相野田先生がすごい早さでまとめてくださいまして、Q&Aを無事公開する運びとなりました。
講義の内容に限定した質問のピックアップとなっていることをご了承ください。
(一般論的な知識の質問などは成書をご確認いただきたく、お願い申し上げます)
※本資料は講義中にお受けした質問に対する回答をまとめたものです。
あくまで講義の質問に対する私見であり、臨床現場で用いられる際の責任は負いかねます。
実際の臨床現場ではケースバイケースですので、各個人の責任で御活用下さい。
監修:感染症コンサルタント/サクラ精機(株) 青木 眞 先生
東京女子医科大学病院 相野田 祐介 先生
-----------------------------------------------------------------
Q1:1年間ありがとうございました。大変勉強させていただきました。注射薬で症状軽快に向かったところで、内服に切り替える症例をよくみますが、どのような場合に必要なのでしょうか。
A1:内服治療が必要かどうかはケースバイケースです。医学的な事情だけでなく社会的事情なども踏まえて考慮されることがあります。ただし、大事なことは「ただなんとなく」ではなく「※※という微生物による※※という感染症を治療するため」であることと、十分に治療可能な血中濃度に達するかものかどうかということや、消化管が充分に使える状況かなど様々な条件をクリアーする必要があるかと思います。
過去のQ&Aもご参照ください
第4回セミナー(町先生)Q&A Q3
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/c026b727edac6dcf601cecb272a5ddd5
Q2:ありがとうございました。カテ培養でCandida albicansが検出されたときの評価について質問です。コンタミが多いとのことですが、 どの様な場合に起炎菌と判断すべきでしょうか?また起炎菌と判断した場合はどの抗菌薬を用いるべきでしょうか?
A2:Candida属や黄色ブドウ球菌が検出された時には、起因菌の可能性を十分考慮する必要があります。講義中でも触れましたが、臨床診断がまずあるべきであり、そしてこれは容易ではないので、ケースバイケースで吟味する必要があります。抗菌薬の選択などについては、IDSAのガイドラインなどが参考になるかもしれません。
http://www.idsociety.org/Other_Guidelines/
また、過去のQ&Aなどもご参照ください。
第2回セミナー(大曲先生) Q&A Q7
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/4b291f7fbf61acb0402b8e7e6aaaf53f
Q3:SBT/ABPC 12g/日はまだ十分認識されていていない&レセプトに邪魔をされています。現実的にはまだ1.5g×4回=6g/日なのです。治療の有益性と保険診療の限界のギャップについてもお聞かせくださいませんでしょうか。
A3:今回の投与量はDPC病院の処方の1例です。実際の投与量は臨床状況も含めてケースバイケースで検討する必要がありますし、投与量の問題で他の薬剤を選択することもあるかと思います。治療の有益性と保険診療のギャップに関しては、私も様々なところで悩むことがありますが、一概にお話しすることができない点も御了承いただければと思います。
過去のQ&Aもご参照ください。
第2回サンドセミナー(八重樫先生) Q&A Q20/Q21/Q22
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/f7bd1ece4bf5af4acf1c4c11901e680d
Q4:化膿性関節炎の患者で、関節液とOP材料からMRSAが検出された場合の抗MRSA薬の投与期間と治療効果判定のパラメータは何を指標にしたらよろしいでしょうか。
A4:詳しくは成書をご参照ください。これも臨床状況や起因菌などによりケースバイケースですが、成書やガイドラインが勧める投与期間を守られると良いと思います。パラメータは培養の陰性化や臨床所見・検査所見になると思います。
Q5:ブドウ球菌感染症で、感受性がわかるまでのエンピリック治療でVCMとCEZを併用することが望ましい感染症はどんなものがあるでしょうか。VCMのみで治療を開始して、MSSAとわかった場合にCEZへ変更する治療では、治療が遅れるのでしょうか?
A5:VCMで開始しMSSAならばCEZに変更するという基本方針で良いと思います。色々な考え方があるでしょうが、変更する治療でも特に遅れることはないと思います。ただし、ケースバイケースで御検討下さい。過去のQ&Aもご参照ください。
第三回セミナー(大曲先生)Q&A Q9とA9
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/4b291f7fbf61acb0402b8e7e6aaaf53f
Q6:PCGの大量投与をする際に、腎機能が悪い患者様の際はKの量がかなりになると思います。使うのをあきらめますか?それともKをみながらつかいますか?
