日本でもコンジュゲート型の髄膜炎菌ワクチンが認可されました。
サノフィのメナクトラです。
日本では全数報告ですが、報告数の少ない稀な感染症のため、広い対象に接種するようにはなっていません。
しかし、事故や病気などで脾臓摘出をしたかた、特定の治療を必要つする人たちには接種することが推奨されていたため、都立駒込病院のように輸入ワクチンとして対応している病院がいくつかありました。
しかし、ひとつふたつを輸入するのは大変ですし、患者さんが何かの事情で来ない・接種しないとなったらその費用負担は病院のものとなります。
いろいろな意味で課題が多いのは未承認ワクチンの問題であります。
トラベラーズワクチンとしては、髄膜炎菌ベルトといわれるアフリカの一定のエリアに行く人や、米国のように正規留学生(若年)には義務付ける州や大学があったりしますので、卸にたのめば日本のどこでも速やかに入手できるようになったのはよろこばしいことであります。
しかし、いくつかある血清群のうち、今回日本で承認されるものではカバーできないタイプBという髄膜炎菌が米国の複数の大学でアウトブレイクしたり、死亡例がでたり、微生物学者が曝露して死亡したりということもあります。
留学相談対応をしている開業医の先生でも輸入されていますが、まだ日本ではアクセスの難しいワクチンであると思います。
髄膜炎菌感染症は、その病気の進行スピードの速さからいかに救命できるか、が第一の鍵であり、
合併症・後遺症をいかにのこさないか(祈る)、
そして、曝露をした周囲の人の早期の予防措置を行うか、が課題であります。
症例は必ずしも感染症の専門機関を受診するわけではなく、また、下記に紹介する9月5日の米国CDCのケースのように本人が意識不明となって情報が得られない場合もあります。
ときどきエボラなどのニュースで感染症意識は高まり、外来やERにあるPPEはこれでいいのかな?とかマニュアル見直しが行われます。
エボラが日本に入る確率はとても低いですが、医療機関では備えは必要ですし、髄膜炎菌感染症は稀といっても国内で集団生活をしているところではアウトブレイクが把握されたりもしています(すべてが公表されるわけではないですが)。
Fatal Meningococcal Disease in a Laboratory Worker ― California, 2012
2012年の症例で、患者は25歳男性、A病院のA検査室に勤務するmicrobiologist。
4月27日 夕方に頭痛、発熱、頸部痛あり。
4月28日 勤務するA病院のERへ救急搬送。
搬送中に意識不明となり、病院到着時に髄膜炎菌感染症独特の皮疹があり医師が髄膜炎菌感染をうたがいセフトリアキソン投与開始等、治療を行ったもののしたものの救命できず。病院到着から3時間で死亡。
同日、病院はカリフォルニア州の公衆衛生局に症例の届出。
4月29日 A病院はOSHAに報告。
病院はこの症例の治療等で曝露の可能性のあるスタッフを職務からはずし、健康観察を開始、また抗菌薬の予防投与が行われました。
4月30日 A病院の検査室を併催。
この事例では職場の曝露者に感染は広がりませんでした。
また、州の公衆衛生局は家族など濃厚接触者に抗菌薬の予防投与を提供しています。
PCR検査の結果、この症例の原因となったのはN. meningitidis serogroup B、
死亡した症例は仕事でこの菌の分離を行っていました。
この検査室での仕事に関する訓練やプロトコールがどうなっているのかの聞き取り調査等、その後の事故防止につながる介入も行われました。
日本では未承認の血清型B群の髄膜炎菌ワクチンBexsero(Novartis)はヨーロッパ、オーストラリア、カナダで2013年に承認をされています。
上記リンクのリファレンスには過去に起きた同様の検査室感染事例などもあります。
ちょうど、エボラが話題になって「マラリアを否定してエボラの検査」をみて、エボラをうたがうような事例でのマラリア検査はどこでどうやってやるべきなのかを感染症や検査室の関係者が検討や情報交換をしているところです。
週末や夜間の人員シフトはどこも十分とはいえません。そのなかで、スタッフを守るためには上層部の危機管理問題であること、必要な物品をケチっている場合ではないこと、医療安全や労務管理の問題でもあることを皆で認識する機会と前向きにとらえ、この機会に改善できることを期待しています。
日本での事例
IASR 2013年12月 侵襲性髄膜炎菌感染症 2005年〜2013年10月
髄膜炎菌性髄膜炎 1999〜2004
2011年、宮崎県でおきた集団事例 宮崎県における髄膜炎菌感染症集団発生事例
臨床の最前線から、稀な症例の報告。勉強になります。
