若セミではメイン会場で質問用紙での質問を受け付けております。
さっそく寺澤先生からご回答をいただきましたので掲載させていただきます。
なお、内容は講義をベースにしており、特定の症例にあてはまるというわけではありませんので、
情報を活用する場合はその判断をする方の責任においてお願いします。
寺澤先生ありがとうございました。
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質問(医学生さん)
患者さんから話を聴く時に、話しやすい雰囲気にするコツはありますか?
回答
医学的なことを聴きだすことだけに集中せず、患者さんの人生にも関心をもつことです。そうすると職業、身なり、持ち物、 家族などにも関心がもてて、そういうことも医療面接の最中に聴けるようになると会話が弾みます。さらに、患者さんの苦痛の程度にもよりますが、適度の微笑み、適度のユーモアが出せると良い雰囲気が作れるようになります。
質問(医学生さん)
高齢者の歩行障害、ふらつきの評価はどうしたらいいのでしょう? 身体診察よりも病歴が重要でしょうか?
回答
はい、私は医療面接が最も重要だと思います。
いつから、どのように出現したか、初めての症状か、随伴症状がないか、既往歴、薬剤歴を聴いて、バイタルサインで発熱や低血圧がないかをチェックして、原因を絞込むことから始めます。医療面接で絞込みをしないと、どこを重点的に診察していいかがわからないので、おおざっぱな診察になり、所見を見落とすことも起こりえますし、絞らずに全身くまなく診察していたら時間がかかりすぎるからです。
質問(2年目研修医の先生)
高齢者の患者さんの診察の時に、何人まで診察室に入れますか?
回答
特に決めていません。患者さんの緊急度、手技の最中かどうか、診察室のスペース、入りたい人が何人一緒に来ているのか、などで決めています。
質問(2年目研修医の先生)
初診の高齢者の患者さんの診察で注意していることはありますか?
回答
本日講演でお話ししたことを注意しています。
即ち、何をしている時、どういう症状で始まり、その後の症状の移り変わり、初めての症状かどうか、既往歴、薬剤歴、バイタルサインで絞込み、必要な部位に集中的な診察をして-----といういつもどおりのことを怠りなくやるようにしています。
質問(1年目研修医の先生)
慢性心不全にNSAIDはどうして心不全の増悪をおこすのですか?
回答
NSAIDは尿からのNaの排泄を減らす作用、腎機能を悪化させる作用があるので、慢性心不全の患者では、心不全が悪化しやすいのです。私は、どうしても処方したい場合には、患者さんと御家族に副作用に関して説明し、必ず数日以内に、主治医(循環器内科)の外来で再評価をしていただくようにしています。
質問(不明)
H2ブロッカーの譫妄とはよくあるのでしょうか? 何か特徴がありますか?
回答
頻度は多くないと思います。H2ブロッカーの譫妄に特別な特徴は知りません。
処方されてから数日〜数週間以内に譫妄が出現した場合に考えます。また、長期に投与されている場合に、それほど必要ない処方として処方されていることが少なくないので、譫妄の患者さんを診たら、一旦、中止してみることはよくやっています。
質問(8年目勤務医)
ERで近隣の施設から、「身寄りがなく、ほぼ寝たきり、難聴もあり、意思疎通が困難な高齢者」が様々な理由で搬送されて来ます。自分のER診療のモチベーションが保てなくなることがあります。こういう時のモチベーションの保ち方を教えて下さい。
回答
こういう時にモチベーションが維持できる聖人君主はいません(笑)。こういう時には、私もモチベーションが下がります。でも、自分の高齢者の救急診療での大きな間違いは、「カリカリしながら診療した時」に起こしたことを思い出して、自分を律することにしています。さらに、「老年医学に強い総合医を養成してこなかったこと、在宅医療で看取りができる家庭医を養成してこなかったこと、これらのツケを、今、みんなで払っている」と考えるようにしています。救急医療が円滑に行われるには救急医や各科専門医を養成して、救急総合病院を増やしてもうまくいかないのです。老年医学に強い総合医を養成すること、在宅医療で看取りができる家庭医を養成することも上手くやらないと、その地域の地域医療も救急医療もうまくいかないのです。その意味で、救急医を目指される医師も、総合医や家庭医の養成を応援する姿勢が必要です。
質問(1年目研修医の先生)
ERでは急がないといけないことが多いので、医療面接の優先順位もかなり変動すると思いますが、鑑別や検査につなげるために、時間は短めになるようにするほうが救急医には得策ではないでしょうか?
回答
ERでは御指摘のように「医療面接棚上げ群」というのがあります。たとえば、高齢者の側腹部痛では医療面接に時間をかけずに、腹部超音波検査でAAAを否定するべきです。初期研修医の時期には、是非、このような「医療面接棚上げ群」を、患者さんの年齢、性別、主訴、背景、バイタルサインなどで、瞬時にわかるようになることが最優先の課題です。
ただ、「医療面接棚上げ群」ではない患者の場合には、本日、お話ししたようなことを気を付けて鑑別診断を絞り、疑わしい部位の重点的な診察、確定診断につながる検査につなげる考え方(way of thinking)を習得しておかないと、検査できない施設や大災害、院外(電車や飛行機の中)で的確な診療ができる医師になれません。
研修医の先生方には、まず「医療面接棚上げ群」を学んでいただき、次に、時間が十分ある時の高齢者の診療の仕方(way of thinking)を習得していただき、慣れてきたら、忙しい時に安全に省略できる医療面接や身体診察、検査を見分ける力を習得するという学びの順番を守られることをお勧めします。
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次回の林先生の講義もお楽しみに!
