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名著です!!

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教え子から嵐の如くリクエストされる書評群。

どれも我が教え子に相応しい名著が多く、目を通す事自体が非常に勉強になっている編集長ですが・・。

今回、教え子ではない。というか最近まで面識がなかったが若セミの講師として若手から強く推挙された多摩総合医療センター 精神神経科の児玉知之先生の御著書を拝読しました。

一般臨床医のための メンタルな患者の診かた・手堅い初期治療クリエーター情報なし医学書院



推挙してくれた若手医師達

これ、本当に名著だと思います。
まず、心を動かされるのが「本当に役立ちたい・・」という熱意。このために何とか問題の本質を自分の言葉で翻訳するという努力がにじみます。

更に精神科領域なので、意識の量と質といった哲学的とさえ編集長には思えて仕舞う言葉さえ、極めて平易に解説して下さっています。このあたり、失礼ながら「本当にイイヤツなんだろうな(失礼!)・・」と思わされます。

児玉先生は聖路加国際病院の内科Chiefレジデントを終えてから精神科に進まれています。それゆえに記載に内科的なセンスも充満しています。薬の投与量は十分に。(良く見られる誤りは不十分な量で複数併用している・・) 効果判定は何を見るのか・・
この辺り極めて内科的ではないですか・・!!

人生初めて了解出来た事の例:

・統合失調症は自分の内部からの情報と外部からの情報の統合する機能が失われている・・。
・内科疾患と精神科疾患の臨床像の距離の近さ・・。
・認知症は皮質性と皮質下に分ける。このためには固縮Rigidityの有無の検討には、ふらつき・歩行状態の変化など(要はExtrapyramidalやね・・)の検討が大事。

などなど・・

これ、若セミ、今年も盛り上がって仕舞いますね。

シカゴ特派員レポート Clinical Vaccinology Course

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春から感染症フェローとして新しい生活が始まるM渡先生のシカゴ修行録です♪
(文中の色や拡大の強調は編集部によるもの)

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NFIDのClinical Vaccinology Course, March 2013に参加して

参加にあたって
去る3月8〜10日、私はHyatt Regency Chicagoで行われたClinical Vaccinology Courseに参加いたしました。これまでは血液内科の傍らで、HIV、敗血症や肺炎などの感染症を診てきました。そして本格的に感染症を勉強しようといよいよ決意して半年、何から手を着けたらいいのかよくわからないまま過ぎていく焦りの中、この“感染症診療の原則ブログ”で本コースの存在を知り、予防の勉強をしよう!と思い立ったのでした。
もうすぐアラフォーというのに、海外渡航経験ゼロという希少人種である私にとって、アメリカへの単身渡航は若干の(大変な)不安はあったのですが、1月21日までに申し込むと安いというこのブログ編集部の意見(記載)に素直に従い、後戻りできないよう、早々と航空チケットとコースの申し込みを済ませたのでした。
というわけで、初めての海外、英語は中学時代の英検3級止まり、ワクチンについても初心者という状態で、一人Chicagoに乗り込んだのです。
これは、そんな初心者の人がまだいれば、少しでも励みになればと思って私の渡航記録をつれづれなるままに記したものです。

なんとか無事ホテルへ
出来立てほやほやのパスポートを出す仕草からたどたどしい自分でしたが、Chicagoに着いてしまえば、広告も案内板も英語、あたりまえですが、入国審査がえいご〜と思って自分の番が来るのをびくびくしていました。これまで学会で英語のシンポジウムなどを聴くことはありましたが、nativeな発音が全然聴き取れず、入国審査の並び口を指示するお姉さんが、“twenty”と言っているのに最初は“fourteen”に聴こえて、14番は開いていないのになぜ?というところから打ちのめされました。

それでも並んでいるうちに数字が聴き取れるようになり、自分の番が来ました。審査官に何しに来たと言われて、sightseeingとでも言えばよかったものの、頭が真っ白になっていると「観光」という言葉すら浮かばず、 “study”と言ってしまったために、そこから根掘り葉掘り聞かれました。最初は“vaccine”と言っても理解してもらえず、“prevent measles, rubella, influenza…”と並べ立てたところで、審査官が“vaccination!”と理解してくれて、話が通じました。職業や行先もいぶかしげな顔で尋ねられましたが、National Foundation for Infectious Diseaseという名前を出したらどうやら信用してくれたようでした。

無事入国したところで、今度はホテルまでの道のりの選択に迫られました。ガイドブックにはdowntownへは乗合バスがすすめられていましたが、宿泊するホテルまで直接行ってくれるのかどうかがわからず、バスの申し込み手続きを英語で話すのが億劫で、タクシーの方が一人で気を使わずにいられて楽かもと安易な発想でタクシーを選択しました。運転手は黒人のお兄さんで、行先は理解してくれたものの、運転中ずっとイヤホンで電話しており、それも英語ではない言語をまくしたてていてなんとなく不安になってきました。そして、日本のタクシーに比べると急ブレーキの頻度が多く、私は段々車酔いしてきたものの、気持ち悪いから止まってくれとも言えず、前の座席の背面にかけられていたオプション料金表に“Vomitting Cleaning $50.0”と記載されているのを見つけ、なんとしてでも吐くまいと念じて目をつぶってホテルまでどうにか到着しました。


いよいよcourse開始
到着翌日、目的のcourse初日を迎えました。7時15分からcontinental breakfastつきでregistrationを行い、名札とシラバス集と鞄をもらい8時15分からレクチャー開始でした。スライドは登録してある者には、前もってメールが来て、confirmation numberを入力するとHPから電子ファイルで大半が入手可能です(とりあえず去年のもの、というのもありますが後日今年のものが更新されて4月末まで入手可能です)。私はiPADでDropboxのお気に入り(オフラインでもファイルが見られるところ)に入れておいたのが役に立ちました。というのも、ホテルの部屋でWi-Fi使うだけなら一日1000円ちょっとで契約できますが、カンファレンス会場でもWi-Fi使用できるように契約するとなると一日3000円以上かかり、あらかじめPCやiPADにオフラインで使えるようセットアップしていくことがおすすめです。

会場は200人が余裕で入る規模で、スライド画面は大きいものの細かい表などは見えづらい部分もあるので、自分としてはiPADがとても役に立ちました。そして、前もってスライドで予習できたことで、英語があやしい自分でも内容にある程度ついていけました。
また、最近では日本でもよく使われる、アナライザーシステムのハンドセットが参加者に配られ、時おり演者から質問が投げかけられ回答番号を投票するので、集中力が途切れづらくついていきやすかったです。

開始の挨拶の時にアナライザーシステムの練習がてら質問された内容で、参加者のcharacterがわかりました。8割近くアメリカ国内からの参加で、次に多いのがカナダでした。アジアおよび太平洋諸島ひっくるめられての参加者が全体の3%程度で、私以外の日本人をみつけることはできませんでした。職業はphysicianとnurseが半々で、このcourseに初めて参加するという人が8割でした。

