小児科医が集まる学会や、ワクチン関係のイベントに、赤いシャツを着て参加している人たちがいます。
Tシャツに書いてあるのは「麻疹撲滅」や「はしかゼロ」等。
「それなんですか?」という会話から始まる啓発もありますから、個人でできるお金もかからない支援の一つでもあります。
数年前に亡くなったこどもたちのことを、看取らざるを得なかった家族の悲しみを忘れていない人たちが今も現場にいます。
IASR「沖縄県における麻疹流行と、 地域における取り組みについて」
台湾からもちこまれた麻疹は、その後、沖縄県内に広がっており、現時点ではまだ終息の目処はたっていません。
一番最初のケースから、うつったひとたちを「2次感染」といいます。
よく教科書にある赤いブツブツの症状、口の中の特徴的な症状(コプリック斑)をみたら「麻疹かな」と思うと思いますが、最初に受診するときは発熱/咳/ウルウルした赤い目など、風邪とみわけがつきません。
このとき待合室にいた人や、そこに出向くまでのバスや電車の中で,立ち寄ったコンビニやデパート等でウイルスが広がります。
ワクチン接種をしていない場合、この体調不良の人と接点をもって(感染して)から10-14日(1回ワクチンをして免疫が多少就いている人はより遅い発症もあります)くらいのところでこの人たちが発症します。
つまり、「麻疹だ!たいへんだ」となったときには、この2次感染者が出ることはある程度覚悟をして取り組みをせざるをえません。
いそいで、この接触者をさがし出し、ワクチン接種したことがあるか罹患したことがあるかたずねます
ワクチン未接種&濃厚接触となると「発症するかもしれない」人ということになります。其の時期に外を出歩いてしまうと、そこからさらに広がります。2次感染者からうつって発症する人たちは「3次感染」です。
これ以降はもう、誰からいつ頃うつったのかな?がわからなくなっていきます。
1人が10人に、10人からさらに10人にと拡大して行くと、1例1例丁寧に説明をしていかないといけないスタッフが不足/疲弊していきます。
このような対応にかかる時間やマンパワーを計算すると、「予防接種プログラムが破綻すると、対策のために公的なお金もたくさん投じられる」ことがわかります。
このことを重要視した国は、「国の標準的な予防接種プログラムのルールを守らない場合」は、ペナルティとして、子育て期間中の税制優遇措置を利用できなくなるなどの仕組みがあります。
オーストラリア No jab, No pay
イタリアも、フランスも義務として接種の強化体制に動いています。
Italy has introduced mandatory vaccinations – other countries should follow its lead
お金の問題は切実です。
麻疹かも?という症例に行政が行うPCR検査は、自治体にもよりますが、1万円前後(それ以上)のコストがかかります。
病院で採取した「ぬぐい液」。通常、保健所が、地方衛生研究所に運んでくれます。
結果もおしえてくれます。ウイルスの型の情報も得られます。
(1万円は予防(ワクチン)に使えたらヨカッタのに)
沖縄の現況としては、最初のところでくいとどめることができなかったため、現在は緊急のワクチン接種が広い対象によびかけられています。沖縄の先生方、行政の人たちは、麻疹との闘い方を知っているので、スピードが速いです。他の自治体だったら、もっと広がるまで(問題が可視化されるまで)様子見になってしまうところが多いのではないでしょうか。
対策をとるタイミングを間違えると、どんなに正しい介入をしてもとめることができない。
焼け野原になるまで終わらない(感染しそうな人が感染し終わるまで)。
一度大きなアウトブレイクをして焼け野原になればしばらく燃えるものがありません(結果として免疫がついた人がふえる)。しかし1期2期のワクチン接種率の低さをみるにつけ、95%を維持する難しさを実感します。
テストなら90点はよさそうですが、95%じゃないとだめなのだ、という厳しさは、例えば100万人の赤ちゃんが産まれるとして、90 万人は免疫をもつとします。10万人が「接種したくない」「微熱が出たので接種を延期した(まま忘れた)」人として、5年で50万人というサイズの「ウイルス感染したら発症するかも」な人たちが存在することになります。
親御さんたちからもよくきかれます。
「周囲にはしかになった人なんかまったくいません。本当に今の時代もこのワクチンが必要なんでしょうか」
ワクチンの一番の副作用は「皆が怖い感染症を忘れてしまう」ことであることを忘れないようにしなくては。
