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【Q&A】八重樫先生 呼吸器

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みなさま。若手医師セミナーでの質問について、八重樫先生が回答を書いてくださいました。
お忙しい中ありがとうございました。

下記資料は講義を前提としたもので、特定の症例のためのものではありません。
臨床の現場で実際に活用される際には主治医の責任においてお願いいたします。


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皆様、質問ありがとうございます。急性胃腸炎でダウンしていましたが復活したので回答させて頂きます。
米国呼吸器専門医・集中治療医として私が、エビデンスに基づいた標準的人工呼吸器治療と考えることとして回答していますが、くれぐれも、実際の患者さんの治療や呼吸器設定の変更、抜管の判断は指導医の先生に報告・連絡・相談をして決めてくださいね。質問の回答が少しでも皆様の理解につながれば幸いです。


Q. (ハンドアウトp.3、下段)気道確保が必要な症例に対し、気管挿管が適応になるのはわかりますが、挿管=人工呼吸器管理になるのは、挿管の際は鎮静が必要だからですか?死腔や仕事量のためですか?(研修医2年目)

A. 非常に良い質問です。全部です。気管内挿管はつらいので呼吸抑制がかかる鎮静薬・鎮痛薬が必要なことが多いですし、細くて長い気管内挿管チューブから息を吸うのは大変なので(気道抵抗が高いので呼吸仕事量が大きい)、人工呼吸器管理となることが多いです。鎮静が浅い、かつ気管内チューブを介して息を吸うのにも十分な吸気の能力がある人はT-ピースや人工鼻でも良いかもしれませんが、基本的には呼吸筋疲労を起こさないためにも、無呼吸で呼吸性アシドーシスを防ぐためにも人工呼吸器管理をした方が無難です。

Q. (ハンドアウトp.3下段)大量吐血の気道確保では実際はT-ピース程度でventilatorは必要ないのではないでしょうか?(研修医2年目)

A. 同上です。

Q. (ハンドアウトp.6)圧換気と量換気どちらを主力に使われているのでしょうか?
また、主に使われている換気モードがあればご紹介して頂けるとうれしいです。(勤務医4年目)

これは聞く人により意見が分かれる質問です。私は換気をキチンと確保する、誰にでもわかり易いのでミスが起こりにくいという観点から従量式A/C (VCV)を用い、それで患者さんがうまく人工呼吸器に同調しない、プラトー圧が高くなる等の問題が出る場合に従圧式A/C (PCV)を用います。が、より難度は高いがより快適とされるPCVを第一選択とする施設も多いです。どちらかの優位性を決定的なアウトカムで示したデータは無いので、施設に合わせて選んでいただけたらと思います。

Q. (ハンドアウトp.7、中段)圧曲線が下に凸だと、なぜ良くないのか説明して頂けたら助かります。(研修医2年目)

A. 自発呼吸だと圧曲線が下に凸ということを思い出してください。陽圧換気なのに圧曲線が下に凸ということは、人工呼吸器が従量式のA/Cで定められた流速で吸気を送っているにも関わらず、患者さんにとってはその吸気流速(吸う速さ)が不十分で、患者さんは人工呼吸器による吸気に加えて更に吸気努力をしていることの現れです。そうするとそれだけの呼吸仕事量が発生して呼吸筋疲労の原因となります。ですから、呼吸仕事量を増やさずに患者さんが吸気努力を自らしなくて済むように吸気流速を増やす必要があります。従圧式A/CやCPAP+PSでは吸気圧は一定ですが、患者さんの吸気流速に合わせた吸気流速が人工呼吸器から提供されるのでこの現象は起こりません。

Q. (ハンドアウトp.7、中段)p.7の質問の所で、圧が下に凸になっているのは、流速が足りず、呼吸筋努力で胸腔内を陰圧にしようとしているのかと思いました。
流速を上げることで改善されるというのは、時間あたりの換気量をどこかしらで感知して、呼吸筋努力を調節しているということでしょうか?(研修医2年目)

