サンドのデジタルセミナー(ベッドサイドでのコンサルテーション力Up講座)は結核でした。
武蔵野赤十字病院感染症科の本郷偉元 先生にご講義いただき、いただいたご質問を東京女子医大病院の相野田先生に整理していただき回答集が完成しました。
やりとりは、時差にも負けず、太平洋をはさんでサンディエゴと東京で行われました(!)。
本郷先生、相野田先生ありがとうございました。
(青木編集長による補足も追加)
※本資料は講義中にお受けした質問に対する回答をまとめたものです。
あくまで講義の質問に対する私見であり、臨床現場で用いられる際の責任は負いかねます。
実際の臨床現場ではケースバイケースですので、各個人の責任で御活用下さい。
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Q1:結核が無症状の保菌状態でも感染しないのはなぜですか?
A1: 感染していても発症していなければ、排菌はしていません。逆に排菌している状態は発症している状態です。もちろん発症していても排菌しないこともあります。感染していても発症していない状態は、講義で触れましたように菌が抑え込まれている状態です。
Q2:御講演ありがとうございます。気道の感染以外では他人に感染させないとのことですが、たとえば脊椎カリエスの患者さんを手術したり、粟粒結核の患者さんのご遺体を病理解剖したりした場合は感染しないのでしょうか?
A2:通常、肺結核や喉頭結核などで空気感染(飛沫核感染)しない限り人に伝播させることはありません。他の空気感染する微生物(麻疹、水痘)と異なり、肺胞まで届いて初めて感染するという空気感染しか経路がないからです。(他の2つは他の経路でも感染します)
通常気道の結核以外で人に感染させることはありません。
脊椎カリエスや粟粒結核症例の手術や剖検は良く知られたリスクであり感染管理上、重要なポイントです。
Q3:活動性肺結核の場合、治療開始してどのくらいで、他人への感染がなくなるのでしょうか?
A3:個人差があるので、ケースバイケースです。通常2週間程度治療することで多くは感染性がかなり低下するとされていますが、それより短期間で排菌しない場合もありますが、一方で長期間治療をしても排菌を認め続けることもあります。更に排菌する側だけでなく、菌に曝露する側の感受性も重要で新生児やステロイド使用などにより免疫低下状態では感染リスクは遙かに大きくなり、ケースバイケースです。
Q4:リンパ節結核などの肺外結核も肺からの感染で起こる(肺結核を併発している)のでしょうか?
A4: 肺からの感染が広がり、リンパ節を含む体の各部に広がるというのが基本的病態です。但し最終的にどの部位に表現されるかは様々な因子が決定していると考えます。どの部位の結核か、あるいはどのような背景・基礎疾患かによっても肺結核を合併している頻度は異なりますが、それぞれある程度の確率で肺結核を合併しています。多くの場合肺結核のチェックは推奨されます。
Q5:外来で気道の結核が疑われる場合、陰圧個室はそうそうないので、検査のための喀痰の排出で感染を広めないようにするには、どういった対策が望ましいでしょうか。検診で経験することですが、胸部X線で胸膜肥厚や石灰化がある場合、無症候性であれば、結核の活動性の精査はどこまで勧めるべきでしょうか。医療従事者や高齢者の施設入居者のQFT検診は今後、診療所や外来薬局でも施行したほうがよいのでしょうか。保険の制限があり、喀痰検査は多種はできません。塗抹は集菌蛍光染色、培養は液体培地が標準的なのでしょうか。
A5:どのような症例をどこまで精査するかは、症状や所見や背景などを踏まえた総合的な判断が必要なため、ケースバイケースとなるかと思われます。設備については、排痰ブースを設置するして対応するなど、施設ごとの状況によって対応が異なると思われます。QFT検査についても同様と考えます。蛍光染色に関しては、国内の多くの施設で行われており、国内のガイドラインでも蛍光染色が記載されています。 培地については、液体培地の方が検出が若干早いなどメリットもあり、多くの施設で使われていると思います。
Q6:DOTSにてのsick day対策はありますか。嘔吐が続いて内服できない場合は、どうされているのでしょうか。
A6:どうしても内服できない場合には、いったんスキップすることもあります。
時期にもよりますが、通常中断期間が10日(〜1ヶ月)以内程度であればそのまま再開することもありますが明確なエビデンスはありません。状況によってそのまま中断せざるを得ない場合、中断期間によっては、落ちついたところで再度やり直すか、あるいは代替薬なども使い経静脈的投与を考慮することもあります。
現在の活動性や内服できない理由・期間や治療失敗・耐性のリスクなども踏まえて判断することになります。この時点で結核の専門科に委ねるか最低限、コンサルテーションを受けるべき状況ですね。詳しくは成書をご参照ください。
Q7:わかりやすいレクチャーありがとうございます。以下の何点かお教え頂きたく、質問させて頂きました。宜しくお願い申し上げます。
LTBIの有無の評価に、QFTとTSTの2つの検査は両方共に行った方がよろしいのでしょうか?BCG接種歴も踏まえるとQFTだけでもよろしいのでしょうか?もし、両方とも行った方がよいのであれば、その理由もお教え頂けませんでしょうか。
活動性結核を4剤で、LTBIを1剤で、一定の治療期間を完遂した際には、体内から結核菌は排除されたと考えてよいのでしょうか?その後に、免疫抑制治療などを行う際に、抗結核療法など行う必要性はないと判断して良いのでしょうか?