日本から麻疹がなくなる日―沖縄県はしかゼロプロジェクト活動の記録日本小児医事出版社
Tシャツに書いてあるのは「麻疹撲滅」や「はしかゼロ」等。
「それなんですか?」という会話から始まる啓発もありますから、個人でできるお金もかからない支援の一つでもあります。
数年前に亡くなったこどもたちのことを、看取らざるを得なかった家族の悲しみを忘れていない人たちが今も現場にいます。
IASR「沖縄県における麻疹流行と、 地域における取り組みについて」
台湾からもちこまれた麻疹は、その後、沖縄県内に広がっており、現時点ではまだ終息の目処はたっていません。
一番最初のケースから、うつったひとたちを「2次感染」といいます。
よく教科書にある赤いブツブツの症状、口の中の特徴的な症状(コプリック斑)をみたら「麻疹かな」と思うと思いますが、最初に受診するときは発熱/咳/ウルウルした赤い目など、風邪とみわけがつきません。
このとき待合室にいた人や、そこに出向くまでのバスや電車の中で,立ち寄ったコンビニやデパート等でウイルスが広がります。
ワクチン接種をしていない場合、この体調不良の人と接点をもって(感染して)から10-14日(1回ワクチンをして免疫が多少就いている人はより遅い発症もあります)くらいのところでこの人たちが発症します。
つまり、「麻疹だ!たいへんだ」となったときには、この2次感染者が出ることはある程度覚悟をして取り組みをせざるをえません。
いそいで、この接触者をさがし出し、ワクチン接種したことがあるか罹患したことがあるかたずねます
ワクチン未接種&濃厚接触となると「発症するかもしれない」人ということになります。其の時期に外を出歩いてしまうと、そこからさらに広がります。2次感染者からうつって発症する人たちは「3次感染」です。
これ以降はもう、誰からいつ頃うつったのかな?がわからなくなっていきます。
1人が10人に、10人からさらに10人にと拡大して行くと、1例1例丁寧に説明をしていかないといけないスタッフが不足/疲弊していきます。
このような対応にかかる時間やマンパワーを計算すると、「予防接種プログラムが破綻すると、対策のために公的なお金もたくさん投じられる」ことがわかります。
このことを重要視した国は、「国の標準的な予防接種プログラムのルールを守らない場合」は、ペナルティとして、子育て期間中の税制優遇措置を利用できなくなるなどの仕組みがあります。
オーストラリア No jab, No pay
イタリアも、フランスも義務として接種の強化体制に動いています。
Italy has introduced mandatory vaccinations – other countries should follow its lead
お金の問題は切実です。
麻疹かも?という症例に行政が行うPCR検査は、自治体にもよりますが、1万円前後(それ以上)のコストがかかります。
病院で採取した「ぬぐい液」。通常、保健所が、地方衛生研究所に運んでくれます。
結果もおしえてくれます。ウイルスの型の情報も得られます。
(1万円は予防(ワクチン)に使えたらヨカッタのに)
沖縄の現況としては、最初のところでくいとどめることができなかったため、現在は緊急のワクチン接種が広い対象によびかけられています。沖縄の先生方、行政の人たちは、麻疹との闘い方を知っているので、スピードが速いです。他の自治体だったら、もっと広がるまで(問題が可視化されるまで)様子見になってしまうところが多いのではないでしょうか。
対策をとるタイミングを間違えると、どんなに正しい介入をしてもとめることができない。
焼け野原になるまで終わらない(感染しそうな人が感染し終わるまで)。
一度大きなアウトブレイクをして焼け野原になればしばらく燃えるものがありません(結果として免疫がついた人がふえる)。しかし1期2期のワクチン接種率の低さをみるにつけ、95%を維持する難しさを実感します。
テストなら90点はよさそうですが、95%じゃないとだめなのだ、という厳しさは、例えば100万人の赤ちゃんが産まれるとして、90 万人は免疫をもつとします。10万人が「接種したくない」「微熱が出たので接種を延期した(まま忘れた)」人として、5年で50万人というサイズの「ウイルス感染したら発症するかも」な人たちが存在することになります。
親御さんたちからもよくきかれます。
「周囲にはしかになった人なんかまったくいません。本当に今の時代もこのワクチンが必要なんでしょうか」
ワクチンの一番の副作用は「皆が怖い感染症を忘れてしまう」ことであることを忘れないようにしなくては。
日本から麻疹がなくなる日―沖縄県はしかゼロプロジェクト活動の記録日本小児医事出版社