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Channel: 感染症診療の原則
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男性へのHPVワクチン接種

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病気になったら巨額の医療費が発生する米国は、ワクチンで予防できるものは予防(そのほうがお金もかからない)という方針の国です。個人の健康が大切なことはもちろんですが、制度として税金を投入するかどうかの議論はまた別。

その米国は2012年に、それまで女子のみに推奨していたHPVワクチンを、男子にも推奨開始となりました。
接種自体は認可されていましたのが、この推奨前は同年齢男子は1%前後しか接種されていませんでしたが、最近のデータをみると、接種する男子は15-20倍にまで増えています。

「子宮頸がんワクチン」という不思議な名前でプロモーションを始めた日本では、

「ぷっ。男子には子宮はないわい!」と叫んで終わりな人もたくさんいそうですが。

HPVワクチンは、HPVの感染予防のためのものであり、男性でも女性でもメリットはあります。
ただ5万円近いお金を払う意味があるのかなあ、は、個人や集団、地域によってリスクが違うので検討が必要です。

リスクが高いのは、高齢者よりは若者、男性では異性間性交のみよりは同性間性交をする人たち。

男性とセックスをする男性(MSM:Men who have sex with men)が最もハイリスクな集団となっています。
米国のガイドラインでも、HPVワクチンについて特別な配慮の記載がありました。


2012年5月のLancet Oncologyに関連のメタ分析が紹介されていました。

研究費はオーストラリア政府によるものです(製薬会社じゃありませんぜ)。

Anal human papillomavirus infection and associated neoplastic lesions in men who have sex with men: a systematic review and meta-analysis.
Lancet Oncol. 2012 May;13(5):487-500. Epub 2012 Mar 23.

MSMではHPVに関連したがんのリスクが高いことがわかっており、これに関して、2011年11月1日までに発表された関連の論文の検討を試みました。
(random-effects meta-analysis)検索の基準にあっていた調査研究は53件でした。

詳細については上記リンクでご確認ください。

前に書いたブログ記事 Anal CancerとHPV

よくある誤解は アナルセックスをしてなければ肛門がんにはならない です。
(逆に言うと、 アナルセックスをするから肛門がん になるという誤解)

HPVは粘膜だけでなく皮膚にも付着しますので、皮膚の接触、汗等を通じて、外性器周辺、陰嚢との接触で女性も感染して、女性も肛門がんになります。

男性同士だけではなく、男女間でもアナルセックスはあるわけでございますが〜。

自分を軸にすると、いろいろなものが「ぎょぎょ!」(さかなくん 風にどうぞ)
になります。
現実的、科学的に考えましょう。

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MMWR60(50):1705−1708

Recommendations on the Use of Quadrivalent Human Papillomavirus Vaccine in Males − Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP), 2011

男性に対する4価ヒトパピローマウイルスワクチンの接種勧告
−Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)、2011年12月28日

2011年10月25日、Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)は11または12歳の男児に対し、4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチン(HPV4)の接種勧告を出した。FDAは2006年6月、女性を対象に6、11、16、18型HPVに対してHPV4の使用を認可し、2009年10月には16、18型HPVに対し2価HPVワクチン(HPV2)を認可している。ACIPは11または12歳の女児への定期的な接種を推奨しているが、2009年に男性を対象に性器疣贅の予防に対する使用が認可され、さらに2010年12月、男女ともに肛門癌の予防が追加承認されている。接種率は2010年、13〜17歳の女児にて48.7%(3回接種率は32.0%)、男児では2%未満と低い。男性では主にHPV16により肛門癌、陰茎癌、口咽頭癌などが誘発される。年間の発症数は7,000例と推定され、発症率は1973〜2007年にて口咽頭癌:1%/年、肛門癌:3%/年である。16〜26歳の男性(4,055例)を対象に性器疣贅予防に対する有効性を検討した第3相試験では、3回接種での有効率は89.3%、1回接種では68.1%であった。また、16〜26歳の男性同性愛者(MSM)598例を対象に肛門上皮内腫瘍(AIN)予防に対する有効性を検討した第3相試験では、grade1/2/3 AINに対する有効率は77.5%、grade2/3 AINに対しては74.9%であった。安全性に関しては(分析対象:約5,300例)、軽度〜中等度の投与部位反応、全身反応は頭痛および発熱が多く認められている。ACIPが推奨する11〜12歳の男児へのHPV4の3回接種は9歳より接種可能としており、13〜21歳に対しては未接種または不完全接種の場合は接種を推奨し、22〜26歳に対しては接種してもよいとしている。また、MSM、HIV感染例に対しては26歳までに接種を完了するよう推奨している。

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