月曜日の夜に、出先でたまたまつけていた民放がエボラやデングを含めた感染症の話題でした。
参考
情報が間違っていたり、音声や画面のつくりが、「ほらほら〜こわいでしょ〜」というありがちな内容、かつコメンテーターもトホホでしたが、そうしたメディアの課題も見えてよかったですね。
下取材をあまりしてないのと、なぜこの人…を並べたための課題。
本当の専門家を出したら、メディアの期待どおりにはしゃべりませんから、まあ、しかたないのかもしれません。
…人権への配慮、リスコミなど今までの、努力ぶち壊し感はあり、メディア対応の注意をあらためて学んだ"事例"でした。
番組の中で、よくある質問「もしも日本にエボラがはいってきたら」がとりあげられていました。
それってあり得ること?入ってきたらどうするの?広がるの?どうなるの?ですが。
(いろいろ編集された結果)流れたのは、可能性が(仮説として)日本に恨みのある人が感染した状態で国内に入り移動するというメディアが好きそうな話、そして元厚生労働大臣が、「(患者は新宿の国立国際に」という話をしてました。
国の制度としては、エボラをはじめとする一類感染症は「第一種感染症指定医療機関」が入院受け入れをすることになっています。全国に44病院、ベッド数はなんと80の規模です。
国立国際、成田赤十字、りんくう は、未知の、まだよくわからない段階の病原体の症例も受け入れる特定感染症の病床を持ってます(日本に合計8床、来年常滑市民病院の2床を加えると10床になります)。
エボラが日本に入ってくるパターンとしては、
1)流行地で感染した人が機内や帰国時体調不良で、検疫の段階で把握され、一類対応医療機関に移送されるケース。
感染症法との違いですが…
検疫法は所長に強い権限を与えています。あまり迷うことなく指示どおりにことは進むのではないかと思います。
同行した濃厚接触が想定される人は「停留」となり、やはり第一種(なければ第二種)に移送され、"うたがい"症例の検査結果が判明するまで個室ですごすことになります。
国や自治体のアルゴリズムを見ると、村山にある感染研のラボ(BSL3)で検査をすることになってますが、検査判明までの、時間としてはPCRに必要な数時間プラスそこまで持っていく(陸路だそうで)時間が加わります。
陰性でした、の場合は停留は解除され、接触者は入国手続きをして(空港から移送される時点では入国前なので)もとの生活にもどります。
"うたがい"の方は体調不良ですから、そのまま病院で渡航歴ありの患者さんとして必要な検査治療を受けることになります。
エボラ疑いでエボラではない、となると、可能性的には何?ですが、今年アフリカでとても多いマラリアなのか、あるいはチフスなのか、そもそも感染症じゃないのかという検討に。
アルゴリズムにはマラリアやチフスを否定してからエボラの検査なのですが、現実的には難しいのではないかと思います。(実際対応に迫られたら早めに保健所や国立国際医療研究センターや感染症研究所に相談)
熱帯熱マラリアとなればそれはそれで急いで治療が必要で、治療が可能な病院に移送するか治療薬を入手するかという話になります。1類対応施設ではできるのではないかと思います。
空港経由の症例の対応は、検疫法をよく読み、事前に検疫や保健所を交えた机上訓練をしておくことが重要です。
ちなみに、検体を感染研まで運ぶのは検疫です。
パターン2。
2)西アフリカから帰国して潜伏期のため検疫は問題なく、自宅に戻って発症。
これは9/30に米国で確認された、西アフリカ渡航歴のあるエボラ症例のパターンです。
19日にリベリア発、テキサス州ダラスに翌日到着。その5日後に体調不良で受診、入院しています。30日に確定されるまで数日ありました。
Texas Health Presbyterian Hospital に入院中とのことです。
(エボラの場合、もともと陰圧でなくてもよく、設備として特別なところでなくてもよいことになっています)
機内では体調不良ではありませんので、周囲に広がるリスクもありません…ということと、5例目ということもありリスコミもスムーズです。
もうひとつ、9/30のMMWRに、セネガルの対応の成功例が紹介されています。
Importation and Containment of Ebola Virus Disease — Senegal, August–September 2014
ギニアから来た男性症例からは感染は広がりませんでした。
日本の場合はどうでしょうか。
近くの医療機関で渡航歴から"うたがい"になり、保健所に相談。一類に移送します(検疫法と違い感染症法では、患者さんに協力のお願いをします=同意が必要)。