初日は、なぜワクチンが必要なのかということや、ワクチンをいやがる親にどのように説得・交渉するかということや、routineのワクチン接種率が全米で6割程度という現状を改善しなければということが熱く語られていました。ワクチン接種率の向上対策の一環で、アメリカでは薬剤師がワクチンを接種できるようになっており、実際ChicagoのPharmacyはどこの店にも“FLU SHOT EVERYDAY !”と看板が出ているのが目につきました。また、複数回投与が必要なワクチンにおいて、完遂率の低さも問題視されており、特にHPVなどは、親が子どもの性的活動性を低く見積もって必要ないと判断して途中でやめてしまうことが多いということ、しかし曝露前に接種完了しなければ意味がないということも強調されていました。

1日目の後半から各論が出てきて、3日間で髄膜炎菌、RSV、肺炎球菌、HPV、百日咳、Rotavirus、Influenzaが取り上げられました。その他に、ワクチンの副反応のレポートシステム、禁忌、コンビネーション可能なものについての演題がありました。
2日目は8時から17時45分までと長く疲れた部分はありますが、1日目よりリラックスしていたので、隣の人と少し話ができました。隣の方はもともとnurseで、現在は3万人の学生をかかえる大学のHealthcare coordinatorをしているとのことでした。ワクチンを打っても抗体価が上がらない学生をどうしたらいいのか、それがbig problemだと言っていました。おそらくそういった問題は、全体の接種率を向上させて、抗体ができにくい人や条件によってワクチンが打てない人を間接的に守るという部分を期待するしかないのではと思いました。そういったindirect effectもワクチン政策において重要な部分だとcourse内でも言われていました。
Course 3日目は、Chicagoではサマータイムに切り替わる日(3月第二日曜日)にあたっており、なおかつ開始時刻が7時ということで、前日に比べると実質2時間早く開始でした。米国内でもサマータイム制度が異なるため遅刻してきた人もいて、お茶目な方にChicago timeで今は何時ですか?とこっそり質問されたりしました。
3日目の内容はcourseの総まとめのようなcase conference中心のレクチャーがあり、その後、特殊な領域として、免疫不全者(HIV、移植後、化学療法施行中)のワクチンの考え方、最後にトラベルワクチンについて講義がありました。

Chicagoでの楽しみ
巨大な街、Chicagoにただ行くだけではもったいないと思い、courseの前後を使ってシカゴ美術館を訪問したり、市内中心部にあるPicassoの巨大作品(無題:有名なHead of a womanから模型化したような像)をこの目で確かめてきました。また、滞在最後の夕べにはChicago symphony centerにて、子どもの頃からの憧れだったAnne-Sophie Mutterのバイオリン生演奏をステージから5列目という間近で聴くことができ、不安の多かったChicago訪問がとても充実したもので幕を閉じたのでした。
ちなみに、空港までの帰り道は、来た時の教訓をもとに、ホテルから乗合バスを利用して、タクシーよりも安く快適に移動できました。

最後に
今回のcourseは内容盛りだくさんではありましたが、初心者の私には、ワクチンの学問を系統的に勉強できるよい機会となって、よくわからないで申し込んだものの大変儲けものでした。できれば、演者の方のjokeがわかるくらい英語をもっと勉強して、また参加したいと強く思いました。今後、ワクチンの勉強を始めたい方、おさらいしたい方、知識をアップデートしたい方がいれば、時間を作って是非参加されてはいかがでしょうか。
あらかじめcourse登録者には事前登録された他の参加者の名前、連絡先、メールアドレスなどがHPで見られるようになるので、日本人参加者が他にいれば日本人同士で連絡を取り合って行くのも楽しいかもしれませんが、私のようなすべてにおいて初心者でも一人でなんとかなったので、志さえあればなんとかなるでしょう!

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M渡先生、レポートありがとうございます。ご無事のお帰り何よりです。
春から優しく♪予防接種お願いします。

春が来て・・

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また春が来て・・♪ ではありませんが、春、旅立ちの時ですね。

本日、毎週木曜日駒込病院で行っている恒例の朝カンファ、最終日でした。

他施設に移る若手医師を見送る編集長の頭に白いものが増える以外は特別な変化はありませんが、毎年感慨深いものです。

卒業生の健闘を祈ります。

青木 眞

ケースカンファレンス@筑波大学

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2011年の震災の影響で中止になってしまった、筑波大学医学部の卒業お祝い感染症タッグマッチ(だったと思う。徳田先生の依頼だったし)。

そのときの熱い思いを引き継いだ後輩の皆さんのご尽力により、筑波大学でのカンファレンスが企画されました。

ということで、本日、福岡空港→羽田空港→秋葉原→(つくばエクスプレス)→筑波大学 とでかけています。
 
まずは、本日のオーガナイザー徳田安春教授。


皆さんがくるまではサイン会と記念写真撮影会(おじさんとツーショット大会)。

かきます。カキカキ。


もっとかきます。カキカキ。



そうこうしているうちに、筑波大学の前野先生や、茨城県庁の方もおみえになりました。(心拍数があがってきました)


いよいよ開始です。

医学生と研修医の2題の症例チャレンジです。

医学部5年生の林さんが、医学生とは思えない症例提示。「院内発熱初期対応」というプレゼンでした。
うーむ。さすが筑波大学。


参加者には水戸協同病院で闘魂外来を経験している学生さんが一定数いるんですね。
今年卒業して、公立昭和病院に初期研修をはじめる先生は学生の間にすでに現場で100例近く経験を積んでいるそうです。
恐るべし徳田ワールド。

休憩タイム。


次の症例のタイトルは「水戸からの挑戦状」。鎌田先生によるチャレンジ。


2例目は難しかったです。。。ティアニー先生のところに相談しましょうレベルでした。


皆様 おまねきありがとうございました。

MRIC転載 「ワクチン悲喜こもごも(5)」

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年度末で、どたばたと予算の話題とか法案の話題とか。現時点でどうなのか?と聞かれても、答えられる現場の医療者は少ないですね。

復習;内閣法制局:法律の原案作成から法律の公布までをみますと、「委員会における法律案の審議が終了すれば、その審議は、本会議に移行します」です。

3月1日 閣議決定
薬事日報 「【政府】予防接種法改正案が閣議決定‐3ワクチンの定期接種化へ」

3つだけじゃだめでしょ、ということで
3月14日 「任意4ワクチンの定期接種化を要望ーVPDの会など7団体」と支援を続けている団体もあり、

委員会中にもいろいろあったようですが、

読売 「法案採決の直前、民主「党内手続きまだ」…中断」

19日に「予防接種法改正案を全会一致で可決」となったそうです。
「これまで補正予算で接種を支援していた子宮頸がん(HPV)、ヒブ、小児用肺炎球菌ワクチンを13年度から定期接種化するもの。そのほか、医療機関から厚労相への副反応報告の義務化、予防接種「基本計画」の策定と5年に1度の見直しなどの施策を盛り込んでいる」