A6:添付されているKというデメリットが他のメリットを上回ると判断されれば、薬剤の変更もあるかと思います。
Q7:初歩的な質問ですみません。2例目の症例でCVカテーテルを抜去した後の事ですが、カテーテルを入れ替える場合には、同じ場所に入れるのでしょうか?また、血液培養の採取場所は、末梢から採取するのとカテーテルから採取するのか?カテ先培養はするのか?を教えて下さい。
A7:再挿入に関しては、可能ならば異なる部位を選択することが多いと思います。血液培養の採取場所については、第三回セミナー(大曲先生)の御講義をご参照ください。
Q8:細菌検査の感受性検査などについて感受性試験をしてデータを返す際に、SやRでの判定のみを見て担当Drが抗菌薬を選択してしまいがちです。感染症の専門の先生方からみて、上手に感受性????を読み取るコツや、主治医に上手に読んでもらう方法などありましたら教えてください
A8:感受性の読み方を勉強することはなかなか大変です。薬剤の選択に関しては、感受性だけを勉強していてもなかなか理解できないため、結局感染症を一通り勉強することになるかと思います。
感受性のセミナーに参加されて勉強されるのが良いかと思います。
ブログ等でも適宜ご案内させていただきます。
過去のQ&Aもご参照ください。
第1回セミナー(青木先生)Q&A Q12
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/de3be4aab41286f03b9ce1fc6c9fb217
Q9:今回の症例ではありませんが、血流感染と同様に髄膜炎のような無菌的領域の感染症で、抗菌薬の使用期間はどのくらいすれば良いのでしょうか?もともと髄膜炎を疑いましたが、実際に培養では検出されず。でも細菌数はある場合は、細菌数が0(???)になるまで抗菌薬を使用すべきでしょうか?
A9:髄膜炎であっても臨床状況や菌種によって治療期間は異なります。詳しくはガイドラインや成書などをご参照ください。
Q10:研修医です。このような重症腹部感染症の場合、ESBL産生の大腸菌などをカバーした抗菌薬の選択の必要はないのでしょうか?
A10:ESBL産生菌の比率がどのくらいかによると思います。市中なら外来、入院なら院内のアンチバイオグラムをご参照ください。
通常はESBL産生菌による感染症が明らかに疑われる場合に考慮する必要がありますが、もちろんこれは状況によって変わると思います。
Q11:腹腔内感染ではEnterobactor. Citrobactor のカバーを迷います。どう考えるべきでしょうか?
A11:一般的にはSPACEの頭文字でくくられる病原体(緑膿菌やEnterobacterやCitrobacter)は、医療暴露がある場合に考慮されることが多いと思います。第4回セミナー(町先生)などもご参照ください。
Q12:連鎖球菌によるホウカシキエンなどの患者さんの血小板数の持続的な上昇は 毒素などの関係はあるのでしょうか??35歳 基礎疾患などない患者さんのホウカシキエンと壊死性菌膜炎を鑑別する際にバイタルでの違いはあるのでしょうか?ホウカシキエンだと血圧などのバイタル変化が少ないなど?ESBLなどの保菌者が心臓血管外科手術をする際のOPE前抗菌薬はMEPMなどを使うべきでしょうか?
A12:蜂窩織炎と壊死性筋膜炎の区別は、必ずしも容易ではないことがありますし、ESBLに関しては前回答の通りです。詳細は成書をご参照ください。
Q13:感染兆候がない腹部外科術後の患者の腹腔ドレーンの排液や、抜去されたドレーンが培養で提出され、カンジダやMRSAが培養した結果、治療対象となってしまう例があります。それを真の感染と定着菌とを鑑別する方法はありますでしょうか?(感染兆候がない時に培養は出さないは原則だと思われますが・・・)
A13:判断は必ずしも容易ではないことが多いですが、ドレーンの排液や抜去されたドレーンを培養なされば、臨床的な意味があるかどうかはさておき必ず何かが生えて仕舞いますね・・。
過去のQ&Aなどもご参照ください。
第1回セミナー(青木先生) Q&A Q1
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/4b291f7fbf61acb0402b8e7e6aaaf53f
Q14:カテ感染ではMRSAも原因菌として多いと思われます。合併症のないMRSA菌血症で、VCM 2、TEIC≦2の感受性のとき、VCMをトラフ15-20で維持しても血培陰性化されないとき、TEICは次の選択肢となりますでしょうか?