以前に結核治療歴がある方に、免疫抑制治療の予定としました。結核治療には、RFP,INHは用いられていないような以前であると、LTBIと判断して治療を行った方がよろしいでしょうか?治療を行うのであれば、どのような治療がなされていないのであれば治療を行うべきか、おおよその年代くらいまでならば、といったこともお教え下さい。
A7:QFTとツ反の両方を同時に行わないといけない理由は乏しいかと思われます。通常はどちらかを用いることが多いと思われます。但し二つの検査が全く同じ病態を測定しているか不明な点もあり、治療により免疫低下を起こすアレルギー膠原病領域や血液・腫瘍内科領域の専門科には両方使用するかたも居られます。
通常、感受性が良好かつ経過も良好な活動性結核の場合、適切な治療が十分な期間行われていればその後の再燃のリスクは低いと思われます。但し二つの検査が全く同じ病態を測定しているか不明な点もあり、治療により免疫低下を起こすアレルギー膠原病領域や血液・腫瘍内科領域の専門科には両方使用するかたも居られます。
ただし、治療歴があっても、例えば抗結核薬が開発される前の時代など、安静のみで治療していた時代もあります。一概に結核の治療歴があるだけで、体内の結核菌は死滅したと考えるべきではありません。施設ごとにどの年代からどの薬剤を採用できていたかは異なりますので、一概にこの年代なら大丈夫ということはありません。治療歴を個別に確認する必要があります。また、LTBIについては、INHを内服することで、発症の確率を下げるものですが、全くゼロにしてくれるものでありません。LTBIでINHであれば9ケ月間内服治療することで、その後の生涯結核発症率を10%から4%に下げてくれるものです。
Q8:突然変異率の話を聞き4剤併用意義理解できました。ありがとうございました。潜在性の時にINH1剤でいいのは菌量が少ないからですか?
A8:発症していない時の菌量は少ないためと考えられます。詳しくは成書をご参照ください。
Q9:リファンピシンは食前投与が吸収率が高いと思われますが食後投与される事があります。ご意見をおきかせください。
A9:薬理学的には食前投与が吸収率が高い薬です。どのような内服パターンが許容されるかはそれぞれどのような臨床データがあるかにもよります。詳しくは成書をご参照ください
Q10:1)活動性結核に治療開始後、どれ位で感染性がなくなるのでしょうか
2)LTBIにINHを服用した後は、活動性に移行させない為には飲み続けなければならないのでしょうか。
A10:1)A3をご参照ください。
2)一般的には9ケ月間の内服です。もちろん薬剤によっても異なります。
Q11:御講演ありがとうございました。気道のTB diseaseは感染性があるとのことでしたが、肺結核だけでなく、喉頭結核も空気感染するのでしょうか?また、結核性胸膜炎で胸水を採取する場合、胸水にも感染性はあるのでしょうか?