で、今日は3月24日(日)。今年度は一番最後が週末なので、25日(月)〜29日(金)に怒濤の会議や事務処理でいろいろなことが決まる日本(各地)です。

(3期4期のワクチンは3月31日までだね〜とかいっていると接種できなくなりますね。31日は難しいでしょう)

新聞読んでいてもよくわからないな、、とおもっていたところにMRICに関連記事が掲載されました。
また、ロハスメディカルに関連記事。
3月13日 「予防接種法改正 格好つけても及び腰 透ける厚労省の姿勢」
この前の記事Vol.685 ワクチン悲喜こもごも その4 178億円の補助金返還 やはり"詰んで

知らないことばかり。というか、予防接種制度はどの国でも公的な仕組みへの「信頼」がカギとなりますので、右往左往している姿や「裏があるんじゃないか」的な要素を残さない、可視化やコミュニケーションが大事だと思うんですが・・・。

別ソースでの情報も確認してみたいです。


※以下、太字は編集部の強調メモです。

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ワクチン悲喜こもごも(その5)教員退職騒ぎと予防接種法改正の点と線 財源で無力な厚労省
この原稿は医薬経済2013年3月1日号より転載です

健康政策評論家 堀米 叡一

2013年3月21日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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公立校教員の駆け込み退職騒ぎを覚えているだろうか。官民格差是正のため、国が今年1月から国家公務員の退職金を3段階で削減し、最終的に約15%引き下げることとなったのに倣って、埼玉県が県職員退職金の段階的な減額を決めたところ、3月末の定年を待たずに1月末で教員100人以上が退職したというものだ。
「国に倣って」と書いたが、国が自治体に対して減額要請を行っており、その分の国庫補助金などを減らしている。騒ぎの後、厚生労働省健康局では「予防接種の交付金に回ってきた財源は、あれじゃないのか」との噂が流れたという。

厚労省は、通常国会に予防接種法改正案を提出する。これまで3年間任意接種ながら公費助成が行われていた子宮頸がん(HPV)、インフルエンザ菌b型(Hib)、小児用肺炎球菌の3ワクチンの定期接種化が最大の目玉だが、その前提となる財源について厚労、財務、総務の3大臣が1月27日に折衝し、画期的な合意に達している。
3ワクチンについて、この3年間は国庫補助金で45%、地方交付税交付金で45%を手当てしていた。対して定期接種ワクチンに対する交付税の割合は、低所得者への費用減免分相当という従来の枠組みなら20〜30%程度にしかならず、3ワクチンを定期接種化することで負担激増となる可能性もある自治体から懸念する声が出ていた。

法律上は接種対象者から費用徴収もできるが、大半の自治体は自主財源から接種費用を捻出して接種費用をゼロにしてきていたため、交付税の割合を増やさずにワクチンが増えた場合、有料化に踏み切る自治体が出る恐れもあった。国が決めたメニューなのに、居住地によって格差が生じるようでは、先進国とは言えない。

ただし、この3ワクチンは民主党政権時代にすでに手当てされていて、大臣折衝でもその路線に従って交付税で90%支出することが粛々と決まった。交付税増額に必要な522億円は、年少扶養控除の廃止などに伴う財源を充てる。

今回の3大臣合意が画期的だったのは、それに加えてすでに定期接種に組み込まれている1類疾病のワクチンに関しても、接種費用全体の90%を交付税で支出すると決めたことだ。今のところ2類疾病は高齢者のインフルエンザしかないので、小児対象の定期接種ワクチンは接種費用なしという状況が安定的に継続されることになる。この交付税増額のため、新たに約800億円を捻出するという。

地方自治体の要望にきちんと応えて財務省と総務省を説得した厚労省健康局のファインプレーと喝采したいところだが、局内にはなぜか無力感も漂っているという。
国の財政は、重点枠(政治枠)でない限り「ペイ・アズ・ユー・ゴー」が大原則だ。新たに予算を付けたければ、自らその財源を用意しなければならない。ところが、今回厚労省は800億円に関して1円も捻出していない。

そこで、先ほど紹介した噂が出てくる。3大臣連名で出された合意文について、財務省と総務省がすべて文言調整を行い、厚労省はまったく口を挟むことができなかったようだ。しかも、交付税そのものは来年度予算で総額2000億円ほど減っている。今後もこのような減額傾向が続いた場合、財源に困った自治体が費用徴収に向かわないかを心配するほうが先で、定期接種ワクチンを増やすのは夢のまた夢と言えそうだ。この辺りの事情を知ってから今回の予防接種法改正案を眺めると、興味深い。

http://expres.umin.jp/mric/mric.vol74.jpg

2類疾病への対象追加を、法改正ではなく政令でできるようにするという。新ワクチンの開発促進や感染症の蔓延に柔軟に対応するためということだが、額面通りには受け取れない。医療界などから定期接種のワクチンを増やせと突き上げられ、財務省や総務省からは財源を用意しろと迫られ、板挟みになったときの逃げ道をつくったようにしか見えないからだ。そして定期2類に位置づけられる小児用ワクチンが登場した瞬間に、国がメニューを決めているのに居住地によっては有料になるというパンドラの箱が、恐らく開く。

予防接種に関して厚労省では長く、所管部局が分散していた。健康局結核感染症課が体制整備など、医薬食品局がワクチン流通などを担当し、審議会も健康局が厚生科学審議会感染症分科会予防接種部会を、医薬食品局がワクチン産業ビジョン推進委員会を開催するといった具合だ。これが11年10月の省令改正で、結核感染症課に予防接種室が設置され、医薬食品局血液対策課で行ってきた事務もすべて予防接種室に移された。13年4月からは、さらに健康局の人員体制を強化して完全に一本化する。また予防接種部会を予防接種・ワクチン分科会に格上げし、米国のワクチン推奨機関ACIPのようにするという。その事務局も健康局が務める。

このように健康局は予防接種法改正に漕ぎ着けただけでなく、組織上も極めて強化されたかのようだが、お題目を唱えても財源がなければ何もできないという現実をわかってから眺めると白々しい。

かつて予防接種部会で、ワクチンの財源を巡り保険償還の可能性も議論したらどうかとの意見が出た。30兆円を超える保険医療費全体の0.1%を充てるだけで一気にすべての任意接種ワクチンを定期化でき、定期ワクチンが増えれば代わりに医療費削減効果も見込まれる。まさに「ペイ・アズ・ユー・ゴー」だ。が、「この場で議論すべきことではない」との趣旨の発言があり、それっきりになった。

形式上は、厚労省全体の議論をする厚生科学審議会の部会ですら、この体たらく。予防接種所管部局が一本化されたと言っても、すべてが健康局にちんまり収まったというだけの話だ。

予防接種法での現状の財源を前提とすれば、今回のように、財務省と総務省の匙加減で無料接種できるワクチンは決まっていく。今後の新たな財源として期待されているのは、消費税が引き上げられる際の地方消費税増収分だが、それも厚労省の一存でどうなるものでもなく、財務省と総務省が認めてくれない限り、1類疾病ワクチンは増えそうもない。

両省を説得するために政治の援軍は欠かせないのだが、どうやら厚労省は年金の不始末が影響して安倍首相から信頼されていないらしい。困ったものだ。
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2013年 EBIC研究会 セミナー

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運営会議での討議を経て、EBIC研究会が新しいモードで2013年展開するのは下記の3つのセミナー。

関心をお持ちの方はぜひ日程をあけておいてください。
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2013年度第1回EBICセミナー in Tokyo 6月22日

2013年度第2回EBICセミナー in Tokyo 11月9日


場 所:東京理科大学 記念講堂 (神楽坂校舎 1号館17階)

テーマ:– 感染症診療の質向上をめざして –
細菌検査結果の臨床的な読み方を学ぼう!あなたは、その感受性(S)を信じられるか?

講 師:本郷 偉元(武蔵野赤十字病院)
佐竹 幸子(群馬大学)



主 催:NPO法人EBIC研究会
共 催:全日本病院協会  http://www.ajha.or.jp/


WHONET講習会2013と活用事例報告会2013  11月30日‐12月1日

(社)全日本病院協会大会議室
  〒101-8378 東京都千代田区三崎町3−7−12 清話会ビル6階
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Japan: The worst developed country for mothers?

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第一番目に本日、目を引いた最初の文章。
(昨日は48時間あまりの過剰労働のために意識不明であったために多少のTime lagあります。)

Japan: The worst developed country for mothers?

Japanese women are more likely to have a university degree than men, and the number of women in employment has been rising steadily for 10 years - but, for a range of reasons, a woman who has had children still has a hard time getting a good job.


まあ、日本で女性が働き、母親である事の難しさが語られています。まあ、別に新しい話は一切ありませんが、ここまで正確に記述されるとね・・。 興味のある方はどうぞ・・
http://www.bbc.co.uk/news/magazine-21880124

こんなハンデがあると母親になるのは本当に大変だろうし、

子供を産むかな・・・と素人の編集長。



第二番目に目を引いた記事はママさんがたの「異議申し立て」シリーズ
・待機児童問題 東京・大田区でも母親らが、区に異議申し立て.
・認可保育園不足で待機児童問題が深刻となっている東京都杉並区で
・保育園入れず不服申し立て、さいたま市でも

保育園に入れないと分かっていて、

子供を産むかな・・・と素人の編集長。



第三番目に目を引いた記事は、我がサクラ精機の会長の英断報道。
・医療機関に出入りする社員が、医療機関に感染症を持ち込ませないように企業として努力する。具体的には風疹ワクチンの経費を700名以上の職員関係者分を無料で負担するという事。(男前や!)

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130323/k10013400611000.html


全く自分の社員の風疹ワクチンなど全く興味を見せず、編集部が促しても動かないワクチンメーカー、製薬メーカーが目白押しの日本ってどうよ・・的な国で

子供産むかな・・・と素人の編集長。


「日本のワクチン行政はどうなっている・・!!」と福岡臨床感染症研究会で吠えまくってくれた東京都立小児総合医療センターの堀越先生でなくても、みんな、不思議に思うよね・・



日本のお花見に行く人、(風疹)注意ね:台湾での警告

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メディアの情報が似たり寄ったりになるときは、それしか情報が本当にない場合と、自らの足を使ってさがしていない、専門家情報丸のみでソースが一緒といった状況があるのではないかと思います。

少し違った目線で情報を追ってみてはどうでしょうか、という提案。

いま、各自治体が緊急で成人の風疹ワクチン接種費用の補助をしています。
全額補助でひとり1万円くらいまでカバーするとして、償還の手続きなどに駆り出される事務スタッフの労働力など間接経費を考えるとたいへんな予算が必要になっているのではないかとおもいます。

でも仕方ないですよね。オリンピック誘致以前の環境整備の問題だとも思いますし。



お金といえば、医師の皆さんが「風疹かなー」と思ったら検査をしますね(しない人もいるかもしれませんが―)。厚労省の感染症エクスプレスでもわざわざ「新しくなったよ」とコメントのついていた検査と診断のアルゴリズム表をみると、検査会社に出すものとは別に「行政に出す検査」がありますね。

あの検査にいったいいくらかかるかご存知ですか?

大阪では1万8千円だか6千円という話がMLにありました。
東京はもう少し安いそうですが、1万数千円です。

MRワクチンうったほうがよかったんじゃ?って金額です。
この先ばんばん検査希望が出ると、ガチョウさんも困りますし(検査に必要)、地方衛生研究所のラボの負担も大きくなってしまいます。

東京は桜が満開になって、4月をまたずに散りそうですが、、、
台湾が日本への旅行を計画している人に対して「風疹に注意」の警告です。

賞櫻危機!日本?國麻疹創4年新高 孕婦嬰兒先打疫苗

4月初めにお休みがあって、花見に行く人が多いからだそうです。記事にもきれいな桜の写真が。

日本人なら伝わりそうな文章なのでじっくり読んでみようと思いました。「German Measles」なので独逸な麻疹。

千葉も神奈川も埼玉もやべーよ、といわれています。

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想到日本賞櫻的民眾當心了!衛生署疾病管制局今(5)天表示,監測資料顯示,日本?國麻疹疫情創4年同期新高,已有745例感染病例,且還有6名孕婦感染,導致新生兒出現先天性?國麻疹症候群,疾管局提醒,一歲以下未接種疫苗的嬰幼兒、不具抗體的孕婦,出發前,最好提早2至4周接受醫師評估,接種疫苗。

日本因疫苗接種涵蓋率普遍不理想,根據疾管局最新監測資料,今年當地?國麻疹病例數持續?加,截至2月17日止,已有745例,遠高於去年同期的36例;且自去年起已有6例因孕婦感染?國痲疹,而導致新生兒出現先天性?國痲疹症候群(CRS)。

疾管局疫情中心主任莊人祥表示,日本?國麻疹流行以關東地區為主,由東京都開始,逐漸擴散至鄰近埼玉縣、千葉縣、神奈川縣等地區,日本去年共報告2353例?國麻疹病例,遠高於前3年的全年平均僅約200例。

疾管局強調,?國麻疹病毒是經由飛沫或與病人直接接觸而傳染,發疹前1周至發疹後至少4天具傳染力,約25%至50%感染者並無明顯的發疹症狀,僅有類似感冒症狀,部分成年女性感染者則會出現關節痛的情況。