A. はい。その通りです。皆さんが細いストローを介して息を吸おうとしても、気道抵抗が高く吸気流速が上がらないので苦しく感じるのと同じことです。

Q. (ハンドアウトp.9上段)Page9.1枚目スライドですが、圧損傷の原因因子がピーク圧ではなくプラトー圧なのはなぜですか?

A. ハンドアウト p.113中段のスライドの説明で述べたように、人工呼吸器の圧グラフィックは実際に肺の中の圧ではなくて、人工呼吸器の圧力計で見た圧です。吸気の際には圧力計がある人工呼吸器側の方が肺胞の中よりも圧が高いので、気体が人工呼吸器から肺胞に流入します。その肺胞の中の圧を調べるには、吸気直後に人工呼吸器の回路を一時的に(0.2-0.5秒)遮断します。そうすると肺胞の中の圧と人工呼吸器の圧力計の圧が等しくなり、人工呼吸器の圧力計でも肺胞の中の圧が図れます。それがプラトー圧です。ですから、肺胞にかかる圧をプラトー圧が表しているので圧損傷にもっとも相関しています。一方でピーク圧の圧力は肺胞には伝わらずに気道にかかります。ですから、圧損傷との相関関係は少ないのです。

Q. (ハンドアウトp.9中段)高濃度酸素はどれ位の時間耐えられるのですか?(研修医2年目)

A.正直議論が分かれるところです。FiO2の値なら0.4以下なら安全、0.6以上ならリスクとも言いますが、これに関しても議論が分かれますし、それよりも更に難しい質問ですね。ARDSの患者だったらFiO2 >0.6を24時間以上使ったら拡散障害が残る確率が高かったデータもありますし、FiO2=100%を30分投与してもシャントが増えるとというデータもあります。大なり小なり30分でも影響はあるのではないでしょうか。一方で、患者さんに必要な酸素は投与しなければなりません。現実的な落としどころとしては、必要以上の吸入酸素濃度を使う時間は最小限とし、必要最小限の吸入酸素濃度を使うといったところでしょうか。

Q. (ハンドアウトp.9下段)SpO2が低くてPEEPを上げたいけど血圧が低い場合はどうしますか?(研修医2年目)

A. 超良い質問です。特に脱水であればPEEPを上げると血圧が下がりやすいことをよく理解した上での現場で困る質問ですね。脱水で血圧が下がっているのならCVP>12程度まで輸液してPEEPを上げてください。脱水ならそれだけでも血圧が下げりにくくなるはずです。それでも血圧が下がっている場合なら酸素化(PEEPを上げる)、血圧(昇圧剤)のどちらがより大切か考えたうえで、PEEPを上げて昇圧剤を用いる、もしくはPEEPそのままで昇圧剤は用いないか判断してください。このように優先順位をつけなければならないことは重症患者さんの管理では多くあります。

Q. (ハンドアウトp.10、中段)FiO2 1.0, PaO2 250mmHgの患者に対してFiO2 0.5まで下げるのはやや乱暴ではないですか? FiO2を0.1下げると約50mmHg下がると考えて普段呼吸管理しています。(勤務医5年目)

A. 素晴らしく良い質問です。ありがとうございます。FiO2をどれだけ下げるとPaO2がどれだけ下がるかは患者さんによって異なります。その酸素化の指標にはP/F比を使います。その患者さんであれば、P/F比はPaO2/FiO2 = 250÷1.0 = 250となります。逆にこの患者さんでFiO2 を 0.5(50%)に低下させると、PaO2はPaO2/0.5 = 250となる値、つまりPaO2=250 x 0.5 =125となります。つまりPaO2=125mmHgとなる予測なので(PaO2 >60mmHgなので必要十分)、FiO2を1.0 (100%)から0.5 (50%)とすることは安全と考えられます。もちろん、計算は計算ですのでSpO2をモニターして下がりすぎないように(<90%)する必要はあります。FiO2を0.1下げると約50mmHg下がるのはP/F比が500の患者さんのみとなります。下記の質問の回答も参考にして下さい。FiO2を1.0から0.5に下げると「乱暴」と印象を受けるのは患者さんに害が加わったらと心配されているからと察します。患者さん思いなのは素晴らしいことですね。ただ、安全とわかっていれば酸素毒性を防ぐために患者さんのためにドラスティックな変化をつけても大丈夫なはずです。もちろん、SpO2をモニターしながらFiO2を1.0⇒0.9⇒0.8⇒0.7⇒0.6⇒0.5と低下させても良いです。