A11: 喉頭結核も空気感染します。肺結核・喉頭結核を伴わない結核性胸膜炎のみであれば、通常人への感染性はありません。A2をご参照ください。
Q12:セミナー中に結核菌の排菌患者との接触があったという症例がいくつかありましたが、排菌があったということはどのようにして確認出きたのでしょうか?他院で結核と診断されたということでしょうか?言いかえると結核と診断された患者との接触があったかということを問診すればよいのでしょうか?
粟粒結核でも感染のリスクは低いと考えてよいのでしょうか?言いかえると粟粒結核の内どれくらいの割合で肺結核となるのでしょうか?
A12:今回、この医療従事者と接触があった方の排菌は他院で確認されています。
排菌者が見つかると、その病院のインフェクションコントロールチームや管轄保健所が接触者調査を行い、必要な人に対してQFTやツ反を行います。今回は排菌者との接触があったことからQFTが施行され、潜在結核感染であることが分かりました。結核を疑う患者さんに対しては、結核患者との接触歴を聞くことは極めて大切です。この問診は診断上とても重要です。
粟粒結核患者のうち、どれくらいが肺病変を持つかは報告により様々です。感染のリスクはあくまで排菌しているかどうかですので、粟粒結核患者さんの場合でも、痰、気管支鏡検体、胃液などを結核検査に提出し、その評価をしたほうがよいと考えます。
Q13:本郷先生、本日は貴重なご講演ありがとうございました。不勉強ながら教えていただきたいのですが薬剤耐性結核菌は何%くらい出現しているのですかまた、起因菌が薬剤耐性結核菌の場合の治療薬選択はどうしたらよいのでしょうか?
A13:詳しくは成書や最新のデータをご参照ください。国や地域によって異なりますが、薬剤ごとに耐性が報告されています(2010年の結核予防会より公表しておられるデータではINH耐性は約5%となっています)。
Q14:排菌している患者に無防備に接触した職員に対してのツベルクリンは定期健康診断時に行うと言われましたが、定期健診までに半年程度の期間がある場合でも問題はないのでしょうか?
A14:ケースバイケースですが、あまり期間が空くようであれば、リスクの高い場合には個別に行うことが考慮されると思います。排菌患者との接触者の検診は、接触後なるべく早期に開始するのが原則です。
:トマツ陰性でも培養陽性となる症例を時々経験します。当院ではトマツで3週間陰性が確認された時点で結核の専門病院からは退院され、しかしその後も培養は相変わらず陽性となっている患者を経験しました。これはどのくらい感染性があるのでしょうか?隔離はしなくても大丈夫なのでしょうか?
A15:通常、排菌の有無は塗抹陽性かどうかで判断されますが、法律上培養陽性かつ塗抹陰性であっても、条件をみたせば入院勧告が考慮されることもあります。各症例についての前医判断で不明な点は、前医にご確認ください。
もちろん未治療で放置し続ければ、その後塗抹が陽転化することもあります。
感染の成立は排菌量、菌の病原性、曝露期間、曝露した方の感受性など多数の要因が関与し一概には申し上げられませんが、治療が奏功し、排菌量が減った状態でトマツ陰性、それでも培養陽性はありうると思います。しかし感染力はかなり低下していると考えて良いでしょう。ちなみに米国では最大15%程度がトマツ陰性、喀痰培養陰性でも臨床的に結核と判し治療する場合もあります。
Q16: ?LTBIの治療やRA患者の抗TNFα薬治療中に、INHの単剤治療・予防が用いられますが、単剤での使用の場合に「INH」が選択される理由は、「抗酸菌への特異性がある(?)こと」や「RFPよりも薬物間相互作用が少ないこと」などによるという認識で良いのでしょうか?根拠となるデータなど、私の検索した範囲では確実なものが分かりませんでした。上記の他に明確な理由などありましたら教えて下さい。
?結核菌の薬剤耐性について教えて下さい。上記にも示したように、予防投与でのINH使用が増えていると考えますが、INH耐性株の頻度などは、増加しているのでしょうか?
