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風疹対策に動かない自治体

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「絶対に補助しない」といっていた神奈川まで補助に動き、明日月曜日にはさらにいくつかの自治体が公費補助を広報します。
皆さん、ご自分の自治体のHPを(ふだんは見ないでしょーが)明日はご確認ください。

今日の時点で補助をしている自治体:
東京都23区+いくつかの市。東京都はすべての保健所で風疹の届け出を受けているそうです。outbreakをとおりこしてepidemic状態。

なぜそんなに早く補助に動けたのか、まだ事情を把握できていないけど石川県の小松市。
神奈川は政令市の横浜市、川崎市、相模原市と、神奈川県の補助+自前の補助をするいくつかの市。神奈川県は「非常事態宣言」。

(こちらは国の結核緊急事態宣言ポスター)今の東京は結核の倍の数の風疹が毎週報告されています。


千葉は県は動いていませんが、いすみ市、浦安市、市川市。
埼玉県は和光市。
栃木は茂木市

すでに複数のCRSが報告されている大阪、兵庫、愛知はどうするのでしょう。

(補助まだ・・・?by トーマス)



努力を続ける自治体や企業の人が口をそろえていうのは、「本来これは国の仕事なのでは?」
国の予防接種政策の狭間で接種できなかった世代の男性は、「当時男性に受けさせなかったのは国の判断だったのだから、今接種しろというならなぜ公費ではないのか?」

国は一定期間、接種をよびかける策をとったのですが、多くの人がそのことを知りませんでした。
2013年に自治体が緊急で補助をはじめていますが、どうやって対象の男女にお知らせしているのでしょう?できればGW前、次の選挙前に急いで動かないと、飽きたり楽観視したり、またうやむやになって次なるアウトブレイクにつながる可能性があります。

なぜ、今、このような状況なのか?を週末に考えてみました。

先天性風疹症候群(CRS)が10例報告された年に、緊急提言が出ているのですが、それをやっていたら今のような状況は避けられたのではないか?という問いがあります。なぜそれは実践できなかったのか。提言したひと個人の問題ではなく、この国の問題解決の在り方に関連してきます。

被害に会った人からみれば「不作為」といわれてもしかたありません。

まず最初にみておきたいのはこちら。
2004年9月 「風疹流行および先天性風疹症候群の発生抑制に関する緊急提言」

ポイントがばっちり指摘されています。されていたのになぜその後につながらなかったのでしょう。

次に、国立感染症研究所/厚労省結核感染症課が出している病原微生物情報 IASR(あいえーえすあーる)の記事を順にみてみましょう。
以下、強調や色は編集部によるメモです。

2006年4月 「2004年度感染症流行予測調査事業による麻疹、風疹血清疫学調査からみた今後の麻疹、風疹対策」

"今後、CRSの発生を防ぐためには、女性の抗体保有率を監視し、低下が認められた場合は、妊娠前の追加免疫が必要と思われた。また、風疹の問題点として、24〜40歳男性に感受性者が蓄積していること、1〜4歳の予防接種率が75%と低値であることが挙げられる。"

"麻疹ワクチン、風疹ワクチン未接種者は、2006年3月31日までの間に、定期接種として受けておくよう、一層の接種勧奨が望まれていた。特に風疹においては、麻疹ワクチンのように1歳になったらすぐの予防接種が実施されていないため、2006年3月31日までの間に風疹ワクチンを受けないと、2〜4歳が感受性者として残されることになる。風疹にとって最も重要なCRS 発生予防には、小児への高い予防接種率を維持して流行を抑制することに加えて、妊娠を予定している女性が抗体を保有することが重要である。
今後は、麻疹、風疹ともに、これまでの予防接種プログラムの変遷を念頭においた、注意深い抗体保有状況および予防接種状況の監視が益々重要である。"


2006年4月「堺市の保育所における麻疹、風疹の罹患状況とワクチン接種に関する調査」

"一方、風疹のワクチン接種率は麻疹に比べて高くはない。加えて疾患の流行がないことによって、ワクチン未接種者の大半が感受性者になり、蓄積していることは、麻疹と同様であるが、麻疹と比べるとずっと多くの感受性者が蓄積していると考えられる。これらが、今後風疹流行の際の疾患発生の温床となるのみならず、将来この世代の女性達が、先天性風疹症候群(CRS)児を出産する予備軍となることが危惧される。"


