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Channel: 感染症診療の原則
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若手医師セミナー2014 第3回 感染症診療の原則 Q AND A

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東京女子医大感染症科の相野田先生のご助力により下記のQ/Aが出来て参りました。
皆様、参考になさって下さい。

編集部

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講義中にお答えできなかったご質問です。
尚、個別の症例相談や、講義とは直接関係のないご質問については、削除させていただいております。

Q1
入院時指示で、担当科にかかわらず38度以上発熱で血培というのがあります。件数は増えますが、本当に必要な検査が含まれているか疑問なところがあります。というものの院内感染の可能性が否定できないので、患者さんの症候は関係なく、入院患者さんの発熱は、全例血培が望ましいのでしょうか。

A1
ケースバイケースですが、例えば明らかに他のフォーカスがある場合(例えば、ウイルス性咽頭炎の診断がついている場合など)で、何か新規のエピソードでなければ、血液培養採取の必要性は低いかもしれません。一方で、講義でも触れました通り、体温が低い場合にもむしろ菌血症を考える必要がある場合がありますし、その途中経過は体温が正常な時間帯も存在します。体温以外にも血圧低下など様々な場面でも考慮されます。いずれにせよ、その患者さんの状況に応じて検討していくことになりますので、必要な場合もあればそうでない場合もあると考えられます。
必要性や適応について、適宜指示を出される先生方とディスカッションされることをお勧めします。


Q2
ペニシリン=強い抗菌薬
カルバペネム=弱い抗菌薬
という臨床的な感覚があり、研修医にもそう教えています。
de-escalationする一つの理由と考えていますが、このような伝え方は適切ではないのでしょうか?

A2
もちろん感受性があれば、より狭域かつ治療成績が十分ある抗菌薬にDe-escalationすることによって、より治療効果が期待できると考えます。
肺炎球菌の肺炎や、連鎖球菌による感染性心内膜炎などは典型的な例です。


Q3
外来診療で抗菌薬を使用する際にも、局所の培養提出のほかに、血液培養を全例で提出する必要はありますか。

A3
ケースバイケースです。例えば、膀胱炎の治療時に血液培養を採取することは、他の感染症が併存しなければ通常適応はあまりないと考えますし、逆に菌血症の頻度が高い腎盂腎炎などでは採取の意義は高いと考えます。A1もご参照ください。


Q4
プロカルシトニンは病勢判断に利用してよいのでしょうか?

A4
昨年のQ&Aをご参照ください。
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/8e3d43ae3536ce3f386adfd5c30dd906


Q5
菌交代症と思いますが、下痢便があれば必ず培養に足しますが先生の資料に培養御法度とあるのはなぜでしょう?

A5
便培養で検出する目的の菌は、通常サルモネラやカンピロバクターなどの食中毒菌です。
このため、市中で疑わしい食歴や大腸型の腸炎症状があって、こういった菌による感染性腸炎が考えられる場合には提出の意義はあるかもしれません。
一方で、3日以上入院している患者さんの下痢症では、上記が原因となり得る可能性は低いと考えますので、これらの菌をターゲットとした便培養は原則として意義が低いと考えます。この場合の治療可能な感染性腸炎はClostridium difficile infection(CDI)になりますので、CDトキシン検査の方が考慮されます。
便培養は手間がかかるものであり、大変な作業です。検査室の過剰な負担を減らすためにも、目的のはっきりしない便培養は、適応をよく考える必要があります。


Q6
ALSなど基礎疾患や年齢により、症状を訴えられなかったり、寝たきりで疎通も困難な症例において、感染臓器の特定に画像診断に多く頼ってしまう、尿路感染、肺炎をまず疑ってしまうケースが多いです。そういった場合に、感染臓器を絞り込む方法はなにかありますでしょうか。

A6
ご指摘の通り、高齢者や基礎疾患がある場合には、生体反応が低下してしまうことにより所見が出にくくなり、フォーカスを捉えることが難しい、あるいは時間がかかることがよくあります。
ポイントは、
① より丁寧な診察を行うこと
② どういった感染症が多いかの頻度を知っておくこと
が重要です。
2については、ご指摘の通り肺炎や尿路感染症などが多く、上記のセッティングでは他に褥瘡部位の感染症などがあります。詳しくは成書をご参照ください。
ケースバイケースですが、健常成人と比較して検査が多くなることもありますが、検査で「何を」調べたいのかが明確になっていないと、逆に偽陽性で混乱することもあります。検査前に疾患と結果を予想してから提出することをお勧めします。


Q7
1.院内の細菌叢を調べるのはどうすればよいのでしょうか?
2.単科精神科病院で検査技師は一人のみのためほとんどの検査は(尿一般検査も含めて)外注です。(技師は心電図脳波などを行うので手一杯)。このようなところで、グラム染色を一から立ち上げるのは難しいでしょうか?