<strong>Q. (ハンドアウトp.10、中段)酸素のテーパリングをする際に血ガスでなくSpO2で評価するときのポイント、実際の方法を知りたい。FiO2を下げるとき、換気の評価も必要だと思われますが、それはどうするのか等。(研修医2年目)


A. FiO2だけ減らすのであれば、経皮的パルスオキシメターでのSpO2が>90%であれば低下させてかまいません。酸素化には影響を与えますが、換気には影響を与えないので換気の評価は必要ありません。もちろん、1回は動脈血ガスでのSaO2と経皮的パルスオキシメターでのSpO2が相関しているのを(同じような値であることを)確認してからですが。動脈血のSaO2の値と経皮的パルスオキシメターでのSpO2の値が異なる病態としてはCO中毒、シアン中毒、メトヘモグロビン症、ショックなどがあります。
p.10の29枚目のスライドの「24歳男性が溺水で、、」の患者さんでは、FiO2を100%から50%に減らし、それでも大丈夫(SpO2が>90%)なら更に減らし(仮にFiO2=40%としましょうか)、それでも大丈夫なら更にFiO2=30%に減量します。
実は、(現在のPaO2)/ (現在のFiO2) = (変更後のPaO2) / (変更後のFiO2)という式もあり、それで計算するとPaO2=60となるようなFiO2は 250/1.0 = 60 / (変更後のFiO2)
つまり、(変更後のFiO2)= (60 x 1.0)/250 =0.24となり、FiO2=0.24 (24%)くらいまでは下げても大丈夫ということもこの計算からわかります(この計算はレクチャーでは割愛しました)。

Q. (ハンドアウトp.10)高いPEEPが必要なとき、時々APRVを使うのですが、亀田でAPRVを使われることはあるでしょうか?(勤務医4年目)

A. はい。通常の人工呼吸器管理では酸素化が保てない場合には非常に良い方法だと思います。その道の第1人者であるHabashi先生にも2回来て講演もして頂きました。今回のレクチャーでは複雑な上級者向けの人工呼吸器モードとして割愛しました。

Q. (ハンドアウトp.11中段)・CPAP+PSモードで呼吸管理していると、時折症例によって少ない1回換気量で呼気に移行し、その後すぐに吸気になる二段呼吸のような波形で頻呼吸になることを見受けます。このようなときに、トリガーを調節してもなかなか解決しないことがあります。どのように離脱をしていくべきでしょうか?(勤務医14年目)

A. よくあるのは1回換気量が足りないことです。Esensを初期設定の25%から10%などの小さい値にすると吸気が長くなり(下記の質問の回答参照)、解決されるかもしれません。

Q. (ハンドアウトp.11中段)・CPAPモードで、PS有る時、患者の吸気を感知して開始するのはわかるが、吸気は中止したと感知するのはどのような仕組みなのでしょうか?

A. 素晴らしい質問です。この説明は全体のバランスと初級者編ということを考えて割愛したのですが、Esensという設定値で決まります。初期設定はこれは25%に設定されています。これは、吸気の最大流速を100%として、25%以下になったら吸気が終わったものと人工呼吸器がみなし、Pressure Supportで吸気の手助けをするのをやめるというものです。このEsensを50%とか高い値にすると吸気は短くなり、10%とか低い値にすると吸気は長くなります。

Q. (ハンドアウトp.12、上段)SIMVモードの説明スライド、「全てのACは患者の吸気努力と同調している」と書いていますが、その場合、モニターは「ノッチ」が出ることが多いですか?
その次の質問スライドでも、ノッチが見当たらないんですが、、、。
SIMVのACは補助換気ではなくて強制換気でやるんでしょうか。(研修医1年目)

A. 心の目で見てください。よく見るとちっちゃな下向きのノッチが緑字の「補助」換気の前にあります。わかりづらくてすみませんね。これは自発呼吸の回数が設定された呼吸回数よりも多いSIMVの患者さんなので(補助換気だけでなく自発換気もある)、「補助換気」をしています。逆に、SIMVで設定の呼吸回数よりも少ない呼吸回数でしか息をしていない患者さんでは「強制」換気となります。

