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Channel: 感染症診療の原則
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調査力(能力というよりは体力と手間)

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青木編集長、沖縄、中国CDC、旭中央病院、今日からヨーロッパと出張続きで大忙し。また編集部員&サポーターもこの時期は病院その他新人対応などで大忙し。なので記事やコメント、メール対応が遅くなりますがおゆるしください〜。

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コメント欄や質問でワクチン関連が増えているので、コメント欄ではなく記事で関連の情報を扱おうと思います。

ワクチン関連は、公式の情報がプアなために、困った人たちがネット検索をします。

皆さんは情報検索にどれくらいの時間をかけますか?まあ、とりあえず上位3つくらいは見るとして、その3つはなんなのか。
あるいはアマゾンで本買って調べようかーというときに上位にくる本はなんなのか。
最初に出会う情報にはインパクトがあるのが一般論です。

「リテラシー」訓練がなければたいへんあやうい状況があります。

とりあえず中高生に教えている事項:

「情報が書かれた年月日がある」 書いてないといつの情報かわからない。
「誰(政府なのか、企業なのか、専門団体や専門家なのか、匿名の専門家なのか(そう判断できるかは不確実ですが)、匿名の素人なのか」 文章に責任をもつ固有名詞が無い情報は最終根拠にできない。
「1次情報源が書いてある(リンクや紹介がある)」 これがない場合はただのエッセイか創作文(悪意がある場合はねつ造)。別に匿名のエッセイで自分や子どもの人生の一大事を決めてもそれはその人のセンスであり責任であり自由です。

そして、複数の見方や意見を検討する、というプロセスが大切です。

例え話ですが(フィクションです)、、、、「トマトは野菜だ!」という意見があったら「いや果物だ!」という別の意見も一応みて、それぞれの言い分や主張している人が別のことでしている発言から信憑性を考えます。「どちらでもおいしければいいんじゃない?」という意見や「野菜トマトとフルーツ系トマトを一緒に語るなんて無謀だ。個別に意義を議論しようぜ」という別系統の意見も知ります。

ときに、どれが真実なんだ〜うぉ〜眠れ〜ん!と熱くなる方もいます。

「安くておいしくて安全ならいいわ」な人は平安ですし、「果物だといって販売ルートを拡大して"儲けるつもりだな"。"許せん!"みんなフルーツとして売られているトマトは"買うな"!遺伝子組み換えに"決まっている"!農家は別の野菜トマトを食べて農協にはフルーツとして販売している"らしい"」と違う方向へ走る人もいます。(かなり遠くまで走りますが、ついて行く人はいないし後ろ姿も既に見えません。人生長いのでお気をつけて)

まあ、、、別の意味で不健康ですが、この基礎疾患ならぬ基礎思考は西洋医学では治せません。直ちに健康に影響はないと思いますが周囲げんなりする可能性はあります。

・・・・もとの話にもどりましょう。

ワクチンについていろいろな情報をみたときに、公衆衛生にとってharmとなるような噂を専門団体が迅速に説明/否定したり(米国小児科学会は早いです)、時間をかけて関連事項を科学的に検証して公開したり(Institute of Medicineレポート)といった努力があります。

その他にも発言する人たちから学ぶことができます。(いずれにしても匿名サイトをどの程度活用するかはその人の責任ですが)

この場合、重要なのは誰かが出した「結論」ではなく「方法論」=「考え方」を学ぶことです。

「〜らしいよ」「〜だそうだ」情報をそのまま信じるのではなく、「そうかなあ」「へんだなあ」と調べてみることが大切です。
子どもの健康のような重要な情報を、誰だか分からない人とか匿名動画サイト情報で決めてはだめです。
子どもにもいいますよね「自分で考えなさい」って。よく考えるとはどういうことか。まず保護者が示す必要があります。

考え方、を学ぶ記事:
「 個人的見解に過ぎません」http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20110208 新小児科医のつぶやき

疑似科学、デマ検証をされている方はいろいろいて、「子宮頚癌ワクチン反対派の皆さん」http://kurasi.homeftp.net/~junkdark/item/302 JunkDarkの勉強部屋

