若手医師セミナー2017 水・電解質 Q&A 須藤先生
質問者 : 60代婦人科医
質問内容 : 婦人科、不妊症治療の際、排卵誘発剤で発生する卵巣過剰刺激症候群で腹水及び水分摂取不良による脱水症に対して、先生はどういった種類の輸液を選択されますでしょうか。
回答:
それだけの情報では,決めかねます。「脱水症」が細胞外液減少を意味するのであれば等張液を使いますし,free waterの欠乏も伴っている(血清Naが上昇している)のであれば,free waterも入った輸液を選択すると思います。もし腹水が大量に貯留しているような状況(体液全体としては過剰になっていると判断した場合)では,実際には難しい選択です。私も悩むと思います。
質問者 : 研修医20代
質問内容 : 低Na血症において血管内volumeを評価するときはIVCの計測を行うことも重要でしょうか?
回答:
利用可能なのであれば,充分に有用な情報になると思います。
質問者 : 医師 内科 50代
質問内容 : 漏出性胸水や腹水の貯留は間質の体液分画増加(浮腫)と同じ機序ですか。
回答:
胸水や腹水は原則として,間質の体液増加と同等に考えてよいと思います。
質問者 : 医師 内科 50代
質問内容 : 脱水の病歴で、発熱や嘔吐で実際に体からでる水分は大したことないと思いますし、下痢は頻回だと水分がかなり出てしまうと思います。発熱や嘔吐で体液が喪失する程度は下痢とは異なるような気がします。ただ下痢の方は水分を摂れることが多く、発熱や嘔吐は経口摂取できないことが多いので、totalとしては体液喪失と同じことなのでしょうか。
回答:
たとえ発熱だけでも数日の経過でみれば「大したこと」になることは充分ありえます。「発熱だから」とか「下痢だから」と単純に一般化することは困難だと思います。そのために,個々の患者さんによって,それ以外の情報,たとえば体重の変化や,バイタルの変化(血圧低下,頻脈)あるいは検査所見(BUN上昇,Hb/Ht値の見かけ上の上昇など)も参考にして重症度を考えることになると思います。また脱水の評価において,治療前に正確に喪失量を推測することは結構難しいと思います。したがって,数日単位でIN/OUTをみて,その患者さんがよくなっていったときに,実際どれくらい輸液が必要だったのかを必ず振り返ることが重要だと思います。これによって,患者さんの全体像を見て,上記にあげたような情報をすべて総合的に考えて判断する「臨床的なカン」のようなものを養っていくしかないと思います。これは検査データの読みにも言えると思います。たとえばBUN,Hb/Ht, 尿酸値などいずれも参考になりますが,もともとの値から,あるいは臨床的に改善が得られたときに,当初の値だどのような意味をもつかと考える必要があります。
質問者 : 医師 内科 50代
質問内容 : 喪失体液量の推定で粘膜の乾燥というのは、主に口腔でしょうか。以前腋窩の乾燥というのを伺ったのですか、これは皮膚ツルゴールの低下と同じ程度でしょうか。
回答:
口腔内は口呼吸をしている患者では,あまりあてにならないと言われています。
舌の下に唾液貯留があるかどうかは参考になるとされています。
体液喪失の指標は数多くありますが,どれも単一で充分なものはないので,いくつかの所見を総合的に判断するしかないと思います。腋窩乾燥はその中でも,比較的有用性が高いとされています。
質問者 : 精神科医師 30代
質問内容 : 水中毒(低ナトリウム血症)患者に、食塩を処方するケースがありますが、
心不全など心臓に負荷がかかることが懸念されますがいかがでしょうか?
回答:
水中毒は基本的に「水の過剰」で,体内のNa量は通常は正常だと思います。しかも急性の水中毒を考えると食塩を処方するケースはないと思います。慢性の水中毒であっても基本的には「水制限」が治療で,食塩を処方するケースは想定しないように思います。
もし体内のNa量が少ない場合(細胞外液量減少を伴う場合)には,処方することがあってもよいかもしれません。心不全など心臓に対する負荷を心配するかどうかは,もともとの心機能の状態などによって判断は異なると思います。
質問者 : 20代 研修医
質問内容 : 心因性多尿症に関して、夜間帯のERで疑った際はNa補正をせずに、尿を自然に出させて血中Naが改善していく経過をみるのが良いのでしょうか?
回答:
基本的にはそうだと思います。腎機能が正常であれば,すみやかに最大希釈尿が排泄されてNa濃度は改善してゆくと思います。いずれにしても,過度のNa濃度補正を避けるために,入院後は2〜4時間毎に最初はNa濃度をモニターした方がいいと思います。Na上昇があまりに急激になって補正速度が早すぎることを懸念して,あえて低張液を輸液する場合はあります(あるいは過度のNa値上昇に対して,free waterを輸液して,逆補正することもありとされています。)
質問者 : 研修医 20代
質問内容 : SIADHを考えるときに肺疾患、薬剤など考えますが、必ずしもそういった要因がなくてもvolume depletionが起こるとADHが分泌されて低Na血症をきたすということですか。
回答:
ご指摘の通りです。浸透圧刺激以外のADH分泌の中で,最も強力な刺激がhypovolemiaです。したがってsevereなvolume depletionがあるときに,低張液を輸液することは,急性の低Na血症をきたす危険,あるいはもともと低Na血症があればさらに悪化させる危険があるということです。
(SIADHという場合には,体液量はほぼ正常であることが条件になっているので,severe hypovolemiaに伴う低Na血症は,SIADHとは定義上は言えないと思います)
質問者 : 医師50代
質問内容 : 心因性多尿があり、精神遅滞がある患者がいます。
水をいつもとっています。治療は??
