嫌な予感は予感で終わりますように。
昨年、関西空港等を中心に麻疹が広がりを見せました。そうはいっても昔よりも接種率が高くなっているため、2008年のような大規模な流行にはならなかったのですが、1000-2000人に1人死亡するくらいに怖い病気であることはかわりありませんし、今も特効薬はなく、重症化しても対症療法しかありません。
小さなお子さんや妊婦さん、免疫が下がるような治療をしている人たちの近くでこのウイルスが流行するような事態は避けないといけないのですが、2017年3月に入ってから、山形県の自動車学校で広がった麻疹の流行がまだ止まっていません。
今日までに25例ほど把握されているそうですが、ワクチン接種をしていると軽い症状の人もいるので(修飾麻疹)、全部を把握できているのかはわかりません。
1例目の横浜の人は渡航先のバリ島で感染したと推定されていますが、3月2日に山形県に移動し、3日に体調を崩しています。
この時点でご本人が「自分は麻疹かもしれない」と思うことは不可能。なぜかというと、麻疹の初期症状は風邪とたいしてかわらないからです。
また発熱しても、すぐに病院にいくひとばかりではありません。忙しければ解熱剤を飲んで様子をみたりもします。
それでも日本は医療アクセスがよいので、高熱となれば受診もしますし、ふだんはないような発疹が出てくれば急いで受診する人も多いです。
問題はこのようなフェーズで受診をする際に、いきなり待合室に行くとそこでも感染が広がる可能性があるということです。
麻疹ワクチンの1期は95%を超える地域もあり、2期も1期ほどではありませんがそれなりに高い接種率が保たれています。
問題は、3期・4期を逃してしまった人たち、2回目の機会がなかったひとたち、接種したのかかかったことがあるのか確認できない不明な人たちが上の年齢に一定数いることです。
数年間の間にプールされ、そこに火が付き、ある点を超えると燃え盛る。
家事も小さなうちには消せるけれど、あるフェーズを超えたらどんな消防車でも止められない。感染症にはそういった怖さがあります。
この週末からは3次感染の人が報告されるようになります。
2次感染の人たちのケアを保健所の人たちが丁寧にフォローをします。
この期間、誰にあったか、どこにいったか等をリストアップし、その人たちが発症するリスクを評価し、助言をしています。
この健康観察機関に大勢の人が集まるようなところに行ったり飛行機などにのってしまうと、そこでまた多数の人が曝露することになってしまうためです。任意ではありますが、観察や遠出を控えるなどの協力を依頼することになります。
(ある時突然言われる・・・ということは予定が狂ってしまうこともある、ということでもあります)
来週が静かに過ぎることを祈ります。
ちなみに3次感染の事例としては、機内で広がった事例
日本人が米国に持ち込んだ事例
があります。
曝露してからどれくらいでどのような症状が出るのだろう?ということは昔々から調査が行われており、おおよそ下記のようなプロセスであるとされています。
変則的になるのはワクチン接種をしている人が軽くかかるときで、発症までに(ウイルスが体内で増えるまでに)時間がかかる、それほど高熱にならない、発疹も軽度というような特徴があります(診断が難しい)。
米国CDCの週報MMWRによくアウトブレイクの報告が掲載されますが、
そこでも曝露・発症(海外では発疹の発現日をとることが多いようです)と検査診断された日についてまとめた図が掲載されることがあります。
患者や医療者が「麻疹かもしれない」と鑑別にあげるまで、検査オーダーが出ませんし、その間に曝露・感染してしまう人たちも増えてしまいますので、麻疹が減って麻疹のことを考えたり素早くみつける訓練ができなくなっていくなかで、「迅速に麻疹を診断せよ」といわれるわけですね(とてもたいへん)。
一つのキーワードは「海外渡航歴」です。
日本は麻疹排除国とWHOから認定をもらいましたが、日本の周囲ではまだまだ麻疹や風疹、水痘なども流行っています。
電話で「熱が出て・・・」「ぶつぶつができて・・」という方がいたら、必ず海外渡航歴を確認しましょう。
ご本人だけでなく家族や身近にいたか、似たような症状の人はいなかったかも確認します。
そして、「〇〇から帰ってきたところです」と言われたら、外来待合室で他の人と曝露しないよう、受診する時間帯・入口などを説明し、なるべくバスや電車などに乗らないよう、家族の車等で来院するよう説明します。
麻疹が発生したら、学校や職場や病院で何をすべきか。
発生する前にできることは何か。
鹿児島大学の徳田先生のご報告が大変参考になりますので、ぜひご一読を。
「関東地方のある高校における麻疹集団発生事例
―感染拡大防止策とワクチン効果に関する疫学的検討―」
MRワクチンや麻疹ワクチンが入手できなくて困っている医療機関が多いです。
調査では足りているはずだという結論だそうです。
1期分がうてないなかで麻疹が拡大すると、合併症リスクの高い子供たちが危険な目にあうことになりますので、海外から持ち込まれる感染症を減らすよう、皆で取り組んでまいりましょう。
大人には世界標準で使われている輸入のMMRワクチンを接種できるようにしているクリニックもありますので、海外に行く前はぜひかかりつけや地域の渡航クリニックなどに相談を。
