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Channel: 感染症診療の原則
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薬剤師のためのベッドサイドティーチング2015 須藤先生 第2回 Q&A

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少し遅くなりましたが、先日の薬剤師のためのBST。須藤先生によるQAです。


①質問: 熱発があり、FOCUSを絞り込むというスライドがありましたが、実際、注射の業務をしている中、DRから抗菌薬の選択の相談をされます。FOCUS不明なケースが多々あります。実臨床の場で、先生方はFOCUS不明な感染症にどれ位の頻度で出会われるのでしょうか?

「Focus不明の」感染症というのは,「誰が」診るのかによって頻度が変わり得ます。ある医師にとってfocus不明でも,別の医師がみたとたんにfocusが明らかになることだってあります。どれだけfocusがどこにあるか想定して絞りこむ努力をするか,によって頻度は変わる訳です。担当医がその努力をしていないだけの「focus不明熱」は「なんちゃって不明熱」と呼ばれます。本当の意味でのfocus不明というのは,そうそうあるわけではないと思います(あまり出くわしたくないですが・・)。
 ただし「focus不明」とされやすい感染症はあると思います。例えば骨髄炎・化膿性脊椎炎,男性・女性ともに骨盤腔内の病変とか後腹膜臓器だとか,心内膜炎とか・・。逆にfocusがわかりにくい時には,積極的にこのような臓器の感染を疑って,積極的に探しにゆくことになります。抗菌薬の選択は,あくまでもどこがfocusかを考えて,そこからどの原因菌を想定するかによって決まります。


②質問: P22 化膿性脊椎炎に使用した薬剤についてお教え頂きますよう、宜しくお願い申し上げます。

この症例では肺炎球菌でしたのでABPC でした。

③質問: 前回のバイタルサインの時に、バイタル逆転の話しがありましたが、寝たきりの老人で血圧が下がってきて脈が110.バイタルの逆転が起きているときに、何を使用して脈を下げるのかβブロッカーは適切か?

大切なことは「何を使用して脈を下げるか」ではなくて,「なぜ血圧が下がって脈拍が上昇しているのかを考える」ことです。例えば,どこかからの出血や脱水などの血管内容量低下 (hypovolemia)が疑われた場合には,治療は「原因検索を行いつつ」並行して輸血や輸液によって容量を回復させることです。単に何も考えずにβブロッカーを投与するのは治療ではなく,患者を非常に危険な状態に向かわせることになります。


④質問: 手の腫脹・痛みで痛風を疑う事はあり得ますか?
手の腫脹・痛みで疑い得る疾患は何でしょうか?

頻度は多くないですが,手に痛風がくることもあります。この場合,蜂窩織炎との鑑別が問題になるかもしれませんが,発症の経過が参考になります。1-2日で急に症状が悪化するという経過を痛風は取ることが多く,加えて尿酸が高値であれば可能性が高くなります。しかしレンサ球菌などによる蜂窩織炎でも,同じような経過は取りうるので,実際には痛風の治療(NSAIDs)と抗菌薬の両方を(下品だなぁと思いながらも)やらざるを得ないこともあります。


⑤質問: 頸静脈怒張に対して、よく使われる心不全の薬はありますか?

頚静脈怒張の原因が,体液過剰による心不全であれば利尿剤(フロセミドなど)を最初に使うことが多いです。あくまでも原因治療が原則です。

⑥質問: 痛風発作が起きている時にNSAIDをどのタイミングで抜くのかを教えて頂けますでしょうか?

発熱や局所の発赤・腫脹・疼痛などの自覚症状が改善したら,中止にします。
ちなみに痛風の急性発作時には,アロプリノールなど尿酸値を下げる薬剤は使わないのが原則です(もし服用中であれば中止せずに継続)。血清尿酸値を変動させることが,痛風発作を誘発するとされているからです。


⑦質問: 心不全患者様で、必ず頸静脈怒張がみられるのか?

必ずではありません。基本的に頚静脈拍動から得られる情報は,「右心系」の循環動態です。ですから,多くはないですが,右心系のうっ滞が軽度で左心系のうっ血が主体の心不全の場合,頚動脈怒張が見られないこともあります(実際,私自身は経験があります)。てっきり喘息だと思って治療しても全然良くならずに,BNPが異常高値であることが判明して,利尿剤を使用したらあっというまに喘鳴が消えたという恥ずかしい経験があります。

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