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Channel: 感染症診療の原則
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タイでで議論されているHPVワクチン(子宮頸がん関連)

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「水ぼうそう」と「おたふく」という、長年小児科医らが定期接種化を求めていたワクチンよりも、まだデータが不足したり、プロセス不備なHPVワクチンの方が公費支援枠においても優遇されているのは、世界の専門家からみたらドヒャーーーーーーな状況なのであります。

B型肝炎ワクチンにいたっては、1992年にWHOがすべての国の子どもに・・・といっているのに、
国内にキャリアも多いのに、
周辺国は大流行国が多いのに、、、、、!
訴訟後に、国としての総合的な肝炎対策をやってます・・・・!!なはずなのに、
実績や歴史はすでに明確なのに、

現時点で、ロタと同じように「別モノ扱い」なのはなぜでしょうね。
特別な意図を感じます。
治療薬が売れなくなったら困るとか、何か事情があるんでしょうか。ぼそぼそ。


B型肝炎ワクチンについてはエビデンス不足でこれから調べるのかもしれないですが、だったらHPV感染やワクチン、成果のエビデンスってなんですか。接種後の効果をとるモニタリングシステムさえ国はつくってないですよ。


世界中で、製薬会社は市場拡大に熱心です。
それは企業活動としてはけっこうなんですけれども、保健医療の専門家は、別の軸を持つ必要があります。

言っていることが製薬会社のプロパガンダ、講義スライドが製薬会社がつくったものそのまま、、、という医師が多いことにこの2年ほどびっくりしてるのでありました。


HPVワクチンとロタはGSKもMSDも、途上国での展開をはじめています。GAVIとの交渉でうんとやすくなっています。


しかし、そこまで安くはしてもらえない国は、先進工業国と同じように優先順位や費用対効果の議論がおきています。


5月29日のBangkok Postは、タイでHPVワクチンを正式にプログラムの中に入れるかどうかについての記事です。

5月19日はこちら。B600m for HPV vaccine is too much, claim critics


タイは昔と比べてとても豊かになっていますが、それでも下記の値段ではうまくいかないかもしれない、という話が前半にあります。

Stepping up the campaign Against cervical cancer
The debate over the price of the vaccine against HPV has become intense

"I am not against the availability of HPV vaccine," said Nattaya Boonpakdee, secretary of Women's Health Advocacy Foundation. "The availability of the vaccine means females can take advantage of today's medical advancement that helps protect against the deadly disease in the future. But, the proposed price of 500 baht per shot (1,500 baht for a series of three shots) is unacceptable."

1ショットあたり500バーツ。3回接種すると1500バーツ(約 3710円)。これは難しい。受け入れがたい、という意見。
(病気を見たことがある人以外、高く感じられると想像しますが)


さらに、"The vaccine is now priced about 2,200-2,400 baht per shot if received at government hospitals."

現在、政府系の公的な病院で提供されている(自費接種の)ワクチンの価格は、1接種あたり2200-2400バーツ(5423円ー5916円)。


1回接種あたり、日本では12000円+消費税(新聞報道あり、別に秘密の情報では)、ここに医療機関での経費がのっかって、だいたい18000円前後となっています。ギリギリ利益が出るラインではないでしょうか。


突然ですが、皆さん。レストランの経営者の気持ちになってください。

野菜や肉魚、調味料などを買ってきたとします。1200円でした。値段を1800円にしますか?

差額の600円で、賃貸料、光熱費、スタッフの人件費、社会保険費用、交通費、自分や家族の生活費のためのお給料、今後のためのメンテナンス積立金、毎月のぐるなび掲載広告料(すごい高いです)、等などをカバーします。(賞味期限が切れた食材や調味料は捨てないといけません)
たくさんお客さんが来ればいいとしても、そもそも在庫管理や作る人手、運ぶ人手など、出費も増えます。

食べ物ならお客さんが自分で好みのものをオーダーしてくれますが、治療やワクチンの場合は、事前に説明をして、同意確認をして、終わった後も30分ほど調子が悪くないか確認して、、お部屋の中は混雑です。コーヒー出したら終わり、というわけにはいきません。
人件費も、ホールのアルバイトを雇うのと、国家資格を持った人たちを雇うのではその労働単価も違います・・・・


原価と利益の話はどの世界にもありますので、社会人として働いたことがあるなら、あるいは、大学一般教養レベルの経済を学んでいれば、ワクチン15000円では「病院の経営が悪化して、社会貢献のつもりでがんばってきた医師が、ある時クリニックを閉鎖して、病院がまた1つ町から消え、受診先が減って皆が困る」というじたいになりかねないことは想像がつくと思います。


ということで・・・ワクチンの値段のお話にもどします。

税込12700円のワクチンを、行政が公費補助でのプログラムとして15000円程度で依頼してきた場合、ほとんどボランティア、たくさん売ってもへたすれば赤字(ワクチンは事前事後の説明時間をかなりとりますので)。行政によって価格設定も違います。
病院の経営規模にもよりますが、18000円がギリギリのラインかなと思います(別の意見もあると思います)。つまり、現在の多くの病院の価格は妥当であり良心的です。

しかし、びっくりするような価格設定もみたことがあります。

それは、「コミコミ10万円セット」価格です。

この中には医師による丁寧な説明(十分な時間の確保)、3回分のワクチンのお値段まとめ払い、が入っています。
仮に1回接種したところで気が変わって、あとはやめときます(しばらく考えます)とか、引っ越して他の地域でやります、となった場合も返金しないシステムだったそうです。

風の噂では、この病院はこの仕組みを途中でやめたようですが、多くの産婦人科の先生たちが怒っていたのを思い出します。


これから世界でどのような位置づけになるのか注目。

Cost and Effectiveness Evaluation of Prophylactic HPV Vaccine in Developing Countries
Value in Health Volume 15, Issue 1, Supplement , Pages S29-S34, January 2012

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