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不活化ポリオワクチン承認へ、のニュース 

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今日、日本で来月承認というニュースのSanofiのIMOVAX Polio(不活化ポリオワクチン)は昨年、「中国で」市販後調査のPhase4試験が「すでに」終わっています。

(中国にもずいぶん遅れたけど)やっと承認。うれしいねえ。という感慨もひとしおではありますが、そんな単純なストーリーではありません。

「なぜ、ここまで遅れたのか」そしてそのために、ワクチンが原因でポリオを発症することになった人たちが複数でてしまったのかを考えないといけません。

その意味で、なぜ今年承認にこぎつけることができたのかを考えることも大事です。
ポリオの会の地道な活動、支援をした皆さん、そして、それまでの担当者にはできなかった「変更」への動きをつくった、厚生労働省の担当部署の皆さんに感謝します。
不安な保護者を救うべく、輸入ワクチンを取り入れ、外来で提供してくださった医師の皆様にも感謝いたします。
情報やワクチンへのアクセスが悪い中、遠方、自己負担にもかかわらず、子ども達のために労をとってくださった皆様ありがとうございます。


世の中一般的な誤解として、制度のまずさは「厚労省の(誰かの)せい」という捉え方があります。
厚労省に限った話ではありませんが、通常、最前線で仕事をしている技官や事務方は2ー3年で定期異動をしてしまいます。今回の新しい動きを支えた人たちは、昔々の制度を作った人でも放置してきた人でもありません。

お役所的には、変更につながる新しい提案や施策は「先輩」の仕事の否定につながりかねないので躊躇を伴うという話もききますが、必要があればかわるということです。しかし、霞ヶ関が独自に既存の制度を変えるというイニシアチブは基本的にありません(警察行政)。
無責任だという見方もあるかもしれませんが、国民のニーズや意思にもとづかず、勝手な政策を展開されるといかんよね、というところからきています。
なので、意見も何もなければ現状維持。変更したり新しく変える場合はどこかからの提案や要望、苦情、意見が元になります。

つまり、『関連学会の偉い人が何もいっていないような状況で』、いちドクターが「おかしいとおもいます」と指摘をしても、軽くかわされたりもしますし、市民がTwitterやブログでぶちぶちネチネチいってもインパクトはゼロに等しい(そこで言った人には自分は意見を述べている人であるかのような錯覚は生じます)。

政策に繁栄されるためには、それに有効な手法をとる必要があるわけです。また「風」も大切です。「風」とは、世の中がそう熱望していることを伝えるような盛り上がりをいいます。簡単にいえばメディアの動きです。(その意味で「署名」だけでは難しい)。

ポリオワクチンについては、TVや新聞がとりあげたことが大きかったのではないでしょうか。

しかし。なぜこれまでは取り上げられなかったのか。
とりあげられつつも、不活化へ切り替えられてこなかったのか。

有力な説に、「国産ワクチンへのこだわり」があります。
世界の国をみるとわかりますが、国産ワクチンを持っていない国の方が多いです。多くはメジャーな会社から輸入。
在庫のロジスティックの問題はありますが、国産でなければいけない理由は特にありません。


朝日新聞の記者(和田公一氏)が書いている BAMSAのHP掲載記事「体験的ワクチン報道論」が興味深いです。前後にも文章があるので関心ある方はリンク先でお読み下さい。 ※改行、色や太字は編集部によるもの
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2.ポリオ生ワクチン
 96年のある日、私は、たまたま手にした国立予防衛生研究所(現・感染研)の病原微生物検出情報に載った短信記事を目にした。「長崎県の30歳代の男性がポリオを発病した疑いがある」という記事だった。
ポリオの生ワクチンの接種を受けた子供から父親に2次感染した疑いが濃厚だという。
保健所への届出が遅れ男性から直接ウイルスを検出することができなかった。そのため学術的には重要な情報とまではいえなかったのだろう。だから「検出情報」では、小さな短信記事扱いにしかなっていない。しかし私の新聞記者としての「カン」が騒いだ。
 急いで取材してみると、さらに興味深いことが分かった。当時ちょうど20歳前後になる世代で、ポリオに対する抗体が十分にできていない人が3割に達することが明らかになったばかりだった。
どうやらその世代が受けた生ワクチンの品質が悪かったらしい。
厚生省と予研は96年3月に出した報告書でこんな警告を発していた。「彼らが親となり、その子供が生ワクチンの投与を受けた場合、接触感染の機会は今までよりはるかに大きい。早急に対策を立てるべき時が来ている」はっきり危険を指摘していたのだ。
長崎のケースは、まさにその危険が現実のものになったといえる。私のカンは大当たりだった。
 「他社の記者に気付かれる前に記事にしなければ」と大急ぎで取材を完了し出稿した。結果は、朝刊の1面トップ(96年9月26日付)だった。当時、薬害エイズ問題で、厚生省は内外の専門家が発した危険信号をどうして素早くキャッチできなかったのかと責められていた。「今回も同じではないか」と私は感じた。自分たちが報告書ではっきり警告を発していることが実際に起きたかもしれないのに、関係者がだれひとりその重大性に気付かない。
厚生省、都道府県の衛生部局、保健所、予研、それら相互のネットワークはどうなっているのかと思った。

 ところがこの話には続きがある。
 その後長崎のケースと同様の事例が相次ぎ、国は生ワクチンから不活化ワクチンへと転換を図った。しかし2004年、「日本ポリオ研究所」が提出した治験データがあまりにもずさんで、審査当局から「やり直し」を命じられることになった。当時審査センターにいた技官に事情を尋ねると、「新GCPの基準からすると論外としかいえないような治験をやっている。ただ、日本ポリオのような小さなメーカーを責めるのは気の毒だ」とその技官は言った。「ワクチンは国策でしょう。不活化ワクチンに転換するというなら、感染症の担当課が責任を持ってメーカーを指導し、きちんとした治験を行わせる位のことはやっていいはずです」
 先ほど薬害エイズの教訓に触れたが、ここでもまたその教訓が生かされていないのではないかと思わざるを得なかった。つまり、感染症を担当する部局と新薬の承認審査を司る部局との連携不足だ。当時厚生省の感染症対策の担当者は「治験やり直し」について「とても残念だ」と新聞にコメントしていた。当事者意識が欠落しているとしか言いようがない。
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でも、「連携」してたらうまくいってたんでしょうか?
そこにいる人たちも専門家ではなく数年で異動してしまうひとたちばかり。

悪意はなくても、構造的にリスクが生じやすい状況であることは、いろいろな失敗から学ぶべきことです。
他の先進国のように、プロフェッショナルを配置する施策に変えて行かないと、この先の諸外国との競争以前に、リスク管理が危ういですね。

GCPについては下記をご覧ください。
医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令
国際スタンダードを学ぶ必要があるので、勉強したい人にはこちらのオンラインコースもおすすめ。
Clinical Vaccine Trials and Good Clinical Practice Online Course
ジョンホプの公衆衛生大学院内にあるワクチン研究所が提供
米国FDAによる学習アドバイス。

ところで。

日本のように人口が減少し続ける国の、小さなマーケット重視では製薬会社の未来も危うく、世界で勝負できる技術や製品を持つ必要があるわけです。国内のむにゃむにゃ、、ですったもんだしている場合ではありません。
そして、専門家が対応をしないと、外資にたちうちできないのも現実。感染症対策とワクチンのロジは、他の国でも危機管理事案のひとつです。
「当事者意識」は不可欠。

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