「子宮頸がんワクチンの真実」「http://follow-after-the-truth.blogspot.com/ follow after truth

「HPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)のよくある「疑惑」について」 http://d.hatena.ne.jp/usausa1975/20120321/p1 うさうさメモ

根拠不明情報が多い新しい(といってもすでに10年近いデータ蓄積ありですが)ワクチン。

ブログのコメント欄に、「著名科学者が警告するHPVワクチンの危険性 PROMINENT SCIENTIST WARNS OF HPV VACCINE DANGERS」を読んだ人から、著名な科学者が警告するのにワクチンが啓発されているのは製薬会社の陰謀だろうという記載があったので、1つ独立記事にしてみようと思いました。

「著名科学者」はふたつにわけると「著名」+「科学者」なわけです。
著名の定義は、一定の分母の集団にきたら「その人知っている」と名前が知られているということだとおもいますが、「自称有名人」もいます。
科学の場合は、面白い人で「有名」じゃダメで、その領域の仕事で皆に一目おかれている、尊敬されている、というような意味での著名ということが
求められます。

「科学者」については自称もいれば、特定の条件を満たした審査された人しか入れない組織のメンバーであるとか、皆が共有する科学的手法を共通のルールとした議論ができるとか、審査つきの雑誌に論文が掲載されているとか、他の人にもわかりやすい条件設定があります。

そうなの? 公衆衛生でも小児科領域でも、まーったく話題になっていないけど、著名な科学者なの?
このようなときは、地道に調べるに限ります。(関心と時間がないとできませんけどね)
調べないで「著名だ」「科学者だ」というのは危険です。(ビジネスに利用されたりします)

検索してみました。

まず、最初に紹介されているMercola(マーコラ)氏は自分のHPをもっています。
「ジョージフ・マーコラ博士 By Dr. Joseph Mercola」
http://www.mercola.com/ どのようなサイトかというと、自分で「ナチュラルヘルスのホームページで世界ナンバーワン」と書いてあります。”The World's #1 Natural Health Website"。 他のNatural系の人におこられないかしら・・ぶつぶつ。

ワクチンや健康について詳しい、訓練をされた人の多くは医師や狭義の研究領域の専門家であるわけですが、この人はDOでありMDではありません。HPでの説明
ワクチンについていかほど学ぶのかは知りませんが、M.D.(Medicinae Doctor)とD.O.(Doctor of Osteopathic Medicine)の違いに関心ある方は調べてみてください。
" I am an osteopathic physician, also known as a DO. DOs are licensed physicians who, similar to MDs, can prescribe medication and perform surgery in all 50 states. DOs and MDs have similar training requiring four years of study in the basic and clinical sciences, and the successful completion of licensing exams. But DOs bring something extra to the practice of medicine. Osteopathic physicians practice a "whole person" approach, treating the entire person rather than just symptoms."

熱心に書いているのは栄養について。そして途中でご自分の本の宣伝がでてくるのは「定番」。

次にでてくる名前はGrace Filby。「グレイス・フィルビー(Grace Filby)は、ファージ療法の研究でチャーチル奨学金を勝ち取った独立系の医療研究家」
この人のホームページはこちらです。http://www.amazingphage.info/
この人も医師ではありません。ホームページには反ワクチン関連の記載がめだちます。
" Grace Filby BA(Hons) Cert.Ed. FRSA graduated with honours in Biology and Psychology, in Education and with a commendation from the University of Keele, UK in 1974. "
「独立系の医療研究家」の意味するところは不明です。

ここに書いてある、引用しようとしていることの多くは?ですが(引用する文献やサイトが・・・)ひとつひとつの解説は省略します。
フツウに考えて、こども、思春期、女性の健康のスペシャリストの医師や研究者らが問題視や反対をしていないのに、特定の自然療法的なグループだけが反対している状況を理解できればいいのではないかとおもいます。


次、83名もの医者・学者が署名をした、、、という件。

2011年2月のVaccines: Get the Full Storyで、声明を出したのは"International Medical Council on Vaccine"という反ワクチン団体です。調べればわかりますが、感染症やワクチンの専門家の団体ではありません。

通常、骨折の相談を眼科医にはしませんし、微分積分の相談を美術の先生にはしませんが、、どのような団体か。HP情報をみてみましょう。

理事は3人:
Mayer Eisenstein, MD, JD, MPH  (医師、弁護士、公衆衛生修士)
 Eisenstein医師 ダイエットの成果
 自然妊娠のメンターEisenstein医師

(自然妊娠、、、?)

