読売新聞の地域版(静岡版)が、静岡市の子宮頸がんワクチン(正確にはHPVワクチン)の接種後の体調変化調査を記事にしていました。
2015年10月現在、各メディアや取材担当記者が、どの程度学び、どのような関心を持ち、どのような意図で何を伝えようとしているのかはたいへん興味深い点ですので、この最新記事をもとに週末に関連情報を見渡してみました。
一般方や保護者には広くヒアリグをしてみるという(時間やお金のかかる)作業をしてくださった自治体の資料の方が具体的に役立つのではないかと思いました。
その読売新聞の記事は2015年10月17日のものです。
タイトルは、「子宮頸がんワクチン 接種後、体調変化28%」
この問題で「真実追究系」で熱い記者が、数字ベースで検討できる内容についてはあまり関心をしめさない、センセーショナルに書けないものはフォローしないという報道バイアス(学会等での発表バイアスのようなもの)があることをまず復習。
まず、記事を読みますと、最初からセンセーショナルねらいというわけではありません。これまでの調査結果とどうよう、そもそもセンセーショナルな要因をみつけられないということもあるかもしれませんが。
(これまでの調査結果で、分母を伏せるなど無理に煽り系にした記事はありますが。記者の主観が入るのでしかたないですね)
ちなみに、、タイトルの28%は接種をした人全体の28%ではありません。
(回答をしてきた人の中で出てきた数字)
このような記事でいつも問題になる分母の情報が入っています。
今回の場合は調査対象者が2011年2月から2015年3月と広く、11,103人が対象です。
問題は回答率です。回収されたのは1,608で、他の自治体調査と比べて14.5%と低くなっています。
もともとこのような郵送式質問紙調査では80%〜というような高い回収率になることは稀です。
ですので、他の自治体で半分くらい戻ってきた、、、というのはまあまあ妥当な数字です。
報道過熱時は高くなるでしょうし、もともと地域的に教育や保健医療に関心が高い人がいる、あるいは回収率を上げるためにリマインドをしたりすると影響(バイアス)が生じたりします。
回収率はばらつく、、、はしかたないので、解釈の際に注意をするようにします。
例えば、回収率が50%とします。転居して届かない場合もありますが、これは有効発送数として補正されています。
一般的な傾向として、回答しないパターンとしては、関心がない、問題が起きていない、といったことが背景にあります。忘れた、忙しい、質問紙をなくした、めんどうくさい等も考えられます。
このため、分母全体からみて半分くらいは問題がなかったのだろうと推測されます。
次に、帰ってきた半数の人の中で、接種後の体調の変化があったかどうか/どのような症状か/どれくらいで消えたのか・続いているのか/今も続いている症状は何か/そもそも病院に行くほどの状況だったか、について各自治体が質問をしています。
複数の調査結果が公開されています。
静岡市は極端に低いですが、他の自治体を見比べても、回収率も想定の範囲内です。
何らかの症状があったかについては4割前後が有りで、その多くが予防接種でよくある痛みや腫れです。
マイナーな症状については多様ですが、どの自治体も似通っています。
自由記載には「副反応が出たらどうしてくれるんだ」「TVみて不安になった」という否定的なものもありますが、「がんを予防できることに期待」などポジティブなものもならんでいます。
このあたりは記者がどの辺りをピックアップして報道にいれるか、、、です。
今回の読売の記事はたんたんと情報を並べ、最後に問い合わせ先を書いています(役に立つ情報)。
機会があったら、これまでの記事との違いをぜひ読み比べてみるとよいのではないかとおもいます。
ちなみに、回答者の5.8%(94人)には現在も続く症状があり、生理不順(32人)、頭痛(23人)、めまい(17人)、だるさ(14人)、視力低下(13人)と続いています。
回収率が一番高いのは臨床試験のときです。細かく全員に聞きます。
ワクチン関係で最もメジャーかつ因果関係が明確なのは接種部位の痛みや腫れで、全員が正直に応えると8割越えになるはずなのですが、一般的な調査ではこんなに低いのか、です(プライドが邪魔をするのか忘れたのかわかりませんが)。
超レアな症状については、ワクチンとの因果関係だけでなく、そもそもワクチン関係なく平時からどれくらい頻度としてあるのだろう?ということや、似たような時期/経過のパターンで症例が複数集中して発生しているのか?ということが問われます。
他にもあるかもしれませんが、ネットで調べると下記の情報が公開されています。
市町村名 実施時期 有効送付数 回収数 回収率
-------------------------------------------------------------
