"子宮頸がんワクチン”がニュースになっていましたので最近のHPVワクチン関連情報。
3月18日 産経 「別の中2生にも自治体などが不支給決定」
3月18日 産経「副反応「なじみがない」 ワクチン推進の教授」
3月17日 産経「全国被害者連絡会発足へ 子宮頸がんワクチン副反応の被害者らが初顔合わせ」
3月12日 産経 「子宮頸がんワクチンの副反応 杉並の女子中学生、重い後遺症」
3月10日 読売 「女子中学生、子宮頸がん予防接種で副作用」
3月9日 東京 「子宮頸がん ワクチン重い副反応」
3月8日 朝日 「子宮頸がんワクチン重い副反応 中学生、長期通学不能に」
現在、医薬品での有害事象については医療機関以外にも当事者からも報告をあげることができるようになっています。
製薬会社経由の報告もあるので、データソースとしては複数あります。
有害事象が直接医薬品と関連があるかどうかの判定は専門家がしますが、定期的に開催される会議で行われています。
関連がある、と 因果関係がある の評価とあわせて/これとは別に、健康被害補償の検討があります。
医師が関連ありと判定をし、さらに補償対象とするかの判断の場があります。
ニュースは、杉並区が独自に任意ワクチンでの補償をするということが議会で話題になったのが発端です。
医師の診断書の写真がネットに流れていましたが、個別の事例の情報を得てないとよくわかりません。(可能な限りの情報を得たとしても稀な事象だと判断がそもそも難しいですが)
おさらいをしつつ、関連情報をみてみましょう。
現在承認されているHPVワクチンは2種類あり、グラクソ・スミスクライン社のサーバリックス(2価)と、メルク社(日本はMSD社)のガーダシル(4価)。
違いは、2価と4価。 ※ガーダシルはそのうち9価になる予定(外国では)
効果をあげるためのアジュバントの種類が違います。
接種の時期(2回目)がちがいます。(国によっても違いあり)
また、ガーダシルは70カ国以上で男性への接種も承認されています。
世界の市場全体の8割以上はガーダシル。
日本では臨床試験が先にはじまっていたガーダシルではなく、サーバリックスが先に承認され、その次にガーダシルが承認されました。現在はどちらも臨時の公費補助があり、4月からは定期に入る予定)。
日本では男性には認可されていません。
世界ではHPVワクチンとよばれていますが、日本では「子宮頸がん予防ワクチン」という名前で認知されています。
日本のように国の予防接種プログラムでサーバリックスを採用したのは英国、オランダ。
しかし、英国は2012年9月からガーダシルへ変更。
まとまったデータが出てくるのはこの3カ国。
英国では2012年12月にレポートが出ていました。
詳細(1次情報)はリンク先で確認してください。
-----------------
MHRA PUBLIC ASSESSMENT REPORT Cervarix HPV vaccine: update on UK safety experience at end of 4 years use in the HPV routine immunisation programme (December 2012)
政府のヘルスケア製品規制機関であるMHRAはワクチンを含むすべての医薬品やデバイスのレビューを継続してしています。
このレポートは、2008年9月に導入されたサーバリックスの経験についてのサマリーです。
英国では毎年3000例の子宮頸がんが報告されており、その60%がHPV16型、15%が18型となっています。
ルチンのHPVワクチン接種プログラムが導入されたのは2008年9月1日で、対象は12-13歳の女性で、キャッチアップとして17-18歳の女子も対象となりました。
英国政府はこのプログラムにより、年間400例の子宮頸がんが予防されていると推定。
MHRAは安全性のモニタリングもしており、2009年、2010年にサーバリックスについて評価。
Yellow Card スキームにのっとって報告された、関連性がうたがわれる有害事象についてレビューを実施。
ガーダシルへの切り替えを行った2012年9月に、MHRAはルチン接種終了にあたっての、疑い有害事象についての4年間の包括的な報告をまとめめました(2012年7月31日まで)。
2008年に開始されたサーバリックス接種プログラムでの実施数は4年間で約600万接種。
このうち、6213例で14300件の有害事象が報告されました。
全体では1000接種に1報告の頻度。
2008年 1292件
2009年 1912件
2010年 1794件
2011年 1069件
2012年 146件(7月31日間での集計)
Total 6213件
有害事象報告者で最も多いのは看護師66.8%で、GP 6.2%、保護者3.03%、患者0.64%でした。
(※日本以外では予防接種の業務の多くは看護師がしています)
