ノロウイルスは年間を通じて生息して事件を起こしますが、他の病原性微生物同様、「お元気なシーズン」がありまして、この寒い時期には感染して多数の人が発症するという現象が毎年観察されています。
感染力が強いので、うっかり手をぬいたら家族内全員感染(ノロわれた家族)になったりしますし、
仕事で食べ物を扱う人(food handler)には、家の台所とは異なる基準の厳しいルールがあります。手洗いや手袋の使い方などです。
しかし、100%予防することは難しいので、対ノロ、ということでの取り組みゴールは、
1)病気になった人が早く回復できるように支援する(脱水にならないように)・苦痛の緩和
2)病気になった人の周囲(看護をする家族、医療者)に広がらないようにする
3)広がった原因(システムとしての失敗や個人のミスなど)を教訓とし、以後の再発防止に活かす
ということです。
死亡例などもなくはないですが、ノロそのものでというよりは、嘔吐や下痢が2次的に低下している身体機能をさらに悪化させてということになりますので、高齢者での事例が多いですね。
感染してから発症までも短い(十数時間〜2日)で、数日で回復するのがほとんどです。
医療者は、受診した複数の症例に共通因子があれば(同じ職場、同じ学校、同じお弁当を食べたらしい、同じツアーの参加者、発症時間が似ている等)、その時点で「何かおかしい、と感じます」というレベルで保健所にまず電話を入れるのがベターです。
保健所には同じように他の医療機関からも連絡が入っていて、広域の事例になるような場合は、2次3次感染の予防のための助言などに動いてくれますので。
医療機関にあとできることは、患者さんや家族の保護です。
どのような感染症であっても、メディアが不用意に個人情報をにおわせるようなことを書いたり、犯人探し的な空気をつくったりします。
誰かの不手際を探して、謝罪させるようなシーンが好まれます。
感染症対策ではエネルギーや関心をこちらにむけるのはいいことではありませんので、
体調不良の人がつらい思いをしないよう、日常からできるマナーや工夫、ルールを守るということを地道にとりくめるようにもっていきたいところですね。
さて。規模が大きな感染症の事例は,通常調査が行われます。
それは犯人探しではなく、急ぎ拡大をとめて、影響を小さくし、再発防止につなげるためです。
不確かな情報や推論は初期にたくさんありますが、それらが確認された(confirmed)情報になるためには、一定の時間がかかります。
例えば、何を食べたんですか?(食べなかったんですか?)という調査(喫食調査)には時間がかかります。人数が多ければなおのこと・・・。
直後と時間がたってからだと記憶のレベルもかわります。
それから、検体を採取してラボで確認する作業。検査の種類によっては一定の時間もかかります。
症例数については、初期にはなるべく広い条件でとります。
つまり、症例定義を ○月○日の○時〜○時に下痢(条件をかきます)・嘔吐・○度以上の発熱のすべて(あるいは一つの症状)を呈した人(あるいは、○才から○才の人)など。
狭くとる場合はここに検査診断で確認された人、というような条件をつけます。
感染症で大切なTime Place Personいつ、どこで、どのような条件の人、という情報で整理をします。
ノロが流行をしているときに感染性胃腸炎症状を集めれば、過大評価になりますし(そもそも地域で流行中)
院内でおきたインフルエンザを院内感染という整理をしようとしても、通勤電車や家庭など院外で曝露する機会が流行中はありますし、リスク因子を厳密にとることは難しいことがあります。
遺伝子レベルのデータで、スゴい特殊なウイルスや菌のクラスター(症例群)を他の症例から区別することができればいいわけですが、こうした検査にはお金と時間もかかり、通常の診療行為の中では行いませんので、保健所を通じて地方衛生研究所のラボ(時には国立感染症研究所)の協力が必要になります。
全ての事例で完全に原因究明ができるわけではありませんし、
様々なルールを、ど根性だけで達成することも難しいので、あとはリスクの発生するような状況を回避する、システムへの介入等も大切です。このあたりは研修会などもありますので、マネジメントに関心ある方は参加することをおすすめします。他業種ではいろいろな工夫があります。
(以前、食品安全の資格をとるときに複数受けてたいへん面白かったです。 by編集部)
例えば。手を十分洗わないとドアが開かないトイレ。食品工場などで採用されています。
保育園で1月に餅つき大会。手でこねこねするのは、ショーとしてやり、食べるものは調理室で手袋をしたスタッフが作成するもの、と分けて出す(TV番組でも調理技術を披露している人と、後ろでゲストが食べる分を作っている人は別ですよね。あんなかんじです)。
複数の人に食事を提供するようなfood handlerでは、素手で扱うということは原則されていないと思うのですが〜
よく、駅前のお店などで、手袋しているけど、その手でお金もさわっちゃうようなアルバイトさんはいます。
片手だけつけるけど、その外側を別の手でべたべたさわっています(- -;)
教育不足ですので、その場で何が間違っているか指導をしては(誰この人的な)嫌な顔をされますが、公衆衛生マターとしてひるむこと無くこの作業は続けたいと思います。
私は元気だもん、、といっても、インフルエンザと同じようにノロウイルスでも不顕性感染の人がいます。
お元気ですがウイルスは排出している人です。
回復した後も3日は業務に戻るなとCDCがいうのはそのためでもあります。
食べ物を扱う際、訓練を受けない限りはその人の日常生活の延長レベルの手洗いくらいしかしませんが、集団事例を防ぐためにはそこでの管理が要となります。
学びを現場に活かせるよう、支援をつづけていきましょう。
学校で、パンが原因で・・・という事例も掲載されている 平成24年度 学校における食の安全に関する実態調査報告書
米国CDC Food handler出の調査、啓発
CDC: Infected Food Handlers Cause Half of Norovirus Outbreaks
Norovirus: Facts for Food Handlers
東京都 調理従事者を介したノロウイルス食中毒の情報 に関する検討報告書
東京都健康安全研究センターではノロウイルス対策緊急タスクフォースをつくって、まとめを公開しています。
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/gastro/noro_task/
病院でのアウトブレイク事例は、「この経験を他の施設にいかし、再発を防止してほしい」という誠実さと支援の姿勢でホームページで報告書が公開されていたりしますので、アウトブレイク予防や迅速対応の参考にできるといいですね。
病院内の食中毒
感染力が強いので、うっかり手をぬいたら家族内全員感染(ノロわれた家族)になったりしますし、
仕事で食べ物を扱う人(food handler)には、家の台所とは異なる基準の厳しいルールがあります。手洗いや手袋の使い方などです。
しかし、100%予防することは難しいので、対ノロ、ということでの取り組みゴールは、
1)病気になった人が早く回復できるように支援する(脱水にならないように)・苦痛の緩和
2)病気になった人の周囲(看護をする家族、医療者)に広がらないようにする
3)広がった原因(システムとしての失敗や個人のミスなど)を教訓とし、以後の再発防止に活かす
ということです。
死亡例などもなくはないですが、ノロそのものでというよりは、嘔吐や下痢が2次的に低下している身体機能をさらに悪化させてということになりますので、高齢者での事例が多いですね。
感染してから発症までも短い(十数時間〜2日)で、数日で回復するのがほとんどです。
医療者は、受診した複数の症例に共通因子があれば(同じ職場、同じ学校、同じお弁当を食べたらしい、同じツアーの参加者、発症時間が似ている等)、その時点で「何かおかしい、と感じます」というレベルで保健所にまず電話を入れるのがベターです。
保健所には同じように他の医療機関からも連絡が入っていて、広域の事例になるような場合は、2次3次感染の予防のための助言などに動いてくれますので。
医療機関にあとできることは、患者さんや家族の保護です。
どのような感染症であっても、メディアが不用意に個人情報をにおわせるようなことを書いたり、犯人探し的な空気をつくったりします。
誰かの不手際を探して、謝罪させるようなシーンが好まれます。
感染症対策ではエネルギーや関心をこちらにむけるのはいいことではありませんので、
体調不良の人がつらい思いをしないよう、日常からできるマナーや工夫、ルールを守るということを地道にとりくめるようにもっていきたいところですね。
さて。規模が大きな感染症の事例は,通常調査が行われます。
それは犯人探しではなく、急ぎ拡大をとめて、影響を小さくし、再発防止につなげるためです。
不確かな情報や推論は初期にたくさんありますが、それらが確認された(confirmed)情報になるためには、一定の時間がかかります。
例えば、何を食べたんですか?(食べなかったんですか?)という調査(喫食調査)には時間がかかります。人数が多ければなおのこと・・・。
直後と時間がたってからだと記憶のレベルもかわります。
それから、検体を採取してラボで確認する作業。検査の種類によっては一定の時間もかかります。
症例数については、初期にはなるべく広い条件でとります。
つまり、症例定義を ○月○日の○時〜○時に下痢(条件をかきます)・嘔吐・○度以上の発熱のすべて(あるいは一つの症状)を呈した人(あるいは、○才から○才の人)など。
狭くとる場合はここに検査診断で確認された人、というような条件をつけます。
感染症で大切なTime Place Personいつ、どこで、どのような条件の人、という情報で整理をします。
ノロが流行をしているときに感染性胃腸炎症状を集めれば、過大評価になりますし(そもそも地域で流行中)
院内でおきたインフルエンザを院内感染という整理をしようとしても、通勤電車や家庭など院外で曝露する機会が流行中はありますし、リスク因子を厳密にとることは難しいことがあります。
遺伝子レベルのデータで、スゴい特殊なウイルスや菌のクラスター(症例群)を他の症例から区別することができればいいわけですが、こうした検査にはお金と時間もかかり、通常の診療行為の中では行いませんので、保健所を通じて地方衛生研究所のラボ(時には国立感染症研究所)の協力が必要になります。
全ての事例で完全に原因究明ができるわけではありませんし、
様々なルールを、ど根性だけで達成することも難しいので、あとはリスクの発生するような状況を回避する、システムへの介入等も大切です。このあたりは研修会などもありますので、マネジメントに関心ある方は参加することをおすすめします。他業種ではいろいろな工夫があります。
(以前、食品安全の資格をとるときに複数受けてたいへん面白かったです。 by編集部)
例えば。手を十分洗わないとドアが開かないトイレ。食品工場などで採用されています。
保育園で1月に餅つき大会。手でこねこねするのは、ショーとしてやり、食べるものは調理室で手袋をしたスタッフが作成するもの、と分けて出す(TV番組でも調理技術を披露している人と、後ろでゲストが食べる分を作っている人は別ですよね。あんなかんじです)。
複数の人に食事を提供するようなfood handlerでは、素手で扱うということは原則されていないと思うのですが〜
よく、駅前のお店などで、手袋しているけど、その手でお金もさわっちゃうようなアルバイトさんはいます。
片手だけつけるけど、その外側を別の手でべたべたさわっています(- -;)
教育不足ですので、その場で何が間違っているか指導をしては(誰この人的な)嫌な顔をされますが、公衆衛生マターとしてひるむこと無くこの作業は続けたいと思います。
私は元気だもん、、といっても、インフルエンザと同じようにノロウイルスでも不顕性感染の人がいます。
お元気ですがウイルスは排出している人です。
回復した後も3日は業務に戻るなとCDCがいうのはそのためでもあります。
食べ物を扱う際、訓練を受けない限りはその人の日常生活の延長レベルの手洗いくらいしかしませんが、集団事例を防ぐためにはそこでの管理が要となります。
学びを現場に活かせるよう、支援をつづけていきましょう。
学校で、パンが原因で・・・という事例も掲載されている 平成24年度 学校における食の安全に関する実態調査報告書
米国CDC Food handler出の調査、啓発
CDC: Infected Food Handlers Cause Half of Norovirus Outbreaks
Norovirus: Facts for Food Handlers
東京都 調理従事者を介したノロウイルス食中毒の情報 に関する検討報告書
東京都健康安全研究センターではノロウイルス対策緊急タスクフォースをつくって、まとめを公開しています。
http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/diseases/gastro/noro_task/
病院でのアウトブレイク事例は、「この経験を他の施設にいかし、再発を防止してほしい」という誠実さと支援の姿勢でホームページで報告書が公開されていたりしますので、アウトブレイク予防や迅速対応の参考にできるといいですね。
病院内の食中毒