エボラウイルス疾患の質問が増えてきたので記事を追加。★関連リンクを適宜追加
日本に流行地からの直行便はないですが、人の行き来が活発な昨今、トランジットでとか、西アフリカに企業が進出している中国系の会社の人が近隣アジアの空港で疑い例、、というようなことはありそうなシナリオなので、一般の人には直接のリスクはないですが、感染症や救急関係の医療者は情報においついていたほうがよいのではないかとおもいます。
ICTやERのひとたちで確認しておきたい2014年8月1日の時点の情報は下記の3点です。
1)2013年末からの西アフリカでのエボラ出血熱ウイルスの地域流行は2014年8月1日現在も続いています
当初からWHOが数ヶ月かかるだろう、、、といっていましたが長期化しており、8月1日にリベリアの首都コナクリ入りしたWHOのマーガレット・チャンが、来週に対応会議を招集するということを表明しています。
シエラレオネが非常事態対応をし、リベリアで学校閉鎖、米国がレベル3の渡航注意喚起を出し、そのことが日本語のニュースでも伝えられているためメディアや医療機関の質問につながっています。が、現在具体的なリスクは国内では発生していません。
2)流行は数カ月経った8月1日現在も限局的なものですが、支援にあたる医療者の感染や、飛行機で移動した症例の把握から、飛行機での移動などにともなう対策(ガイドライン)などの見直しが行われています。
空港によっては検疫での体調チェックレベルをあげています。
距離的に近いところでは、先週、香港でエボラ検査を待つ間隔離をされていた症例があるというニュースがありました。検査結果は陰性でした。ちなみに香港では疑い症例はPrincess Margaret Hospitalに入院することになっています。
渡航歴や行動歴、病状によっては国際便がとんでる空港ではそのような体制をとっているということがわかります。
3)日本では感染症法に定められている一類感染症で、頻度で言うと「とてもとても稀」。もしも対応をする際には、海外からもちこまれる「輸入感染症」でありますので、海外渡航歴のある患者の診察をするような医療者には情報のアップデートや院内での対応アルゴリズムの確認は必要と思います。
一番簡単なのは、地域で対応する医療機関と担当医師、電話番号を把握しておいて(電話の近くに貼っておいて)そこを紹介することです。
そういった病院がわからなければ平日昼間なら保健所に相談をすると教えてもらえます。
(よくわからなければ輸入感染症の相談にのっている国立国際医療研究センター国際感染症センターに電話)
まだ報告されたことのない感染症ですが、うたがい症例や確定症例への対応については、感染症法をはじめ枠組整備や医療者の訓練等が行われています。
医療者の訓練とは?ですが、国立国際医療研究センターの加藤康幸先生が代表をされている研究班が出血熱ウイルス感染症への備えをすすめるために、
1)国内のワークショップを開催
2)上記の内容を e-learningで公開 ★無料で受講できます
3)2)のDVDと関連資料を作成
4)海外の出血熱ウイルス流行地での研修開催(2013年はトルコでクリミア・コンゴ出血熱の研修)
5)英国NHSのFree Hospitalの特別感染症ユニットを率いる医師を招聘し研修
を行っています。こういったことが研究費とはいえ国の危機管理事業の中で平時から行われていることはとても重要なのだとあらためて思います。
(当ブログではあまり焦点を当てていない情報系です・・・)
まあ、感染症の専門家の間でもこのような各論の話まで情報をUpsate仕切れているかというと,それはとても難しい訳ですが・・・。その反省もこめて青木編集長もかかわった(いまはなき)「世界の感染症」のセミナーではUstream中継もしてもらいました。
自分は感染症に関わるけど、この情報は全くノーマークだった!というような場合には2)をおすすめします。基本的な感染管理の知識があることを前提としてつくられていますが、ICDやICNにはテクニカルに難しい話はありません。ただ、国の制度や検体の取り扱い等、新しいこともあるとおもいます。検査室にも是非紹介を。
どのような備えがあるかの共有は基本的なことなので。
英国のJabobs先生が来日されたときに、「そうだな」と思ったお話としては、植民地時代からの関係でアフリカとたいへん縁の深い、人の行き来の多い英国でもそうそうおきていることではない、ということです。
3事例紹介したいとおもいます。1例目は感染研が日本語でユーロサーベイランスの記事を紹介をしてくれています。Lassa Feverです。
IASR ロンドンでのラッサ熱死亡例、2009年1月(Vol. 30 p. 112-114: 2009年4月号)
2009年1月、英国において11例目のラッサ熱輸入例がロンドンで診断された。
これまで英国に持ち込まれたラッサ熱は、シエラレオネあるいはナイジェリアからのもので、1971〜2003年(約30年間の間)に10例あり、2000年に1人が死亡している。医療従事者や接触者の感染例はなかった。
