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Channel: 感染症診療の原則
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清拭車とルンバ と その周辺

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セレウス菌のことがニュースになっていたので「キレイ」の話をもうひとつ。

関連のアウトブレイク事例や研究はたくさんあるのですが、そこで「清拭車」という言葉がでてきます。

いえ、車ではありません。水をいれてスイッチオンすると、高温蒸気がでて、いれて置いたタオルが程よい温度になる、というものです。
したに車輪がついて可動式なので車と書くのだとおもいますが、ルンバのようなものではございません。

清拭(ベッドバス、ともいうのでナースの略語はBBだったりします)、はタオルなどで患者さんの体をふくことをいうのですが、基本はお風呂やシャワーであり、それが疾患や治療、機能制約上できない人をナースやヘルパー、あるいはご本人が「蒸しタオル」で拭くわけです。

暖かい湿ったタオルが必要になるわけですが、患者さんのところにいくときに、清拭車からタオルを数本とってもっていくわけです。
使い終わったタオルは使用済み袋やBOXにいれてまとめて洗濯。
院内でやって干して、のところもありますが外部業者に委託することもあります。
清拭車にいれるまえのタオルは、誰かが濡らしてくるくる丸めておくか、業者なら居酒屋ででてくるようなビニールに入ったオシボリパック状態になってます。

熱すぎるとさわれない…と、設定温度をスタッフがさげていたこともあります。


時にタオルが冷めてしまい、急ぐナースが患者さんのラウンジの電子レンジでチンしたりする施設があります(ひえー)。

ナースが4人部屋で二人の人の清拭をするとします。必要なタオル×2本をワゴンに載せてでかけたとします。一人拭いて次の患者さん。使い終わったタオルは清潔扱いの段と、使用済み物品をおく下の段でゾーニングし、患者さんのケアの合間には手袋を変え、手指衛生をします。

さて。ここまでで、菌が付着したり、広がったり(医療者が広げたり)、時間経過とともに増殖したり、患者さんが曝露したりする可能性をどれくらい思いつきましたか?

(といったことを学生やヘルパーさんの感染管理の基礎講習でやってますのん)

で、対策として、清拭車は「廃車」になるのがトレンドです。ハイスペック、ハイブリッドな清拭車に変えようぜ!という人もいるかもしれませんが、ディスポ製品に変える施設もあります。

(ゴミがふえますがどうしますか?という事例検討を、看護管理研修でやってますのん)

患者さん専用タオルで、一回一回、ベッドサイドの流しで暖かいお湯で洗って絞ってが理想のようにおもいますが、時間管理や設備の問題など条件として現実的かどうかという課題はあります。

たまたま話題になっているのが他院のセレウスですが、感染対策を進める中で、いずれこの車どうする?という話題はでます。

アウトブレイク対応を手伝った施設では、上記の何処かにリスクが生じていました。


エビデンスベースでいくぜ!となると、タオルや清拭車をしらべて、となります。
(背筋がひんやりしたりするかもしれません)

ところで。
話はまったくかわりますが、
ある時、実習学生が、「皆さん寝たきりでベッド上だから、掃除はルンバでもいいのでは?」といいました。
物理的なゴミはとれるけど、何か汚染したら、拡散になるかもね、という話になり、卒論で床清掃モップを培養するという話になりました。
最終的にはボツった案件ですが。

菌がいることと、患者さんが具合が悪くなる(臨床のアウトカム)は違うしね、そんなことより自分で変調をうったえられない患者さんの表情やバイタルサインの変化に早く気づけるようになろうね〜という話でおわりました。
今ではタイミング良く血培をとれるナースになってます。

難しい理屈だけでなく、患者さんを安全に、守る、という動機付けも大切だなと思います。
毎日地味に呪文のように語ります。

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