Q. (ハンドアウトp.12上段)・SIMV(従圧)+PSで、PSなしで使うことは一般的にありますか?
(勤務医14年目)

A. 非常に良い指摘です。あまりありませんね。おっしゃる通りです。わかり易さのためにPSなしのSIMVを載せたのですが、、、。

Q. (ハンドアウトp.12上段)・SIMVをあえて選択するケースはどういった時ですか?(SIMVよりもA/Cの方が優れているような気がするのですが、、、。)(研修医2年目)

A. 基本は患者さんの換気・酸素化・呼吸仕事量ををフルサポートであればA/Cモードを用いるのであまりSIMVは使いません。あえて使う場合は私の場合は2点です。?呼吸性アルカローシスが過剰になってしまう場合(A/Cモードに比べて1回換気量を少なくすることができるので呼吸性アルカローシスが軽減される)、?TIPSプロトコールという慢性人国呼吸器患者さんの離脱プロトコールを用いるとき。これは通常の人工呼吸器患者さんの8割程は自発呼吸試験(SBT)で離脱時期を見極めたら早々に離脱(抜管)できるのですが、その方法を用いても1週間以上離脱できない患者さんに用います。その場合時間をかけて徐々にSIMVモードの呼吸回数を減らし、次いでPSを減らしてステップを踏まえて離脱を目指します。CHEST 2001; 119:236–242

Q. (ハンドアウトp.13上段)「13ページの質問に関して、仮に呼吸数を22回に上げるという選択肢があれば、選択肢?と比較してどうでしょうか?ARDSの場合は、一回換気量は6−8ml/Lが死亡率が低いので、この場合はTV:400mlがベストと思います。呼吸数を上げすぎることの弊害などはないでしょうか?また、何回までなら許容できるでしょうか?」

A. A. 仮に呼吸数を22回に上げるという選択肢があれば確かにそれがベストなのではないかと思います。ARDSであれば死亡率が一回換気量が少ない方が低いですしおっしゃる通りです。この質問での選択肢をご覧の4つにしたのは、自発呼吸が18回の患者さんに設定呼吸回数を12回から18回に増やしても全く何も変わらないというのを理解してもらうためです。教育効果から、先生がおっしゃった選択肢を設けませんでした。呼吸数は上げすぎるとAuto-PEEPが怖いのですが、そうなってなければ良いと思います。ARMA研究では平均+1標準偏差の上限は36-7回/分でした。(N Engl J Med 2000;342:1301-8.)


Q. (ハンドアウトp.13中段)・プラトー圧を図るときに自発呼吸がありなかなか正確に測りにくいときは何か工夫がありますか?(勤務医14年目)

A. 実践的な良い質問ですね。実はプラトー圧を計る時に困ることはあまり無いです。数回計ればまず計れると思うのですが、、、。一方で、Auto-PEEPの測定が「呼気ポーズ」ボタンを押してもなかなかできないことはあります。その際には設定呼吸数10だけれども実際には18回/分呼吸している患者さんでは設定呼吸数を一時的に18回にします。それで格段に測れる確率は上がると思いますよ!20回とか、患者さんの呼吸数より更に早く設定呼吸数を上げると更に図りやすくなりますが、それ自体がAuto-PEEPになりやすくしていること(呼吸数を上げて吸気時間を短くすること)なので、それは行わない方が良いと思います。質問に答えてましたかね?