昨年、関西空港等を中心に麻疹が広がりを見せました。そうはいっても昔よりも接種率が高くなっているため、2008年のような大規模な流行にはならなかったのですが、1000-2000人に1人死亡するくらいに怖い病気であることはかわりありませんし、今も特効薬はなく、重症化しても対症療法しかありません。
小さなお子さんや妊婦さん、免疫が下がるような治療をしている人たちの近くでこのウイルスが流行するような事態は避けないといけないのですが、2017年3月に入ってから、山形県の自動車学校で広がった麻疹の流行がまだ止まっていません。
今日までに25例ほど把握されているそうですが、ワクチン接種をしていると軽い症状の人もいるので(修飾麻疹)、全部を把握できているのかはわかりません。
1例目の横浜の人は渡航先のバリ島で感染したと推定されていますが、3月2日に山形県に移動し、3日に体調を崩しています。
この時点でご本人が「自分は麻疹かもしれない」と思うことは不可能。なぜかというと、麻疹の初期症状は風邪とたいしてかわらないからです。
また発熱しても、すぐに病院にいくひとばかりではありません。忙しければ解熱剤を飲んで様子をみたりもします。
それでも日本は医療アクセスがよいので、高熱となれば受診もしますし、ふだんはないような発疹が出てくれば急いで受診する人も多いです。
問題はこのようなフェーズで受診をする際に、いきなり待合室に行くとそこでも感染が広がる可能性があるということです。
麻疹ワクチンの1期は95%を超える地域もあり、2期も1期ほどではありませんがそれなりに高い接種率が保たれています。
問題は、3期・4期を逃してしまった人たち、2回目の機会がなかったひとたち、接種したのかかかったことがあるのか確認できない不明な人たちが上の年齢に一定数いることです。
数年間の間にプールされ、そこに火が付き、ある点を超えると燃え盛る。
家事も小さなうちには消せるけれど、あるフェーズを超えたらどんな消防車でも止められない。感染症にはそういった怖さがあります。
この週末からは3次感染の人が報告されるようになります。
2次感染の人たちのケアを保健所の人たちが丁寧にフォローをします。
この期間、誰にあったか、どこにいったか等をリストアップし、その人たちが発症するリスクを評価し、助言をしています。
この健康観察機関に大勢の人が集まるようなところに行ったり飛行機などにのってしまうと、そこでまた多数の人が曝露することになってしまうためです。任意ではありますが、観察や遠出を控えるなどの協力を依頼することになります。
(ある時突然言われる・・・ということは予定が狂ってしまうこともある、ということでもあります)
来週が静かに過ぎることを祈ります。
ちなみに3次感染の事例としては、機内で広がった事例
日本人が米国に持ち込んだ事例
があります。
曝露してからどれくらいでどのような症状が出るのだろう?ということは昔々から調査が行われており、おおよそ下記のようなプロセスであるとされています。
変則的になるのはワクチン接種をしている人が軽くかかるときで、発症までに(ウイルスが体内で増えるまでに)時間がかかる、それほど高熱にならない、発疹も軽度というような特徴があります(診断が難しい)。
米国CDCの週報MMWRによくアウトブレイクの報告が掲載されますが、
そこでも曝露・発症(海外では発疹の発現日をとることが多いようです)と検査診断された日についてまとめた図が掲載されることがあります。
患者や医療者が「麻疹かもしれない」と鑑別にあげるまで、検査オーダーが出ませんし、その間に曝露・感染してしまう人たちも増えてしまいますので、麻疹が減って麻疹のことを考えたり素早くみつける訓練ができなくなっていくなかで、「迅速に麻疹を診断せよ」といわれるわけですね(とてもたいへん)。
一つのキーワードは「海外渡航歴」です。
日本は麻疹排除国とWHOから認定をもらいましたが、日本の周囲ではまだまだ麻疹や風疹、水痘なども流行っています。
電話で「熱が出て・・・」「ぶつぶつができて・・」という方がいたら、必ず海外渡航歴を確認しましょう。
ご本人だけでなく家族や身近にいたか、似たような症状の人はいなかったかも確認します。
そして、「〇〇から帰ってきたところです」と言われたら、外来待合室で他の人と曝露しないよう、受診する時間帯・入口などを説明し、なるべくバスや電車などに乗らないよう、家族の車等で来院するよう説明します。
麻疹が発生したら、学校や職場や病院で何をすべきか。
発生する前にできることは何か。
鹿児島大学の徳田先生のご報告が大変参考になりますので、ぜひご一読を。
「関東地方のある高校における麻疹集団発生事例
―感染拡大防止策とワクチン効果に関する疫学的検討―」
MRワクチンや麻疹ワクチンが入手できなくて困っている医療機関が多いです。
調査では足りているはずだという結論だそうです。
1期分がうてないなかで麻疹が拡大すると、合併症リスクの高い子供たちが危険な目にあうことになりますので、海外から持ち込まれる感染症を減らすよう、皆で取り組んでまいりましょう。
大人には世界標準で使われている輸入のMMRワクチンを接種できるようにしているクリニックもありますので、海外に行く前はぜひかかりつけや地域の渡航クリニックなどに相談を。