A16:INHのデータが多いことや、RFPの場合薬物相互作用が多いことなどが挙げられます。データはINHより少ないですが、INHが使えない時にはRFPが選択されることもあります。薬剤耐性については、データが限られていますが、今後さらに増加する可能性はもちろんあります。耐性を増加させないためにも、抗結核薬の間違った使い方を行わないようにする必要があります。
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(写真:撮影・放送Crewの皆様)
武蔵野赤十字病院感染症科の本郷偉元 先生にご講義いただき、いただいたご質問を東京女子医大病院の相野田先生に整理していただき回答集が完成しました。
やりとりは、時差にも負けず、太平洋をはさんでサンディエゴと東京で行われました(!)。
本郷先生、相野田先生ありがとうございました。
(青木編集長による補足も追加)
※本資料は講義中にお受けした質問に対する回答をまとめたものです。
あくまで講義の質問に対する私見であり、臨床現場で用いられる際の責任は負いかねます。
実際の臨床現場ではケースバイケースですので、各個人の責任で御活用下さい。
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Q1:結核が無症状の保菌状態でも感染しないのはなぜですか?
A1: 感染していても発症していなければ、排菌はしていません。逆に排菌している状態は発症している状態です。もちろん発症していても排菌しないこともあります。感染していても発症していない状態は、講義で触れましたように菌が抑え込まれている状態です。
Q2:御講演ありがとうございます。気道の感染以外では他人に感染させないとのことですが、たとえば脊椎カリエスの患者さんを手術したり、粟粒結核の患者さんのご遺体を病理解剖したりした場合は感染しないのでしょうか?
A2:通常、肺結核や喉頭結核などで空気感染(飛沫核感染)しない限り人に伝播させることはありません。他の空気感染する微生物(麻疹、水痘)と異なり、肺胞まで届いて初めて感染するという空気感染しか経路がないからです。(他の2つは他の経路でも感染します)
通常気道の結核以外で人に感染させることはありません。
脊椎カリエスや粟粒結核症例の手術や剖検は良く知られたリスクであり感染管理上、重要なポイントです。
Q3:活動性肺結核の場合、治療開始してどのくらいで、他人への感染がなくなるのでしょうか?
A3:個人差があるので、ケースバイケースです。通常2週間程度治療することで多くは感染性がかなり低下するとされていますが、それより短期間で排菌しない場合もありますが、一方で長期間治療をしても排菌を認め続けることもあります。更に排菌する側だけでなく、菌に曝露する側の感受性も重要で新生児やステロイド使用などにより免疫低下状態では感染リスクは遙かに大きくなり、ケースバイケースです。
Q4:リンパ節結核などの肺外結核も肺からの感染で起こる(肺結核を併発している)のでしょうか?
A4: 肺からの感染が広がり、リンパ節を含む体の各部に広がるというのが基本的病態です。但し最終的にどの部位に表現されるかは様々な因子が決定していると考えます。どの部位の結核か、あるいはどのような背景・基礎疾患かによっても肺結核を合併している頻度は異なりますが、それぞれある程度の確率で肺結核を合併しています。多くの場合肺結核のチェックは推奨されます。
Q5:外来で気道の結核が疑われる場合、陰圧個室はそうそうないので、検査のための喀痰の排出で感染を広めないようにするには、どういった対策が望ましいでしょうか。検診で経験することですが、胸部X線で胸膜肥厚や石灰化がある場合、無症候性であれば、結核の活動性の精査はどこまで勧めるべきでしょうか。医療従事者や高齢者の施設入居者のQFT検診は今後、診療所や外来薬局でも施行したほうがよいのでしょうか。保険の制限があり、喀痰検査は多種はできません。塗抹は集菌蛍光染色、培養は液体培地が標準的なのでしょうか。
A5:どのような症例をどこまで精査するかは、症状や所見や背景などを踏まえた総合的な判断が必要なため、ケースバイケースとなるかと思われます。設備については、排痰ブースを設置するして対応するなど、施設ごとの状況によって対応が異なると思われます。QFT検査についても同様と考えます。蛍光染色に関しては、国内の多くの施設で行われており、国内のガイドラインでも蛍光染色が記載されています。 培地については、液体培地の方が検出が若干早いなどメリットもあり、多くの施設で使われていると思います。
Q6:DOTSにてのsick day対策はありますか。嘔吐が続いて内服できない場合は、どうされているのでしょうか。
A6:どうしても内服できない場合には、いったんスキップすることもあります。
時期にもよりますが、通常中断期間が10日(〜1ヶ月)以内程度であればそのまま再開することもありますが明確なエビデンスはありません。状況によってそのまま中断せざるを得ない場合、中断期間によっては、落ちついたところで再度やり直すか、あるいは代替薬なども使い経静脈的投与を考慮することもあります。
現在の活動性や内服できない理由・期間や治療失敗・耐性のリスクなども踏まえて判断することになります。この時点で結核の専門科に委ねるか最低限、コンサルテーションを受けるべき状況ですね。詳しくは成書をご参照ください。
Q7:わかりやすいレクチャーありがとうございます。以下の何点かお教え頂きたく、質問させて頂きました。宜しくお願い申し上げます。
LTBIの有無の評価に、QFTとTSTの2つの検査は両方共に行った方がよろしいのでしょうか?BCG接種歴も踏まえるとQFTだけでもよろしいのでしょうか?もし、両方とも行った方がよいのであれば、その理由もお教え頂けませんでしょうか。
活動性結核を4剤で、LTBIを1剤で、一定の治療期間を完遂した際には、体内から結核菌は排除されたと考えてよいのでしょうか?その後に、免疫抑制治療などを行う際に、抗結核療法など行う必要性はないと判断して良いのでしょうか?