Q. (ハンドアウトp.13中段)・人工呼吸器装着患者において、コンプライアンス、CVPなどのパラメーターはどの程度重要視されていますか?頻回にチェックしますか?
(勤務医14年目)
A. 非常に素晴らしいご指摘です!大切です、まずはコンプライアンスについて答えます。プラトー圧を計る時に同時に測定されますが、コンプライアンスが低下している時はピーク圧とプラトー圧両方上がる場合と同じことを考えなければなりません。でも、それってピーク圧とプラトー圧両方上がることを理解していれば代用できますね。と、考えコンプライアンスは算出に計算も必要なので、簡単にするために割愛しました。米国の呼吸療法士さんは各シフト(8時間ごと)必ずコンプライアンスを記載します。また、CVPも人工呼吸器患者さんでは重要です。絶対値ではなく相対的な増減がボリュームの評価になります。

Q. (ハンドアウトp.14上段)・グラフィックがなかったり、PEEPが測定できないような人工呼吸器では、どのようにAuto-PEEPを検出すればよいのでしょうか?(勤務医10年目)

A. 非常に良い質問です。Auto-PEEPを疑った時点でグラフィックがあるPEEPが測定できる人工呼吸器に変えてください。他のオプションとしては、ハンドアウトp.14下段の図のように呼気を吐き切って流速がゼロになり、グラフが基線に戻る前に次の吸気が始まる場合を探す(flow流速グラフィックの倍率を上げると見やすいです)とかがありますが、感度・特異度が落ちます。また、古い人工呼吸器でPuritan Benett社の7200という機種を使っているのであれば、操作パネルの下に呼気ポートがありますので、それを呼気が終了直前にふさぐとAuto-PEEPが同じ原理で計れます。ふさぐと圧が高くなる場合はAuto-PEEPです。私も、こんな裏技を知っている昔の人工呼吸器を知っている人になってしまいました。
http://160.109.101.132/respcare/pb7200ae.htm

Q. (ハンドアウトp.14上段)時間があったらp14のオートPEEPのモニターの見かたを簡単でかまいませんので教えてほしいです。(研修医1年目)

A. Auto-PEEPとは、患者さんが息を吐ききっていないのに次の息を吸ってしまい、肺の中に吸気がどんどんたまってしまうこと。それを調べるためには人工呼吸器のグラフィックでわかる場合もあるし(上の質問の回答)、「呼気ポーズ」ボタンを押して、肺の中から人工呼吸器へ空気が流れている(圧の差がある)呼気の状態が終わったところで、人工呼吸器のパイプを閉鎖してみて、肺の中と人工呼吸器の圧力計が同じ圧になったところで肺の中の圧を計ってみているところです。この図ではAuto-PEEPはありませんでした。上段のグラフィックは圧グラフィックで下向きの緑の矢印が呼気ポーズがかかって回路が閉鎖されて肺の中の圧が計られている状態です。下のグラフィックはflow流速グラフィックです。

Q. (ハンドアウトp.14、中段)AutoPEEPが難しいです。(研修医2年目)

Q. (ハンドアウトp.14中段)Page14. 2枚目スライドの意味がよくわからなかったったです。
A. ですよねー。ここは米国の呼吸器内科医・集中治療医にとっても最初は理解するのが難しい概念で、様々な人が様々な説明で理解を簡単にしようとしていますが、なかなか難しいです。自分が今まで聞いた中で一番簡単でシックリくる説明を持ってきたつもりですが、それでも難しくて当然です。ですので、もう一度文章化して説明しましょう。青がバックの図を説明します。まずは左の図で、Auto-PEEPが10cmH2Oかかっています。人工呼吸器のトリガー感度は-1cmH2Oと設定されているので、-1の陰圧が人工呼吸器に伝わると人工呼吸器は「お、患者さんが息吸ってるな!」と認識してくれて吸気を押し入れてくれます。でも、Auto-PEEPが10cmH2Oだと、肺の中でAuto-PEEPに打ち勝ち、人工呼吸器に息を吸っていることをわかってもらうためには、10cmH2O -11cmH2O = -1cmで、患者さんは-11cmの陰圧を作るほど頑張って吸気努力しなければなりません。これは大きな吸気努力および仕事量です。次に、右の図に行きます。こちらでは同じ患者さんにPEEPを7cmH2Oかけました。Auto-PEEP=10cmH2Oの7割のPEEPを人工的に加えたこととなります。そうすると、合計のPEEPは10cmH2Oであることには変わらないのですが、その内訳は、加えたPEEPが7cmH2O、Auto-PEEPが3cmH2Oとなります。そうすると、加えたPEEPの分を人工呼吸器が計算して割り引いて考えてくれるので、Auto-PEEPにだけ打ち勝てば人工呼吸器に「お、患者さんが息吸ってるな!」と認識してもらえることになります。今回、肺の中でAuto-PEEPに打ち勝ち、人工呼吸器に息を吸っていることをわかってもらうためには、3cmH2O -4cmH2O = -1cmで、-4cmの陰圧を作るだけ頑張れば良いこととなります。こっちの方が人工呼吸器をトリガーするのが簡単ですね。Auto-PEEPがある患者さんにPEEP(7割程度)をかけると人工呼吸器をトリガーしやすくなり、人工呼吸器と同調しやすくなり呼吸仕事量が減るという話でした。
1回読んでわからなかったら2回、3回と読めば次第に分かってくるかもしれません。Good luck!