14300事象のうち、55%以上は製品情報に含まれているめまい(1385件)、頭痛(1128件)、接種部位の反応(652件)、疲労感(378件)、気分不快(499例)、発熱(319件)、熱感(147件)、吐き気(1078件)、嘔吐(487件)、腹痛(240件)、痛み(128件)、アレルギー反応(63件)でした。
また、注射のプロセスへの恐怖による ‘psychogenic’ reactions(心因性の反応)も報告されています(主には fainting、 ‘panic attacks’)。
Nervous system disorders 4263件 29.81 %
General disorders and administration site conditions 2940件 20.56 %
Gastrointestinal disorders 2100件 14.69 %
Musculoskeletal and connective tissue disorders 1455件 10.17 %
Skin and subcutaneous tissue disorders 1301件 9.10 %
Vascular disorders 436件 3.05 %
Respiratory, thoracic and mediastinal disorders 370件 2.59 %
Eye disorders 281件 1.97 %
Psychiatric disorders 232件 1.62 %
Investigations 185件 1.29 %
Immune system disorders 123件 0.86 %
Infections and infestations 118 0.83 %
Injury, poisoning and procedural complications 95件 0.66 %
Reproductive system and breast disorders 72件 0.50 %
Cardiac disorders 68件 0.48 %
Metabolism and nutrition disorders 59件 0.41 %
Ear and labyrinth disorders 57件 0.40 %
Blood and lymphatic system disorders 36件 0.25 %
Congenital, familial and genetic disorders 33件 0.23 %
Pregnancy, puerperium and perinatal conditions 31件 0.22 %
Renal and urinary disorders 16件 0.11 %
Surgical and medical procedures 11件 0.08 %
Neoplasms benign, malignant and unspecified (including cysts and polyps) 9件 0.06 %
Endocrine disorders 5件 0.03 %
Social circumstances 3件 0.02 %
Hepatobiliary disorders 1件 0.01 %
(total 14300件)
2008年承認以後、サーバリックスとtemporal associationがあるとされた死亡例は2例。しかし、サーバリックスが直接の死因とは考えられませんでした。1例目は悪性腫瘍があり、それが心臓と肺に影響していました。2例目はgroup A streptococcal による敗血症が死因と考えられました。
TSystem Organ Class (SOC)による ‘神経系の障害’は有害事象全体の30%(4263例)でした。
最も多いのは頭痛 (1128)、めまい(1367)、失神(501)、感覚鈍間(251)、知覚異常(148) 、震え(110)でした。
注射への恐怖による真因的な反応もしばしばみられ、フェインとやマイルドなパニック発作も報告されました。
ギランバレー症候群は最初の2年間で5例報告がありました。(2例は初年度、3例は2年目)
脳炎は6例の報告がありました。(5例は初年度、1例は2年目)
顔面神経麻痺は9例の報告があり、6例は最初の2年間。
痙攣は97例報告がありました。
複合性局所疼痛症候群 Complex regional pain syndrome(CRPS)は6例報告がありました。
(詳細は元のレポートでご確認を)
----------------
※CRPS関連文献
Genc H et al. Complex regional pain syndrome type-I after rubella vaccine. Eur J Pain 2005; 9(5): 517-520.