A14:絶対的な答えはないと思います。
注意すべきは、血液培養が陰性にならない理由として、合併症を見落としていないかどうかです。特にIEの診断については、超音波で確認できなかったとしてもDuke criteriaではIEとなることがあります。
薬と菌の関係に関しては、TEICに関しては同じグリコペプチド系ですがVCMと比べてデータが少ないところもあるので、絶対的な答えはないように思います。ケースバイケースで上記薬剤や他の薬剤が使われることがあると思います。
Q15:医師からは???が確保できないので、?????が抜けないとよく言われます。?????感染感染症で?????抜去が基本ですが、?????再挿入はすぐに行ってもよいのでしょうか?
A15:文字化けが多いため判読できないのですが、もしかすると過去のQ&Aが参考になる質問でしょうか。
第3回セミナー(大曲先生) Q&A Q8
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/4b291f7fbf61acb0402b8e7e6aaaf53f
Q16:感染症の治療期間中にVCMやTEICなどの抗菌薬で薬剤熱と思わしき症状が出た場合、抗菌薬の投与をやめるべきなのでしょうか?それと関連して、抗菌薬による薬剤熱からSJS症候群などの重篤な薬剤性アレルギーにどれくらいの割合で移行し、その鑑別はどのようにするのかも教えていただければ幸いです。
A16:薬剤熱の判断は大変難しいです。しばしば除外診断になるため、これといった決め手がないことも多々あります。薬剤の投与に関しては、どのくらい薬剤熱が疑わしいのか、あるいはどれくらい代替薬があるかなど様々な要素で判断することになります。SJSの頻度等については、成書をご参照ください。
Q17:CNS菌血症の場合、黄色ブドウ球菌菌血症(SAB)で行う合併症マネジメント(感染性心内膜炎、膿瘍、化膿椎体炎などのチェック)は同様に必須なのでしょうか?CNS菌血症のマネジメントに関して、もし参考になる文献等もあれば合わせて御提示いただけると幸いに存じます。
A17:一般的にはMRSAなどでは合併症のチェックが推奨されていますが(IDSA guideline(http://www.idsociety.org/Organism/)など)、CNSなどでは必ずしも推奨の記載はありません。
ただし、人工物が体内(特に血管内)に入っているなどがあればチェックが必要になることもあります。ケースバイケースです。
Q18:カテ感染が疑われるときカテーテルの培養は出す必要はないのですか?
A18:(質問者無記名の場合にはお答えすることが難しいですが、)カテーテル関連血流感染症の診断に関しては、第3回セミナー(大曲先生)をご参照ください。
Q19:二つ目の症例のMSSAの感受性はPCGなどのペニシリン系に耐性Rでありβラクタマーゼ阻害薬のA/Cに感受性があることからこのMSSAはβラクタマーゼ産生菌ではないのかと考えるのですがその際でもCEZの投与でいいのですか?
A19:しばしば誤解されやすいところだと思います。MSSAのβラクタマーゼはペニシリナーゼ(ペニシリン単剤では分解される)であり、セファロスポリナーゼ(セファロスポリンを分解するもの)ではありません。CVA/AMPCとCEZに感受性があるということはペニシリナーゼは産生しているものの、セファロスポリンも分解するという意味ではありません。ですので、CEZが第一選択として差し支えありません。基本的にセファロスポリン系薬剤に耐性を獲得している場合にはMRSAが考えられます。
Q20:40代、喫煙者肺炎(XPでも肺炎像があり)、CRB65:0にて外来で治療可能、ところが喀痰がとれない。マイコプラズマ流行はありますが、肺炎球菌は外せない(尿中抗原は陰性でしたが)とき、CDTR600mg+AZM処方しました。院外薬局から電話あり、こんなに処方していいですか?と。グラム染色ができず、肺炎球菌の否定はできないし、この時期マイコプラズマも否定できない、結核の可能性は低いかもしれないがニューキノロンは使いたくない旨をお話しし、処方をしてもらいました。一般的にはレスピレトリーキノロンが全盛なのですね。自分が浮いてしまったのを自覚しました。ところで1例目でこの年齢でも肺炎球菌ワクチンは接種したほうがよいのでしょうか。3回目以降のデータを知らないのですが、肺炎球菌感染の既往がある場合は、年齢に関係なく接種したほうがよいのでしょうか。話は違いますが、肺炎を外来で見る場合、家族にメルクマールを伝える必要があります。熱はあまり言わず、安静で今よりハーハーしたら、再診をしてくださいと伝えることにしています。病院では、必ず誰かが見ていますが、外来ではその保証はないので、入院よりも治療は難しいと感じています。
A20:講義中に述べさせていただいた意図としては、肺炎球菌ワクチンの適応となる方が、1回肺炎球菌肺炎に罹患したからという理由だけで、もう肺炎球菌ワクチンを受けなくてよいというわけではありませんということです。たとえ1種類の肺炎球菌に罹患しても、残り22種類の肺炎球菌の感染症に効果があるからです。メルクマールについては、外来の場合の実例をご紹介いただきありがとうございます。伝えるには工夫が必要ですね。
Q21:黄色ブドウ球菌が血培より検出された場合、再度血培の陰性化を確認する事が必要とガイドラインでも言われていますが、陰性化の確認の血培は、2セット必要でよろしいのでしょうか?