Q. (ハンドアウトp.15、上段)SBTは?Tチューブ(Tピース)試験と?呼吸器装着のままPS=0, PEEP=0にするのとでは、?の方が弁の抵抗の分だけ患者に負荷がかかる可能性があるが、tidal volumeや呼吸数をモニタしやすいメリットもある。?の弁抵抗は臨床的に有意といえる程のものなのか?(機種にもよると思うが)通常呼吸器装着でのSBTではPEEP5くらいはかけると思うが、このあたりがすなわち弁抵抗に相当する?(勤務医12年目)

A. 大変よく考えられた質問です。?の弁抵抗はそこまで臨床的に気にしなくて良いと思いますが、ここで言うSBTを受ける大多数の患者さんは気管内挿管を受けている患者さんです。細くて長い気管内チューブを介して息をするのは気道抵抗が大きいので呼吸仕事量が多く、その気道抵抗を打ち消すのにPS=5程度の少量のPSもしくはTCを用います。弁抵抗というより気道抵抗です。それが無いSBTは本当は抜管しても大丈夫な患者を(気管内チューブを介してというより自発呼吸が困難な環境を与えて)失敗とみなしてしまう可能性があるので、モニタしやすいメリット、PSを加えられる両方の観点からTピースでなく人工呼吸器に患者さんがつながったままCPAP+PSをお勧めします。また、その場合のPEEPは肺の虚脱を防ぐためで、弁抵抗に打ち勝つからではないと理解しています。

Q. (ハンドアウトp.19上段)NPPVをつけている患者さんがいるのですが、この場合のauto-PEEPの検出は、設定されたEPAPと実測のEPAPの値を比較すればいいのでしょうか?(勤務医5年目)

A. 非常に良い質問です。NPPVのauto-PEEPに関しては、flow流速グラフィックがハンドアウトp.14下段の図のように呼気を吐き切って流速がゼロになり、グラフが基線に戻る前に次の吸気が始まる場合を探す(flow流速グラフィックの倍率を上げると見やすいです)しかないと思います。

Q. (ハンドアウト以外)
1 気管支鏡を用いた痰の吸引には、どれほど意味があるのでしょうか?(もちろん気道閉塞ではあると思いますが、、、。)

A. 大葉性無気肺となっていて、それが通常吸引カテーテルで戻らない場合を除けば、気管支鏡でわざわざやる必要はないと考えます。

2 体位ドレナージを行っている際に、特に呼吸状態に変化がなくても設定を変更した方が良いとかはあるのでしょうか?

A. 私が知る限り特にありません。

3 ARDSでは低換気療法が必須となりますが、その際の呼吸回数は上限どのくらいなのでしょうか?

A. 下記の研究では平均+/-1標準偏差の範囲の上限でさえ、36-7回/分もあったようですが、もっと簡単に言うと「Auto-PEEPが起きない程度」の頻呼吸ならOKです (N Engl J Med 2000;342:1301-8.)

4 痰の吸引を頻回に行うとPEEP解除によるatelectraumaが危惧されますが、看護師にはどのようにアドバイスすればよろしいのでしょうか?(研修医2年目)

A. これもまた実践的で良い質問です。PEEP解除による急変、怖いですよね。移動のときとかにもよくおこりますかね。でも、吸引も大切なので、「気道が詰まったら、換気が悪くなったら、ピーク圧+/-プラトー圧が上がったら吸引お願いします」で良いと思います。

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