎炎、Candida spp.によるカテーテル関連血流感染症など)ものや、抗体がなければ感染しただけで発症する可能性が高い微生物(麻疹など)があります。
2012年度第1回デジタルセミナーのQ&AのA4もご参照ください。
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/804630178da6381ec380db6ed33cf758
Q5: カンジダ眼症の眼内炎は眼底検査をしなければ確認できないのでしょうか。
眼科医がいない、すぐコンサルトできない、薬剤師がベッドサイドで症状を確認したいとき、その他に疑う所見などはありますか?
A5:ベッドサイドで出来ることとしては、見え方の問診や視野や視力のチェックという方法はあるかもしれませんが、それはすでに眼の中の重要な領域が侵されているということであり、本来はそうなる前にチェックして治療を行う必要があります。眼内炎の診断には眼底をチェックする以外によい方法は他にないと考えます。眼底鏡のトレーニングを他の眼科医以外も行うという方法も考えられますが、簡単に診断できるものではないので、近くの眼科に眼内の診察だけでもしてもらえるようにするなど、普段からの診療体制の構築が必要かもしれません。
Q6: 市中感染症で口腔、食道、膣、皮膚以外の真菌感染をみることがまれのように思いますが、見逃してはいけない市中真菌感染症はありますでしょうか。
A6: 患者さんの背景によると考えられます。一般に細胞性免疫不全がない場合、渡航歴がなければ市中で見られる真菌症は白癬などが多いかと考えます。一方で、患者さんの背景に細胞性免疫不全がある場合には、市中であっても、例えばHIV感染症でCD4値が低い方やあるいは化学療法後やステロイドや免疫抑制剤投与下などでは、PCPなどの深在性真菌症が鑑別疾患に挙がることがあります。また、よく見る口腔、食道、膣、皮膚の真菌症でも極端に頻回であったり重症であれば糖尿病などの免疫不全状態を疑います。
Q7:カンジダが原因の尿路感染は、まれということですが、培養の前に尿沈渣所見やグラム染色では治療対象かどうかの判断は難しいでしょうか。
A7: Candida spp.は、例えば入院中で抗菌薬投与中の患者さんの尿培養からしばしば検出され、保菌状態でもグラム染色で多数認めることもあります。通常、稀な疾患の診断には他の疾患を除外することが特に重要であり、培養やグラム染色だけで診断できるものではありません。
Q8:繰り返す口腔カンジダはHIV感染も疑うということでしたが、食道カンジダも同様に考えるのでしょうか。
A8:口腔内カンジダ症・食道カンジダ症いずれもHIV感染症でCD4値が低下している状況ではしばしばみられる所見です。上部消化管内視鏡検査にて食道カンジダ症が見つかり、そこからHIV感染症が判明したケースもあります。
Q9:カンジダ血症でカンジダ眼内炎を疑う初期症状はどのようなものがありますでしょうか。
A9:初期には症状がないことが多いです。A5をご参照ください。
Q10: Cryptococcusで提示された60歳代女性の症例ですが、CD4が低下している原因は長期PSL治療の影響でしょうか?
HIVなどがない限り、あまりCD4は確認する機会は少ないのですが、HIV以外でどのような場面でCD4をcheckしたほうがよいでしょうか?
A10: 通常、HIV感染症以外ではあまりCD4値が免疫抑制状態と必ずしもパラレルに動くわけではないことがわかっており、HIV感染症以外では明確な指標となりにくい検査値です。2012年第5回デジタルセミナーのA3もご参照ください。
https://www.sandoz.jp/member/koseizai/digitalseminar2012/pdf/q_and_a05.pdf
Q11: 貴重な講座ありがとうございます。
当院入院中の血液腫瘍患者に真菌感染が疑われた際、CAFGとF-FLCZが併用されることがあります。キャンディン系とアゾール系では適応真菌が重複している部分があると思うのですが、この併用においてエビデンスや、臨床上有益になる点はありますでしょうか?