A21:(質問者無記名の場合にはお答えすることが難しいですが、)原則はコンタミネーションとの判断が困難となるため、血液培養は常に2セットを推奨させていただいております。
Q22:脳神経外科病棟薬剤師です。呼吸器疾患の鑑別で質問です。典型的な院内肺炎(VAP)とARDSに臨床経過で典型的な差異はありますでしょうか?効果判定で上記2つを混同される医師が多く、抗菌薬のやめ時に難渋してしまうことがあります。
A22:判断は困難な場合があります。肺炎がARDSを起こすこともあります。ケースバイケースで悩みながら判断することがしばしばです。
Q23:一例目肺炎球菌をターゲットにした場合、PSSPであればよいが、近年PISP・PRSPなども多く報告されているため、ペニシリンGでは不安を感じますが、いかがでしょうか。
A23:肺炎球菌のブレイクポイント(どの程度薬剤感受性が低下したら耐性と判断するか)は、臓器によって異なります。国内で感受性の判断の基準として用いられているCLSIの基準では、髄膜炎とそれ以外でこのブレイクポイントが異なります。つまり、抗菌薬移行性の乏しい中枢神経系の感染症では基準は厳しめに、そしてそれ以外では髄膜炎と比べると基準は緩めになっています。
なので、PISP・PRSPはどちらの基準でのことを指しているかに注意して下さい。
また、地域によっても異なると思いますので、その施設・地域の肺炎球菌の感受性率(アンチバイオグラム)をご確認ください。
しばしば「PRSPが増えた」といった場合、髄膜炎の基準でのPRSPが増えただけであり、肺炎の基準でのPRSPが増えていないこともあります。
時間内に述べさせていただきましたように、耐性の機序はβラクタマーゼなどとは異なるため、髄膜炎以外の場合、投与量の増量で対処できることもあります。
もちろん、今回のようにグラム染色ではっきりしない場合などでは、培養結果が判明するまでの間、肺炎球菌以外の市中肺炎起因菌を考慮した抗菌薬の選択を行うこともあります。
Q24:薬剤師がバイタルをチェックするときどのような点に注意をすればよいでしょうか。やらねばならないことやってはいけないことに分けてご教授下さい。
A24:過去のQ&Aなどをご参照ください。
第4回セミナー(町先生) Q&A Q9
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/c026b727edac6dcf601cecb272a5ddd5
第1回セミナー(青木先生) Q&A Q22
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/82f5a07d977ade208a420ad1db06c0c6
Q27:市中肺炎の治療回復後、肺炎球菌ワクチンを接種するというのはポピュラーな事ですか?
A27:A22をご参照ください。
Q28:腸の穿孔による感染症においてスルバクタムのように抗菌スペクトラムの狭い抗生剤を使用するのに抵抗があります。菌の同定も全て出来ない中、もう少しスペクトラムの広い抗生剤を指示したいと思いますが如何でしょうか?
