Public Healthや感染症対策の領域では、昔から日本は「輸出国」として有名でした。
特に「バイオテロか?」と恐れられていたのは麻疹。
日本人駐在員や留学生に対しての警戒は、途上国から来た人並みだよと北米ではよくいわれました(幸い今は昔話)。
ええ。悪意はないんですよ。危険認知が世界と大きく異なっているだけです。鎖国していれば問題にはならないのかもしれませんが。
「え?みんななる病気なんじゃないの?」中高年
「なったほうが免疫がしっかりついていいよね」某保健所長
「うつしてあげる、、、ってPartyに誘われたんですけど」子育て中の主婦
2007年6月、都内の私立高校が修学旅行でおとずれたカナダ。バンクーバー空港で麻疹のような症例が発見されました。この時点でバンクーバー医師会は市内に麻疹!のアラートが出て、航空会社もてんやわんや。
しかし、その緊迫感は日本人には伝わらなかったのか、その学生と引率者を残し次の訪問地バンフへいってしまいます。
カナダのpublic healthのネットワークによりそのことはバンフにも伝わりました。バンフのホテルで全員隔離をされ、グロブリンの接種を受けます。当時は入学時に麻疹をふくむ予防接種歴を調べてもいなかったのでしかたないですね。
それだけではおわりません。バンフから日本に戻る途上の引率者を含む39名がバンクーバーで足止めをくらいます。
飛行機の中で曝露したらたいへんだからですね。
Japanese students quarantined at Vancouver airport hotel
CBC 2007年6月
この事例は結果として予定を超える費用が発生し(飛行機をかえたり滞在がのびたのですからしかたないですね)、誰が負担するんだよという問題にもつながりました。ワクチン接種をしていた親からしたら「ワリカンね」は納得いかないでしょう。
さらに。
2007年7月 米国のペンシルバニアで開かれた野球リトルリーグの世界大会には、麻疹になった日本の少年が出場。
全世界的に報道され、特に米国では緊急に曝露後接種対応の医療テントがスタジアムにもつくられました。地域にはアラートも出ました。
ロイター2008年
なんでこんなことするんだよ!という怒りの視線をよそに(というか海外の報道を知らなかったらしい)、日本のメディアは「体調不良なのにがんばってえらかった!」という記事でした(とほほ)。
これは州をこえて広がり、怒りのMMWR記事に。麻疹排除宣言をしたということは、もちこまれても2次感染をして広がっていかないことが重要なのですが、「感受性者」(曝露したら感染発症する人)が一定数いると広がるんだよ!ということをあらためて共有するものでした。
Multistate Measles Outbreak Associated with an International Youth Sporting Event --- Pennsylvania, Michigan, and Texas, August--September 2007
MMWR February 22, 2008 / 57(07);169-173
Case 1 imported from Japan
A boy aged 12 years on the Japanese team (the index patient), who had unknown vaccination status, had been exposed to a sibling with measles-like illness in Japan in late July 2007. The boy had a sore throat and malaise on August 11 and traveled to the United States on August 13. The Japanese and Chinese Taipei teams traveled together by aircraft from Tokyo, Japan, to Detroit, Michigan, where they cleared immigration and customs, and then traveled by aircraft to Baltimore, Maryland, where they chartered a bus to Pennsylvania. On August 14, the patient visited the event infirmary to be evaluated for his sore throat. On August 16, he had a measles-compatible rash, cough, Koplik's spots, fever (102.4°F [39.1°C]), and coryza. The infectious period for measles extends from 5 days before to 4 days after rash onset. The Pennsylvania Department of Health (PADOH) was notified, and the patient was isolated. Measles-specific immunoglobulin M (IgM) antibodies were detected in his serum sample; urine culture yielded measles virus, genotype D5.
