第8回若セミ ジェネラリストに知っていてほしいがんの基礎知識 Q&A
以下をご覧下さい。//////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
1. 質問者 : 医師 内科 50代
質問内容 : がん検診には画像診断をすることがあります。
MMG、胸部X線、EGDSなどは、検査手技の質、読影の質にも左右されると思います
。多くの方に健診を受けていただくには、多くの医師(中には専門外の)が健診にあたることになります。
診断の質を一定にすることが必要と思いますが、専門医の先生からみて、個人差、施設差の問題はいかがでしょうか
回答:
ご質問ありがとうございます。確かに、検診医の個人差、施設差は存在すると思います。
検診は、地区町村レベルにまかせられているものですが、検診を一生懸命に取り組んでいる地域とそうでない地域とでは格差が存在すると思います。
検診の質をいかに、高く、均一なものにしていくのかは、大事なことと思います。
本来ならば、行政や学会などが、Quality contorolに関して、取り組んでいくべきところではありますが、そこまで手が回っていないという現状があると思います。
2. 質問者 : 病院勤務薬剤師
質問内容 : 講演中のスライドにもありましたが、高齢者に対する検査の推奨度についての質問です。
消化管内視鏡検査の前処置用下剤を患者さんに渡すときに、高齢(主に70代)の患者さんから「この検査は必要なのか?」と聞かれることが何度かありました。
年齢を考えると2Lほどの下剤を飲むことや検査が大変に思うのですが、このような場合にどういった説明をしたらよいでしょうか?
回答:
ご質問ありがとうございます。
確かに、高齢者を何歳まで検診を推奨するかは、大事なことと思います。高齢者になりますと、検診のメリットを受けない方たちが存在してくるからです。返って侵襲的な検診がデメリットにもつながります。
高齢者の検診を何歳まで推奨するか、に関しては、日本での検診は、年齢制限を設けておりません。
米国では、例えば、大腸がんの大腸内視鏡検査は、50~75歳までとしています。75歳以上に関しては、検診のメリットがあるという明確なエビデンスが存在しないからであるという理由でそのようにしていると思います。
3. 質問者 : 医師 内科 50代
質問内容 : 診療所では地域の薬局の薬剤師の先生方と比較的交流があるので、薬局で患者さんが実は・・・といったことを連絡していただき、残薬や服用方法の問題の解決方法を相談できます。病診連携をしている施設の薬剤師の先生からは、こうした相談をすることがありません。
森先生は、院内だけでなく診療所と意見交換をすることはありますでしょうか。
病院薬剤師の先生方はお忙しいと思いますので、どういった工夫をされているでしょうか。
回答:森)残念ながら診療所の先生との意見交換を行う機会も企画もございません。
近隣の病院が開催されている勉強会や、製薬会社が開催されている病診連携の勉強会において同席する機会がある程度でしょうか。院長が病院を代表して地区の医師会と連携されているのが全てかと思います。
地区の薬剤師会との連携は、当院にて毎月行っておりましたが、コロナ禍の現状では、webを用いて行っております。
4. 質問者 : 医師 20代 感染症科医
質問内容 : 定期外来のがん検診ではUSPSTFに準じるべきか日本のガイドラインに準じるべきか,如何でしょうか?
例えば大腸癌では便潜血のみのスクリーニングでも良いのでしょうか?
回答:
ご質問ありがとうございます。
米国のUSPSTF推奨は、米国人患者を対象にしているため、米国人の大腸がんの有病率、死亡率の結果から、メリット、デメリットは左右されるかと思います。
ただ、その結果は、日本人にも参考にしてもよいと思います。
5. 質問者 : 内科医師20年目 病院総合医
質問内容 : 腫瘍マーカーは検診に用いないでという推奨があるのに人間ドッグで腫瘍マーカー軽度高値、二次検診をという紹介がなくなりません。
検診を受ける前の説明も結果についての説明もないようです。腫瘍学会などでこれに対する働きかけなどはあるのでしょうか。
回答:
ご質問ありがとうございます。
確かに、腫瘍マーカーについては、学会などで注意するような警告を出してほしいと私も思っておりますが、検診学会とかですと、検査や機器メーカーからのスポンサーがあるので、できないのが現状なのでしょう。
腫瘍学会ですと、治療が中心の学会であるので、検査に関してはあまり関心がないという現状があります。総合内科やプライマリケアの学会に期待したいといったところでしょうか。
6. 質問者 : 内科勤務医 40代
質問内容 : 先日、まさに80歳台女性で腹膜原発癌と思われる方を担当しました。
婦人科で卵巣癌化学療法を相談しましたが「高齢なので治療するとねたきりになる」という説明を受けご本人が治療を拒否(というか断念)、その後永眠されました。
特に既往症もなかったのですが、80歳で腹膜原発癌の化学療法を勧めるのはハードルが高いのでしょうか。
回答:
ご質問ありがとうございます。
現在の高齢者がんのガイドライン(高齢者のがん薬物療法ガイドライン 日本臨床腫瘍学会/日本癌治療学会 編集)でも、単に年齢のみをもって、「化学療法をしない」と治療方針を決定するようなことは推奨しておりません。
臓器機能や認知機能、合併症の有無などを総合して、判断するのがガイドラインでも推奨されているところです。
7. 質問者 : 腫瘍内科医 38歳
質問内容 : 先生はがん患者さんに標準治療の抗がん剤の有効性をご説明される際に、どういった有効性の指標をご説明されていますでしょうか。
奏効割合、無増悪生存期間の延長、全生存期間の延長など、複数ありますが、治療ラインによって使い分けられたりしていますでしょうか。
回答:
ご質問ありがとうございます。
患者さんの、がんの状況、理解度、どの程度までの情報を希望するか、などに合わせて、個別に考えて、情報提供をするようにしています。
一律にしていることはありません。
8. 質問者 : 医師 内科 50代
質問内容 : スライドのレジメは、ありますか?