A28:詳しくは第4回セミナー(町先生)をご参照ください。
患者さんの背景にもよるかと思います。もちろん入院中の患者さんなどで医療暴露が濃厚な方のエンピリックセラピーについては、SPACEを含むカバーを考慮する必要があります。一方、市中で想定されうる菌は講義中に述べさせていただいた通りであり、かならずしもこれ以上の広いカバーの薬剤選択はメリットをもたらす可能性は高くなく、不用意な耐性を獲得させてしまう可能性も考慮する必要があります。特に緑膿菌などは抗菌薬の使用によって耐性を獲得しやすく、また再度感染症を生じたときに治療を難しくしてしまう可能性があると考えるためです。もちろん最終的には上記を踏まえたうえでのケースバイケースになるかと思います。
------------------------------------------------
講義の内容に限定した質問のピックアップとなっていることをご了承ください。
(一般論的な知識の質問などは成書をご確認いただきたく、お願い申し上げます)
※本資料は講義中にお受けした質問に対する回答をまとめたものです。
あくまで講義の質問に対する私見であり、臨床現場で用いられる際の責任は負いかねます。
実際の臨床現場ではケースバイケースですので、各個人の責任で御活用下さい。
監修:感染症コンサルタント/サクラ精機(株) 青木 眞 先生
東京女子医科大学病院 相野田 祐介 先生
-----------------------------------------------------------------
Q1:1年間ありがとうございました。大変勉強させていただきました。注射薬で症状軽快に向かったところで、内服に切り替える症例をよくみますが、どのような場合に必要なのでしょうか。
A1:内服治療が必要かどうかはケースバイケースです。医学的な事情だけでなく社会的事情なども踏まえて考慮されることがあります。ただし、大事なことは「ただなんとなく」ではなく「※※という微生物による※※という感染症を治療するため」であることと、十分に治療可能な血中濃度に達するかものかどうかということや、消化管が充分に使える状況かなど様々な条件をクリアーする必要があるかと思います。
過去のQ&Aもご参照ください
第4回セミナー(町先生)Q&A Q3
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/c026b727edac6dcf601cecb272a5ddd5
Q2:ありがとうございました。カテ培養でCandida albicansが検出されたときの評価について質問です。コンタミが多いとのことですが、 どの様な場合に起炎菌と判断すべきでしょうか?また起炎菌と判断した場合はどの抗菌薬を用いるべきでしょうか?
A2:Candida属や黄色ブドウ球菌が検出された時には、起因菌の可能性を十分考慮する必要があります。講義中でも触れましたが、臨床診断がまずあるべきであり、そしてこれは容易ではないので、ケースバイケースで吟味する必要があります。抗菌薬の選択などについては、IDSAのガイドラインなどが参考になるかもしれません。
http://www.idsociety.org/Other_Guidelines/
また、過去のQ&Aなどもご参照ください。
第2回セミナー(大曲先生) Q&A Q7
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/4b291f7fbf61acb0402b8e7e6aaaf53f
Q3:SBT/ABPC 12g/日はまだ十分認識されていていない&レセプトに邪魔をされています。現実的にはまだ1.5g×4回=6g/日なのです。治療の有益性と保険診療の限界のギャップについてもお聞かせくださいませんでしょうか。
A3:今回の投与量はDPC病院の処方の1例です。実際の投与量は臨床状況も含めてケースバイケースで検討する必要がありますし、投与量の問題で他の薬剤を選択することもあるかと思います。治療の有益性と保険診療のギャップに関しては、私も様々なところで悩むことがありますが、一概にお話しすることができない点も御了承いただければと思います。
過去のQ&Aもご参照ください。
第2回サンドセミナー(八重樫先生) Q&A Q20/Q21/Q22
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/f7bd1ece4bf5af4acf1c4c11901e680d
Q4:化膿性関節炎の患者で、関節液とOP材料からMRSAが検出された場合の抗MRSA薬の投与期間と治療効果判定のパラメータは何を指標にしたらよろしいでしょうか。
A4:詳しくは成書をご参照ください。これも臨床状況や起因菌などによりケースバイケースですが、成書やガイドラインが勧める投与期間を守られると良いと思います。パラメータは培養の陰性化や臨床所見・検査所見になると思います。
Q5:ブドウ球菌感染症で、感受性がわかるまでのエンピリック治療でVCMとCEZを併用することが望ましい感染症はどんなものがあるでしょうか。VCMのみで治療を開始して、MSSAとわかった場合にCEZへ変更する治療では、治療が遅れるのでしょうか?
A5:VCMで開始しMSSAならばCEZに変更するという基本方針で良いと思います。色々な考え方があるでしょうが、変更する治療でも特に遅れることはないと思います。ただし、ケースバイケースで御検討下さい。過去のQ&Aもご参照ください。
第三回セミナー(大曲先生)Q&A Q9とA9
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/4b291f7fbf61acb0402b8e7e6aaaf53f
Q6:PCGの大量投与をする際に、腎機能が悪い患者様の際はKの量がかなりになると思います。使うのをあきらめますか?それともKをみながらつかいますか?