移送は通常の救急車対応ではなく、自治体が事前に契約をしている移送車になります。
都の場合は消防と契約をしてるので、都庁から消防に移送依頼がいき、そこで通称ラッサ車とよばれる感染対応の車両を準備し、場合によってはアイソレーターを積んで病院間の移送を行います。
(余談ですが、ラッサ車の名称は以前、都内で報告されたラッサ熱の対応をしたことからのようです。
東大医科学研究所から荏原病院に移送されました)
検体は保健所が感染研にはこびます。
検疫法の「停留」にあたる、濃厚接触者対応はこの時点で基準はありません。
いた場合に対応するのは保健所です。
エボラの検査が行われたあとに陽性となった場合には、初期対応に当たった医療者の曝露レベル評価が行われ、21日間の健康観察が行われます。
この期間に発熱などがあった場合には、誰にどのように方向をするのかを明確にしておく必要があります。
受診の際に救急車をよぶ場合ありますね。救急隊との連携はどうなっているか、確認が必要になります。
3)直接、第一種指定医療機関を受診。
たまたま近くの大きな病院、あるいは渡航者対応をしてるので…ということで受診する場合があります。
移送がない分、曝露する人は減りますが、通常の受付や、ERでどのように対応するのか、院内の移送はどうするのか?などが確認事項です。
4)現地からのevacation
現地で活動をするなかで感染した場合にどうするか?です。
母国に運んで治療をするのか、もっと近くの国に運んで治療をするのか(受け入れてもらう)、その場合は誰がどの予算でどのように運ぶのか ?
各国の軍隊がどのようにしているかは、メディアが伝えている部分と、公開されてはいない部分とあります。
ナイジェリアの例を思い出しましょう。
体調の悪い人が飛行機に乗り移動。空港でクラッシュし、搬送先の病院への移送、診療にかかわった医療者が感染して行きました。
移動禁止の指示を従わなかった人もいました。
初期対応について、恵まれた条件の日本で、あと何が足りないのか。この先もおこりうることとして、皆で見直しや再確認が必要です。
結核もHIVでも、うちには来ないよ、といって甘く見てたところで問題がおきましたので。
これだけグローバルな時代、すくなくとも責任者や担当者は複数シナリオとロジを考えておかないと、ですね。
参考
情報が間違っていたり、音声や画面のつくりが、「ほらほら〜こわいでしょ〜」というありがちな内容、かつコメンテーターもトホホでしたが、そうしたメディアの課題も見えてよかったですね。
下取材をあまりしてないのと、なぜこの人…を並べたための課題。
本当の専門家を出したら、メディアの期待どおりにはしゃべりませんから、まあ、しかたないのかもしれません。
…人権への配慮、リスコミなど今までの、努力ぶち壊し感はあり、メディア対応の注意をあらためて学んだ"事例"でした。
番組の中で、よくある質問「もしも日本にエボラがはいってきたら」がとりあげられていました。
それってあり得ること?入ってきたらどうするの?広がるの?どうなるの?ですが。
(いろいろ編集された結果)流れたのは、可能性が(仮説として)日本に恨みのある人が感染した状態で国内に入り移動するというメディアが好きそうな話、そして元厚生労働大臣が、「(患者は新宿の国立国際に」という話をしてました。
国の制度としては、エボラをはじめとする一類感染症は「第一種感染症指定医療機関」が入院受け入れをすることになっています。全国に44病院、ベッド数はなんと80の規模です。
国立国際、成田赤十字、りんくう は、未知の、まだよくわからない段階の病原体の症例も受け入れる特定感染症の病床を持ってます(日本に合計8床、来年常滑市民病院の2床を加えると10床になります)。
エボラが日本に入ってくるパターンとしては、
1)流行地で感染した人が機内や帰国時体調不良で、検疫の段階で把握され、一類対応医療機関に移送されるケース。
感染症法との違いですが…
検疫法は所長に強い権限を与えています。あまり迷うことなく指示どおりにことは進むのではないかと思います。
同行した濃厚接触が想定される人は「停留」となり、やはり第一種(なければ第二種)に移送され、"うたがい"症例の検査結果が判明するまで個室ですごすことになります。
国や自治体のアルゴリズムを見ると、村山にある感染研のラボ(BSL3)で検査をすることになってますが、検査判明までの、時間としてはPCRに必要な数時間プラスそこまで持っていく(陸路だそうで)時間が加わります。
陰性でした、の場合は停留は解除され、接触者は入国手続きをして(空港から移送される時点では入国前なので)もとの生活にもどります。
