分母が増えると、いろいろなケースが入ってきます。
ワクチンの有害事象などがよい例ですが、数百万人が分母になると、「稀な」イベントも入ってきます。それがすべてワクチンのせいかはわからないので、1例1例検証されるのですが。
その前後にそのことがあったね(前の日なのか、1ヶ月前か、1年前か、いつまでさかのぼるのかという問題はありますが)ということです。
感染症では、麻疹が特に恐れられる理由として、超重症になる頻度が1000例に1例とかなり高いからであります。入院したり、重症になる人はそれなりに多いので「超」重症と書いておきます。
なぜAさんは軽くすんで、Bさんは重症、なぜCさんは死んでしまうのかは完全には説明がつきません。ワクチンもEさんは1回でばっちりついて、Fさんは2回でしっかりついたのに、4回うっても十分つかないGさんがいます。
なぜHさんは前から花粉症で、Iさんは今年から花粉症でJさんはなんともないのか。
個体差(遺伝子レベルでの差)があるから、そりゃそうだろうと考えると、分母が増えればいろいろな事例がまじってくるということに一定の理解もできます。
なので、感染症の対策として「地域流行させない」「アウトブレイクを予防」ということが、流行してしまう前からの取り組みとして重要になります。
一度広がるとなかなか終息させることができない感染症もあるからです。
一番制御しやすいのは、潜伏期間が短く、感染したらすぐ発症、そしてすぐ重症・死亡という怖い病気。(書いていて怖いですが〜)。なぜならば、その感染源となる人は出歩けないし他の人にうつす機会が少ないからです。
この逆は別の意味で怖い。
おおよそ軽症なので無理がきく。ちょっと学校や会社を休むわけにはいかないよねーレベルだと、感染源となる人が市中を動き回ることになります(今の風疹の流行はここが影響)。
赤ちゃんはそう広く動きませんが、20-40代の男性は出張で各地にでかけますし、満員電車で飛まつを皆さんにプレゼントしたりもしますし、喫煙ルームなどにいけば密室で皆さんとウイルスを共有したりすることにもつながります。
ここまで広がると、重症例も出てくるわけで、昨年の兵庫県でも脳炎が報告されています。
このような事例を経験した場合は、5類の「風疹」とともに「急性脳炎」と2つを届け出をします。多忙な現場でたいへんなことではありますが、重症例はぜひこのような報告をお願いいたします。
日本の急性脳炎は病原体不明も一定数あり、原因が何かわかっている症例の把握がとても大事です。(1-2月は例年インフルエンザなどが多いわけですが)
2012年11月「神戸市における風疹発生状況と脳炎患者からの風疹ウイルスの検出、2012年3〜8月」
-----------------------------------
脳炎の症例
27歳男性、既往歴はアレルギー性鼻炎、常用薬無し。風疹ワクチン接種歴無し。
2012年7月25日頃から発熱・咳・発疹が出現し、近医受診。両手・背中・腹部に水疱形成を伴わない赤い発疹を認めた。掻痒感無し。コプリック斑無し。眼脂無し。左頚部リンパ節腫脹あり。鎮咳薬、胃薬、解熱薬が処方された。
この時の血液検査では風疹IgM陰性、麻疹IgM陰性であった。
月29日頃にはいったん皮疹は消退したが、37℃と微熱が続いていた。
7月30日朝から嘔吐あり。同日21時頃、上肢中心にぴくぴく動くような震えがあり、座位が保持できず、救急搬送された。搬送時、意識レベルは呼びかけで開眼、痛み刺激で少し顔をしかめるが発語はほとんどみられなかった。また、1分程度の全身強直性痙攣が認められた。項部硬直あり。顔面に1mm未満程度の紅色皮疹が散在。両側下顎リンパ節、頚部リンパ節腫大あり。眼振を認めた。髄液検査では細胞数 205/3 mm3(単核球142、多核球63)、蛋白141 mg/dlと、髄膜脳炎を示唆する所見を得た。頭部CT・MRI検査上、脳腫脹や出血等の異常無し。脳波検査では2-8Hz程度の全般性徐波を認めた。
7月31日よりステロイド大量療法を開始し、8月1日には意識レベル改善を認め、8月2日より食事摂取開始とした。経過良好であり、8月3日から後療法としてプレドニゾロン50 mg/日から内服開始。明らかな高次脳機能障害や四肢麻痺もなく、8月12日プレドニゾロン30 mg/日内服で自宅退院となった。(続きはリンク先で)
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1998年 香港「Acute encephalitis complicating rubella」
先進国の論文を探すと、当然のことながらすごいふるいものがヒットするのみ・・・
昭和58年 横浜市大報告「成人における風疹脳脊髄膜炎の1例」日本感染症学会誌
昭和54年 東京慈恵医大報告「急性風疹脳脊髄膜炎における髄液風疹各種抗体の検討」
The Encephalitis Society のFact Sheet