A11: 抗真菌薬における併用療法は、例えばクリプトコッカス髄膜炎におけるL-AmphB+5FCなど一部ではデータがありますが、全体としてはまだかなり限定的です。実際に処方しておられる医師に直接ご確認いただくことがよろしいかと思われます。
Q12: 侵襲性アスペルギルス肺炎は、血清学的検査のみでの診断は難しく、そのほかの検査とあわせて診断しなければなりませんか。ご教授ください。
A12: ご指摘の通りです。侵襲性肺アスペルギルス症の診断は、患者さんの背景や血清学的検査以外の所見などと合わせて総合的に判断します。可能な限り、喀痰や気管支検査(気管支肺胞洗浄液)、肺生検などでの培養検査や病理検査(真菌を確認するグロコット染色)でアスペルギルス感染の証拠をつかまえたいところです。
Q13: 血液培養陰性化確認のための培養提出は治療開始何日目に最初の検体をとるべきでしょうか?
抗真菌薬投与三日目とかが目安になりますか?
A13: ケースバイケースですが、陰転化は大事な治療の指標であり、真菌血症の治療期間は原則として血液培養が陰転化してからの日数が重要ですので、初期は比較的頻回に(連日〜数日)再検を行ったりします。
Q14: 本日は貴重なご講義をして頂き、ありがとうございました。
真菌感染症のリスクが高い患者に対して、抗真菌薬の予防投与を行うことはありますか?
A14:予防内服が推奨される状況は決して多いわけではありません。が、血液疾患の一部(急性白血病の強力な寛解導入化学療法やにて造血幹細胞移植後など)ではFLCZの予防内服が考慮されます。他には一部の患者に対し、PCPの予防としてST合剤を投与することもあります。
Q15: カンジダ血症において合併する眼内炎の有無を確認することの重要性を改めてお教え下さい。講座の中で治療期間や方針が眼内炎の有無で変更することがあるとおっしゃられていましたが、眼内炎に対する局所治療とカンジダ血症に対する全身治療において用いる抗真菌剤はそれぞれ移行性を考慮し別薬剤を選択・併用するべきなのか、両方をカバーする抗真菌剤 1剤を選択すべきなのかお教え下さい。やはりカンジタ血症に眼内炎を合併時はカンジダの菌種を確認し、C.kruseiなどであれば移行性の良いF−FLCZではなくL-AMBを選択すべきでしょうか?
A15:カンジダ眼内炎の治療については、前向き試験のデータが十分でない領域でもありますし、重症度によっても治療内容が変わるため、治療薬の選択は最終的にケースバイケースになると考えられますが、一般的には感受性のある薬剤が選択されます。実際にどのような重症度でどのような薬剤が選択されるかは、ガイドライン(IDSAガイドライン:http://cid.oxfordjournals.org/content/48/5/503.1.full.pdf+htmlのp521から)などをご参照ください。重症例では眼内注射も考慮されますが、適応は眼科医の判断によるところが大きいかと考えます。また薬剤については、投与経路が異なりますので、同じでないといけないということはありません。詳しくは成書などもご参照いただき、実際の治療についてはお近くにいらっしゃる治療経験のある専門家に適宜コンサルトされることをお勧めします。
Q16:細胞性免疫不全は患者では真菌感染症を考慮するとのことですが、これは例えばステロイドを少量内服していたり、短期間好中球が減少しただけでも真菌感染症を考慮した方がよいですか?