さっそく寺澤先生からご回答をいただきましたので掲載させていただきます。
なお、内容は講義をベースにしており、特定の症例にあてはまるというわけではありませんので、
情報を活用する場合はその判断をする方の責任においてお願いします。
寺澤先生ありがとうございました。
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質問(医学生さん)
患者さんから話を聴く時に、話しやすい雰囲気にするコツはありますか?
回答
医学的なことを聴きだすことだけに集中せず、患者さんの人生にも関心をもつことです。そうすると職業、身なり、持ち物、 家族などにも関心がもてて、そういうことも医療面接の最中に聴けるようになると会話が弾みます。さらに、患者さんの苦痛の程度にもよりますが、適度の微笑み、適度のユーモアが出せると良い雰囲気が作れるようになります。
質問(医学生さん)
高齢者の歩行障害、ふらつきの評価はどうしたらいいのでしょう? 身体診察よりも病歴が重要でしょうか?
回答
はい、私は医療面接が最も重要だと思います。
いつから、どのように出現したか、初めての症状か、随伴症状がないか、既往歴、薬剤歴を聴いて、バイタルサインで発熱や低血圧がないかをチェックして、原因を絞込むことから始めます。医療面接で絞込みをしないと、どこを重点的に診察していいかがわからないので、おおざっぱな診察になり、所見を見落とすことも起こりえますし、絞らずに全身くまなく診察していたら時間がかかりすぎるからです。
質問(2年目研修医の先生)
高齢者の患者さんの診察の時に、何人まで診察室に入れますか?
回答
特に決めていません。患者さんの緊急度、手技の最中かどうか、診察室のスペース、入りたい人が何人一緒に来ているのか、などで決めています。
質問(2年目研修医の先生)
初診の高齢者の患者さんの診察で注意していることはありますか?
回答
本日講演でお話ししたことを注意しています。
即ち、何をしている時、どういう症状で始まり、その後の症状の移り変わり、初めての症状かどうか、既往歴、薬剤歴、バイタルサインで絞込み、必要な部位に集中的な診察をして-----といういつもどおりのことを怠りなくやるようにしています。
質問(1年目研修医の先生)
慢性心不全にNSAIDはどうして心不全の増悪をおこすのですか?
回答
NSAIDは尿からのNaの排泄を減らす作用、腎機能を悪化させる作用があるので、慢性心不全の患者では、心不全が悪化しやすいのです。私は、どうしても処方したい場合には、患者さんと御家族に副作用に関して説明し、必ず数日以内に、主治医(循環器内科)の外来で再評価をしていただくようにしています。
質問(不明)
H2ブロッカーの譫妄とはよくあるのでしょうか? 何か特徴がありますか?
回答
頻度は多くないと思います。H2ブロッカーの譫妄に特別な特徴は知りません。
処方されてから数日〜数週間以内に譫妄が出現した場合に考えます。また、長期に投与されている場合に、それほど必要ない処方として処方されていることが少なくないので、譫妄の患者さんを診たら、一旦、中止してみることはよくやっています。
質問(8年目勤務医)
ERで近隣の施設から、「身寄りがなく、ほぼ寝たきり、難聴もあり、意思疎通が困難な高齢者」が様々な理由で搬送されて来ます。自分のER診療のモチベーションが保てなくなることがあります。こういう時のモチベーションの保ち方を教えて下さい。
回答
こういう時にモチベーションが維持できる聖人君主はいません(笑)。こういう時には、私もモチベーションが下がります。でも、自分の高齢者の救急診療での大きな間違いは、「カリカリしながら診療した時」に起こしたことを思い出して、自分を律することにしています。さらに、「老年医学に強い総合医を養成してこなかったこと、在宅医療で看取りができる家庭医を養成してこなかったこと、これらのツケを、今、みんなで払っている」と考えるようにしています。救急医療が円滑に行われるには救急医や各科専門医を養成して、救急総合病院を増やしてもうまくいかないのです。老年医学に強い総合医を養成すること、在宅医療で看取りができる家庭医を養成することも上手くやらないと、その地域の地域医療も救急医療もうまくいかないのです。その意味で、救急医を目指される医師も、総合医や家庭医の養成を応援する姿勢が必要です。
質問(1年目研修医の先生)
ERでは急がないといけないことが多いので、医療面接の優先順位もかなり変動すると思いますが、鑑別や検査につなげるために、時間は短めになるようにするほうが救急医には得策ではないでしょうか?
回答
ERでは御指摘のように「医療面接棚上げ群」というのがあります。たとえば、高齢者の側腹部痛では医療面接に時間をかけずに、腹部超音波検査でAAAを否定するべきです。初期研修医の時期には、是非、このような「医療面接棚上げ群」を、患者さんの年齢、性別、主訴、背景、バイタルサインなどで、瞬時にわかるようになることが最優先の課題です。
ただ、「医療面接棚上げ群」ではない患者の場合には、本日、お話ししたようなことを気を付けて鑑別診断を絞り、疑わしい部位の重点的な診察、確定診断につながる検査につなげる考え方(way of thinking)を習得しておかないと、検査できない施設や大災害、院外(電車や飛行機の中)で的確な診療ができる医師になれません。
研修医の先生方には、まず「医療面接棚上げ群」を学んでいただき、次に、時間が十分ある時の高齢者の診療の仕方(way of thinking)を習得していただき、慣れてきたら、忙しい時に安全に省略できる医療面接や身体診察、検査を見分ける力を習得するという学びの順番を守られることをお勧めします。
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次回の林先生の講義もお楽しみに!