ワクチンの有害事象などがよい例ですが、数百万人が分母になると、「稀な」イベントも入ってきます。それがすべてワクチンのせいかはわからないので、1例1例検証されるのですが。
その前後にそのことがあったね(前の日なのか、1ヶ月前か、1年前か、いつまでさかのぼるのかという問題はありますが)ということです。
感染症では、麻疹が特に恐れられる理由として、超重症になる頻度が1000例に1例とかなり高いからであります。入院したり、重症になる人はそれなりに多いので「超」重症と書いておきます。
なぜAさんは軽くすんで、Bさんは重症、なぜCさんは死んでしまうのかは完全には説明がつきません。ワクチンもEさんは1回でばっちりついて、Fさんは2回でしっかりついたのに、4回うっても十分つかないGさんがいます。
なぜHさんは前から花粉症で、Iさんは今年から花粉症でJさんはなんともないのか。
個体差(遺伝子レベルでの差)があるから、そりゃそうだろうと考えると、分母が増えればいろいろな事例がまじってくるということに一定の理解もできます。
なので、感染症の対策として「地域流行させない」「アウトブレイクを予防」ということが、流行してしまう前からの取り組みとして重要になります。
一度広がるとなかなか終息させることができない感染症もあるからです。
一番制御しやすいのは、潜伏期間が短く、感染したらすぐ発症、そしてすぐ重症・死亡という怖い病気。(書いていて怖いですが〜)。なぜならば、その感染源となる人は出歩けないし他の人にうつす機会が少ないからです。
この逆は別の意味で怖い。
おおよそ軽症なので無理がきく。ちょっと学校や会社を休むわけにはいかないよねーレベルだと、感染源となる人が市中を動き回ることになります(今の風疹の流行はここが影響)。
赤ちゃんはそう広く動きませんが、20-40代の男性は出張で各地にでかけますし、満員電車で飛まつを皆さんにプレゼントしたりもしますし、喫煙ルームなどにいけば密室で皆さんとウイルスを共有したりすることにもつながります。
ここまで広がると、重症例も出てくるわけで、昨年の兵庫県でも脳炎が報告されています。
このような事例を経験した場合は、5類の「風疹」とともに「急性脳炎」と2つを届け出をします。多忙な現場でたいへんなことではありますが、重症例はぜひこのような報告をお願いいたします。
日本の急性脳炎は病原体不明も一定数あり、原因が何かわかっている症例の把握がとても大事です。(1-2月は例年インフルエンザなどが多いわけですが)
2012年11月「神戸市における風疹発生状況と脳炎患者からの風疹ウイルスの検出、2012年3〜8月」
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脳炎の症例
27歳男性、既往歴はアレルギー性鼻炎、常用薬無し。風疹ワクチン接種歴無し。
2012年7月25日頃から発熱・咳・発疹が出現し、近医受診。両手・背中・腹部に水疱形成を伴わない赤い発疹を認めた。掻痒感無し。コプリック斑無し。眼脂無し。左頚部リンパ節腫脹あり。鎮咳薬、胃薬、解熱薬が処方された。
この時の血液検査では風疹IgM陰性、麻疹IgM陰性であった。
月29日頃にはいったん皮疹は消退したが、37℃と微熱が続いていた。
7月30日朝から嘔吐あり。同日21時頃、上肢中心にぴくぴく動くような震えがあり、座位が保持できず、救急搬送された。搬送時、意識レベルは呼びかけで開眼、痛み刺激で少し顔をしかめるが発語はほとんどみられなかった。また、1分程度の全身強直性痙攣が認められた。項部硬直あり。顔面に1mm未満程度の紅色皮疹が散在。両側下顎リンパ節、頚部リンパ節腫大あり。眼振を認めた。髄液検査では細胞数 205/3 mm3(単核球142、多核球63)、蛋白141 mg/dlと、髄膜脳炎を示唆する所見を得た。頭部CT・MRI検査上、脳腫脹や出血等の異常無し。脳波検査では2-8Hz程度の全般性徐波を認めた。
7月31日よりステロイド大量療法を開始し、8月1日には意識レベル改善を認め、8月2日より食事摂取開始とした。経過良好であり、8月3日から後療法としてプレドニゾロン50 mg/日から内服開始。明らかな高次脳機能障害や四肢麻痺もなく、8月12日プレドニゾロン30 mg/日内服で自宅退院となった。(続きはリンク先で)
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1998年 香港「Acute encephalitis complicating rubella」
先進国の論文を探すと、当然のことながらすごいふるいものがヒットするのみ・・・
昭和58年 横浜市大報告「成人における風疹脳脊髄膜炎の1例」日本感染症学会誌
昭和54年 東京慈恵医大報告「急性風疹脳脊髄膜炎における髄液風疹各種抗体の検討」
The Encephalitis Society のFact Sheet