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Channel: 感染症診療の原則
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風疹流行期の妊娠出産

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WHOでも、ヨーロッパでも米国でも、先天性風疹症候群をなくそう(elimination)という目標をかかげた取り組みが行われています。

昔、いくつかの国では妊娠出産する「女性だけ」に接種をする"ジェンダーワクチン"が採用されていました。日本もそのひとつ。英国もそうでした。


しかし、未接種や、数%いる抗体獲得不十分な人たちの存在もあり、地域流行するとどうしても妊婦の感染や先天性風疹症候群を減らすことができないことがわかり、現在では地域流行をしないように集団免疫を高める方法がとられています。

その意味では、いま日本で流れている「妊婦はご注意!」といったメッセージはどこかズレています。

妊娠したあとに生ワクチンは接種できません。
「妊婦が」注意をしなくてはいけないかのような誤解が産まれています。
人ごみにでないでって実際の生活では難しい。

社会全体で妊婦や赤ちゃんをまもらなくてはいけない、ということの啓発が不足しているわけです。

風疹流行期に懸念されることの1つは、人工妊娠中絶が増えること。

CRSの娘さんを出産、育てた経験をお持ちのお母さんがそのことをホームページに書いています。(ブログでの紹介について了解を得ています)

"この年は風疹の大流行した年だったのです。妊娠初期に風疹にかかると障害を持った子が生まれる。妊娠中期5ヶ月が過ぎた頃だと大丈夫といわれたいました。一番最後に(妊娠5ヶ月目)に残るのは聴覚障害だとも言われていました。
 この頃テレビラジオで、毎日のように妊娠中に風疹にかかったら中絶を進めていたのを覚えています。私も妊娠しても出産は無理と思っていました"

"保健所にも電話相談しました。
すると「産婦人科の先生とご相談なさって下さい」といわれたのです。
前年の流産そして不妊治療3年目だったこもあって産みたい…ずいぶん悩んだ末に出産を決めました。周囲の人は、ずいぶん驚いたのではなかったかと思います。
本当この年は風疹にかかった人が多く、中絶をされた人が多くて子供の数が少ない年でした。"

不妊治療をした末に赤ちゃんを授かったお母さんは、医師の説明をもとに出産を選択します(この経緯や問題についてはブログ内で書かれています)
そして、1週間早い帝王切開で2050g。赤ちゃんは未熟児センターにいきました。

"誕生から3週間後担当の先生から 妙子の状態の説明がありました。妊娠中に風疹にかかった事を話してあったので それをふまえての説明でした。
やはり、風疹のせいで障害は出ていました。それも妊娠初期だったので…先天性白内障・難聴・心臓に穴もあいているようだ と言われました。
簡単に言えば 見えない聞こえない心臓病をもって産まれた ということでした。"

ご両親は、見えない、聞こえない、ことについて1つ1つ最善をつくそうとあちこちの病院を受診します。

"そんなとき私は 妙子を出産した 産婦人科の院長先生に手紙を書いたのです。
不妊治療4年目に 授かった妙子ですが、妊娠中に風疹にかかったことで、やはりいくつもの障害・病気を併せ持って産まれたこと。
何の罪もない妙子に こんな残酷な運命を 背負はせてしまったこと
頼りにしていた 目の手術が出来ないこと。これからどうやって生きていったらいいのか分からないこと、そしてまだまだ続いている、風疹で私や妙子のようなこと
が起きて欲しくないと…不妊治療の患者さんには風疹の予防注射をして欲しいと書いたのです。"

診療の中での医療者の言葉の重み、責任、を感じさせられるエピソードがこの後紹介されています。

風疹は2011年に突然流行しているのではありません。
経緯を知っている公衆衛生の関係者にとっては、またか・・ということかもしれません。

2004年5月16日には東京新聞がこのHPについて記事を書いています

「『1度かかれば大丈夫』は危険 」

その少し前、4月26日は中日新聞が「子に重い障害…「防いで」」を掲載。

「予防接種のお願い」にこめられたメッセージは、これから妊娠出産をする若い人たちにぜひ読んでいただきたいと思います。

お嬢さんは亡くなられています。

親御さんや、彼女をささえてきた学校や福祉の方々の軌跡をたどりながら、最善のためのことができているのかと、いち専門職として疑問がわきます。


上記HPで紹介されていたマンガです。

天国にいるわが子へ―ずっと、いっしょだよ秋田書店

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