ワクチンにかぎったことではないですが、全肯定も全否定も思考停止になりがちです。
インフルエンザワクチンについては、全否定の意見もときどきネット上でみますが、健康リスクの高い人や、ワクチンを接種できない人に配慮のない話になりがちなので注意が必要。
と、思っていたところ、
11月7日に「インフルエンザ予防接種に賛否両論」という記事があったので、技術の進歩と限界を1次情報にあたって書いた記事、あるいは予算が厳しくなるなかで誰を守るのかという社会正義の話の話かと思ったら違いました(- -;)。
賛否両論は高齢者の意見。(病院や自治体はこの場合、賛成反対意見の主体にはなりえませんので状況調査)
インフルエンザは主に冬に流行(最近は夏も流行)します。感染力が強く、流行シーズン中は人口の15-20%がかかります。ウイルスに曝露しても感染しない人もいますし、感染しても症状がほとんどない人もいます(感染した事に本人は気づいていない場合も)。典型的なインフルエンザの症状がなくても周囲にうつす感染源になる時期があります。
気づいていない人も感染源になるという、対策がむずかしい感染症のため、手洗い、マスク、ワクチン、早期隔離(自宅待機)、休養など複数の対策を組み合わせて対応をします。
多くの人は休養すれば回復しますが、毎年一定数の人がインフルエンザとそれに続く肺炎等の合併症で死亡します。その多くは高齢者です。
(メディアが好む「稀な怖い事例」としては、基礎疾患もなにもない成人でのインフルエンザ脳症といった報告は学会情報等を検索すると散見されます)
ワクチンは個人や社会に脅威を与えるような感染症の場合にその開発が急がれます。インフルエンザは昔の歴史書にあるように、たくさんの人の命を奪う流行病としておそれられてきたので、開発されたのはよく理解できます。
参照『病が語る日本史』酒井シヅ
病が語る日本史 (講談社学術文庫)講談社
インフルエンザワクチンの効果は麻疹のワクチンほどのパキッとした予防効果はなくても、高齢者や基礎疾患のある人に接種が推奨をされているのは、重症化(入院)や死亡のリスクを下げるためです。
その事自体はたくさんの検証があります。
米国のようになるべくたくさんの人に接種を推奨する国は世界全体ではまれで、多くの国は対象限定での推奨となっています。(推奨が多いのは高齢者、それ以外に医療関係者など)
今後、新しいワクチンができればまたその政策も変わる可能性があり、後述する新しい鼻にスプレーするワクチンで感染抑制効果を狙って、英国が2014年に、最も感染が広がりやすい2−17歳のこどもへの接種を計画をしています。
インフルエンザはまずこの若年層で流行し,その家族世代へと拡大していくパターンだからです。
これはシーズン中の、発生動向調査の年齢別グラフをみているとその傾向がつかめます。
まず、インフルエンザのワクチンそのものの話ですが、現在、注射をするワクチンと、鼻の粘膜に直接スプレーをするワクチンと2種類開発されています。日本では後者は未承認で、開発途上。海外では既に市販されてます。
何がちがうかというと、誘導する免疫の種類です。現在の注射ワクチンは、ウイルスが侵入する粘膜のところでの感染予防ではなく、そのあとの発症や重症化予防のところに関わっています。
関心ある人はIgA、IgGの違いについての注目の上、 こちらのスライド資料2〜9をご覧ください。
すでにこの新しいワクチンは一般メディアでも紹介されていますので、新事実でもなんでもないですが。
■県が受けた方が望ましいとする「だけ」
望ましいと自治体がいう事自体かなり踏み込んでおり、「だけ」と書く記者の意図がよくわかりません。
■水銀等の化学物質、いらないものは体に入れない
チメロサールはワクチンの防腐剤です。腐る(病原体の汚染)という恐ろしい事態にならないためには重要です。日本のワクチンはこの含有量が米国のワクチン等に比べて低く、またチメロサールが入っていないワクチンもありますので、医療機関がチメロサール無しワクチンを準備するという努力はできます。
ネット検索すれば詳しい解説にあたれます。横浜市衛生研究所「チメロサールとワクチンについて」
ワクチンの安全性のためには汚染を防ぐための工夫は必須です。
■中止の理由は、ワクチンの副作用も挙げられている。ワクチン接種後に死亡したり、発熱やアレルギーなどを発症・・
医薬品の有害事象関連報告はPMDAに随時掲載があります。