A6:添付されているKというデメリットが他のメリットを上回ると判断されれば、薬剤の変更もあるかと思います。
Q7:初歩的な質問ですみません。2例目の症例でCVカテーテルを抜去した後の事ですが、カテーテルを入れ替える場合には、同じ場所に入れるのでしょうか?また、血液培養の採取場所は、末梢から採取するのとカテーテルから採取するのか?カテ先培養はするのか?を教えて下さい。
A7:再挿入に関しては、可能ならば異なる部位を選択することが多いと思います。血液培養の採取場所については、第三回セミナー(大曲先生)の御講義をご参照ください。
Q8:細菌検査の感受性検査などについて感受性試験をしてデータを返す際に、SやRでの判定のみを見て担当Drが抗菌薬を選択してしまいがちです。感染症の専門の先生方からみて、上手に感受性????を読み取るコツや、主治医に上手に読んでもらう方法などありましたら教えてください
A8:感受性の読み方を勉強することはなかなか大変です。薬剤の選択に関しては、感受性だけを勉強していてもなかなか理解できないため、結局感染症を一通り勉強することになるかと思います。
感受性のセミナーに参加されて勉強されるのが良いかと思います。
ブログ等でも適宜ご案内させていただきます。
過去のQ&Aもご参照ください。
第1回セミナー(青木先生)Q&A Q12
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/de3be4aab41286f03b9ce1fc6c9fb217
Q9:今回の症例ではありませんが、血流感染と同様に髄膜炎のような無菌的領域の感染症で、抗菌薬の使用期間はどのくらいすれば良いのでしょうか?もともと髄膜炎を疑いましたが、実際に培養では検出されず。でも細菌数はある場合は、細菌数が0(???)になるまで抗菌薬を使用すべきでしょうか?
A9:髄膜炎であっても臨床状況や菌種によって治療期間は異なります。詳しくはガイドラインや成書などをご参照ください。
Q10:研修医です。このような重症腹部感染症の場合、ESBL産生の大腸菌などをカバーした抗菌薬の選択の必要はないのでしょうか?
A10:ESBL産生菌の比率がどのくらいかによると思います。市中なら外来、入院なら院内のアンチバイオグラムをご参照ください。
通常はESBL産生菌による感染症が明らかに疑われる場合に考慮する必要がありますが、もちろんこれは状況によって変わると思います。
Q11:腹腔内感染ではEnterobactor. Citrobactor のカバーを迷います。どう考えるべきでしょうか?
A11:一般的にはSPACEの頭文字でくくられる病原体(緑膿菌やEnterobacterやCitrobacter)は、医療暴露がある場合に考慮されることが多いと思います。第4回セミナー(町先生)などもご参照ください。
Q12:連鎖球菌によるホウカシキエンなどの患者さんの血小板数の持続的な上昇は 毒素などの関係はあるのでしょうか??35歳 基礎疾患などない患者さんのホウカシキエンと壊死性菌膜炎を鑑別する際にバイタルでの違いはあるのでしょうか?ホウカシキエンだと血圧などのバイタル変化が少ないなど?ESBLなどの保菌者が心臓血管外科手術をする際のOPE前抗菌薬はMEPMなどを使うべきでしょうか?
A12:蜂窩織炎と壊死性筋膜炎の区別は、必ずしも容易ではないことがありますし、ESBLに関しては前回答の通りです。詳細は成書をご参照ください。
Q13:感染兆候がない腹部外科術後の患者の腹腔ドレーンの排液や、抜去されたドレーンが培養で提出され、カンジダやMRSAが培養した結果、治療対象となってしまう例があります。それを真の感染と定着菌とを鑑別する方法はありますでしょうか?(感染兆候がない時に培養は出さないは原則だと思われますが・・・)
A13:判断は必ずしも容易ではないことが多いですが、ドレーンの排液や抜去されたドレーンを培養なされば、臨床的な意味があるかどうかはさておき必ず何かが生えて仕舞いますね・・。
過去のQ&Aなどもご参照ください。
第1回セミナー(青木先生) Q&A Q1
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/4b291f7fbf61acb0402b8e7e6aaaf53f
Q14:カテ感染ではMRSAも原因菌として多いと思われます。合併症のないMRSA菌血症で、VCM 2、TEIC≦2の感受性のとき、VCMをトラフ15-20で維持しても血培陰性化されないとき、TEICは次の選択肢となりますでしょうか?