Complex regional pain syndrome by vaccination: A case of complex regional pain syndrome after vaccination of influenza A(H1N1)
COMPLEX REGIONAL PAIN SYNDROME FOLLOWING IMMUNISATION
Complex regional pain syndrome after hepatitis B vaccine
Complex regional pain syndrome following immunisation
臨床試験の段階で、おこりうる有害事象がある程度把握されます。しかし、?層試験においても、数千の分母ですので稀な事象をひろうことができません。
市販後調査(フェーズ?)では、対象が拡大したときに、臨床試験からは予測できないような数が報告されていないか、症例のかたまり(クラスター)が特定の時期や地域、グループに集中していないかといったことを評価します。
参考スライド:
3月18日 産経 「別の中2生にも自治体などが不支給決定」
3月18日 産経「副反応「なじみがない」 ワクチン推進の教授」
3月17日 産経「全国被害者連絡会発足へ 子宮頸がんワクチン副反応の被害者らが初顔合わせ」
3月12日 産経 「子宮頸がんワクチンの副反応 杉並の女子中学生、重い後遺症」
3月10日 読売 「女子中学生、子宮頸がん予防接種で副作用」
3月9日 東京 「子宮頸がん ワクチン重い副反応」
3月8日 朝日 「子宮頸がんワクチン重い副反応 中学生、長期通学不能に」
現在、医薬品での有害事象については医療機関以外にも当事者からも報告をあげることができるようになっています。
製薬会社経由の報告もあるので、データソースとしては複数あります。
有害事象が直接医薬品と関連があるかどうかの判定は専門家がしますが、定期的に開催される会議で行われています。
関連がある、と 因果関係がある の評価とあわせて/これとは別に、健康被害補償の検討があります。
医師が関連ありと判定をし、さらに補償対象とするかの判断の場があります。
ニュースは、杉並区が独自に任意ワクチンでの補償をするということが議会で話題になったのが発端です。
医師の診断書の写真がネットに流れていましたが、個別の事例の情報を得てないとよくわかりません。(可能な限りの情報を得たとしても稀な事象だと判断がそもそも難しいですが)
おさらいをしつつ、関連情報をみてみましょう。
現在承認されているHPVワクチンは2種類あり、グラクソ・スミスクライン社のサーバリックス(2価)と、メルク社(日本はMSD社)のガーダシル(4価)。
違いは、2価と4価。 ※ガーダシルはそのうち9価になる予定(外国では)
効果をあげるためのアジュバントの種類が違います。
接種の時期(2回目)がちがいます。(国によっても違いあり)
また、ガーダシルは70カ国以上で男性への接種も承認されています。
世界の市場全体の8割以上はガーダシル。
日本では臨床試験が先にはじまっていたガーダシルではなく、サーバリックスが先に承認され、その次にガーダシルが承認されました。現在はどちらも臨時の公費補助があり、4月からは定期に入る予定)。
日本では男性には認可されていません。
世界ではHPVワクチンとよばれていますが、日本では「子宮頸がん予防ワクチン」という名前で認知されています。
日本のように国の予防接種プログラムでサーバリックスを採用したのは英国、オランダ。
しかし、英国は2012年9月からガーダシルへ変更。
まとまったデータが出てくるのはこの3カ国。
英国では2012年12月にレポートが出ていました。
詳細(1次情報)はリンク先で確認してください。
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MHRA PUBLIC ASSESSMENT REPORT Cervarix HPV vaccine: update on UK safety experience at end of 4 years use in the HPV routine immunisation programme (December 2012)
政府のヘルスケア製品規制機関であるMHRAはワクチンを含むすべての医薬品やデバイスのレビューを継続してしています。
このレポートは、2008年9月に導入されたサーバリックスの経験についてのサマリーです。
英国では毎年3000例の子宮頸がんが報告されており、その60%がHPV16型、15%が18型となっています。
ルチンのHPVワクチン接種プログラムが導入されたのは2008年9月1日で、対象は12-13歳の女性で、キャッチアップとして17-18歳の女子も対象となりました。
英国政府はこのプログラムにより、年間400例の子宮頸がんが予防されていると推定。
MHRAは安全性のモニタリングもしており、2009年、2010年にサーバリックスについて評価。
Yellow Card スキームにのっとって報告された、関連性がうたがわれる有害事象についてレビューを実施。
ガーダシルへの切り替えを行った2012年9月に、MHRAはルチン接種終了にあたっての、疑い有害事象についての4年間の包括的な報告をまとめめました(2012年7月31日まで)。
2008年に開始されたサーバリックス接種プログラムでの実施数は4年間で約600万接種。
このうち、6213例で14300件の有害事象が報告されました。
全体では1000接種に1報告の頻度。
2008年 1292件
2009年 1912件
2010年 1794件
2011年 1069件
2012年 146件(7月31日間での集計)
Total 6213件
有害事象報告者で最も多いのは看護師66.8%で、GP 6.2%、保護者3.03%、患者0.64%でした。
(※日本以外では予防接種の業務の多くは看護師がしています)