2006年4月「2000〜2005年の風疹および先天性風疹症候群の発生動向とその関連性」

"2000〜2005年の感染症発生動向調査報告を見る限り、都道府県単位の風疹流行の規模と、CRSの発生とには、明確な関連は認められない。母親の風疹罹患は2003年から増加しているが、風疹の発生動向では流行規模の増加は見られなかった。すなわち、現在の感染症発生動向調査による風疹の流行監視では、妊婦の風疹罹患に伴うCRS発生リスクの十分な評価は困難であると考えられる。おそらく、理由の一つが、風疹の発生動向調査が小児科定点のみの報告によっているため、成人症例が把握できていないことであろう。年長児〜若年成人の感受性者は年々増加しており、成人の風疹感染の増加が懸念される。妊婦の風疹感染のリスク評価には、成人における風疹の発生動向監視が必要であろう。また、妊娠中に風疹感染が確認された場合、不幸にも人工妊娠中絶に至るケースは少なくないと考えられる。妊娠中の母親の風疹罹患とそれによる胎児感染は、不顕性先天性風疹感染、風疹感染に伴う人工妊娠中絶、CRS(単一障害、複数障害)の総数として評価されるべきであるが、現在のCRS発生動向では、報告基準を満たす複数障害のCRS症例しか把握できない点も考慮する必要がある。 今後、妊婦と胎児の風疹感染リスクを評価するためには、成人の発生動向が監視できるよう、サーベイランスの強化が必要であろう。
現在の感染症発生動向調査では、地域の風疹流行を探知してから対策を行っても、十分にCRS発生を予防することは不可能である。風しんワクチンの第一の目的はCRS発生予防である。平時から予防接種率を高め、風疹流行そのものを遮断することが必要である。"

日本で麻疹風疹ワクチンが2回接種になったのも2006年からでした。



2011年9月「風疹感染による胎内死亡例」(大阪)

"妊娠6週に発熱、発疹、リンパ節腫脹の三徴候を認め近医皮膚科を受診したところ、風疹を疑い血清抗体価を測定した。初診時の風疹HI抗体価は8倍未満でIgM抗体、IgG抗体は陰性であったが、2週後のペア血清では、それぞれ、風疹HI価は256倍に上昇し、IgM抗体の陽転を認め、風疹の顕性感染と確定診断された。なお、家族や周囲に風疹感染者は認めなかった。その後も近医産婦人科で経過観察されていたが、妊娠17週1日に脳室拡大を指摘され、精査加療目的に当院紹介となった。"


2011年9月「大阪府内における2011年の風疹患者発生状況」

"今後の取り組み
麻疹排除にむけた近年の取り組みに加えて、関東地方でみられた麻疹の流行を受けて、行政や医療機関、教育現場での麻疹に対する意識は非常に高くなっているが、風疹への認識が薄れている感は払拭されない。

風疹は、臨床症状から麻疹との類症鑑別が難しく、不顕性感染や典型的な症状をみない症例も多いため、麻疹を疑った際は、風疹も念頭におき医療機関でのIgM検査の実施が今後重要になると考えられる。

また、風疹は30〜50代の男性のワクチン接種率および抗体保有率が低いことが知られており1) 、大阪府内では免疫がない男性を中心に地域流行が起こったと考えられる。今後は先天性風疹症候群2) の発生が懸念されることから、風疹患者数の正確な把握を行うと同時に、妊娠可能な年齢層の女性への感染の拡大を充分監視していかなければならない。また、配偶者が妊娠する可能性も高い、風疹に免疫のない青壮年男性には予防接種も必要と考えられる。"


2012年10月23日 速報「神戸市における風疹発生状況と脳炎患者からの風疹ウイルスの検出」

"まとめ
今年の国内での風疹流行は都市部を中心に関西地方から始まり関東に広がっている。国内流行中の遺伝子型は2Bと1Eがほとんどである。神戸市では今年の3月以降より、20〜50代男性を中心に風疹の流行が見られた。"


2012年11月 「2012年の風疹ウイルスの流行状況―兵庫県」

"兵庫県内の2012年の風しん患者は、第8週以降毎週報告が続き、風しんが全数報告となった2008年以降では最大の患者数となっている。5月には患者報告数が全国最多となったため、・・・"