A14:絶対的な答えはないと思います。
注意すべきは、血液培養が陰性にならない理由として、合併症を見落としていないかどうかです。特にIEの診断については、超音波で確認できなかったとしてもDuke criteriaではIEとなることがあります。
薬と菌の関係に関しては、TEICに関しては同じグリコペプチド系ですがVCMと比べてデータが少ないところもあるので、絶対的な答えはないように思います。ケースバイケースで上記薬剤や他の薬剤が使われることがあると思います。
Q15:医師からは???が確保できないので、?????が抜けないとよく言われます。?????感染感染症で?????抜去が基本ですが、?????再挿入はすぐに行ってもよいのでしょうか?
A15:文字化けが多いため判読できないのですが、もしかすると過去のQ&Aが参考になる質問でしょうか。
第3回セミナー(大曲先生) Q&A Q8
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/4b291f7fbf61acb0402b8e7e6aaaf53f
Q16:感染症の治療期間中にVCMやTEICなどの抗菌薬で薬剤熱と思わしき症状が出た場合、抗菌薬の投与をやめるべきなのでしょうか?それと関連して、抗菌薬による薬剤熱からSJS症候群などの重篤な薬剤性アレルギーにどれくらいの割合で移行し、その鑑別はどのようにするのかも教えていただければ幸いです。
A16:薬剤熱の判断は大変難しいです。しばしば除外診断になるため、これといった決め手がないことも多々あります。薬剤の投与に関しては、どのくらい薬剤熱が疑わしいのか、あるいはどれくらい代替薬があるかなど様々な要素で判断することになります。SJSの頻度等については、成書をご参照ください。
Q17:CNS菌血症の場合、黄色ブドウ球菌菌血症(SAB)で行う合併症マネジメント(感染性心内膜炎、膿瘍、化膿椎体炎などのチェック)は同様に必須なのでしょうか?CNS菌血症のマネジメントに関して、もし参考になる文献等もあれば合わせて御提示いただけると幸いに存じます。
A17:一般的にはMRSAなどでは合併症のチェックが推奨されていますが(IDSA guideline(http://www.idsociety.org/Organism/)など)、CNSなどでは必ずしも推奨の記載はありません。
ただし、人工物が体内(特に血管内)に入っているなどがあればチェックが必要になることもあります。ケースバイケースです。
Q18:カテ感染が疑われるときカテーテルの培養は出す必要はないのですか?
A18:(質問者無記名の場合にはお答えすることが難しいですが、)カテーテル関連血流感染症の診断に関しては、第3回セミナー(大曲先生)をご参照ください。
Q19:二つ目の症例のMSSAの感受性はPCGなどのペニシリン系に耐性Rでありβラクタマーゼ阻害薬のA/Cに感受性があることからこのMSSAはβラクタマーゼ産生菌ではないのかと考えるのですがその際でもCEZの投与でいいのですか?
A19:しばしば誤解されやすいところだと思います。MSSAのβラクタマーゼはペニシリナーゼ(ペニシリン単剤では分解される)であり、セファロスポリナーゼ(セファロスポリンを分解するもの)ではありません。CVA/AMPCとCEZに感受性があるということはペニシリナーゼは産生しているものの、セファロスポリンも分解するという意味ではありません。ですので、CEZが第一選択として差し支えありません。基本的にセファロスポリン系薬剤に耐性を獲得している場合にはMRSAが考えられます。
Q20:40代、喫煙者肺炎(XPでも肺炎像があり)、CRB65:0にて外来で治療可能、ところが喀痰がとれない。マイコプラズマ流行はありますが、肺炎球菌は外せない(尿中抗原は陰性でしたが)とき、CDTR600mg+AZM処方しました。院外薬局から電話あり、こんなに処方していいですか?と。グラム染色ができず、肺炎球菌の否定はできないし、この時期マイコプラズマも否定できない、結核の可能性は低いかもしれないがニューキノロンは使いたくない旨をお話しし、処方をしてもらいました。一般的にはレスピレトリーキノロンが全盛なのですね。自分が浮いてしまったのを自覚しました。ところで1例目でこの年齢でも肺炎球菌ワクチンは接種したほうがよいのでしょうか。3回目以降のデータを知らないのですが、肺炎球菌感染の既往がある場合は、年齢に関係なく接種したほうがよいのでしょうか。話は違いますが、肺炎を外来で見る場合、家族にメルクマールを伝える必要があります。熱はあまり言わず、安静で今よりハーハーしたら、再診をしてくださいと伝えることにしています。病院では、必ず誰かが見ていますが、外来ではその保証はないので、入院よりも治療は難しいと感じています。
A20:講義中に述べさせていただいた意図としては、肺炎球菌ワクチンの適応となる方が、1回肺炎球菌肺炎に罹患したからという理由だけで、もう肺炎球菌ワクチンを受けなくてよいというわけではありませんということです。たとえ1種類の肺炎球菌に罹患しても、残り22種類の肺炎球菌の感染症に効果があるからです。メルクマールについては、外来の場合の実例をご紹介いただきありがとうございます。伝えるには工夫が必要ですね。
Q21:黄色ブドウ球菌が血培より検出された場合、再度血培の陰性化を確認する事が必要とガイドラインでも言われていますが、陰性化の確認の血培は、2セット必要でよろしいのでしょうか?
