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Channel: 感染症診療の原則
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ノロウイルスの変異 と その周辺

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アナウンスをしなくても、ノロウイルスがはやる時期ではあるのですが、少し前に厚労省がわざわざ、例年より大流行するかもよ!的発表をして、一般メディアでも記事が掲載されていました。

感染症が専門の皆様は、毎週のIDWR(感染症週報)や病原微生物研修t情報(IASR)情報もチェックされていると思いますが、
その背景として、従来とは異なるノロウイルスの株、、、という情報があります。

今年の10月のアウトブレイクからです。IASR 2012年11月28日

「2012(平成24)年10月に、新潟県長岡保健所管内の2つの福祉施設で胃腸炎の集団発生があった。今シーズン初の集団発生事例で、この2事例の患者から、遺伝子型GII/4のノロウイルスが検出された。COG2F/G2SKR増幅領域(N/S領域)の塩基配列に基づく系統樹解析の結果、本GII/4株は従来のGII/4変異株とは異なる、新しいGII/4変異株(GII/4 2012変異株、仮称)と思われた。 そこで、本変異株のキメラウイルスの可能性および抗原性の変化を推定するために、RNAポリメラーゼ領域(Pol領域)およびP2ドメインを含むカプシド領域(P2d領域)の解析等を実施するとともに、全国の検出状況をとりまとめた」

このあたり、何も調べずにそうか〜と読める人と、「単語からしてよくわからないですよ!」(by編集長)な人では、ニュースのインパクトが違います。

遺伝子解析に関する情報は、臨床や公衆衛生としてどう生かしていくのか、という実験室レベルを超えたところでの意義のある会話をするために、一度どこかでしっかり勉強出来ると良いのではないかと思います。

そういえば、編集長はUCバークレーのL.ライリー先生のお話を聞いた時にかなり熱くなっていました〜。
(合宿セミナーなども企画してみたいですね by 青木 感染症寺子屋 管理人)。

Nとか、Sとか、Polって何?の図(クリックすると大きくなります)


見てもまだよくわかりませんが・・

同じウイルスでも、サブカテゴリーにわかれているわけですが、ノロウイルスの系統樹をさがすと図とか


こんな図が出てきます。



特に治療法はないので、臨床的にはだから何?かもしれませんが、ウイルスが変異をしていくプロセスを理解すると、大流行したり多くの人を病気にする背景が見えてきます。

同じノロでも、そのシーズンで流行する株が違ってたりするんですね。

で、今回の新潟県長岡でのアウトブレイク株は、現在、各地で流行しているそうです。

「GII/4 2012変異株は10月以降全国の集団発生等から検出され、急速に活動を活発化している。今シーズンはこの変異株が主流になることが予想され、今後の発生動向に注目する必要がある。なお、GII/4 2012変異株は香港でも8月に検出(Hong Kong/CUHK3655/2012/CHN (JX629458))されており、世界的にも流行が拡大しているものと推定される。」


おー、今、竹下先生 大曲先生と編集長が一緒にやっている「市中病院でみる世界の感染症セミナー」という視点が、キラリ♪と輝くキーワードが出てきました。

Norovirus Immunity and the Great Escape
PLoS Pathog 8(10)

Immunogenetic Mechanisms Driving Norovirus GII.4 Antigenic Variation
PLoS Pathog. 2012 May; 8(5): e1002705.

Atypical Norovirus Epidemic in Hong Kong during Summer of 2006 Caused by a New Genogroup II/4 Variant
J. Clin. Microbiol. July 2007 vol. 45 no. 7 2205-2211

Emergence of a New Norovirus Genotype II.4 Variant Associated with Global Outbreaks of Gastroenteritis
J. Clin. Microbiol. February 2006 vol. 44 no. 2 327-333


IASRの同じ号には日本国内全体の解析の話も掲載。<速報> ノロウイルスGII/4の新しい変異株の遺伝子解析と全国における検出状況

※「病原体サーベイ」は、証拠たる検体をもとに情報をつみあげていくわけで、患者さんの協力、臨床医の公衆衛生についての理解、地方衛生研究所の日々の地道な努力、感染研の担当部門の集約など、色々な人の手で成り立っています。



一般の方には「どうして海外のウイルスが日本にいるんですか?」「誰が持ってくるんですか?」といった形で質問を受けます。
また、変異って何?を数分で説明するのは難しく、公開されている資料の写真をみても実はよく理解できません。

全体像をリアルタイムでおいかけるにはお金のかかる検査を駆使する必要があり、検査結果の解釈には、あつめたサンプル数の限界、サンプルの背景・偏り含めて検討が必要です。
あとでわかることを、今後の対策にどういかせるか。


(NHSセミナー資料から)



公衆衛生の視点での報告があります。

英国では2002年と2003年に大きなノロのブレイクがありました。
こちらのグラフです。臨床の人は想像するに恐ろしいスパイクが!



ぎゃあああああ

で、検討をした研究者の解説。




論文ではもっと詳しいづがあるのですが、
簡単に言うとこのような説明だそうです(by NHS)




ノロは一度なってもそれ以後を予防する免疫獲得にはならず、苦しむ人は何度も苦しむという、手ごわい感染症です。

名前が似ている(といっても2文字というだけですが)ので親戚だと思っている患者さんもいました。

見た目も違う・・・



で、苦しんだ人から「なんでワクチンがないんですかっ!」と言われたりもしますが、残念ながらまだ開発されていません。
万人向けではないかもしれませんが、集団生活をする人たちでは希望者も多いのではないかと思います。

新薬や新しいワクチンの開発状況を調べるときは、「clinical trial」「Pipeline」という言葉とともに検索をするとみつかります。
臨床医向けのサイトよりは、製薬ビジネス業界のサイトや、株価をテーマとする経済系のサイトの情報が早かったりします。
投資家の関心の一つだからですね。

例えば今年の10月の薬品系サイトのニュース。
日本の武田薬品が、ノロウイルスワクチン開発を手がける会社を買収

Takeda to Buy LigoCyte for Norovirus Vaccine and Pipeline
10月5日 Genetic Engineering & Biotechnology News

今年、San Diegoで開催されたID Week(IDSAとSHEAの合同開催)でもノロウイルスのワクチンが話題になっていました。

Norovirus Vaccine Development-Where Are We?

私たちは今どこにいるのか?(開発の途中の) です。


ノロウイルスの基本的なことを日本語で学びたい方は、こちら↓
横浜市衛生研究所 「ノロウイルスによる感染性胃腸炎について

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