回答:
実際に行うことは難しいかもしれませんが,「水制限」が基本だと思います。
質問者 : 60代婦人科医
質問内容 : 婦人科、不妊症治療の際、排卵誘発剤で発生する卵巣過剰刺激症候群で腹水及び水分摂取不良による脱水症に対して、先生はどういった種類の輸液を選択されますでしょうか。
回答:
それだけの情報では,決めかねます。「脱水症」が細胞外液減少を意味するのであれば等張液を使いますし,free waterの欠乏も伴っている(血清Naが上昇している)のであれば,free waterも入った輸液を選択すると思います。もし腹水が大量に貯留しているような状況(体液全体としては過剰になっていると判断した場合)では,実際には難しい選択です。私も悩むと思います。
質問者 : 研修医20代
質問内容 : 低Na血症において血管内volumeを評価するときはIVCの計測を行うことも重要でしょうか?
回答:
利用可能なのであれば,充分に有用な情報になると思います。
質問者 : 医師 内科 50代
質問内容 : 漏出性胸水や腹水の貯留は間質の体液分画増加(浮腫)と同じ機序ですか。
回答:
胸水や腹水は原則として,間質の体液増加と同等に考えてよいと思います。
質問者 : 医師 内科 50代
質問内容 : 脱水の病歴で、発熱や嘔吐で実際に体からでる水分は大したことないと思いますし、下痢は頻回だと水分がかなり出てしまうと思います。発熱や嘔吐で体液が喪失する程度は下痢とは異なるような気がします。ただ下痢の方は水分を摂れることが多く、発熱や嘔吐は経口摂取できないことが多いので、totalとしては体液喪失と同じことなのでしょうか。
回答:
たとえ発熱だけでも数日の経過でみれば「大したこと」になることは充分ありえます。「発熱だから」とか「下痢だから」と単純に一般化することは困難だと思います。そのために,個々の患者さんによって,それ以外の情報,たとえば体重の変化や,バイタルの変化(血圧低下,頻脈)あるいは検査所見(BUN上昇,Hb/Ht値の見かけ上の上昇など)も参考にして重症度を考えることになると思います。また脱水の評価において,治療前に正確に喪失量を推測することは結構難しいと思います。したがって,数日単位でIN/OUTをみて,その患者さんがよくなっていったときに,実際どれくらい輸液が必要だったのかを必ず振り返ることが重要だと思います。これによって,患者さんの全体像を見て,上記にあげたような情報をすべて総合的に考えて判断する「臨床的なカン」のようなものを養っていくしかないと思います。これは検査データの読みにも言えると思います。たとえばBUN,Hb/Ht, 尿酸値などいずれも参考になりますが,もともとの値から,あるいは臨床的に改善が得られたときに,当初の値だどのような意味をもつかと考える必要があります。
質問者 : 医師 内科 50代
質問内容 : 喪失体液量の推定で粘膜の乾燥というのは、主に口腔でしょうか。以前腋窩の乾燥というのを伺ったのですか、これは皮膚ツルゴールの低下と同じ程度でしょうか。
回答:
口腔内は口呼吸をしている患者では,あまりあてにならないと言われています。
舌の下に唾液貯留があるかどうかは参考になるとされています。
体液喪失の指標は数多くありますが,どれも単一で充分なものはないので,いくつかの所見を総合的に判断するしかないと思います。腋窩乾燥はその中でも,比較的有用性が高いとされています。
質問者 : 精神科医師 30代
質問内容 : 水中毒(低ナトリウム血症)患者に、食塩を処方するケースがありますが、
心不全など心臓に負荷がかかることが懸念されますがいかがでしょうか?
回答:
水中毒は基本的に「水の過剰」で,体内のNa量は通常は正常だと思います。しかも急性の水中毒を考えると食塩を処方するケースはないと思います。慢性の水中毒であっても基本的には「水制限」が治療で,食塩を処方するケースは想定しないように思います。
もし体内のNa量が少ない場合(細胞外液量減少を伴う場合)には,処方することがあってもよいかもしれません。心不全など心臓に対する負荷を心配するかどうかは,もともとの心機能の状態などによって判断は異なると思います。
質問者 : 20代 研修医
質問内容 : 心因性多尿症に関して、夜間帯のERで疑った際はNa補正をせずに、尿を自然に出させて血中Naが改善していく経過をみるのが良いのでしょうか?
回答:
基本的にはそうだと思います。腎機能が正常であれば,すみやかに最大希釈尿が排泄されてNa濃度は改善してゆくと思います。いずれにしても,過度のNa濃度補正を避けるために,入院後は2〜4時間毎に最初はNa濃度をモニターした方がいいと思います。Na上昇があまりに急激になって補正速度が早すぎることを懸念して,あえて低張液を輸液する場合はあります(あるいは過度のNa値上昇に対して,free waterを輸液して,逆補正することもありとされています。)
質問者 : 研修医 20代
質問内容 : SIADHを考えるときに肺疾患、薬剤など考えますが、必ずしもそういった要因がなくてもvolume depletionが起こるとADHが分泌されて低Na血症をきたすということですか。
回答:
ご指摘の通りです。浸透圧刺激以外のADH分泌の中で,最も強力な刺激がhypovolemiaです。したがってsevereなvolume depletionがあるときに,低張液を輸液することは,急性の低Na血症をきたす危険,あるいはもともと低Na血症があればさらに悪化させる危険があるということです。
(SIADHという場合には,体液量はほぼ正常であることが条件になっているので,severe hypovolemiaに伴う低Na血症は,SIADHとは定義上は言えないと思います)
質問者 : 医師50代
質問内容 : 心因性多尿があり、精神遅滞がある患者がいます。
水をいつもとっています。治療は??
回答:
実際に行うことは難しいかもしれませんが,「水制限」が基本だと思います。