A16:細胞性免疫不全の程度については定量化を行うことは大変難しく、HIV感染症におけるCD4値のようにわかりやすい指標はあまりありません。例えば好中球減少であれば5日以上続いた場合には深在性真菌感染症の頻度が上昇したり、あるいはステロイド投与下ではPSL換算で20mg以上を1ヶ月間以上投与された場合にPCPのリスクが上がるとされている報告もあります。逆に基礎疾患のない若い健常成人に例えば10mg程度のステロイドを数日間程度投与しただけで直ちにその後に真菌感染症のリスクが跳ね上がるというようなことはないと思います。しかし年齢や全身状態によってベースの免疫状態が異なる上に、免疫抑制剤などは代謝も個人差があるため一概に評価は難しいです。2012年デジタルセミナー第5回の具先生の御講義内容(ハンドアウトや資料集やQ&A)などもご参照ください。
お忙しい中ご回答をいただきました荒岡先生 ありがとうございました。
2013年度第4回 真菌感染症のマネジメント
講師 感染症コンサルタント青木 眞
虎の門病院 臨床感染症科 荒岡 秀樹 先生
日時 2014年1月14日(火)18:30〜20:00
※本資料は講義中にお受けした質問に対する回答をまとめたものです。
あくまで講義の質問に対する私見であり、臨床現場で用いられる際の責任は負いかねます。
実際の臨床現場ではケースバイケースですので、各個人の責任で御活用下さい。
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Q1:高齢者では高頻度にカンジダが喀痰から培養で生えますが、誤嚥性肺炎では、口中の雑菌が肺に入って肺炎を起こすことから考えると、複数菌による感染であったり、多量のカンジダが肺に入ることによるカンジダ性肺炎もありそうに思います。カンジダが喀痰から生えていても起炎菌はカンジダではない、と言え場合の根拠は、どのような所見がみられる時でしょうか?
A1:微生物と感染症を起こしやすい・起こしにくい臓器の整理が必要です。通常Candida spp.が肺に感染症を起こすことは極めて難しく、一方消化管には常在している菌であるため特に抗菌薬投与中の患者さんの喀痰培養ではしばしば消化管に常在しているCandida spp.を検出してしまいます。恐らくCandidaが検出される頃には抗菌薬が効いて肺機能が改善していたりしますので、それも「Candidaが起炎菌ではない」と訴える根拠になるかも知れません。
Q2: Aspergillusの肺病変があり、その後その患者さんに脳膿瘍が見つかった場合、肺病変から血行性に脳に感染が起こったと考えるべきなのでしょうか?
A2: 脳膿瘍を形成している原因微生物がAspergillus spp.であった場合、考慮される侵入門戸としては、副鼻腔などから病変が直接頭蓋内に拡がってくる場合と、肺から血行性などに播種して脳膿瘍を形成する場合があります。もちろん、肺アスペルギルス症の患者さんの脳膿瘍の起因菌が別のものであることもあります。
Q3: 日本で使用されている「フォスフルコナゾール」はフルコナゾールと比較して溶液の量を減らせるメリットがあると思いますが、薬用量などの「使い方」はフルコナゾールと同様と理解してよろしいですか?注意点などあれば教えてください。
A3: 添付文書上は、フォスフルコナゾールでは初日と2日目の800mgローディングができるようになっている点などが異なっているかと思います。薬剤の詳細につきましては、直接製造・販売元にご確認ください。
Q4: 感染と定着の違いはなんですか?
A4:定着は保菌状態であり、感染症を起こしていない状態のことです。保菌は単なる菌の存在、感染は菌の侵襲に対して宿主からの白血球の遊走など何らかの相互作用が起きている状態と考えても良いです。
微生物は、保菌状態でいるだけのものや、本来と異なる場所に行くと感染症を発症する(大腸菌による腎盂腎炎、Candida spp.によるカテーテル関連血流感染症など)ものや、抗体がなければ感染しただけで発症する可能性が高い微生物(麻疹など)があります。
2012年度第1回デジタルセミナーのQ&AのA4もご参照ください。
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/804630178da6381ec380db6ed33cf758
Q5: カンジダ眼症の眼内炎は眼底検査をしなければ確認できないのでしょうか。
眼科医がいない、すぐコンサルトできない、薬剤師がベッドサイドで症状を確認したいとき、その他に疑う所見などはありますか?