2009年1月8日、66歳男性が発熱、下痢、錯乱症状を呈し、ロンドンのHomerton大学病院に入院した。
男性は、ナイジェリアのアナンブラ州を旅した後、1月6日にアブジャから飛行機でロンドンに帰国した。
機内で既に発熱、不快寒、食欲低下、腹痛が出現していたが、ヒースロー空港から公共交通機関で東ロンドンの自宅に帰宅した。発熱、悪寒、倦怠感、軽度下痢が3日間続き、
1月8日に救急車にてロンドンのHomerton大学病院に運ばれた。
1月16日に腸チフスの疑いで隔離された。
1月22日にはUniversity College病院の感染症病棟に運ばれ、その日の夕方にはRoyal Free病院の高度セキュリティー感染症病棟に運ばれた。
1月23日にRT-PCRおよび血清抗体価上昇によりラッサ熱と診断され、その後、患者の血液と尿からウイルスが分離された。患者にはリバビリン投与が行われたが、
1月29日に死亡した。
本事例に関しては、国際保健規則(IHR)に基づいたWHOへの報告、州保健局による調査、WHOを通じてのナイジェリアへの報告、ヨーロッパ疾病予防管理センター(ECDC)への報告、各医療機関への通知、メディアへの報告が行われた。
接触者調査が1月23日から電話インタビューや面談によって行われ、航空機の同乗者、患者の近隣在住者、救急車スタッフ、3つの病院の医療従事者、検体を扱った他機関検査室職員等が3つのカテゴリー(表)に分類された。航空機の同乗者は、航空会社に病人や機内介助の求めの記録がなかったためリスクは極めて低いと判断され、また、ECDCもヨーロッパの住民に大きな危険はないという判断を下した。Homerton大学病院の合計328人が接触可能性者とされ、うち連絡が取れていない34人(10%)には現在も連絡が取り続けられている。Homerton大学病院職員に対する曝露の疑い日から21日間の監視期間が2月12日で終わる。現在までのところ接触者は誰も発病していない。また、カテゴリー3(高リスク)に分類された者はいなかった。
A FATAL CASE OF LASSA FEVER IN LONDON, JANUARY 2009(Euro Surveill. 2009; 14(6):)
マラリアかな?チフスかな?他の下痢かな?と基本軸からいくわけですね。
「こんな病気であるわけない」と脳内で除外をしていたら診断にはいかないかも、です。
2012年10月 クリミア・コンゴ出血熱 Confirmed case of Crimean Congo Haemorrhagic Fever in the UK
この時は大変大きな報道がありました。英国空軍がグラスゴーからロンドンまで患者を搬送。
救命は難しい状況でしたが、医療者への感染予防が難しい状況があったため特別ユニットに搬送が決まったそうです。英国は人材や設備の集約化をしています(日本は均てん化でしょうか・・・)。
2014年7月 クリミア・コンゴ出血熱 Crimean-Congo haemorrhagic fever case identified in UK
こちらの症例は救命されています。昨日のEurosruveillanceに詳細があります。
今回、西アフリカのエボラウイルス感染症の広がりについて概観したり仮説を検証するようなかちっとした話はまだ出てきていません。そもそも複数国で同時におきており、医療や保健のインフラ、住民の生活様式含めてひとくくりにはできないからでありますが。野生動物との曝露にしてもヒトヒトの感染にしても、よくわかっていないところがあります。
明確なこともあります。それは感染予防策です。
具体的に何をすればよいかはわかっています。それを可能にするのは「十分な物品と在庫管理、廃棄物管理」「感染予防スキルの習得」「安全が確保できるシフト体制」「ルールのコンプライアンス(アドヒアランス)」です。また日常生活での衛生のためには、手洗い等に必要な水の確保など基本的なことができているのか?ということもあります。
長期化すると最前線の人の休養やメンタルケアなども課題となり、交代要員の確保は、流行が大きくなるほど厳しくなってきます。
予防できるはずですが医療者が一定数感染をしています。
エボラ関連の報道をみていると、国境なき医師団のフルPPE(露出部位をゼロにする原則)にはその装着を手伝う介助スタッフもうつっています。
場面によってはかなり軽装ですが、嘔吐や下痢が多い中で体液曝露を避けるためにはこれでいいのか?の疑問もあります。
現地での支援活動に関わっていない立場としては、物品や人の支援のために国境なき医師団等NGOへの寄付くらいしかできませんが。最前線の人たちの安全を願うばかりです。
現地での支援にあたる米国人医師2人(どちらも同じ非営利団体所属)がエボラウイルスに感染し、現在、医療が提供されているということです。
CIDRAPのmedical evacuationの解説には、
"has received a unit of blood from a 14-year-old boy who survived his EVD infections, after the doctor cared for him."