鎌倉市 平成 25 年 10 月 3,060 1,795 58.7%
大和市 平成 25 年 12 月 5,200 2,294 44.1%
茅ヶ崎市 平成25 年 12月 5,269 2,382 45.2%
藤沢市 平成 26 年 4 月 6,995 3,469 49.6%
国立市 平成 26 年 6 月 895 379 42.3%
武蔵野市 平成27 年 3月 1,934 862 44.6%
東村山市 平成27 年 6月 2,211 1,002 45.3%
静岡市 平成27 年 7月 11,103 1,608 14.5%
-------------------------------------------------------------
鎌倉市 「鎌倉市子宮頸がん予防ワクチン接種後の体調の変化に関する状況調査結果」
大和市 「大和市 子宮頸がん予防ワクチン接種後の体調変化に関する状況調査」
茅ヶ崎市 「子宮頸がん予防ワクチン接種後の体調の変化に関する状況調査結果」
藤沢市 「藤沢市子宮頸がん予防ワクチン接種後の体調等に関するアンケート調査結果」
国立市 「国立市子宮頸がん予防ワクチン接種後の体調の変化に関する状況調査について」
武蔵野市 「子宮頸がん予防ワクチン接種後の体調変化に関する状況調査について」
東村山市 「子宮頸がん予防ワクチン接種後の体調変化等、状況調査の結果」
静岡市 「子宮頸がん予防ワクチン接種後の
体調の変化に関する状況調査結果」
テレビで紹介される、特異的な症状や、学校の継続が出来ない等、症状緩和や日常生活支援については、取り組みが継続されています。予防接種との因果関係に関係なく行われる支援もあります。
ワクチン接種との関連を考えにくい、しかも治療法がある他の疾患や原因などについての判断を誤ると医療上の介入やケアが間違ったものになるリスクもありますので、まずは医療機関で相談をすることが重要です。
多くの調査も記事も、2価と4価のワクチンの種別を気にしていません。
というか、真面目に薬物での反応を考えるなら分けて整理した方がいいと思いますが。
「子宮頸がんワクチン」という存在しないワクチンについて尋ねるというそもそもの疑問は部署内や議会からも出ないのでしょうかね。
インターネットには回復した事例なども情報があるので、報道はそういった情報を足をつかって調べて伝える等の切り口をもってはどうかなと思う2015年10月です。
2015年10月現在、各メディアや取材担当記者が、どの程度学び、どのような関心を持ち、どのような意図で何を伝えようとしているのかはたいへん興味深い点ですので、この最新記事をもとに週末に関連情報を見渡してみました。
一般方や保護者には広くヒアリグをしてみるという(時間やお金のかかる)作業をしてくださった自治体の資料の方が具体的に役立つのではないかと思いました。
その読売新聞の記事は2015年10月17日のものです。
タイトルは、「子宮頸がんワクチン 接種後、体調変化28%」
この問題で「真実追究系」で熱い記者が、数字ベースで検討できる内容についてはあまり関心をしめさない、センセーショナルに書けないものはフォローしないという報道バイアス(学会等での発表バイアスのようなもの)があることをまず復習。
まず、記事を読みますと、最初からセンセーショナルねらいというわけではありません。これまでの調査結果とどうよう、そもそもセンセーショナルな要因をみつけられないということもあるかもしれませんが。
(これまでの調査結果で、分母を伏せるなど無理に煽り系にした記事はありますが。記者の主観が入るのでしかたないですね)
ちなみに、、タイトルの28%は接種をした人全体の28%ではありません。
(回答をしてきた人の中で出てきた数字)
このような記事でいつも問題になる分母の情報が入っています。
今回の場合は調査対象者が2011年2月から2015年3月と広く、11,103人が対象です。
問題は回答率です。回収されたのは1,608で、他の自治体調査と比べて14.5%と低くなっています。
もともとこのような郵送式質問紙調査では80%〜というような高い回収率になることは稀です。
ですので、他の自治体で半分くらい戻ってきた、、、というのはまあまあ妥当な数字です。
報道過熱時は高くなるでしょうし、もともと地域的に教育や保健医療に関心が高い人がいる、あるいは回収率を上げるためにリマインドをしたりすると影響(バイアス)が生じたりします。
回収率はばらつく、、、はしかたないので、解釈の際に注意をするようにします。
例えば、回収率が50%とします。転居して届かない場合もありますが、これは有効発送数として補正されています。
