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Channel: 感染症診療の原則
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麻疹 と 自宅隔離 と その周辺

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感染症の臨床、公衆衛生としての拡大予防策を学ぶ際に、どのような病気か(感染症か)のあたりをつけるポイントのひとつが、曝露から発症までの時間(潜伏期間)となります。

感染源となりうるものがたったひとつ(one point source)という机上のシンプルな状況を考えるとします。

感染源Aと曝露した BCDEF。どの程度曝露したのかどのような状況だったのかを下記起こして行きます。
最終的に、すれちがっただけなら関係ないのか、密室に2時間だとやっぱり危ないのかといったことや、過去に似たような状況があったひとはならなかったとか、そういった観察も大事です。
ワクチンを開発したジェンナー等もこうした観察からはじまっています。

今、再び問題になっている麻疹も、外部からあらたに持ち込まれた時の大きなインパクト(島の人口の1/5が死ぬほどの!)、2次感染、3次感染、4次感染、,と広がる様を日数で把握したわけですね。

このことにより、曝露した人は救えないかもしれないけど(お気の毒です・・・)その人が他の人にうつすことを予防することはできます。

・・・かんたんに言えば「家に閉じこもっていて下さい」ということです。

例えば、麻疹の患者が把握されると、今ですと保健所が調査をして、誰と誰にいつ会ったんですか、どこかでかけましたか?とたずねられます。ここで接触した人に連絡が行くのですが、「えー。ワクチン?未接種ですけど?」となると、発症することを想定して次なる人たちにうつさないように自宅に閉じこもっていて下さいとなります。

そりゃそうだろ?と思うかもしれませんが、これはなかなかハードルが高い対策です。

その人が一人暮らしだったら?数日間のご飯はどうするのか?1日に数回は買い物に出ていいよ!なのか。
オーダーして届けてもらって下さいよ、は悪くないアイデアですが、宅急便のお兄さんに感染が広がった事例もありますので、「既に麻疹になった人か、ワクチン2回した人か、60歳以上の人にお願いします」というべきなのか。

また、その人が「日給」で働いている場合、「休めというなら休みますけどその間の所得を補償して下さい」といわれたらどうするのか。
(タイや韓国でもMERSが持ち込まれた際に問題になりました)

なんでこんなことで休まないといけないんだ、別にいいじゃないか、自分の国ではこんなに騒がないぞという日本語が半分くらいしか通じない人たちのへの協力依頼もとてもたいへんです。昨今は日本語だけで感染症対策は進まなくなっています。


自宅隔離?とんでもない、出て行ってよ!と言われてしまう人たちもいます。
そうです。自宅に妊婦さん、赤ちゃん、持病がある人がいる。
「病院で預かって下さいっ!」とご家族から言われることもありますが、まだ何も症状がない人を隔離することは病院ではでません。
「じゃあ、ホテルでもどこでもいきなさい」ということもあるのですが、ホテルで拡大してもいいのか?という問題もあります。
(庭にテント、車の中にいたという笑えない話も)

想像つくでしょうが、最初のほうに書いた「接触した人たちに、麻疹のリスクが発生しまして」と連絡するあたりから、かなりたいへんな思いをします。

オーストラリアは、国が決めたワクチン接種をしない場合、子育て中の税制優遇措置を受けられない仕組みになっています。このような麻疹アウトブレイク騒動が起きるたびに、対策に税金が投じられるということについて納税者からも批判があるからですね。
ルールをまもらないのに税金の優遇措置があるなんておかしくね?ということです。

絶対に絶対にワクチンなんかうつもんかー!というガチの反ワクチンはきわめて少数ですが、その人たちが保育所や幼稚園にいて、発症されたら0歳児がまきこまれる。臨時の休校や休園になったら仕事をやすまなくてはいけない等でまきこまれる保護者がいます。

学校や保育園にもちこまれたら、初期対応は「ワクチンをしていない人」を自宅待機(逆隔離)にするわけですから、最短でも21日間ほど、急に休める仕事のひとばかりじゃないのでこれもかなりたいへんです。
諸外国でも、ワクチンを接種しない場合は「感染症流行時は自宅待機になることを了解します」という書類にサインをするわけですが、「えーーーーだったら接種する」という人も出てきます。

ということで、みなさま。平時のうちにワクチン2回接種をしましょう。

出張の際も、狂犬病とかA型肝炎のまえに、麻疹/風疹/水痘/ムンプスが終わっているか確認を。

GWで海外からウイルスを持ち帰ってくる人もいるかもしれませんが、今の騒動が落ち着いたら、そして夏休みに向けて「2回接種」率があがるよう、プライマリケアの先生方もぜひご協力下さい。

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