で、日本に学会参加などで来た人がきくわけですよ。
狂牛病ゆるすまじ!全例検査! とか 抗菌グッズがたくさん売られていたり、インフルシーズンにはすごいたくさんのひとがマスクをしたり、年がら年中ビルの入り口にはアルコール刷り込み製剤がおかれていたり(放置ともいう)。
それと「麻疹や水痘なってもいいんじゃね?」とか「生肉とか生レバーまじウマイ」という認知や反応の乖離をみるわけですよ。
この質問への対応は、「なぜ日本のおばちゃんは髪の毛を紫に染めるのか?」ということと、(思春期後期女子=ほぼ成人女子がわかめちゃんやちびまる子ちゃんのような)「パンツがみえそうな子どもスカートをはいているのか」という質問と同じくらい難しいんですよ。
・・・話がそれましてすみません。前置きが大変長くなりすみません。
海外はMMRワクチンの普及(と高い接種率)で、若いドクターが麻疹、風疹などの診断に困るほど(見たこと内から)の状況があります。
風疹は基本話題になりません。海外から持ち込まれても地域には広がらないからです。
日本でこんなに広がったことを驚いている世界。
7月17日 台湾 公衆衛生当局 Cases of Rubella Increase in Japan This Year; CDC Reminds Citizens Planning to Go to Japan during Summer Vacation to Receive Evaluation and Get MMR Vaccine before the Trip,
9月12日 香港 公衆衛生局 Rubella outbreak under watch
9月14日 香港 Travel Health Service Japan: Rubella [Update]
2月1日 Japan TImes Rubella outbreak spreading quickly
2月28日 朝日 英字Foreign rubella, measles cases on the rise in Japan
3月7日 Japan Today Rubella infections hit 5-year high
3月20日 英国NHS Rubella in Japan (Update)
3月20日 Tropical Medicine Bureau Worry as Rubella outbreak continues in Japan
3月21日 Travel Doctor(オーストラリア) Rubella in Japan
3月28日 NHK WorldRubella Outbreak Hits Japan
4月2日 Japan Times Resurgent rubella raises fetus threat
4月4日 Guam Public Health monitoring rubella in Japan
日本の米国大使館のHPもトップページに風疹の情報
今朝のProMed
グアムの公衆衛生局が出した日本に出かける人への警告が紹介されています。
It would be advisable for persons traveling to Japan to make sure they have been vaccinated for rubella (given in combination with the measles and mumps vaccines) 2 weeks before departing.
2週間前にワクチンをすませましょう。
「気をつけよう」とか「注意しよう」とか「がんばろう」とちがって、超具体的なアドバイスですね。
こういった情報が共有されると、日本渡航歴のある発疹や発熱患者に風疹を疑う際に役立ちますね(とほほ)。
----------------------------------------
06 Apr 2013 Cryptosporidiosis - Australia (02): (VI)
06 Apr 2013 Avian influenza, human (31): China (Shanghai) H7N9
06 Apr 2013 Rubella - Japan (04): travel alert
06 Apr 2013 Avian influenza, human (30): China (Hong Kong, Taiwan) H7N9, NOT
06 Apr 2013 Avian influenza, human (29): China (ZH) H7N9, market quail
06 Apr 2013 Avian influenza, human (26): China H7N9 case list & map, correction
06 Apr 2013 Avian influenza, human (28): China H7N9, WHO
06 Apr 2013 Nipah encephalitis, human - Bangladesh (05)
05 Apr 2013 Bovine tuberculosis, bovine - Switzerland (03): (FR)
05 Apr 2013 Anthrax, bovine - Ghana: (UE)
05 Apr 2013 Yellow fever - Americas (04): Peru (PU) vaccinatio
----------------------------------------
ちなみに、PrMedのなかで風疹の記事を検索してみました。
----------------------------------------
21 Mar 2013 Rubella - Japan (03): vaccination policy
19 Mar 2013 Rubella - Japan (02): increasing incidence
28 Feb 2013 Rubella - Japan: increasing incidence
12 Sep 2012 Rubella - UK: England (Hampshire), alert
09 May 2012 Rubella - Solomon Islands: travel alert
