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Channel: 感染症診療の原則
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経済活動再開と第2波に備える #8 ワクチンと抗体

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GAVIなどGlobalな組織がワクチンを積極的に開発し世界に提供しようとする動きは一臨床医の目から見ても素晴らしく、これらの組織に日本から多額の拠出金が出されていることは誇らしく思います。
それにしても、以前からアメリカ(人口3億人+)で死者が10万人超、日本・タイ・ベトナム・オーストラリア地域(人口3億+)の死者が1000人超・・編集長には、この100倍近い死亡例の差を単なる医療体制や清潔好き文化だけで説明できるとするには違和感がありました。(勿論、「民度の差」も含めて・・)
そんな中、コロナからの回復した人の血漿だけでなく、2015-2018年に得られた(罹患していない)人のそれもSARS-CoV-2に反応する免疫がある・・という報告をみて、アジア地域の人は中国の近くということもありSARS-CoV-2に類似したウイルスに免疫があり、それが少ない死亡数に寄与したのではないか・・と想像しました。。 その想像をHIV感染症の師匠であるSchooley先生に伝えたところ、多いに関与しているだろう・・というお話でした。Grifoni et al., Targets of T Cell Responses to SARS-CoV-2 Coronavirus in Humans with COVID-19 Disease and Unexposed Individuals, Cell (2020), https://doi.org/10.1016/j.cell.2020.05.015
それならばワクチンにも期待が持てるのではないか・・と思った次第です。
他方、軽症であったCOVID-19症例の回復期の中和抗体価を測定したら、抗体が沢山出来ていた症例から、全く出来ていない症例までマチマチであった・・という報告にも出会い(タイトル図)、同様に軽症で回復した症例でも抗体の出来方はマチマチなのだな・・。 Fan Wu et al. Neutralizing antibody responses to SARS-CoV-2 in a COVID-19 recovered patient cohort and their implications
medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.03.30.20047365

ちょうどインフルエンザワクチンが効いた印象がある人と無い人が毎年居る・・というのもなるほど似た理由かも・。 するとワクチンに対する期待もやはり中腰が良いか・・と思った次第であります。
勿論、巨大なPandemicの分母に中腰の効果であれば御の字なのですが・・
更に、罹患した人の中にも抗体を作らない人がいるということは、ワクチンの効果を考える場合だけでなく、抗体検査の利用の仕方にも注意が必要であると考えます。WHO: これらの新しいPoint of Careは研究手段としてのみ(only in research settings)使おう。
Advice on the use of point-of-care immunodiagnostic tests for COVID-19

皆様、Have a good weekend。

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