以前に結核治療歴がある方に、免疫抑制治療の予定としました。結核治療には、RFP,INHは用いられていないような以前であると、LTBIと判断して治療を行った方がよろしいでしょうか?治療を行うのであれば、どのような治療がなされていないのであれば治療を行うべきか、おおよその年代くらいまでならば、といったこともお教え下さい。
A7:QFTとツ反の両方を同時に行わないといけない理由は乏しいかと思われます。通常はどちらかを用いることが多いと思われます。但し二つの検査が全く同じ病態を測定しているか不明な点もあり、治療により免疫低下を起こすアレルギー膠原病領域や血液・腫瘍内科領域の専門科には両方使用するかたも居られます。
通常、感受性が良好かつ経過も良好な活動性結核の場合、適切な治療が十分な期間行われていればその後の再燃のリスクは低いと思われます。但し二つの検査が全く同じ病態を測定しているか不明な点もあり、治療により免疫低下を起こすアレルギー膠原病領域や血液・腫瘍内科領域の専門科には両方使用するかたも居られます。
ただし、治療歴があっても、例えば抗結核薬が開発される前の時代など、安静のみで治療していた時代もあります。一概に結核の治療歴があるだけで、体内の結核菌は死滅したと考えるべきではありません。施設ごとにどの年代からどの薬剤を採用できていたかは異なりますので、一概にこの年代なら大丈夫ということはありません。治療歴を個別に確認する必要があります。また、LTBIについては、INHを内服することで、発症の確率を下げるものですが、全くゼロにしてくれるものでありません。LTBIでINHであれば9ケ月間内服治療することで、その後の生涯結核発症率を10%から4%に下げてくれるものです。
Q8:突然変異率の話を聞き4剤併用意義理解できました。ありがとうございました。潜在性の時にINH1剤でいいのは菌量が少ないからですか?
A8:発症していない時の菌量は少ないためと考えられます。詳しくは成書をご参照ください。
Q9:リファンピシンは食前投与が吸収率が高いと思われますが食後投与される事があります。ご意見をおきかせください。
A9:薬理学的には食前投与が吸収率が高い薬です。どのような内服パターンが許容されるかはそれぞれどのような臨床データがあるかにもよります。詳しくは成書をご参照ください
Q10:1)活動性結核に治療開始後、どれ位で感染性がなくなるのでしょうか
2)LTBIにINHを服用した後は、活動性に移行させない為には飲み続けなければならないのでしょうか。
A10:1)A3をご参照ください。
2)一般的には9ケ月間の内服です。もちろん薬剤によっても異なります。
Q11:御講演ありがとうございました。気道のTB diseaseは感染性があるとのことでしたが、肺結核だけでなく、喉頭結核も空気感染するのでしょうか?また、結核性胸膜炎で胸水を採取する場合、胸水にも感染性はあるのでしょうか?