平成23年のインフルエンザワクチンの副反応の報告のまとめが2012年9月に公表されています。
1次情報に当たる場合はこちらの資料を確認することになります。
8ページの表1をご覧下さい。
まず分母ですが、50,325,537接種分です。
副反応の報告頻度は554件(0.0011%)。
死亡の報告は、医療機関と製薬会社経由では数がちがうので、報告数の多い医療機関でみると、
7件(0.000014%)
です。
インフルエンザでどれくらいの規模で人が死ぬのかは、個々を診ている臨床医よりも、公衆衛生の専門家にヒアリングをするとわかりやすいとおもいます。
「季節性インフルエンザによる超過死亡、年平均で1万人超と推定」(日経メディカル 2010年)
-----------------------------------------------
東京新聞 11月7日 「インフルエンザ予防接種に賛否両論」
(中略)
「インフルエンザワクチンの接種を中止します」。福井市足羽二丁目の清水内科循環器医院は、A4用紙の表裏に中止理由を記して来院者に配布している。
清水啓司院長は「ワクチンには過去のウイルスのかけらが入れられ、その部分に対する免疫は一時的にできるが、ウイルスはどんどん変異するため効果がない」と判断。ワクチンに水銀などの化学物質が入っていることを指摘し「いらないものは体に入れない」と接種中止を決めた。
中止の理由には、ワクチンの副作用も挙げられている。ワクチン接種後に死亡したり、発熱やアレルギーなどを発症したりすることが懸念され、清水院長は「自然感染の免疫で体を守る方が断然良い」と話す。
(続きはリンク先で)
------------------------------------------------
医療機関のすべてがワクチン接種に対応していません。
在庫管理から説明から、とてもたいへんです。
県の説明に、接種をやめる医療機関が珍しくないという解説がありますが、業務縮小の中でやめる医療機関も実際にはあります。
病院が近くにあればいいですが、医療過疎地域だと、基礎疾患のある方や高齢者は遠くまでいかなくてはいけなくなりたいへんですね。
諸外国では出張ワクチンサービスもあります。
アウトリーチ車が、電車やバスのない地域(主に貧困地域)をまわってくれます。
インフルエンザワクチンについては、全否定の意見もときどきネット上でみますが、健康リスクの高い人や、ワクチンを接種できない人に配慮のない話になりがちなので注意が必要。
と、思っていたところ、
11月7日に「インフルエンザ予防接種に賛否両論」という記事があったので、技術の進歩と限界を1次情報にあたって書いた記事、あるいは予算が厳しくなるなかで誰を守るのかという社会正義の話の話かと思ったら違いました(- -;)。
賛否両論は高齢者の意見。(病院や自治体はこの場合、賛成反対意見の主体にはなりえませんので状況調査)
インフルエンザは主に冬に流行(最近は夏も流行)します。感染力が強く、流行シーズン中は人口の15-20%がかかります。ウイルスに曝露しても感染しない人もいますし、感染しても症状がほとんどない人もいます(感染した事に本人は気づいていない場合も)。典型的なインフルエンザの症状がなくても周囲にうつす感染源になる時期があります。
気づいていない人も感染源になるという、対策がむずかしい感染症のため、手洗い、マスク、ワクチン、早期隔離(自宅待機)、休養など複数の対策を組み合わせて対応をします。
多くの人は休養すれば回復しますが、毎年一定数の人がインフルエンザとそれに続く肺炎等の合併症で死亡します。その多くは高齢者です。
(メディアが好む「稀な怖い事例」としては、基礎疾患もなにもない成人でのインフルエンザ脳症といった報告は学会情報等を検索すると散見されます)
ワクチンは個人や社会に脅威を与えるような感染症の場合にその開発が急がれます。インフルエンザは昔の歴史書にあるように、たくさんの人の命を奪う流行病としておそれられてきたので、開発されたのはよく理解できます。
参照『病が語る日本史』酒井シヅ
病が語る日本史 (講談社学術文庫)講談社
インフルエンザワクチンの効果は麻疹のワクチンほどのパキッとした予防効果はなくても、高齢者や基礎疾患のある人に接種が推奨をされているのは、重症化(入院)や死亡のリスクを下げるためです。
その事自体はたくさんの検証があります。
米国のようになるべくたくさんの人に接種を推奨する国は世界全体ではまれで、多くの国は対象限定での推奨となっています。(推奨が多いのは高齢者、それ以外に医療関係者など)