莊人祥指出,孕婦若在懷孕前3個月(約懷孕12周前)感染?國麻疹,胎兒有高達90%的機會受到感染,並且有25%以上的機會發生CRS,導致先天性耳聾、青光眼、白內障、小腦症、智能不足及先天性心臟病等缺陷,嚴重者可能死亡。

?國麻疹可透過接種「麻疹-腮腺炎-?國麻疹混合疫苗(MMR疫苗)」疫苗有效預防,莊人祥說,約99%經由預防接種,可產生明顯的抗體反應,因此,一歲以下還未接種的嬰幼兒、不具抗體的孕婦,應於出發前2至4周,先到國內12家國際預防接種合約醫院「旅遊醫學門診」,接受醫師專業評估MMR接種需求。

疾管局也提醒,旅遊期間或返國後如有發燒、疲倦、鼻咽炎、耳後淋巴結明顯腫大,並伴隨全身性不規則丘疹
等症狀,請儘速就醫,並主動告知相關旅遊史以及接觸史
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江戸時代のコロリ(コレラ)から語る会社とか ITの会社とか

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ナースのブログで紹介されていたのは、青木編集長とダジャレ勝負をしている(すみません。本当はとても偉い方です)松本会長です。NHKの取材でまた有名になりました。



「風疹流行 企業がワクチン費用補助」

"☆すばらしいです。企業は利益を追いかけるのがまず第一という印象がありますが、サクラグループのホームページには、主な事業の一つに、「医療の感染防止に貢献する」という項目があります。 松本謙一会長はこの言葉が本当であることを示したのですね。

私も看護師として、他の人に感染させてはいけないということがいつも頭の中にあって、体調管理にも万全を期して仕事をしています。 同じ医療にたずさわる仲間としてサクラグローバルホールディングの行為をたいへんうれしく思い、取り上げました。"

緊急事態ですから、皆でできることを少しずつやりましょう、を具体的に示してくださいました。

ところで、会長からうかがった話に「いやー、以前はコレラでたいへんだった」というネタがありました。

世界中をとびまわっている怪鳥、いえ、会長ですからコレラやデングくらいなるのかもな、と納得していたらそうではありませんでした。

松本会長率いるサクラグループは江戸時代の「いわしや」という医療機器会社にはじまります。その番頭さんが、コレラが大流行した時に、江戸のどこぞに隔離されちゃってさー、という話でした。

(余談ですが、京都の人が「先の火事で焼けちゃったんですよ」というときの火事は応仁の乱の話だったりするんだぜ、という話を聞いたことがあります)



それはそれとして。

今日はYahoo!が社員全員を対象に上限7千円まで風疹ワクチンの補助をするというニュースがありました。

企業がサポートすることで、お金がたすかるということ以上に、「真剣に取り組むべき問題なのだ」ということが伝わることも期待しています。

決断をしてくださった上層部の皆様ありがとうございます。

(で、ワクチン売っている製薬会社とかはどうなんだ…)

凄いぜ5月11日

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市中から見る世界の感染症、次回は5月11日。

感染症と病理、臨床と病理の架け橋といった内容で日大病理の砂川先生、およびSRLの田澤氏に講演を頂きます。



本日、編集長が打ち合わせに行って来ましたが、大変面白い内容になりそうで今から非常に楽しみです。

皆様も是非、5月11日をSecureしておいて下さい。



黄疸をチェックする最適な場所とは・・

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体調が完全ではないながらも、編集長、頑張ってSapira読んでおります。
何しろ大恩ある須藤先生の訳されたものだしね・・

それにしても暑いな今日は、そしてSapiraは厚いな、これを訳した須藤先生や徳田先生は熱いな・・

そんなSapiraですが、本日は強膜の部分です。曰く
「黄疸をチェックする最適な場所とは・・」

答えは手掌、結膜、・・?
正解は・・

「駐車場」です。

即ち、僅かなビリルビンの上昇も見つけるならば、光線の程度が大事なんです!!

分かった?

だから入院患者はまず駐車場で診て下さい。(笑)


Sapiraと編集長に驚くべき共通の秘密が・・

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何しろ編集部が風疹Issueで忙しく、編集長、頑張っております。

本日は驚くなかれ、Sapiraと編集長には「共通の過去」があったのです。

それは上の写真と関係があります。

この写真、1984年に編集長がKentucky州のLexington市の三番目の日本人として、Kentucky大学内科Program開闢以来初の有色人種としてInternを始めた時の写真です。

「それと、Sapiraと何の関係があるのだ・・?」と思われるでしょう。

あるんですよ、それが・・

Both Sapira and Aoki spent the first year of residency in Lexington , KY !!

なんですよ!!

これ、Sapiraの書評書くために読んでいて見つけたんです。

何か、感慨深いものがあります。

「アメパロモ」(パロモマイシン)

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パロモマイシンの話。病院の薬剤師さんとも共有を。

熱帯病とか寄生虫の治療に必要な薬は(昔はあったけど)なくなっちゃっとか、海外ではあるけど日本にはないよ、とかいろいろ不都合があるために、治療薬の研究班がそのギリギリのところをカバーしているという状況があります。

編集長がお世話になっているのは、エイズ治療薬研究班で、東京医大の福武先生のところが運営をまかされています。
研究班事業は3年ごとに見直しや組み換えが検討されますが、薬害エイズの関係もあってか、ここはずっと固定されているようです。

国が承認していない薬を使う方法はいくつかあります。
たとえば、個人レベルでは「ネット通販」で輸入した薬剤を個人の責任において使うというリスクの高い方法があります。
何かあった時の保証はないし、ほんものであるという保証もないし(偽薬も多い)、死亡したり重症になるケースは報告もあります。

日本で承認されていない抗がん剤を使うときは、医師が輸入をして、患者同意のもとに使うということはあります。
お金はかかりますが、ドラッグラグがある状況下ではいたしかたないというところでしょうか。

研究班の問題は、まず輸入の時点で医師が個人ですると、本来はその医師が使うという条件で入手するのですが、研究班の協力メンバーやそれ以外のところから「うちにもください。うちの患者さんで使いたいのです」といわれたときに、(人道的に)いいですよとあげちゃっていいのかという問題があります。

人道的な問題、法律上の問題、保険の問題(そういったことまでカバーするのか)、実際に有害事象がおきたときにどこまでカバーされるのか、などの問題が生じます。

未承認の薬をはやく認可しろ、あるいはとれていない適応を追加しろという提案は「公知申請」(こうちしんせい)で検討されて承認や適応拡大ににつながることもありますが、実際にはその作業や申請プロセスでかかる費用がかなり高額なため、製薬会社的にはあまりうれしくない案件だろうとおもいます。市場も小さいことが多いですから(売れるなら最初からしゃかりきにやっていますよね)、