14300事象のうち、55%以上は製品情報に含まれているめまい(1385件)、頭痛(1128件)、接種部位の反応(652件)、疲労感(378件)、気分不快(499例)、発熱(319件)、熱感(147件)、吐き気(1078件)、嘔吐(487件)、腹痛(240件)、痛み(128件)、アレルギー反応(63件)でした。
また、注射のプロセスへの恐怖による ‘psychogenic’ reactions(心因性の反応)も報告されています(主には fainting、 ‘panic attacks’)。
Nervous system disorders 4263件 29.81 %
General disorders and administration site conditions 2940件 20.56 %
Gastrointestinal disorders 2100件 14.69 %
Musculoskeletal and connective tissue disorders 1455件 10.17 %
Skin and subcutaneous tissue disorders 1301件 9.10 %
Vascular disorders 436件 3.05 %
Respiratory, thoracic and mediastinal disorders 370件 2.59 %
Eye disorders 281件 1.97 %
Psychiatric disorders 232件 1.62 %
Investigations 185件 1.29 %
Immune system disorders 123件 0.86 %
Infections and infestations 118 0.83 %
Injury, poisoning and procedural complications 95件 0.66 %
Reproductive system and breast disorders 72件 0.50 %
Cardiac disorders 68件 0.48 %
Metabolism and nutrition disorders 59件 0.41 %
Ear and labyrinth disorders 57件 0.40 %
Blood and lymphatic system disorders 36件 0.25 %
Congenital, familial and genetic disorders 33件 0.23 %
Pregnancy, puerperium and perinatal conditions 31件 0.22 %
Renal and urinary disorders 16件 0.11 %
Surgical and medical procedures 11件 0.08 %
Neoplasms benign, malignant and unspecified (including cysts and polyps) 9件 0.06 %
Endocrine disorders 5件 0.03 %
Social circumstances 3件 0.02 %
Hepatobiliary disorders 1件 0.01 %
(total 14300件)
2008年承認以後、サーバリックスとtemporal associationがあるとされた死亡例は2例。しかし、サーバリックスが直接の死因とは考えられませんでした。1例目は悪性腫瘍があり、それが心臓と肺に影響していました。2例目はgroup A streptococcal による敗血症が死因と考えられました。
TSystem Organ Class (SOC)による ‘神経系の障害’は有害事象全体の30%(4263例)でした。
最も多いのは頭痛 (1128)、めまい(1367)、失神(501)、感覚鈍間(251)、知覚異常(148) 、震え(110)でした。
注射への恐怖による真因的な反応もしばしばみられ、フェインとやマイルドなパニック発作も報告されました。
ギランバレー症候群は最初の2年間で5例報告がありました。(2例は初年度、3例は2年目)
脳炎は6例の報告がありました。(5例は初年度、1例は2年目)
顔面神経麻痺は9例の報告があり、6例は最初の2年間。
痙攣は97例報告がありました。
複合性局所疼痛症候群 Complex regional pain syndrome(CRPS)は6例報告がありました。
(詳細は元のレポートでご確認を)
----------------
※CRPS関連文献
Genc H et al. Complex regional pain syndrome type-I after rubella vaccine. Eur J Pain 2005; 9(5): 517-520.
Complex regional pain syndrome by vaccination: A case of complex regional pain syndrome after vaccination of influenza A(H1N1)
COMPLEX REGIONAL PAIN SYNDROME FOLLOWING IMMUNISATION
Complex regional pain syndrome after hepatitis B vaccine
Complex regional pain syndrome following immunisation
臨床試験の段階で、おこりうる有害事象がある程度把握されます。しかし、?層試験においても、数千の分母ですので稀な事象をひろうことができません。
市販後調査(フェーズ?)では、対象が拡大したときに、臨床試験からは予測できないような数が報告されていないか、症例のかたまり(クラスター)が特定の時期や地域、グループに集中していないかといったことを評価します。
参考スライド: