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Channel: 感染症診療の原則
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インフルエンザとバイオテロの話

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感染症関係者は一度はバイオテロ関連の研修を受けておいた方がよいです。

以前、バイオテロ対策の一環として、CDCとFBIの専門家が一緒に訓練を受け、緊急事態の命令系統もお互い把握しておく・・・という話を聞ける研修会に参加しました。
問題が起きてからでは縦割り組織上、対応に遅れが生じるので、様々な事態を想定して(想定の範囲を広げて)演習を行うということでした。
初期アセスメントが重要ということで、24時間専門家が対応する部署があるそうです。
疑わしきは専門家が判断。

日本だったらどこでしょうね。


H5N1は目下のところ、ヒトとヒトの間での感染拡大していくという現象はみられていませんが、ウイルスの一部が変異したらヒトの間で広がりやすくなるかもという話がありました。
その鍵となる部位がわかった、フェレットでの実験で確認された・・・ということは科学の進歩としての功績ですが、バイオテロなどに悪用されるといけないという懸念があり、科学雑誌での公開(掲載)が問題になり、研究者らが60日間研究をいったん中止して・・・ということが朝のワイドショーでもとりあげられていました。
(陰謀論などがにぎやかになりそうですが・・)

バイオテロへの懸念、、、話は昨年の11月頃にあって、インターネット上では日本語でも少し流れていました。
Dutch Researcher Created A Super-Influenza Virus With The Potential To Kill Millions
11月29日 Tipster

最近あまり情報をフォローしてなくて、きゃ!バイオテロ?びっくり!な方は、地道に情報をフォローしている方の解説で勉強を。
「H5N1遺伝子変異論文掲載でバイオテロ論争の続き」
Blog「新型インフルエンザ・ウォッチング日記」勝田先生

WHOなどが主催して研究者の緊急の会合が開催されるとCIDRAPの解説記事1月20日号にあります。


リコンビナントとは「遺伝子の組み換えの」ということですが、研究室によって人工的につくられる場合と、自然に起こる場合とあります。

リコンビナント遺伝子での研究と研究者の責任については、以前から倫理を含めた議論が行われています。
Recombinant DNA Technologies and Researchers' Responsibilities, 1973-1980
The Paul Berg Papers

1975年の会議(Asilomar Conference on Recombinant DNA)から20年後、、、の話。

The recombinant DNA controversy: Twenty years later
Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol. 92, pp. 9011-9013, September 1995


リコンビナントの余談ですが・・・
HIVは性的接触や汚染された注射器・針で感染しますが、いろいろな人が交流してHIVウイルスの遺伝子変異がおきると多様な組換え型流行株(CRF, circulating recombinant form)ができていくということです。
「HIVサブタイプの最新分類とその世界分布」 IASR
これはこれで怖い。



ところで、実験で思い出したのですが(トリフルやHIVはP3(BSL3)施設でOK)、
武蔵村山市では「国立感染症研究所村山庁舎におけるP4施設に関する要望活動について」といった要望書を毎年市長が届けにいっているそうです。
もうひとつ筑波の理化学研究所にもP4施設があるそうですがそちらも稼働していません。
2010年には、長崎大学がBSL4施設をつくるという話もでているようです。


国内でバイオテロをウォッチしている専門機関はどこか知っていますか?
たぶん内閣府だと思うのですが、トップページからはさがせません。

こちらはとても参考になるんですが・・。期間限定の研究ではなく、継続した取り組みがほしいですね。
「日本におけるバイオテロ対策関連研究開発の現状」
安全・安心サイエンス「感染症・バイオテロ研究会」(研究会は終了)
Bio-Preparedness Wiki


臨床の現場にはどのような形でアラートや助言がくるのでしょう。

いつも思うんですが、感染症関係の情報が確たるルートからではなく、メディア情報が先っていうのはどうなんでしょうね。その時点で患者さんや市民がパニックになっていたらそちらの対応も大変ですから。
医師会は全員が入っていませんし、お役所の連絡は紙できて、たいていどこかでとまります。クローズドの連絡網等を持っている国や地域もあるので、今後はデジタル化も進むでしょうか。

また、「おかしいな?」と思った情報は保健所報告なのでしょうが、その先がどう扱われるのか実はよく知りません。近日中に確認したいとおもいます。

平時に考えておかねば案件の1つ。

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