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Channel: 感染症診療の原則
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消えたペニシリン

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発見されたのは1928年。つい最近。 (14年後の2028年で100周年)

参考:
A Happy Accident: Fleming’s Penicillin
Pfizer 「世界を変えたカビ」



抗菌薬が広く使えるようになるまで、感染症でバタバタ人が死ぬような日常もあったわけですが、、新薬開発と耐性菌とのいたちごっこのこの時代に、「今でも安心してペニシリンでいける」感染症もあります。

それは東京や大阪でブレイク中の梅毒。

先進国でも世界でも「ベンザチンペニシリンの筋注」が第一選択薬です。
早期の治療で1回ですみますし、
内服では4週間

しかし、日本にはありません。

正確には、あったけど消えた、わけです。

新薬がなかなか入ってこないため患者さんが困るような現象について、ドラッグラグといわれますが、そんなスゴいあったらしいお薬!ではなくて、基本的なものがない、というあたり特別な悲哀が伴います。

あまロスならぬ、ペットロスならぬ、ドラッグロスです。

青木編集長は、沖縄県立中央病院時代のある日、師匠の先生が「おれからペニシリンを奪うな」との絶叫を思い出すそうです。

新しい薬を市場に導入するには開発、臨床試験、手続き費用など様々なハードルがあるわけで、儲かるかわからない薬に企業が投資をしないのはしかたないことであります。
しかし、日本を除く世界にはあるのにない、あったのに消えた、という状況はどうすればいいのでしょうか。

未承認薬等開発支援センターという機関のホームページを見たら、平成26年1月21日現在36医薬品について開発企業の募集を行っています。

リストに、開発意志を申し出をしてきた企業があるかないかもかいてあります。

たとえばコリスチン。GSKが手をあげているということです。(ありがとうございます)

メトロニダゾールの静注。ファイザーが薬事申請性済み。(ありがとうございます)

ナフシリン 企業名は秘密(ありがとうございます)

で、28と29にあるのがベンジルペニシリンベンザチン。 開発意志を申し出た企業は無し!。

よし!輸入しよう・・・ということになったらですね・・・
1バイアル1.9ドルです。

もうかりそうにありません。

輸入や承認までの手続き費用を考えると うーむ となります。


日本国内のペニシリンの歴史は
平成医新 「ペニシリン・ショック」
に大変詳しく紹介されているので、感染症に関心のある人は是非読みましょう。

で、この先も「4週間、薬飲んでね」という世界が続くのでしょうか。
東京や大阪の梅毒の流行は止まるでしょうか。
若い女性の広がりの中で先天性梅毒の赤ちゃんを救うにはどうしたらよいでしょうか。
1回でいける筋注用のペニシリンはもう未来永劫日本には入らないのでしょうか。
まさにペニシリンのショックです。

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