学会などのプッシュを受けて製薬会社が動いたものには、最近ですとアトバクオン(GSK)がありました。
上記のエイズ治療薬研究班が配布してくれていましたが、なにせ高額。このままエイズ発症の患者さんが増えたらどうなるんだろうと心配されていましたので一安心(しかし高額な薬であることにはかわりありませんが)。

ファイザーが間もなく発売を開始する「アメパロモ」はアメーバの患者さんにパロモマイシン、ということで一度きいたら忘れない系ネーミングですが、これはもともと熱帯病治療薬研究班が扱っていました。
そこでのデータなどをもとに承認にいたったようですね。

研究班事業は3月31日で終わりますし、アメパロモの発売日まではパロモマイシンはどこに?状態になります。
ほかにもこういった薬があり、コンサルをうける感染症専門のドクターにとっての重要な知識となっています。

ファイザー 2012年12月25日 報道発表 腸管アメーバ症治療剤「アメパロモカプセル250mg」の承認取得

風疹、インフルエンザ、HPV

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前のほうの記事で、感染症に関する国の決まりごとがどうやって決まっているんでしたっけという中学校公民で習ったことを復習しました。

その続きです。
委員会で可決された→衆議院で可決→参議院で可決、で予防接種法を一部改正する法案が通りました。

そのときどきで検討される法案と途中経過はHPでも確認できます。わかりにくいですが。

誰かの意図で発案され、誰かが誰かによびかけて法案として、(この間いろいろ省略)国会にはかられて決まりますよということです。

それを実行するのは現場なのですが、運用ならば自治体の職員の人で、医療ならば私たち医療関係者であります。

なんで現場とずれたことが決まるんだよ?とお怒りになる場合は、上記のプロセスに責任をもって噛む必要があります。
国や行政に詳しい人は(ほとんど)いません。声の大きい人勝ち、言ったもの勝ちといえばそうかもしれません。

たとえば、今回は水痘、ムンプス、B型肝炎が定期化されていないのに、HPVが先に定期化されるという他の先進国からはあきれられるような状況になってしまいました。

興味深いのは、感染症はじめ多くの医療関係者はここに疑問をもっていて、専門団体がこれを改善すべくはたらきかけましたし、故・神谷先生はじめ政府の会議によばれるお歴々までおかしいといっていたのに、議事録もないまま3つのワクチンの公費導入が先行したんですよね。

こういった事例がミステリーとかスキャンダルとか陰謀として語られ、結果として予防接種制度全体をabuseされているのは悲劇ですね。リスクコミュニケーション以前の問題です。

上記のプロセスをみるだけでも「たいへんなことだなあ」と思われるでしょう。
「誰か」の強い意図なくそんなことはおきないわけですよ。

今、風疹が流行っていて、多くの医師や現場の人が成人のワクチン接種の補助をできないかと声をあげていますが、「やりたいのはやまやまだが、お金がない」という返事をもらっているそうです。


お金は本当にないのでしょうか。
母子感染した子どもの健康や人生をお金に換算することはできませんが、必要になる医療や福祉だけをみても事後コストもかかります。

先日、某関係の人が「風疹ワクチンは個人防御だからね」と発言したそうです。
何もわかっていないひとがいろいろな決定の場にいたら怖いですね。

3月15日に(2012年に排除宣言ができずにモロモロ延期になっている)麻疹関連資料の改訂版が出た(ということは、厚生労働省のメルマガ「感染症エクスプレス」で知りました)

麻疹をうたがったらどうするかの検査アルゴリズム(こちらのPDFの11ページにあります)をみるとわかるように、たいへん複雑です。

麻疹かなーとおもったら風疹だったよ!報告が相次いでおり、その延長に現在の東京の大流行があるわけですが、麻疹か風疹か調べてねと行政に出す検査のお金は1件あたり1万数千円もして、ワクチン代より高いんじゃん!という怒りにつながります。

ワクチン代だけが問題なのではありません。

成人の接種費用を補助してもらおうとしたら、まず保健所等に電話をしまして、「用紙をとりにきてください」と言われたり、いけないというと1週間くらいで郵送するといわれたりする区もあるそうです。

中野区は医療機関の領収書があればいいということで償還手続法をとっていますが、この事務作業にとられる人手のコストもたいへんですし、お金は指定の個人口座に振り込むそうなので、振込料も発生します。それも税金です。

風疹はもともとVPD(Vaccine Preventable Diseases)のひとつとして、このような大騒ぎをすることは、先進国では「想定の範囲外」なわけです。


各国のepidemiologistからは、「こんなに広がるなんて、特定の時代のワクチンのロットに問題はないのか」という別のさぐりもはいりはじめています。日本のワクチンへの不信。

‐いや、接種していない世代の男性がいましてね」(もごもご)

それは他の国もやっていたのですが、途中でキャッチアップなどをしており全体として9割の人口が免疫を持っている国になっているので日本のようなことはおきていないのですが

「だったら早くその人たちに接種をすればいいじゃないか」

‐いやそれはわかっているんですが、2004年にもそうしようっていったんですが(もごもご)

「なぜしないのだ」

‐お金がないということになっています

「アジアやアフリカの予防接種拡大プログラム(EPI)にもたくさんお金を出してサポートしているのに自国の子供は守らないのか」

‐いやそれは外務省、、、(ぼそぼそ)

「誰が放置していいと決めているのだ。そもそも感染症対策の優先順位がおかしくないか」

以下省略。

関係の人たちの話し合いでは、新型インフルエンザのお金をまわしたらどうだという意見が出ています。
そう思います。
インフルエンザはインフルエンザなので、流行したらある程度とめられませんし、自宅待機(逆隔離)や咳エチケットなどが優先です。
世界の8割近いタミフルを日本が使うというような過剰な対策案をやめて、妊婦や子供を守るというpublic healthの根幹のところにたちかえるべきなわけです。

もちろん「今でしょ!」。

超高齢者のあつまる施設で、一度流行したら一定の拡大は避けられないインフルエンザやノロの感染や重症・死亡に大騒ぎするメディアの勘違いなどもやめていただき、ワクチン啓発のみならず、「風疹かなとおもったら出勤しないで自宅待機(逆隔離)」というエチケットや危機管理を企業にうったえていただきたいです。

岩田先生には続編をお願いしないといけません。

風疹が流行する国で新型インフルエンザ〜はとめられるのか?