Suzanne Humphries, MD (医師)
 自身のHP http://drsuzanne.net/ ホメオパス、内科医、腎臓内科医、ホリスティック医療コンサルタント
 
(なるほど)

Sherri Tenpenny, DO  (Doctor of Osteopathy )
 自身のHPhttp://drtenpenny.com/default.aspx 
 "alternative medicineの医師で、women's breast HEALTHとヨウ素治療の専門家です"
 関連施設にはエネルギー・ヘルスプロバイダーなどもいます。
"もっとも重要な栄養素であるビタミンDは、風邪やインフルエンザを避け、健康でいるために必要です”
 "通常221ドルする25-OHビタミン検査は、このサイトでオーダーsると69ドルで、クレジットカードでも支払えます"

(典型的なパターンになってきました)

理事会にはアドバイザーが複数います。

Alexander Kotok, MD, PhD (医師で博士号をもっている) ホメオパシーについての博士論文公開サイト

Demetra Vagias, MD, ND  (MDは医師、NDはNaturopathic Medicine の医師?)
自身のHPhttp://www.buildinghealthfromwithin.com/
Natural & Holistic Health Careのクリニックを運営。
※2011年8月に国のデータをみれば殺菌をしていない牛乳は安全だ!とわかるという記事を書いています。びっくり!

Harold Buttram, MD 紹介されているサイト

Jayne Donegan, MBBS
自身のHP http://www.jayne-donegan.co.uk/ リンク先は反ワクチン団体が並んでます。ホメオパシー、、、
MBBS :Bachelor of Medicine and Bachelor of Surgery, the degree given to doctors in countries following British tradition.

Juan Manuel Martinez Mendez, MD 紹介されているサイト。ホメオパシー、、

Kris Gaublomme, MD 紹介されているサイト ベルギーのホメオパス、、

Robert Davidson, MD, PhD
Homeopathic Combination Remedies」
という本を書いています。
イギリスのホメオパス養成学校を設立したひとり。

事務局担当のNick Haas氏はセールスとロジスティック担当だそうです。

「セールス」・・・。

以上が団体の中心的な人の情報です。

この団体が出した文書に「83名が署名」って誰?と思う方はぜひ調べてみてください。名前で検索するだけです。

この団体の主張は、科学的にはおかしなことがたくさんありますし、この団体の話の紹介が好きなNatural Newsも・・・ですが、書いている内容がなぜこのような主張なのかは、背景を知れば「なるほど」と理解できます。まあ、それでこの話は終わり。
スルーする人は別の軸で判断する人たち。大絶賛する人はもともとそちらに調和型なのでしょう。


もっとも、ホメオパシーをどのように考え、説明、位置づけるかは国や個人によって異なります。
イギリスのようにNHSの枠組みから外す、公立大学でのコースやDiplomaプログラムは閉鎖するという検討の進んでいる地域もありますが、医学部を卒業した医師のみが併用を許されている国もあれば、高い学費を払って勉強すれば民間資格がもらえる国、そんなものはなくてもレメディじたいネット等でも購入できる国もあります。

利用する側も、とりあえず受診できないときの安心のために、他のものと同じような感覚で使っているという人もいれば、ホメオパシーも使うけどワクチンも接種するという人もいますし、他人を説得して必須の治療を止めさせてしまいその人が重症化/死亡というような事例もあります。

医師の対応も、本来の治療に影響を及ぼさない範囲の代替医療は併用可(プラセボ効果だとしても)、患者家族に過大な費用負担が生じないことなど条件を決めている人もいれば、最初から全く認めないという人もいます。
全く認めないという人も、効果がないから、という以上に医療ネグレクトにつながるリスクを重視している人もいます。

看護職では積極採用している人も存在します。事例などはまた別の機会に。

疲れたのでちょっと脱力系ネタ。英語でOKな方はこちら。
2分33秒の動画
日本語の字幕が欲しい方はこちらを。
ホメオパシー救急病棟」(忘却からの帰還)

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