とあります。
Only Enough for One: Experimental Ebola Serum Used on U.S. Patient
その他の選択肢はリバビリン、カナダで開発されているモノクロナル抗体、日本で開発されたT-705(アビガン)…ヒトで安全性や効果を確認することが難しい中、関係者の努力が続きます。
プライバシーの関係からどの医療機関での治療かは公開されていませんが(加筆修正:政府が搬送を決めなかったので慈善団体の費用負担チャーター便アトランタに搬送したそうです)
メディア情報ではCDC近くのエモリー大学病院の特別ユニット等が患者受け入れ態勢を整えているというニュースが複数流れています。
地元アトランタの記事 Emory University Hospital prepares for Ebola patients
先日亡くなってしまった、シエラレオネの医師は、ドイツのハンブルグで治療を受けることになっていたそうで、ドイツ軍が搬送準備をしていました。
まだ確立した治療法もワクチンもないのですが、可能性を求めてということになります。
初期症状は非特異的で、現地でのトリアージもたいへんだろうとおもいます。
日本では大曲先生の国立国際医療研究センターはじめ一類対応の医療機関で定期的に訓練が行われています。
こうした施設への搬送法なども確認事項のひとつ。
英国はロンドンのFree Hospitalに集約。
米国も4つ特別なユニットがあるそうです。
日本は44も指定されているので、それらの施設の設備維持やスタッフ教育は英国や米国よりもマネジメントの課題が大きいですね。
9月14日と15日には、リベリアに支援にでかけている加藤康幸先生はじめ日々この診療にあたる講師陣による輸入感染症講習会が開催されます。(現在オンラインで受付中)
日本に流行地からの直行便はないですが、人の行き来が活発な昨今、トランジットでとか、西アフリカに企業が進出している中国系の会社の人が近隣アジアの空港で疑い例、、というようなことはありそうなシナリオなので、一般の人には直接のリスクはないですが、感染症や救急関係の医療者は情報においついていたほうがよいのではないかとおもいます。
ICTやERのひとたちで確認しておきたい2014年8月1日の時点の情報は下記の3点です。
1)2013年末からの西アフリカでのエボラ出血熱ウイルスの地域流行は2014年8月1日現在も続いています
当初からWHOが数ヶ月かかるだろう、、、といっていましたが長期化しており、8月1日にリベリアの首都コナクリ入りしたWHOのマーガレット・チャンが、来週に対応会議を招集するということを表明しています。
シエラレオネが非常事態対応をし、リベリアで学校閉鎖、米国がレベル3の渡航注意喚起を出し、そのことが日本語のニュースでも伝えられているためメディアや医療機関の質問につながっています。が、現在具体的なリスクは国内では発生していません。
2)流行は数カ月経った8月1日現在も限局的なものですが、支援にあたる医療者の感染や、飛行機で移動した症例の把握から、飛行機での移動などにともなう対策(ガイドライン)などの見直しが行われています。
空港によっては検疫での体調チェックレベルをあげています。
距離的に近いところでは、先週、香港でエボラ検査を待つ間隔離をされていた症例があるというニュースがありました。検査結果は陰性でした。ちなみに香港では疑い症例はPrincess Margaret Hospitalに入院することになっています。
渡航歴や行動歴、病状によっては国際便がとんでる空港ではそのような体制をとっているということがわかります。
3)日本では感染症法に定められている一類感染症で、頻度で言うと「とてもとても稀」。もしも対応をする際には、海外からもちこまれる「輸入感染症」でありますので、海外渡航歴のある患者の診察をするような医療者には情報のアップデートや院内での対応アルゴリズムの確認は必要と思います。
一番簡単なのは、地域で対応する医療機関と担当医師、電話番号を把握しておいて(電話の近くに貼っておいて)そこを紹介することです。
そういった病院がわからなければ平日昼間なら保健所に相談をすると教えてもらえます。
(よくわからなければ輸入感染症の相談にのっている国立国際医療研究センター国際感染症センターに電話)
まだ報告されたことのない感染症ですが、うたがい症例や確定症例への対応については、感染症法をはじめ枠組整備や医療者の訓練等が行われています。
医療者の訓練とは?ですが、国立国際医療研究センターの加藤康幸先生が代表をされている研究班が出血熱ウイルス感染症への備えをすすめるために、