A7
大変なご苦労をなさっておられると推察いたします。
院内のアンチバイオグラムについては、まずは今までの培養結果で検出されている微生物とその感受性のデータを入手されて、それぞれの菌に関して薬剤の感受性率を確認する作業となります。件数にもよりますが、場合によっては1人では困難な場合もありますので、協力してもらえる人を増やすことも重要と考えます。
グラム染色自体は、染色液とスライドガラスと顕微鏡があれば、あとは固定の方法と水回りの確保ができれば手技自体は決して困難ではないと考えます。実際に開業医の先生が診療所でグラム染色をご自身で行っていらっしゃる方もいらっしゃいます。
ただし、染色の状況や鏡検結果についての精度管理は、ある程度の経験が必要になるかと思いますので、施設内またはお近くにいらっしゃる経験者の方の指導を仰がれることをお勧めします。


Q8
起因菌の同定についてですが、重症虚血肢における糖尿病壊疽、その他の感染で明らかに異臭、発赤などを伴い感染徴候を呈していますが培養では同定できないことも多々あります。そのため小生はMEPM+VCMを投与し軽快を図るようにしていますが、先生のご経験から何かよいストラテジーはございますでしょうか?

A8
想定されうる菌を初期治療の段階で、すべてカバーする必要があるかどうかは、重症度や合併症のリスクなど様々な要因によってケースバイケースで判断されます。IDSAのDiabetic foot infectionのガイドラインなどが参考になるかもしれません。
http://cid.oxfordjournals.org/content/54/12/e132.full.pdf+html
このガイドラインでは、重症度に応じて初期治療の抗菌薬を選択するストラテジーが提示されています。


Q9
グラム染色の所見を書くときのコツがありましたら教えていただけたらと思います。

A9
まずは検体が評価に値するかどうかの情報が最初に重要ですので、Geckler分類やMiller&Johns分類などを確実に記載していただくことが大事です。
あとは臨床が何を疑っているのか、何を必要としているのかについてコミュニケーションを取って、そのうえで記載できればよりよい検査所見になると思います。
検体を提出する臨床医が情報を検査室に伝えれば、より目的が明確になった鏡検ができると思いますし、逆に検査室側から疑問点があれば臨床側に問い合わせして追加情報が入手できると、より有意義な検査結果になると思います。
大事なことは、検体をみるだけではなく、その周辺の臨床情報と、それを支えるコミュニケーションであると考えます。


Q10
私が研修している病院では先生方によって使用する抗菌薬が違い、なかなか系統的に勉強できません。どのように使い方を勉強したらよいでしょうか?お勧めの本があれば教えていただきたいです。

A10
良書が多数出版されていますが、そのごく一部をご紹介します。もちろん、これ以外にも本当に素晴らしい良書がたくさんありますので、ぜひ書店にてご自身の目でも探してみてください。

感染症全般
感染症診療のロジック(南山堂)
ホントのところがよくわかる感染症診療のベーシックアプローチ(文光堂)
感染症まるごとこの一冊(南山堂)
Step by stepでよくわかる一般外来での感染症診療のアプローチ(文光堂)
感染症診療スタンダードマニュアル(羊土社)
レジデントのための感染症診療マニュアル(医学書院)

ポケット版だと・・・
感染症レジデントマニュアル第2版(医学書院)
感染症診療の手引き(シーニュ社)
サンフォード感染症治療ガイド(ライフサイエンス出版)

抗菌薬について
抗菌薬の考え方、使い方 Ver.3 (中外医学社)
絶対わかる 抗菌薬はじめの一歩(羊土社)

免疫不全者・がん・入院患者
がん患者の感染症診療マニュアル(南山堂)
免疫不全者の呼吸器感染症(南山堂)

検査について
感度と特異度からひも解く感染症診療のDicision Making(文光堂)

がっちり英語で全部を勉強したい方は・・・
Mandell, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectiou Diseases 7th edition (Churchill Livingstone)(今年の9月に第8版が出る予定とのことです。)

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