一般的な傾向として、回答しないパターンとしては、関心がない、問題が起きていない、といったことが背景にあります。忘れた、忙しい、質問紙をなくした、めんどうくさい等も考えられます。
このため、分母全体からみて半分くらいは問題がなかったのだろうと推測されます。
次に、帰ってきた半数の人の中で、接種後の体調の変化があったかどうか/どのような症状か/どれくらいで消えたのか・続いているのか/今も続いている症状は何か/そもそも病院に行くほどの状況だったか、について各自治体が質問をしています。
複数の調査結果が公開されています。
静岡市は極端に低いですが、他の自治体を見比べても、回収率も想定の範囲内です。
何らかの症状があったかについては4割前後が有りで、その多くが予防接種でよくある痛みや腫れです。
マイナーな症状については多様ですが、どの自治体も似通っています。
自由記載には「副反応が出たらどうしてくれるんだ」「TVみて不安になった」という否定的なものもありますが、「がんを予防できることに期待」などポジティブなものもならんでいます。
このあたりは記者がどの辺りをピックアップして報道にいれるか、、、です。
今回の読売の記事はたんたんと情報を並べ、最後に問い合わせ先を書いています(役に立つ情報)。
機会があったら、これまでの記事との違いをぜひ読み比べてみるとよいのではないかとおもいます。
ちなみに、回答者の5.8%(94人)には現在も続く症状があり、生理不順(32人)、頭痛(23人)、めまい(17人)、だるさ(14人)、視力低下(13人)と続いています。
回収率が一番高いのは臨床試験のときです。細かく全員に聞きます。
ワクチン関係で最もメジャーかつ因果関係が明確なのは接種部位の痛みや腫れで、全員が正直に応えると8割越えになるはずなのですが、一般的な調査ではこんなに低いのか、です(プライドが邪魔をするのか忘れたのかわかりませんが)。
超レアな症状については、ワクチンとの因果関係だけでなく、そもそもワクチン関係なく平時からどれくらい頻度としてあるのだろう?ということや、似たような時期/経過のパターンで症例が複数集中して発生しているのか?ということが問われます。
他にもあるかもしれませんが、ネットで調べると下記の情報が公開されています。
市町村名 実施時期 有効送付数 回収数 回収率
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鎌倉市 平成 25 年 10 月 3,060 1,795 58.7%
大和市 平成 25 年 12 月 5,200 2,294 44.1%
茅ヶ崎市 平成25 年 12月 5,269 2,382 45.2%
藤沢市 平成 26 年 4 月 6,995 3,469 49.6%
国立市 平成 26 年 6 月 895 379 42.3%
武蔵野市 平成27 年 3月 1,934 862 44.6%
東村山市 平成27 年 6月 2,211 1,002 45.3%
静岡市 平成27 年 7月 11,103 1,608 14.5%
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鎌倉市 「鎌倉市子宮頸がん予防ワクチン接種後の体調の変化に関する状況調査結果」
大和市 「大和市 子宮頸がん予防ワクチン接種後の体調変化に関する状況調査」
茅ヶ崎市 「子宮頸がん予防ワクチン接種後の体調の変化に関する状況調査結果」
藤沢市 「藤沢市子宮頸がん予防ワクチン接種後の体調等に関するアンケート調査結果」
国立市 「国立市子宮頸がん予防ワクチン接種後の体調の変化に関する状況調査について」
武蔵野市 「子宮頸がん予防ワクチン接種後の体調変化に関する状況調査について」
東村山市 「子宮頸がん予防ワクチン接種後の体調変化等、状況調査の結果」
静岡市 「子宮頸がん予防ワクチン接種後の
体調の変化に関する状況調査結果」
テレビで紹介される、特異的な症状や、学校の継続が出来ない等、症状緩和や日常生活支援については、取り組みが継続されています。予防接種との因果関係に関係なく行われる支援もあります。
ワクチン接種との関連を考えにくい、しかも治療法がある他の疾患や原因などについての判断を誤ると医療上の介入やケアが間違ったものになるリスクもありますので、まずは医療機関で相談をすることが重要です。
多くの調査も記事も、2価と4価のワクチンの種別を気にしていません。
というか、真面目に薬物での反応を考えるなら分けて整理した方がいいと思いますが。
「子宮頸がんワクチン」という存在しないワクチンについて尋ねるというそもそもの疑問は部署内や議会からも出ないのでしょうかね。
インターネットには回復した事例なども情報があるので、報道はそういった情報を足をつかって調べて伝える等の切り口をもってはどうかなと思う2015年10月です。