1)国内のワークショップを開催
2)上記の内容を e-learningで公開 ★無料で受講できます
3)2)のDVDと関連資料を作成
4)海外の出血熱ウイルス流行地での研修開催(2013年はトルコでクリミア・コンゴ出血熱の研修)
5)英国NHSのFree Hospitalの特別感染症ユニットを率いる医師を招聘し研修
を行っています。こういったことが研究費とはいえ国の危機管理事業の中で平時から行われていることはとても重要なのだとあらためて思います。
(当ブログではあまり焦点を当てていない情報系です・・・)
まあ、感染症の専門家の間でもこのような各論の話まで情報をUpsate仕切れているかというと,それはとても難しい訳ですが・・・。その反省もこめて青木編集長もかかわった(いまはなき)「世界の感染症」のセミナーではUstream中継もしてもらいました。
自分は感染症に関わるけど、この情報は全くノーマークだった!というような場合には2)をおすすめします。基本的な感染管理の知識があることを前提としてつくられていますが、ICDやICNにはテクニカルに難しい話はありません。ただ、国の制度や検体の取り扱い等、新しいこともあるとおもいます。検査室にも是非紹介を。
どのような備えがあるかの共有は基本的なことなので。
英国のJabobs先生が来日されたときに、「そうだな」と思ったお話としては、植民地時代からの関係でアフリカとたいへん縁の深い、人の行き来の多い英国でもそうそうおきていることではない、ということです。
3事例紹介したいとおもいます。1例目は感染研が日本語でユーロサーベイランスの記事を紹介をしてくれています。Lassa Feverです。
IASR ロンドンでのラッサ熱死亡例、2009年1月(Vol. 30 p. 112-114: 2009年4月号)
2009年1月、英国において11例目のラッサ熱輸入例がロンドンで診断された。
これまで英国に持ち込まれたラッサ熱は、シエラレオネあるいはナイジェリアからのもので、1971〜2003年(約30年間の間)に10例あり、2000年に1人が死亡している。医療従事者や接触者の感染例はなかった。
2009年1月8日、66歳男性が発熱、下痢、錯乱症状を呈し、ロンドンのHomerton大学病院に入院した。
男性は、ナイジェリアのアナンブラ州を旅した後、1月6日にアブジャから飛行機でロンドンに帰国した。
機内で既に発熱、不快寒、食欲低下、腹痛が出現していたが、ヒースロー空港から公共交通機関で東ロンドンの自宅に帰宅した。発熱、悪寒、倦怠感、軽度下痢が3日間続き、
1月8日に救急車にてロンドンのHomerton大学病院に運ばれた。
1月16日に腸チフスの疑いで隔離された。
1月22日にはUniversity College病院の感染症病棟に運ばれ、その日の夕方にはRoyal Free病院の高度セキュリティー感染症病棟に運ばれた。
1月23日にRT-PCRおよび血清抗体価上昇によりラッサ熱と診断され、その後、患者の血液と尿からウイルスが分離された。患者にはリバビリン投与が行われたが、
1月29日に死亡した。
本事例に関しては、国際保健規則(IHR)に基づいたWHOへの報告、州保健局による調査、WHOを通じてのナイジェリアへの報告、ヨーロッパ疾病予防管理センター(ECDC)への報告、各医療機関への通知、メディアへの報告が行われた。
接触者調査が1月23日から電話インタビューや面談によって行われ、航空機の同乗者、患者の近隣在住者、救急車スタッフ、3つの病院の医療従事者、検体を扱った他機関検査室職員等が3つのカテゴリー(表)に分類された。航空機の同乗者は、航空会社に病人や機内介助の求めの記録がなかったためリスクは極めて低いと判断され、また、ECDCもヨーロッパの住民に大きな危険はないという判断を下した。Homerton大学病院の合計328人が接触可能性者とされ、うち連絡が取れていない34人(10%)には現在も連絡が取り続けられている。Homerton大学病院職員に対する曝露の疑い日から21日間の監視期間が2月12日で終わる。現在までのところ接触者は誰も発病していない。また、カテゴリー3(高リスク)に分類された者はいなかった。
A FATAL CASE OF LASSA FEVER IN LONDON, JANUARY 2009(Euro Surveill. 2009; 14(6):)
マラリアかな?チフスかな?他の下痢かな?と基本軸からいくわけですね。
「こんな病気であるわけない」と脳内で除外をしていたら診断にはいかないかも、です。