回答:
ご連絡ありがとうございます。
スライドに関しては、私のフェイスブックや、ツイッターなどでも紹介したいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
9. 質問者 : 薬剤師 20代
質問内容 : 大変参考になるお話をありがとうございます。
病院勤務で副作用マネジメントと同時に緩和ケアにつながる薬剤提案を行わせていただくことが多いのですが、外科系の先生にはなかなか受け入れていただけないことが多いです。
勝俣先生や森先生はほかの科の先生などへ提案する際になにか工夫していることなどはありますでしょうか。
また副作用などに聴取の際ACPにつながるお話をいただくことが多いのですが医師や家族への共有がなかなかできないことが多いです(看護師やその他の職種とは共有できることが多いです)。
先生方はACPの共有をカンファレンスなどの際に実施されているのでしょうか?
回答:
なかなか受け入れていただけない医師などへの対応に関しては、アサーティブコミュニケーションなどを取り入れています。
回答 森)慣れていない先生に提案する際には、できるだけお会いして、対面で相手の様子を見ながら説明するように心がけています。また、資料をコピーして書きこみをしてから持参するなど、理解しやすくするひと手間を惜しまないようにしています。
ACPについては難しいですよね。
コロナ禍においては行っておりませんが、以前は週1回のペースで緩和に関する情報共有を医師・病棟看護師・外来看護師・化学療法室の看護師・薬剤師・リハビリスタッフとで行っておりました。
10. 質問者 : 病院薬剤師
質問内容 : がん治療、疼痛など多くの参考図書がでていますが、特に現場で参考になるような図書があれば教えていただければありがたいです
回答:
がん診療スタンダードマニュアル:がん薬物療法からサポーティブケアまで シーニュ社がお勧めです!!
回答:森)
がん治療
・レジメン管理
-がん薬物療法ガイド レジメン+薬剤情報 / 医学書院
・抗がん剤について
-がん治療薬まるわかり BOOK / 照林社
緩和
・緩和ケアゴールデンハンドブック(改訂第2版): 書籍/南江堂
・トワイクロス先生の がん患者の症状マネジメント 第2版 / 医学書院
・がん疼痛治療薬まるわかりBOOK / 照林社
その他
・がん患者の精神症状はこう診る 向精神薬はこう使う / じほう
11. 質問者 : 婦人科医(千葉)
質問内容 : 勝俣先生はあえて触れられていないと思いますが、卵巣がんの領域ではoptimal surgeryが大切です。
拡大手術によって、がんをできるだけ取ることが、患者の予後の改善につながります。また、現状で腫瘍内科医のいない現状では、抗ガン剤も婦人科医が積極的に行うことにより、予後の改善が認められていると思います。
回答:
ご指摘ありがとうございます。
ご指摘のとおり、卵巣癌、腹膜癌の治療は、化学療法のみでなく、primary debulking surgery やinterval debulking surgeryにより、いかに完全切除を目指すかという手術も大切になります。
12. 質問者 : 医師 50代
質問内容 : To Cure often
Relieve often
Comfort always.
という表現もありましたが、TreatのほうがOriginalに近いでしょうか?
回答:
ご指摘ありがとうございます。
所説あるようですね。Cure sometimes Treat often Comfort alwaysは、ヒポクラテスが言ったこととして、引用も多くありますが、ヒポクラテスが言ったのではなく、
16世紀の外科医アンブロワー ズ・パレが「To Cure often Relieve often Comfort always. 」
と言ったなどの説もあるようです。