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Channel: 感染症診療の原則
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治らない梅毒 と その周辺

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治らないんですけれども・・・という相談は、患者さんからも、医療者からもきます。

東京、新宿界隈で流行している「再興感染症」の梅毒は、今でもペニシリンが有効(耐性にならない仕組みがある)ですが、治らない系相談が続きます。


-編集長、治らない一番の理由はなんでしょうねえ・・・

「ほぼ9割、患者が薬を飲んでいない(指示通りに)からである」

-それは処方した医師が信頼されていないってことですかね・・・

「ありうる」

-ほかには?

「治療が間違っている・中断している」

-ほかにはないですか?

「再感染が続いている。流行が続く限りしかたない。」

-げげ!

「診断が間違っている」

-ヘルペスと思ってウイルスの薬とか・・・コンジローマと間違えるとか、報告は多いですしね。



梅毒に感染してできた抗体は、再感染を予防しない→曝露すれば何度でも感染しうる・・というわけですが



-どの治療がベストなんですかね?

「ベストの選択肢の注射剤は日本では販売中止ですでに手元にない。ないなかで最前線の医師が格闘をしておる」

-経口ではサワシリン、ドキシサイクリン・・・

「そのあたり」

-バイシリンはだめですかね?

「バイシリンは海外(英語の文献)の場合は注射剤。日本は経口剤。胃酸に弱い。昔は、フェネチシリン(商品名 シンセペン)があったがすでに販売中止」


【参考】
山本舜悟先生のブログ 「ペニシリンGの内服薬について」


-アジスロマイシンを使ったことは?

「梅毒に?ない」

-エリスロマイシンは・・・

「そもそもエリスロマイシンを処方したのは人生で1度だけ。ケンタッキーの教授には、嫌いな人に出す薬(他に選択肢があればもちろんつかわない…ほどにつらい)と教えを受けた」

-そうなんですか・・・

「エリスロマイシンは米国の専門医試験の選択肢でひっかけ問題として出る」

-ほほう。そのような設定で?

「妊婦がペニシリンアレルギーで梅毒。しかしエリスロマイシンは先天梅毒予防で効果は約束されていないから選んではいけない。だから減感作をしてペニシリン・・という話」

-ぎょえ。たいへんですね。

「妊婦にトレポネーマをうつしてはいけない。トレポネーマとliving togetherのときに妊娠をしてはいけない。治療を終えてから」

-ところで。トレポネーマはいつやっつけられるんでしょう?

「どういう意味だね?」

-たとえば―、10日間とか2週間内服するじゃないですがー」

「たしかに」

-いつごろから性交渉可能なんでしょう?

「・・・・そういった検証があるのか調べないとわからない」

-RPRが下がるのはゆっくりですよね?

「いかにも」

-その前に治っているわけで

「たしかに」

-例えば、治りかけの時に別の部位にトレポネーマが感染すると・・・

「パートナーも治療しないと」

-自分には何の症状もないと、頑なに受診をしない人はどうしたら・・・

「・・・」

-日本には米国の Disease Intervention Services のような訓練もないですし、「目の前の患者以外の健康もケアする」意識が乏しい医療機関・医療者もありますし、パートナーに直接言いたくない場合に使えるような支援プログラム(オーストラリアのLet them knowや、米国のInSpotのようなサイト)も公的なプログラムの中にありませんが

「一番伝えにくい話だし」

-そもそも連絡しようにも相手の名前や連絡先がわからない。アカウントネームしかしらないとか

「・・・」

-そんななか、何を一番危惧しますかね?


「日本ではこれまで防げていた、異性間交渉での女性へのHIVの拡大ではないかね?」

(別記事につづく)


1950年代の梅毒流行とその対策(約30分 Youtube) Syphilis - A History & the Medical Knowledge of STD's to 1950's


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