2012年10月 クリミア・コンゴ出血熱 Confirmed case of Crimean Congo Haemorrhagic Fever in the UK
この時は大変大きな報道がありました。英国空軍がグラスゴーからロンドンまで患者を搬送。
救命は難しい状況でしたが、医療者への感染予防が難しい状況があったため特別ユニットに搬送が決まったそうです。英国は人材や設備の集約化をしています(日本は均てん化でしょうか・・・)。
2014年7月 クリミア・コンゴ出血熱 Crimean-Congo haemorrhagic fever case identified in UK
こちらの症例は救命されています。昨日のEurosruveillanceに詳細があります。
今回、西アフリカのエボラウイルス感染症の広がりについて概観したり仮説を検証するようなかちっとした話はまだ出てきていません。そもそも複数国で同時におきており、医療や保健のインフラ、住民の生活様式含めてひとくくりにはできないからでありますが。野生動物との曝露にしてもヒトヒトの感染にしても、よくわかっていないところがあります。
明確なこともあります。それは感染予防策です。
具体的に何をすればよいかはわかっています。それを可能にするのは「十分な物品と在庫管理、廃棄物管理」「感染予防スキルの習得」「安全が確保できるシフト体制」「ルールのコンプライアンス(アドヒアランス)」です。また日常生活での衛生のためには、手洗い等に必要な水の確保など基本的なことができているのか?ということもあります。
長期化すると最前線の人の休養やメンタルケアなども課題となり、交代要員の確保は、流行が大きくなるほど厳しくなってきます。
予防できるはずですが医療者が一定数感染をしています。
エボラ関連の報道をみていると、国境なき医師団のフルPPE(露出部位をゼロにする原則)にはその装着を手伝う介助スタッフもうつっています。
場面によってはかなり軽装ですが、嘔吐や下痢が多い中で体液曝露を避けるためにはこれでいいのか?の疑問もあります。
現地での支援活動に関わっていない立場としては、物品や人の支援のために国境なき医師団等NGOへの寄付くらいしかできませんが。最前線の人たちの安全を願うばかりです。
現地での支援にあたる米国人医師2人(どちらも同じ非営利団体所属)がエボラウイルスに感染し、現在、医療が提供されているということです。
CIDRAPのmedical evacuationの解説には、
"has received a unit of blood from a 14-year-old boy who survived his EVD infections, after the doctor cared for him."
とあります。
Only Enough for One: Experimental Ebola Serum Used on U.S. Patient
その他の選択肢はリバビリン、カナダで開発されているモノクロナル抗体、日本で開発されたT-705(アビガン)…ヒトで安全性や効果を確認することが難しい中、関係者の努力が続きます。
プライバシーの関係からどの医療機関での治療かは公開されていませんが(加筆修正:政府が搬送を決めなかったので慈善団体の費用負担チャーター便アトランタに搬送したそうです)
メディア情報ではCDC近くのエモリー大学病院の特別ユニット等が患者受け入れ態勢を整えているというニュースが複数流れています。
地元アトランタの記事 Emory University Hospital prepares for Ebola patients
先日亡くなってしまった、シエラレオネの医師は、ドイツのハンブルグで治療を受けることになっていたそうで、ドイツ軍が搬送準備をしていました。
まだ確立した治療法もワクチンもないのですが、可能性を求めてということになります。
初期症状は非特異的で、現地でのトリアージもたいへんだろうとおもいます。
日本では大曲先生の国立国際医療研究センターはじめ一類対応の医療機関で定期的に訓練が行われています。
こうした施設への搬送法なども確認事項のひとつ。
英国はロンドンのFree Hospitalに集約。
米国も4つ特別なユニットがあるそうです。
日本は44も指定されているので、それらの施設の設備維持やスタッフ教育は英国や米国よりもマネジメントの課題が大きいですね。
9月14日と15日には、リベリアに支援にでかけている加藤康幸先生はじめ日々この診療にあたる講師陣による輸入感染症講習会が開催されます。(現在オンラインで受付中)