14 Apr 2012 Rubella - Spain (02): background
13 Apr 2012 Rubella - Spain: (AN)
16 Feb 2012 Rubella - Romania: (SJ) adolescents
16 Oct 2011 Rubella - China: (HK SAR) Indonesian women, RFI
19 Aug 2011 Rubella - New Zealand: (NO)
17 Aug 2011 Rubella - Fiji (03)
-----------------------------------------
ええ。もちろん.今受ける一番多い質問は「国や専門家は何か流行抑制のための介入をしないのか?」ですとも。
特に「バイオテロか?」と恐れられていたのは麻疹。
日本人駐在員や留学生に対しての警戒は、途上国から来た人並みだよと北米ではよくいわれました(幸い今は昔話)。
ええ。悪意はないんですよ。危険認知が世界と大きく異なっているだけです。鎖国していれば問題にはならないのかもしれませんが。
「え?みんななる病気なんじゃないの?」中高年
「なったほうが免疫がしっかりついていいよね」某保健所長
「うつしてあげる、、、ってPartyに誘われたんですけど」子育て中の主婦
2007年6月、都内の私立高校が修学旅行でおとずれたカナダ。バンクーバー空港で麻疹のような症例が発見されました。この時点でバンクーバー医師会は市内に麻疹!のアラートが出て、航空会社もてんやわんや。
しかし、その緊迫感は日本人には伝わらなかったのか、その学生と引率者を残し次の訪問地バンフへいってしまいます。
カナダのpublic healthのネットワークによりそのことはバンフにも伝わりました。バンフのホテルで全員隔離をされ、グロブリンの接種を受けます。当時は入学時に麻疹をふくむ予防接種歴を調べてもいなかったのでしかたないですね。
それだけではおわりません。バンフから日本に戻る途上の引率者を含む39名がバンクーバーで足止めをくらいます。
飛行機の中で曝露したらたいへんだからですね。
Japanese students quarantined at Vancouver airport hotel
CBC 2007年6月
この事例は結果として予定を超える費用が発生し(飛行機をかえたり滞在がのびたのですからしかたないですね)、誰が負担するんだよという問題にもつながりました。ワクチン接種をしていた親からしたら「ワリカンね」は納得いかないでしょう。
さらに。
2007年7月 米国のペンシルバニアで開かれた野球リトルリーグの世界大会には、麻疹になった日本の少年が出場。
全世界的に報道され、特に米国では緊急に曝露後接種対応の医療テントがスタジアムにもつくられました。地域にはアラートも出ました。
ロイター2008年
なんでこんなことするんだよ!という怒りの視線をよそに(というか海外の報道を知らなかったらしい)、日本のメディアは「体調不良なのにがんばってえらかった!」という記事でした(とほほ)。
これは州をこえて広がり、怒りのMMWR記事に。麻疹排除宣言をしたということは、もちこまれても2次感染をして広がっていかないことが重要なのですが、「感受性者」(曝露したら感染発症する人)が一定数いると広がるんだよ!ということをあらためて共有するものでした。
Multistate Measles Outbreak Associated with an International Youth Sporting Event --- Pennsylvania, Michigan, and Texas, August--September 2007
MMWR February 22, 2008 / 57(07);169-173
Case 1 imported from Japan
A boy aged 12 years on the Japanese team (the index patient), who had unknown vaccination status, had been exposed to a sibling with measles-like illness in Japan in late July 2007. The boy had a sore throat and malaise on August 11 and traveled to the United States on August 13. The Japanese and Chinese Taipei teams traveled together by aircraft from Tokyo, Japan, to Detroit, Michigan, where they cleared immigration and customs, and then traveled by aircraft to Baltimore, Maryland, where they chartered a bus to Pennsylvania. On August 14, the patient visited the event infirmary to be evaluated for his sore throat. On August 16, he had a measles-compatible rash, cough, Koplik's spots, fever (102.4°F [39.1°C]), and coryza. The infectious period for measles extends from 5 days before to 4 days after rash onset. The Pennsylvania Department of Health (PADOH) was notified, and the patient was isolated. Measles-specific immunoglobulin M (IgM) antibodies were detected in his serum sample; urine culture yielded measles virus, genotype D5.