"一方、女性は男性に比べて患者数は少なかったものの、20代が29%、10代が26%、30代が16%となっており、風しん感染を避けるべき出産年齢に当たる年代が女性患者の71%を占めていた。"

"感染経路が記入された70名(27%)の多くが家庭や職場での感染が疑われていることから、2012年の風しんの流行は抗体保有率の低い成人男性2) を中心とした職場や家族内感染が主体であったことがうかがわれた。このような風しん流行やその被害防止のためにも、ワクチン接種の徹底や妊娠前女性の抗体検査が必要である。"



2013年1月末現在 「先天性風しん症候群(CRS)の報告」



2013年4月5日 速報 「神戸市における風疹流行状況(続報)と先天性風疹症候群2症例からの風疹ウイルス検出」

"流行状況
神戸市では2012年3月から風疹患者発生届出数が増加し始め、5月をピークに2013年2月末までに風疹脳炎を含む風疹患者89名(男性66、女性23)および先天性風疹症候群(CRS)2名の発生が届けられた。CRSを除いた患者89名中20〜50代の男性が66.3%を占め、ワクチン未接種者かつ未感染者が蓄積していると考えられる年代の男性層に集中している。また、妊娠可能年齢である20〜40代の女性が12.4%を占めていた。"

"CRS症例1
母体は風疹ワクチン接種歴がなく、前回妊娠時に風疹抗体陰性を指摘されていた。2012年3月、妊娠7週5日に発疹・発熱・リンパ節腫脹を認め、風疹と診断された。児は34週4日胎児モニタリング異常を認め緊急帝王切開で出生。在胎週数に比して低体重・一過性血小板減少・動脈管開存症・脳室拡大・片側角膜混濁を認めた。風疹IgM抗体指数は7.72。日齢4に採取された咽頭ぬぐい液、尿において、風疹ウイルスのNS領域とE1蛋白質領域の増幅を認めた。両検体をVero-E6に接種し、ウイルス分離1)を実施した。接種約1週間後に回収した培養上清の抽出RNA液を10-1〜10-6階乗希釈し、NS遺伝子のRT-PCR法による検出を実施したところ、first stepにおいて10-5〜10-6希釈までNS遺伝子が検出され、ウイルスが分離されたことを確認した。遺伝子型は2Bであった。

CRS症例2
母体は風疹ワクチン接種歴あるも、前2回妊娠時に風疹抗体低値を認めていた。2012年3月、妊娠5週時に発熱を1週間認め、妊娠10週時に風疹HI抗体高値(256倍)を認めていた。妊娠34週時に胎児発育遅延および胎児先天性心疾患を指摘された。児は37週6日出生。出生体重2,078gと低出生体重であった。大血管転位2型を認めた。出生時より体幹の紫斑と血小板減少、高IgM血症(159mg/dl)、片側先天性白内障を認めた。出生時血清の風疹IgM抗体指数は9.38であった。日齢5に採取された咽頭ぬぐい液、尿、血漿において風疹ウイルスのNS領域とE1蛋白質領域の増幅を認めた(血漿はNS領域のみ実施)。咽頭ぬぐい液と尿において症例1と同方法においてウイルスが分離されたことを確認した。遺伝子型別は2Bであった。

まとめ
風疹ウイルスが妊娠初期の女性に感染すると出生児にCRSを引き起こす可能性があり、ワクチン接種が急がれてきた。神戸市では2012年3月から風疹が流行し、10月と11月に計2名の兵庫県内のCRS患者から風疹ウイルスを検出した。2013年になり、再び風疹の届出が急増している。今後も警戒が必要であるとともにワクチン接種を今まで以上に促進することが重要である。 "

兵庫県、促進プリーズ。

あと少ししかありませんが、ゴールデンウイークまでにできることをがんばりましょう。

「麻疹対策」会議はあるのに、「風疹対策会議」は国にも東京にも無いそうです。
2013年3月に終わってしまった3期4期の麻疹風疹ワクチン(MRワクチン)。一部の自治体は自主的に延長措置をとっています。


1万円近くするワクチンを、指定期間内にこなかったひとたちがうちにくるのか?という問題もあり。


(まだかなあ・・Byトーマス)


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