「髄膜炎菌肺炎の1例」
サノフィのメナクトラです。
日本では全数報告ですが、報告数の少ない稀な感染症のため、広い対象に接種するようにはなっていません。
しかし、事故や病気などで脾臓摘出をしたかた、特定の治療を必要つする人たちには接種することが推奨されていたため、都立駒込病院のように輸入ワクチンとして対応している病院がいくつかありました。
しかし、ひとつふたつを輸入するのは大変ですし、患者さんが何かの事情で来ない・接種しないとなったらその費用負担は病院のものとなります。
いろいろな意味で課題が多いのは未承認ワクチンの問題であります。
トラベラーズワクチンとしては、髄膜炎菌ベルトといわれるアフリカの一定のエリアに行く人や、米国のように正規留学生(若年)には義務付ける州や大学があったりしますので、卸にたのめば日本のどこでも速やかに入手できるようになったのはよろこばしいことであります。
しかし、いくつかある血清群のうち、今回日本で承認されるものではカバーできないタイプBという髄膜炎菌が米国の複数の大学でアウトブレイクしたり、死亡例がでたり、微生物学者が曝露して死亡したりということもあります。
留学相談対応をしている開業医の先生でも輸入されていますが、まだ日本ではアクセスの難しいワクチンであると思います。
髄膜炎菌感染症は、その病気の進行スピードの速さからいかに救命できるか、が第一の鍵であり、
合併症・後遺症をいかにのこさないか(祈る)、
そして、曝露をした周囲の人の早期の予防措置を行うか、が課題であります。
症例は必ずしも感染症の専門機関を受診するわけではなく、また、下記に紹介する9月5日の米国CDCのケースのように本人が意識不明となって情報が得られない場合もあります。
ときどきエボラなどのニュースで感染症意識は高まり、外来やERにあるPPEはこれでいいのかな?とかマニュアル見直しが行われます。
エボラが日本に入る確率はとても低いですが、医療機関では備えは必要ですし、髄膜炎菌感染症は稀といっても国内で集団生活をしているところではアウトブレイクが把握されたりもしています(すべてが公表されるわけではないですが)。
Fatal Meningococcal Disease in a Laboratory Worker ― California, 2012
2012年の症例で、患者は25歳男性、A病院のA検査室に勤務するmicrobiologist。
4月27日 夕方に頭痛、発熱、頸部痛あり。
4月28日 勤務するA病院のERへ救急搬送。
搬送中に意識不明となり、病院到着時に髄膜炎菌感染症独特の皮疹があり医師が髄膜炎菌感染をうたがいセフトリアキソン投与開始等、治療を行ったもののしたものの救命できず。病院到着から3時間で死亡。
同日、病院はカリフォルニア州の公衆衛生局に症例の届出。
4月29日 A病院はOSHAに報告。
病院はこの症例の治療等で曝露の可能性のあるスタッフを職務からはずし、健康観察を開始、また抗菌薬の予防投与が行われました。
4月30日 A病院の検査室を併催。
この事例では職場の曝露者に感染は広がりませんでした。
また、州の公衆衛生局は家族など濃厚接触者に抗菌薬の予防投与を提供しています。
PCR検査の結果、この症例の原因となったのはN. meningitidis serogroup B、
死亡した症例は仕事でこの菌の分離を行っていました。
この検査室での仕事に関する訓練やプロトコールがどうなっているのかの聞き取り調査等、その後の事故防止につながる介入も行われました。
日本では未承認の血清型B群の髄膜炎菌ワクチンBexsero(Novartis)はヨーロッパ、オーストラリア、カナダで2013年に承認をされています。
上記リンクのリファレンスには過去に起きた同様の検査室感染事例などもあります。
ちょうど、エボラが話題になって「マラリアを否定してエボラの検査」をみて、エボラをうたがうような事例でのマラリア検査はどこでどうやってやるべきなのかを感染症や検査室の関係者が検討や情報交換をしているところです。
週末や夜間の人員シフトはどこも十分とはいえません。そのなかで、スタッフを守るためには上層部の危機管理問題であること、必要な物品をケチっている場合ではないこと、医療安全や労務管理の問題でもあることを皆で認識する機会と前向きにとらえ、この機会に改善できることを期待しています。
日本での事例
IASR 2013年12月 侵襲性髄膜炎菌感染症 2005年〜2013年10月
髄膜炎菌性髄膜炎 1999〜2004
2011年、宮崎県でおきた集団事例 宮崎県における髄膜炎菌感染症集団発生事例
臨床の最前線から、稀な症例の報告。勉強になります。
「髄膜炎菌肺炎の1例」