で、日本に学会参加などで来た人がきくわけですよ。
狂牛病ゆるすまじ!全例検査! とか 抗菌グッズがたくさん売られていたり、インフルシーズンにはすごいたくさんのひとがマスクをしたり、年がら年中ビルの入り口にはアルコール刷り込み製剤がおかれていたり(放置ともいう)。
それと「麻疹や水痘なってもいいんじゃね?」とか「生肉とか生レバーまじウマイ」という認知や反応の乖離をみるわけですよ。
この質問への対応は、「なぜ日本のおばちゃんは髪の毛を紫に染めるのか?」ということと、(思春期後期女子=ほぼ成人女子がわかめちゃんやちびまる子ちゃんのような)「パンツがみえそうな子どもスカートをはいているのか」という質問と同じくらい難しいんですよ。
・・・話がそれましてすみません。前置きが大変長くなりすみません。
海外はMMRワクチンの普及(と高い接種率)で、若いドクターが麻疹、風疹などの診断に困るほど(見たこと内から)の状況があります。
風疹は基本話題になりません。海外から持ち込まれても地域には広がらないからです。
日本でこんなに広がったことを驚いている世界。
7月17日 台湾 公衆衛生当局 Cases of Rubella Increase in Japan This Year; CDC Reminds Citizens Planning to Go to Japan during Summer Vacation to Receive Evaluation and Get MMR Vaccine before the Trip,
9月12日 香港 公衆衛生局 Rubella outbreak under watch
9月14日 香港 Travel Health Service Japan: Rubella [Update]
2月1日 Japan TImes Rubella outbreak spreading quickly
2月28日 朝日 英字Foreign rubella, measles cases on the rise in Japan
3月7日 Japan Today Rubella infections hit 5-year high
3月20日 英国NHS Rubella in Japan (Update)
3月20日 Tropical Medicine Bureau Worry as Rubella outbreak continues in Japan
3月21日 Travel Doctor(オーストラリア) Rubella in Japan
3月28日 NHK WorldRubella Outbreak Hits Japan
4月2日 Japan Times Resurgent rubella raises fetus threat
4月4日 Guam Public Health monitoring rubella in Japan
日本の米国大使館のHPもトップページに風疹の情報
今朝のProMed
グアムの公衆衛生局が出した日本に出かける人への警告が紹介されています。
It would be advisable for persons traveling to Japan to make sure they have been vaccinated for rubella (given in combination with the measles and mumps vaccines) 2 weeks before departing.
2週間前にワクチンをすませましょう。
「気をつけよう」とか「注意しよう」とか「がんばろう」とちがって、超具体的なアドバイスですね。
こういった情報が共有されると、日本渡航歴のある発疹や発熱患者に風疹を疑う際に役立ちますね(とほほ)。
----------------------------------------
06 Apr 2013 Cryptosporidiosis - Australia (02): (VI)
06 Apr 2013 Avian influenza, human (31): China (Shanghai) H7N9
06 Apr 2013 Rubella - Japan (04): travel alert
06 Apr 2013 Avian influenza, human (30): China (Hong Kong, Taiwan) H7N9, NOT
06 Apr 2013 Avian influenza, human (29): China (ZH) H7N9, market quail
06 Apr 2013 Avian influenza, human (26): China H7N9 case list & map, correction
06 Apr 2013 Avian influenza, human (28): China H7N9, WHO
06 Apr 2013 Nipah encephalitis, human - Bangladesh (05)
05 Apr 2013 Bovine tuberculosis, bovine - Switzerland (03): (FR)
05 Apr 2013 Anthrax, bovine - Ghana: (UE)
05 Apr 2013 Yellow fever - Americas (04): Peru (PU) vaccinatio
----------------------------------------
ちなみに、PrMedのなかで風疹の記事を検索してみました。
----------------------------------------
21 Mar 2013 Rubella - Japan (03): vaccination policy
19 Mar 2013 Rubella - Japan (02): increasing incidence
28 Feb 2013 Rubella - Japan: increasing incidence
12 Sep 2012 Rubella - UK: England (Hampshire), alert
09 May 2012 Rubella - Solomon Islands: travel alert
14 Apr 2012 Rubella - Spain (02): background
13 Apr 2012 Rubella - Spain: (AN)
16 Feb 2012 Rubella - Romania: (SJ) adolescents
16 Oct 2011 Rubella - China: (HK SAR) Indonesian women, RFI
19 Aug 2011 Rubella - New Zealand: (NO)
17 Aug 2011 Rubella - Fiji (03)
-----------------------------------------
ええ。もちろん.今受ける一番多い質問は「国や専門家は何か流行抑制のための介入をしないのか?」ですとも。