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Channel: 感染症診療の原則
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教育関係者における感染予防/管理意識(宮崎県の麻しんニュースから)

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えーと。

みなさん(忘れているかもしれませんが)、2012年に麻疹排除宣言をめざしてとりくんできました。
昨年についてのサマリー。「麻疹 2011年 」IASR 2012年2月号)

・・・WHOの基準を満たすのは残念ながら難しい状況です。
韓国が先に排除宣言をしましたが、一気に一斉に接種キャンペーンをしていました。
(韓国は輸入でワクチン確保。日本は国内メーカーのワクチン製造量のキャパの問題で5年かかったときいていますが・・・)

それ以前に、世界標準の2回接種になるまでにすごい時間がかかっていました。その結果2003年〜 2007年〜 に再度大きな感染拡大の波がやってきたわけです。死亡や重症例も出ました。


そして、麻疹輸出国と揶揄され、2007年には外務省をまきこむほどの問題になり、現地の医療者からはバイオテロかといわれ・・・リスク層であった3期4期に2回目の定期接種を提供することになりました。

41 students, teachers stay in Canada over measles(2007年6月)

この臨時の3期4期は今年度で終わります。この年齢より下のこどもたちは就学時(小学校入学時)に2回目を接種している(はずだ)からです。

で、このとき、高卒年齢以上の人の2回目は特にプランがたちませんでした。予算や現実的な問題からあきらめた、といいましょうか、いずれにしても線引きは必要でした。

このため、年齢が上の層では、未接種、未罹患の感受性者が一定数います。

入学時に接種歴/免疫を確認してくれる親切な大学も増えました(アウトブレイクしたら数千万円単位の対策費もかかるのでそれは避けたい)。
就職時にチェックをしているのは医療機関。ただし、どこまで接種をしているるのかは不明。

病院のことは把握しやすいのですが、学校はどうなんでしょうね?

教育実習生には「麻疹」ワクチン/免疫の確認はルチンになっていますが、(不思議な事に)その他の確認はほとんどされいないそうです。
どっかで見直しをして、風疹、水痘、ムンプス、B型肝炎などもちゃんと制度として整うといいですね・・・。

で、文科省は、学校でのMRワクチン(3期/4期)での接種のための情報提供にとりくんでいます。

「麻しん・風しん予防接種率向上への文部科学省の取り組み」 2012年2月号

けっこう本気でやっているんです。学生に対しては。

「2011(平成23)年度については、TBSの協力を得て、人気テレビドラマである、日曜劇場「JIN‐仁‐」とのタイアップ・リーフレットを作成した。ドラマのテーマに重ねた、「現代(いま)なら守れる」というキャッチコピー・・・
2012(平成24)年度は、第3期・第4期の麻しん・風しん定期接種が行われる最終年度となるが、配付するリーフレットには、中高生の知名度も高い、FIFA女子ワールドカップ2011ドイツで優勝した「なでしこJapan」の写真を用い・・・」



・・・と、がんばってきたのですが、この夏、驚愕の症例報告が!

9月9日の読売新聞の記事です。

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中学で教諭2人がはしか感染、5日間臨時休校に(読売新聞 9月9日)

宮崎県と同県日向市教委は9日、日向市立富島中の男女教諭各1人(いずれも30歳代)と女性教諭の夫(20歳代)の3人がはしかに感染したと発表した。市教委は感染拡大防止のため、8日から同中への生徒の立ち入りを禁止し、10〜14日の5日間、臨時休校と決めた。

県などによると、女性教諭は8月12〜16日、東南アジアに旅行。宮崎市内の自宅に戻った後、高熱やせきなどの症状を訴え、病院を受診した。

8月28日の始業式には出席したが早退。帰宅後、口中の水疱ほうや顔の発疹が広がり、麻疹ウイルスに陽性と診断された。

女性教諭の夫は今月6日に39度の発熱があり、男性教諭は同7日、38・5度の発熱があった。

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このニュ−スをみると、旅行先の東南アジアでウイルスに曝露したのでしょう。ウイルスの遺伝子型がわかれば、○○国での感染ねーということも把握できます。
教員2名は現地で一緒に感染したのだろうと想像できます。教員の夫は2次感染です。
その方の職場に感受性者や妊婦さんがいない事を祈ります。

一緒に旅行にいった中学生は、「うちはいっさい接種しませんことよ。おほほ」というようなご家庭でなければ、2回接種が終わっている世代です。
2回接種が確認されれば、学校の活動を制限される必然性はありません。

養護教諭が把握している感受性者リストをもとに、感受性者だけを自宅待機させる方法もあります。
神戸大学や秋田県の取り組み参照。


先日参加した、DCCでのセミナーでも、トラベル独特の輸入ワクチンもさることながら、本来乳幼児期からルチンで行う行うワクチン接種が終わっているかの確認が重要なんですよ!と講師の先生方が力説していましたよ。このようなニュースを見ると、「ほんどですよねえ」と深くうなづいてしまいます。

「一人出たらすぐ対応」を合い言葉に、その人の行動履歴から接触者の把握を保健所等の協力の下に行います。

仮に、26日くらいから感染力があるとして、この人たちが動き回った先で、感受性者がいると2次3次感染者が出ます。

なんとタイミングが悪いのかとおもいますが、28日が始業式。このとき体調不良で、この日に診断されたようです。
(いまどきですから風疹?と思われたかもしれませんね・・・)

体育館や教室、職員室で曝露した人が発症をするのはここから10日〜12日。
学校を閉鎖する14日までに生徒や他の教員などに発症者が出るとさらに対策期間が延びます。
(最後の症例が出てから3週間ほどをみて収束宣言をします)

このようなことが起きないようにするためには、医療者が免疫や接種歴を確認するように、子どもに関わる人たちも確認が必要だと思います。
(麻しんワクチンだけじゃだめなんですけどね。そういったことがわかる人−地域の小児科や感染症の医師−を教育委員会の会議に参加させることが必要ですね。)

宮崎県は、麻しん対策について熱心な自治体なんです。国が動く前からとりくんでいました。沖縄のように。
「宮崎県の麻疹対策」IASR 2006年

"県では、次の大きな流行を阻止するために2002(平成14)年9月に県の医師会、小児科医会、小児保健協会、市町村など関係機関が連携して、「みやざき−はしかゼロ作戦−プロジェクトM」本部を立ち上げ、予防接種率向上に向けた様々なアクションプランに全県的に取り組んだ。その結果、2003(平成15)年に麻疹の一部地域的流行があったものの、2004(平成16)年の麻疹患者報告数は1人、2005(平成17)年の同報告数はゼロを達成した"

今回のニュースは、文科省や学校関係者が、教育現場における危機管理を見直すチャンスです。
皆様の地域の見直し作業をぜひご支援ください。

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