今後、新しいワクチンができればまたその政策も変わる可能性があり、後述する新しい鼻にスプレーするワクチンで感染抑制効果を狙って、英国が2014年に、最も感染が広がりやすい2−17歳のこどもへの接種を計画をしています。
インフルエンザはまずこの若年層で流行し,その家族世代へと拡大していくパターンだからです。
これはシーズン中の、発生動向調査の年齢別グラフをみているとその傾向がつかめます。
まず、インフルエンザのワクチンそのものの話ですが、現在、注射をするワクチンと、鼻の粘膜に直接スプレーをするワクチンと2種類開発されています。日本では後者は未承認で、開発途上。海外では既に市販されてます。
何がちがうかというと、誘導する免疫の種類です。現在の注射ワクチンは、ウイルスが侵入する粘膜のところでの感染予防ではなく、そのあとの発症や重症化予防のところに関わっています。
関心ある人はIgA、IgGの違いについての注目の上、 こちらのスライド資料2〜9をご覧ください。
すでにこの新しいワクチンは一般メディアでも紹介されていますので、新事実でもなんでもないですが。
■県が受けた方が望ましいとする「だけ」
望ましいと自治体がいう事自体かなり踏み込んでおり、「だけ」と書く記者の意図がよくわかりません。
■水銀等の化学物質、いらないものは体に入れない
チメロサールはワクチンの防腐剤です。腐る(病原体の汚染)という恐ろしい事態にならないためには重要です。日本のワクチンはこの含有量が米国のワクチン等に比べて低く、またチメロサールが入っていないワクチンもありますので、医療機関がチメロサール無しワクチンを準備するという努力はできます。
ネット検索すれば詳しい解説にあたれます。横浜市衛生研究所「チメロサールとワクチンについて」
ワクチンの安全性のためには汚染を防ぐための工夫は必須です。
■中止の理由は、ワクチンの副作用も挙げられている。ワクチン接種後に死亡したり、発熱やアレルギーなどを発症・・
医薬品の有害事象関連報告はPMDAに随時掲載があります。
平成23年のインフルエンザワクチンの副反応の報告のまとめが2012年9月に公表されています。
1次情報に当たる場合はこちらの資料を確認することになります。
8ページの表1をご覧下さい。
まず分母ですが、50,325,537接種分です。
副反応の報告頻度は554件(0.0011%)。
死亡の報告は、医療機関と製薬会社経由では数がちがうので、報告数の多い医療機関でみると、
7件(0.000014%)
です。
インフルエンザでどれくらいの規模で人が死ぬのかは、個々を診ている臨床医よりも、公衆衛生の専門家にヒアリングをするとわかりやすいとおもいます。
「季節性インフルエンザによる超過死亡、年平均で1万人超と推定」(日経メディカル 2010年)
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東京新聞 11月7日 「インフルエンザ予防接種に賛否両論」
(中略)
「インフルエンザワクチンの接種を中止します」。福井市足羽二丁目の清水内科循環器医院は、A4用紙の表裏に中止理由を記して来院者に配布している。
清水啓司院長は「ワクチンには過去のウイルスのかけらが入れられ、その部分に対する免疫は一時的にできるが、ウイルスはどんどん変異するため効果がない」と判断。ワクチンに水銀などの化学物質が入っていることを指摘し「いらないものは体に入れない」と接種中止を決めた。
中止の理由には、ワクチンの副作用も挙げられている。ワクチン接種後に死亡したり、発熱やアレルギーなどを発症したりすることが懸念され、清水院長は「自然感染の免疫で体を守る方が断然良い」と話す。
(続きはリンク先で)
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医療機関のすべてがワクチン接種に対応していません。
在庫管理から説明から、とてもたいへんです。
県の説明に、接種をやめる医療機関が珍しくないという解説がありますが、業務縮小の中でやめる医療機関も実際にはあります。
病院が近くにあればいいですが、医療過疎地域だと、基礎疾患のある方や高齢者は遠くまでいかなくてはいけなくなりたいへんですね。
諸外国では出張ワクチンサービスもあります。
アウトリーチ車が、電車やバスのない地域(主に貧困地域)をまわってくれます。