A11: 喉頭結核も空気感染します。肺結核・喉頭結核を伴わない結核性胸膜炎のみであれば、通常人への感染性はありません。A2をご参照ください。
Q12:セミナー中に結核菌の排菌患者との接触があったという症例がいくつかありましたが、排菌があったということはどのようにして確認出きたのでしょうか?他院で結核と診断されたということでしょうか?言いかえると結核と診断された患者との接触があったかということを問診すればよいのでしょうか?
粟粒結核でも感染のリスクは低いと考えてよいのでしょうか?言いかえると粟粒結核の内どれくらいの割合で肺結核となるのでしょうか?
A12:今回、この医療従事者と接触があった方の排菌は他院で確認されています。
排菌者が見つかると、その病院のインフェクションコントロールチームや管轄保健所が接触者調査を行い、必要な人に対してQFTやツ反を行います。今回は排菌者との接触があったことからQFTが施行され、潜在結核感染であることが分かりました。結核を疑う患者さんに対しては、結核患者との接触歴を聞くことは極めて大切です。この問診は診断上とても重要です。
粟粒結核患者のうち、どれくらいが肺病変を持つかは報告により様々です。感染のリスクはあくまで排菌しているかどうかですので、粟粒結核患者さんの場合でも、痰、気管支鏡検体、胃液などを結核検査に提出し、その評価をしたほうがよいと考えます。
Q13:本郷先生、本日は貴重なご講演ありがとうございました。不勉強ながら教えていただきたいのですが薬剤耐性結核菌は何%くらい出現しているのですかまた、起因菌が薬剤耐性結核菌の場合の治療薬選択はどうしたらよいのでしょうか?
A13:詳しくは成書や最新のデータをご参照ください。国や地域によって異なりますが、薬剤ごとに耐性が報告されています(2010年の結核予防会より公表しておられるデータではINH耐性は約5%となっています)。
Q14:排菌している患者に無防備に接触した職員に対してのツベルクリンは定期健康診断時に行うと言われましたが、定期健診までに半年程度の期間がある場合でも問題はないのでしょうか?
A14:ケースバイケースですが、あまり期間が空くようであれば、リスクの高い場合には個別に行うことが考慮されると思います。排菌患者との接触者の検診は、接触後なるべく早期に開始するのが原則です。
:トマツ陰性でも培養陽性となる症例を時々経験します。当院ではトマツで3週間陰性が確認された時点で結核の専門病院からは退院され、しかしその後も培養は相変わらず陽性となっている患者を経験しました。これはどのくらい感染性があるのでしょうか?隔離はしなくても大丈夫なのでしょうか?
A15:通常、排菌の有無は塗抹陽性かどうかで判断されますが、法律上培養陽性かつ塗抹陰性であっても、条件をみたせば入院勧告が考慮されることもあります。各症例についての前医判断で不明な点は、前医にご確認ください。
もちろん未治療で放置し続ければ、その後塗抹が陽転化することもあります。
感染の成立は排菌量、菌の病原性、曝露期間、曝露した方の感受性など多数の要因が関与し一概には申し上げられませんが、治療が奏功し、排菌量が減った状態でトマツ陰性、それでも培養陽性はありうると思います。しかし感染力はかなり低下していると考えて良いでしょう。ちなみに米国では最大15%程度がトマツ陰性、喀痰培養陰性でも臨床的に結核と判し治療する場合もあります。
Q16: ?LTBIの治療やRA患者の抗TNFα薬治療中に、INHの単剤治療・予防が用いられますが、単剤での使用の場合に「INH」が選択される理由は、「抗酸菌への特異性がある(?)こと」や「RFPよりも薬物間相互作用が少ないこと」などによるという認識で良いのでしょうか?根拠となるデータなど、私の検索した範囲では確実なものが分かりませんでした。上記の他に明確な理由などありましたら教えて下さい。
?結核菌の薬剤耐性について教えて下さい。上記にも示したように、予防投与でのINH使用が増えていると考えますが、INH耐性株の頻度などは、増加しているのでしょうか?
A16:INHのデータが多いことや、RFPの場合薬物相互作用が多いことなどが挙げられます。データはINHより少ないですが、INHが使えない時にはRFPが選択されることもあります。薬剤耐性については、データが限られていますが、今後さらに増加する可能性はもちろんあります。耐性を増加させないためにも、抗結核薬の間違った使い方を行わないようにする必要があります。
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(写真:撮影・放送Crewの皆様)