A5:ベッドサイドで出来ることとしては、見え方の問診や視野や視力のチェックという方法はあるかもしれませんが、それはすでに眼の中の重要な領域が侵されているということであり、本来はそうなる前にチェックして治療を行う必要があります。眼内炎の診断には眼底をチェックする以外によい方法は他にないと考えます。眼底鏡のトレーニングを他の眼科医以外も行うという方法も考えられますが、簡単に診断できるものではないので、近くの眼科に眼内の診察だけでもしてもらえるようにするなど、普段からの診療体制の構築が必要かもしれません。
Q6: 市中感染症で口腔、食道、膣、皮膚以外の真菌感染をみることがまれのように思いますが、見逃してはいけない市中真菌感染症はありますでしょうか。
A6: 患者さんの背景によると考えられます。一般に細胞性免疫不全がない場合、渡航歴がなければ市中で見られる真菌症は白癬などが多いかと考えます。一方で、患者さんの背景に細胞性免疫不全がある場合には、市中であっても、例えばHIV感染症でCD4値が低い方やあるいは化学療法後やステロイドや免疫抑制剤投与下などでは、PCPなどの深在性真菌症が鑑別疾患に挙がることがあります。また、よく見る口腔、食道、膣、皮膚の真菌症でも極端に頻回であったり重症であれば糖尿病などの免疫不全状態を疑います。
Q7:カンジダが原因の尿路感染は、まれということですが、培養の前に尿沈渣所見やグラム染色では治療対象かどうかの判断は難しいでしょうか。
A7: Candida spp.は、例えば入院中で抗菌薬投与中の患者さんの尿培養からしばしば検出され、保菌状態でもグラム染色で多数認めることもあります。通常、稀な疾患の診断には他の疾患を除外することが特に重要であり、培養やグラム染色だけで診断できるものではありません。
Q8:繰り返す口腔カンジダはHIV感染も疑うということでしたが、食道カンジダも同様に考えるのでしょうか。
A8:口腔内カンジダ症・食道カンジダ症いずれもHIV感染症でCD4値が低下している状況ではしばしばみられる所見です。上部消化管内視鏡検査にて食道カンジダ症が見つかり、そこからHIV感染症が判明したケースもあります。
Q9:カンジダ血症でカンジダ眼内炎を疑う初期症状はどのようなものがありますでしょうか。
A9:初期には症状がないことが多いです。A5をご参照ください。
Q10: Cryptococcusで提示された60歳代女性の症例ですが、CD4が低下している原因は長期PSL治療の影響でしょうか?
HIVなどがない限り、あまりCD4は確認する機会は少ないのですが、HIV以外でどのような場面でCD4をcheckしたほうがよいでしょうか?
A10: 通常、HIV感染症以外ではあまりCD4値が免疫抑制状態と必ずしもパラレルに動くわけではないことがわかっており、HIV感染症以外では明確な指標となりにくい検査値です。2012年第5回デジタルセミナーのA3もご参照ください。
https://www.sandoz.jp/member/koseizai/digitalseminar2012/pdf/q_and_a05.pdf
Q11: 貴重な講座ありがとうございます。
当院入院中の血液腫瘍患者に真菌感染が疑われた際、CAFGとF-FLCZが併用されることがあります。キャンディン系とアゾール系では適応真菌が重複している部分があると思うのですが、この併用においてエビデンスや、臨床上有益になる点はありますでしょうか?