A21:(質問者無記名の場合にはお答えすることが難しいですが、)原則はコンタミネーションとの判断が困難となるため、血液培養は常に2セットを推奨させていただいております。
Q22:脳神経外科病棟薬剤師です。呼吸器疾患の鑑別で質問です。典型的な院内肺炎(VAP)とARDSに臨床経過で典型的な差異はありますでしょうか?効果判定で上記2つを混同される医師が多く、抗菌薬のやめ時に難渋してしまうことがあります。
A22:判断は困難な場合があります。肺炎がARDSを起こすこともあります。ケースバイケースで悩みながら判断することがしばしばです。
Q23:一例目肺炎球菌をターゲットにした場合、PSSPであればよいが、近年PISP・PRSPなども多く報告されているため、ペニシリンGでは不安を感じますが、いかがでしょうか。
A23:肺炎球菌のブレイクポイント(どの程度薬剤感受性が低下したら耐性と判断するか)は、臓器によって異なります。国内で感受性の判断の基準として用いられているCLSIの基準では、髄膜炎とそれ以外でこのブレイクポイントが異なります。つまり、抗菌薬移行性の乏しい中枢神経系の感染症では基準は厳しめに、そしてそれ以外では髄膜炎と比べると基準は緩めになっています。
なので、PISP・PRSPはどちらの基準でのことを指しているかに注意して下さい。
また、地域によっても異なると思いますので、その施設・地域の肺炎球菌の感受性率(アンチバイオグラム)をご確認ください。
しばしば「PRSPが増えた」といった場合、髄膜炎の基準でのPRSPが増えただけであり、肺炎の基準でのPRSPが増えていないこともあります。
時間内に述べさせていただきましたように、耐性の機序はβラクタマーゼなどとは異なるため、髄膜炎以外の場合、投与量の増量で対処できることもあります。
もちろん、今回のようにグラム染色ではっきりしない場合などでは、培養結果が判明するまでの間、肺炎球菌以外の市中肺炎起因菌を考慮した抗菌薬の選択を行うこともあります。
Q24:薬剤師がバイタルをチェックするときどのような点に注意をすればよいでしょうか。やらねばならないことやってはいけないことに分けてご教授下さい。
A24:過去のQ&Aなどをご参照ください。
第4回セミナー(町先生) Q&A Q9
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/c026b727edac6dcf601cecb272a5ddd5
第1回セミナー(青木先生) Q&A Q22
http://blog.goo.ne.jp/idconsult/e/82f5a07d977ade208a420ad1db06c0c6
Q27:市中肺炎の治療回復後、肺炎球菌ワクチンを接種するというのはポピュラーな事ですか?
A27:A22をご参照ください。
Q28:腸の穿孔による感染症においてスルバクタムのように抗菌スペクトラムの狭い抗生剤を使用するのに抵抗があります。菌の同定も全て出来ない中、もう少しスペクトラムの広い抗生剤を指示したいと思いますが如何でしょうか?
A28:詳しくは第4回セミナー(町先生)をご参照ください。
患者さんの背景にもよるかと思います。もちろん入院中の患者さんなどで医療暴露が濃厚な方のエンピリックセラピーについては、SPACEを含むカバーを考慮する必要があります。一方、市中で想定されうる菌は講義中に述べさせていただいた通りであり、かならずしもこれ以上の広いカバーの薬剤選択はメリットをもたらす可能性は高くなく、不用意な耐性を獲得させてしまう可能性も考慮する必要があります。特に緑膿菌などは抗菌薬の使用によって耐性を獲得しやすく、また再度感染症を生じたときに治療を難しくしてしまう可能性があると考えるためです。もちろん最終的には上記を踏まえたうえでのケースバイケースになるかと思います。
------------------------------------------------