麻疹が流行する国で新型インフルエンザは防げるのか亜紀書房


そういえば。麻疹排除宣言をめざす国や地域の会議では風疹の話題は出ていないそうです。
世界がmeasles and rubella elliminaiton会議をしているときに、なぜ日本は麻疹だけの話になってしまったのかも、検証がいることでしょうか。

ほかにも今できるのに放置していることってあるんじゃないかという不安が常にあります。
リスクアセスメントが適切に行われていないことがわかっているので。



このタイミングで 米国の先天性風疹症候群(MMWR)

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はい。週末はMMWR、Eurosuveillanceなど外国の感染症情報に目を通します。

MMWRは風疹の記事を掲載。
Three Cases of Congenital Rubella Syndrome in the Postelimination Era — Maryland, Alabama, and Illinois, 2012
メリーランド州、アラバマ州、イリノイ州で各1例ずつ、先天性風疹症候群が報告されたんですよ、というタイトルそのままの内容。
中身もおどろくようなことは書かれていなくて、ワクチン接種歴がない・不明、外国から来た妊婦さんだったんですよ、という話。
人口多いし、3例くらいはあるかもね、という想像はできますが。
米国は学校入学時に予防接種歴の審査がありますが、入国時にあたっては特に確認はおこなわれていません。

(ワクチン接種歴の証明が必要な国や状況は、黄熱流行地域とか髄膜炎菌アウトブレイクがおこりやすい宗教行事のときくあらい)

これを受けてか、3月30日のメディアの記事が風疹の話題。
下のほうには日本関連の記載。

Why Rubella’s Scary Comeback Should Convince Vaccine Deniers

So too with rubella: the U.S. was certified as rubella-free in 2004, meaning that no cases were seen in persons residing here. However, importation cases—cases from people traveling to the U.S. who hail from areas of the world without adequate vaccine programs—have continued, with about nine reported each year reported to the CDC. It is noteworthy too that there’s an outbreak of rubella in Japan, including in Tokyo, where vaccine programs are in place and public-health coffers are plentiful. The reason for the Japanese outbreak is under investigation; it is uncertain whether it relates to lapses, avoidance of vaccination, or other factors.

先進国でアウトブレイクがおきているのは、ワクチンのような人工的なものはダメ、病気は神様のギフト、的な理解をするアーミッシュとか、特定の宗教グループですね。

海外からもちこまれても、地域流行させないelliminationレベルまでもっていけるかが対策の分岐点。


下記は2006年、Plotkin先生がお書きになった風疹の記事です。
The History of Rubella and Rubella Vaccination Leading to Elimination
Clin Infect Dis. (2006) 43 (Supplement 3): S164-S168

Vaccines: Expert Consult - Online and Print, 6e (Expert Consult Basic)クリエーター情報なしSaunders

what did they know and when

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今日はHappy Easter!

明るいNewsばかり・・と期待していたら

上記のTitleが目に飛び込んで来ました。

福島第一の原発が不良品であった事をずっとまえに知って居た米国の原子力の専門家。
それでも、その原発を販売しないと会社が傾くという心配を優先したGE。

事故後の東京電力の酷い話はみなご存じでしょうし、自分もそれなりに自覚していたつもりでしたが、
結局、東京に住み続ける事でこれほど大量のCesiumなどを家族に吸入させて仕舞った自分の行動。

これを、きちんと見つめなければ本当にでたらめな人間になりさがる・・と思わされました。

数日前の良心的な原子力の専門家のご意見をお聞き下さい。

03/11/2013
Fairewinds Speech at the New York Academy of Medicine

http://fairewinds.org/content/fairewinds-speech-new-york-academy-medicine

中国で珍しいインフルエンザ・・・ニュースのインパクト

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以前にもかきましたが、、、

自分が見ている情報はどのレベルなのか。

<真実>
1次情報:誰かの認知や言葉を介して特定の事実が伝わる最初のところ。真実や事実を直接見聞きしたひとによるもの。
2次情報:1次情報をもとに別の問題意識や認知で再構成されたもの。
3次情報:2次情報を見ての誰かの反応や意見.
そのあとも4次、5次、、、とつたわっていきます。途中で伝言ゲーム的にずれていきますが、それぞれの情報の差異は、受け取る人の認知の仕組みや好みにもよります。

なので、あれ?おかしいな、とかなんでだろう、と思ったら、あるいは職業柄適当なことは言えないひとたちは1次、2次情報くらいにあたらなくてはなりません。

感染症系の情報については、メディアが「犠牲者、ヒーロー、おどろおどろしいよくわからない病原菌」を好むという特性を踏まえて読むことが大事です。
タイトルに「殺人ダニ」とか「殺人ノロ」とか書いちゃうのもその典型。


見ている数字は全体のどのあたりなのか。





新しいコロナウイルス(ロンドンなんとか、とか暫定で名前がついたけど皆使いませんね)での呼吸器感染症の事例がニュースになっています。ニュースになるのは、感染をして(感染する人はおそらくたくさんいる)、発症をして(一定数の人は発症するけれど全員が発症するとはかぎらない)、さらに重症化して、大きな病院にいって、そこの医師が「もしかして」と詳しい検査を思い立って、特別な検査機関が「検査してもいいよ。送って」といって、検査してもらえてわかった場合に「○○ウイルスでした」とわかります。

発症していない、病院にいくほどでもない人は分母に入りませんし、受診しても多くの場合は「インフルエンザ様の感染症」ですね、といわれて、(多くの国では日本のようにAかな?Bかな?と検査しない)症状が治まる程度ならそれで終わりです。

インフルエンザでもないし、マイコでもないし、何かしらーというさぐりがあってはじめてわかる新しい感染症。
そして新しく認知された感染症は、どれくらい地域で流行があるのだろうということを調べたくなりますが、そのためには住民など一定の集団の血液を調べることが必要になります。

Serological Surveillanceといいます。血液下さい、ですから倫理審査とかいまどきはけっこうたいへんです。
(健康診断の残りを、個人情報リンクをはずしてさせてもらうというのが一般的)
Serological surveillance reveals widespread influenza A H7 and H9 subtypes among chicken flocks in Egypt

発症した人や重症の人だけみていると、なんだかスゴいコワイウイルスじゃね?という話になります。
5人ICUに運ばれて4人死んだ。致死率80%!ぎゃー!というのと、
500人感染して、体調わるーという人が300人いて、受診したのが100人で、重症が10人で、5例がICUで、4例死んだだと、さて致死率は何%ですか?

一番重要なのは、自分や社会へのリアルなインパクトです。

Two die in Shanghai from H7N9 bird flu, first cases of human infection


今ある情報ですと、中国で、H7N9感染で、27歳(動物の肉を扱う仕事)と87歳(病気の鶏との接触あり)が2人死亡。どちらも上海から来たそうです。二人に疫学的リンクなし。
ほかにも感染している人がわかっているのは35歳で重症。別の地域。

接触者90名近くは健康観察で特に問題なし。といった情報。

Associate PressにあるWHO関係者のアセスメントは、"There is apparently no evidence of human-to-human transmission, and transmission of the virus appears to be inefficient, therefore the risk to public health would appear to be low," O'Leary said. とのことです。


(リスクを高く見積もる場合は、輸入禁止、渡航禁止、出張禁止、帰国禁止とかありますが、どのあたりの根拠を採用するか)


調べたから分かった○○ウイルスをおびえてもしょうがありません。「初の感染か?」かどうかも現時点ではわかりません。

動物のインフルエンザウイルスがヒトにも感染したり、広がりやすくなるためには遺伝子レベルでいろいろ変化していく必要があります(変異)。ウイルスが生き延びるための知恵というと擬人化しすぎでしょうけれど、そういった狡猾な側面をいろいろな研究が示唆しているわけです。

侵入口であるノドの粘膜のところで増える最適温度というのがあって、鶏と人間では体温がことなりますが、フェレットで増殖すると危険視されていたりします。

Pathogenesis, transmissibility, and ocular tropism of a highly pathogenic avian influenza A (H7N3) virus associated with human conjunctivitis.