A11: 抗真菌薬における併用療法は、例えばクリプトコッカス髄膜炎におけるL-AmphB+5FCなど一部ではデータがありますが、全体としてはまだかなり限定的です。実際に処方しておられる医師に直接ご確認いただくことがよろしいかと思われます。
Q12: 侵襲性アスペルギルス肺炎は、血清学的検査のみでの診断は難しく、そのほかの検査とあわせて診断しなければなりませんか。ご教授ください。
A12: ご指摘の通りです。侵襲性肺アスペルギルス症の診断は、患者さんの背景や血清学的検査以外の所見などと合わせて総合的に判断します。可能な限り、喀痰や気管支検査(気管支肺胞洗浄液)、肺生検などでの培養検査や病理検査(真菌を確認するグロコット染色)でアスペルギルス感染の証拠をつかまえたいところです。
Q13: 血液培養陰性化確認のための培養提出は治療開始何日目に最初の検体をとるべきでしょうか?
抗真菌薬投与三日目とかが目安になりますか?
A13: ケースバイケースですが、陰転化は大事な治療の指標であり、真菌血症の治療期間は原則として血液培養が陰転化してからの日数が重要ですので、初期は比較的頻回に(連日〜数日)再検を行ったりします。
Q14: 本日は貴重なご講義をして頂き、ありがとうございました。
真菌感染症のリスクが高い患者に対して、抗真菌薬の予防投与を行うことはありますか?
A14:予防内服が推奨される状況は決して多いわけではありません。が、血液疾患の一部(急性白血病の強力な寛解導入化学療法やにて造血幹細胞移植後など)ではFLCZの予防内服が考慮されます。他には一部の患者に対し、PCPの予防としてST合剤を投与することもあります。
Q15: カンジダ血症において合併する眼内炎の有無を確認することの重要性を改めてお教え下さい。講座の中で治療期間や方針が眼内炎の有無で変更することがあるとおっしゃられていましたが、眼内炎に対する局所治療とカンジダ血症に対する全身治療において用いる抗真菌剤はそれぞれ移行性を考慮し別薬剤を選択・併用するべきなのか、両方をカバーする抗真菌剤 1剤を選択すべきなのかお教え下さい。やはりカンジタ血症に眼内炎を合併時はカンジダの菌種を確認し、C.kruseiなどであれば移行性の良いF−FLCZではなくL-AMBを選択すべきでしょうか?
A15:カンジダ眼内炎の治療については、前向き試験のデータが十分でない領域でもありますし、重症度によっても治療内容が変わるため、治療薬の選択は最終的にケースバイケースになると考えられますが、一般的には感受性のある薬剤が選択されます。実際にどのような重症度でどのような薬剤が選択されるかは、ガイドライン(IDSAガイドライン:http://cid.oxfordjournals.org/content/48/5/503.1.full.pdf+htmlのp521から)などをご参照ください。重症例では眼内注射も考慮されますが、適応は眼科医の判断によるところが大きいかと考えます。また薬剤については、投与経路が異なりますので、同じでないといけないということはありません。詳しくは成書などもご参照いただき、実際の治療についてはお近くにいらっしゃる治療経験のある専門家に適宜コンサルトされることをお勧めします。
Q16:細胞性免疫不全は患者では真菌感染症を考慮するとのことですが、これは例えばステロイドを少量内服していたり、短期間好中球が減少しただけでも真菌感染症を考慮した方がよいですか?
A16:細胞性免疫不全の程度については定量化を行うことは大変難しく、HIV感染症におけるCD4値のようにわかりやすい指標はあまりありません。例えば好中球減少であれば5日以上続いた場合には深在性真菌感染症の頻度が上昇したり、あるいはステロイド投与下ではPSL換算で20mg以上を1ヶ月間以上投与された場合にPCPのリスクが上がるとされている報告もあります。逆に基礎疾患のない若い健常成人に例えば10mg程度のステロイドを数日間程度投与しただけで直ちにその後に真菌感染症のリスクが跳ね上がるというようなことはないと思います。しかし年齢や全身状態によってベースの免疫状態が異なる上に、免疫抑制剤などは代謝も個人差があるため一概に評価は難しいです。2012年デジタルセミナー第5回の具先生の御講義内容(ハンドアウトや資料集やQ&A)などもご参照ください。