"うたがい"の方は体調不良ですから、そのまま病院で渡航歴ありの患者さんとして必要な検査治療を受けることになります。
エボラ疑いでエボラではない、となると、可能性的には何?ですが、今年アフリカでとても多いマラリアなのか、あるいはチフスなのか、そもそも感染症じゃないのかという検討に。
アルゴリズムにはマラリアやチフスを否定してからエボラの検査なのですが、現実的には難しいのではないかと思います。(実際対応に迫られたら早めに保健所や国立国際医療研究センターや感染症研究所に相談)
熱帯熱マラリアとなればそれはそれで急いで治療が必要で、治療が可能な病院に移送するか治療薬を入手するかという話になります。1類対応施設ではできるのではないかと思います。
空港経由の症例の対応は、検疫法をよく読み、事前に検疫や保健所を交えた机上訓練をしておくことが重要です。
ちなみに、検体を感染研まで運ぶのは検疫です。
パターン2。
2)西アフリカから帰国して潜伏期のため検疫は問題なく、自宅に戻って発症。
これは9/30に米国で確認された、西アフリカ渡航歴のあるエボラ症例のパターンです。
19日にリベリア発、テキサス州ダラスに翌日到着。その5日後に体調不良で受診、入院しています。30日に確定されるまで数日ありました。
Texas Health Presbyterian Hospital に入院中とのことです。
(エボラの場合、もともと陰圧でなくてもよく、設備として特別なところでなくてもよいことになっています)
機内では体調不良ではありませんので、周囲に広がるリスクもありません…ということと、5例目ということもありリスコミもスムーズです。
もうひとつ、9/30のMMWRに、セネガルの対応の成功例が紹介されています。
Importation and Containment of Ebola Virus Disease — Senegal, August–September 2014
ギニアから来た男性症例からは感染は広がりませんでした。
日本の場合はどうでしょうか。
近くの医療機関で渡航歴から"うたがい"になり、保健所に相談。一類に移送します(検疫法と違い感染症法では、患者さんに協力のお願いをします=同意が必要)。
移送は通常の救急車対応ではなく、自治体が事前に契約をしている移送車になります。
都の場合は消防と契約をしてるので、都庁から消防に移送依頼がいき、そこで通称ラッサ車とよばれる感染対応の車両を準備し、場合によってはアイソレーターを積んで病院間の移送を行います。
(余談ですが、ラッサ車の名称は以前、都内で報告されたラッサ熱の対応をしたことからのようです。
東大医科学研究所から荏原病院に移送されました)
検体は保健所が感染研にはこびます。
検疫法の「停留」にあたる、濃厚接触者対応はこの時点で基準はありません。
いた場合に対応するのは保健所です。
エボラの検査が行われたあとに陽性となった場合には、初期対応に当たった医療者の曝露レベル評価が行われ、21日間の健康観察が行われます。
この期間に発熱などがあった場合には、誰にどのように方向をするのかを明確にしておく必要があります。
受診の際に救急車をよぶ場合ありますね。救急隊との連携はどうなっているか、確認が必要になります。
3)直接、第一種指定医療機関を受診。
たまたま近くの大きな病院、あるいは渡航者対応をしてるので…ということで受診する場合があります。
移送がない分、曝露する人は減りますが、通常の受付や、ERでどのように対応するのか、院内の移送はどうするのか?などが確認事項です。
4)現地からのevacation
現地で活動をするなかで感染した場合にどうするか?です。
母国に運んで治療をするのか、もっと近くの国に運んで治療をするのか(受け入れてもらう)、その場合は誰がどの予算でどのように運ぶのか ?
各国の軍隊がどのようにしているかは、メディアが伝えている部分と、公開されてはいない部分とあります。
ナイジェリアの例を思い出しましょう。
体調の悪い人が飛行機に乗り移動。空港でクラッシュし、搬送先の病院への移送、診療にかかわった医療者が感染して行きました。
移動禁止の指示を従わなかった人もいました。
初期対応について、恵まれた条件の日本で、あと何が足りないのか。この先もおこりうることとして、皆で見直しや再確認が必要です。
結核もHIVでも、うちには来ないよ、といって甘く見てたところで問題がおきましたので。
これだけグローバルな時代、すくなくとも責任者や担当者は複数シナリオとロジを考えておかないと、ですね。