Virus from both H7N3 and H7N9 subtypes replicated efficiently in the upper and lower respiratory tract of ferrets, however, only MX/7218 virus infection caused clinical signs and symptoms and was capable of transmission to naïve ferrets in a direct contact model.

どういう部位がどうなると、どうなる、ということは基礎の先生方が日々研究されています。

Pathogenesis and transmissibility of highly (H7N1) and low (H7N9) pathogenic avian influenza virus infection in red-legged partridge (Alectoris rufa)

Digital genotyping of avian influenza viruses of H7 subtype detected in central Europe in 2007–2011


ニュースで、へえ、、、と思っても、その後臨床や家庭で何ができるかというと、何もありません。
もちろん何かすぐ影響が出るわけでもありません。

呼吸器症状がある人だったら、「インフルエンザだね」とか、ぼつぼつがあるから「風疹だろう」ときめつけないで、いろいろな可能性を考えて予防策をとっておくことです。

いま、日本の地方空港は中国やアジアの主要都市に直行便がとんでいますから、現地で流行する人や動物の感染症がその日のうちにはいってきたりします。もっとも情報がたくさんあったとしても、とりうる対策というのはそうたくさんあるわけでもありません。
地道なことを地味に続けたいとおもいます。


検疫?水際?
ある程度有効なこともあるかもしれませんが、感染症には症状がまったくない「潜伏期間」があって、ちょうどいいかんじに症状が出た時に空港を通過するとはかぎりませんので、そこに集中的にお金や人を投下しても効率的ではありません。

そうはいってもこわいじゃんか!という人には、「平時からの危機管理」をおすすめします。
つまり、基本的なことができてないのに、すげーコワイ病気だけなんとかできるぜ!とはならないからですね。
呼吸器系の感染症をひろげないためには「せき/くしゃみエチケット」を職場や学校で地道に普及すること。
予防できる方法のある感染症はワクチンで予防しておくこと。

そういった基本的なことをやったうえで、次の課題にいけるわけです。

因数分解をときたかったら、九九を憶えましょう。
英語を話したかったらまるアルファベットから。

僧帽弁領域は部位でなくて概念・・とSapira

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なんとか、旭出張・ブートキャンプ前に終わらせん・・と悪あがきした編集長。

本日は心臓の打診、聴診までたどり着きました。

A弁、P弁は解剖的には上下に並ぶのにどうして聴診上は左右に分かれるのかなど素朴な疑問は残ったままだったりもしますが・・

本日の最大の発見はM弁は部位でなくて概念というコメント。

これは丁寧に聴診した医師のみに可能なコメントですね。すなわちさまざまな病態でM弁の音が聞こえる場所が左右に、主に左腋窩線の辺りまで移動していく・・という話です。

これ2DEchoの時代に若者にどれほどAppealするかは別として昔の医師の我慢強さを思わされます。

全員グラム染色経験スミの新入生!!

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旭中央病院のブートキャンプ開始です。

昨晩は恒例の原則の講義からです。

そこで編集長が驚いたのは一年生のほぼ全員がグラム染色を学生時代に経験している事でした。

「グラム染色What???」といった感じの一年生が少なからずいた10年前からの大きな変化です。

症例検討会でもかなり良い線行きそうな研修医達のこれからが楽しみな第一夜となりました。

写真:恒例の集合写真

感染症勉強会の計画@春

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感染症医向けのセミナー情報。
月一回くらいは勉強会にでかけたい。

このほかに学会発表などもされるかたはさらにお忙しいですね。

東京近辺ですと、、、探すと毎週なんかしらあるような。



4月6日(土) 第29回感染研市民セミナー

新規ウイルス感染症の中のSFTS(重症熱性血小板減少症候群)
講師:西條政幸(ウイルス第一部長)
平成25年4月6日(土)10:00〜11:15
於:国立感染症研究所 村山庁舎  地図はこちら(都心から行く場合は時間の余裕をみていきましょう
受付は9:30〜  参加無料、事前申し込み不要。


5月11日(土) 市中病院でみる世界の感染症セミナーは、臨床医があまり学ぶ機会のない、そしてコミュニケーションが十分といいがたい、しかし診断や評価にとても重要な病理についです。青木編集長が当番で企画。

11日の午後、東京駅前の丸ビルホールで開催です。

検査部門の方にもご参加いただきたく、皆様の施設のスタッフにもぜひお声かけいただければと思います。

講義1:砂川恵伸先生  
とても有名なブログはこちら 「感染症の病理学的考え方」 
日本の病理現状と課題、今後の展望、更に臨床医のための病理入門的な話をしていただきます。
講師をお願いした理由は、沖縄県立中部病院時代に臨床医としての訓練をしっかりされ、臨床と検査部門の連携や融合に欠かせない人材だからです。(by編集長)

講義2:田澤裕光 氏 
SLRおよびみらかホールディングスで、日本の臨床検査の質の向上、検査部門の評価改善のためのはたらきかけにも取り組んでこられた田澤氏からは、日本の病理医師や感染症診療がおかれている現状について国際的な視点でお話いただきます。
米国の病理医師のStatus、待遇など、日々の活動の様子、更には組織像だけでなく遺伝子解析その他の多角的な専門家による病理のFuturisticなご紹介も頂く予定です。(by編集長)


7月6日(土)

国立国際医療研究センターDCCのHospital Epidemiology研修情報待ち。


8月9日(金)第2回 薬剤耐性菌制御のための教育セミナー

13時〜16時 国立感染症研究所 戸山庁舎(新宿区戸山)共用第一会議室
参加:無料

バンコマイシン耐性腸球菌(VRE)の現状            群馬大学大学院医学系研究科 富田 治芳 先生
薬剤耐性菌検査の現状と微生物検査室の役割           東北大学病院 診療技術部 長沢 光章 先生
米国における多剤耐性菌の現状と感染症治療の実際   ピッツバーグ大学医学部 感染症内科 土井 洋平 先生

事前参加登録制 詳細はタイトルのリンク先をご確認ください。

と、スケジュール表をめくっていくと、あっという間に今年も終わってしまいそうです。
すでに2013年の3分の1終了。


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